【FP監修】住宅ローンの繰り上げ返済のメリット・デメリット、本当に損しているの?
今回は、住宅ローンで借りたお金の返済についてのお話です。住宅ローンの返済は、もともと設定している金額・期間で返済することも可能ですが、期間や金額を変更し、繰り上げて返済することもできます。
もし家計に余裕があれば、繰り上げ返済を選択することもできるのですが、そもそも繰り上げ返済にメリットがあるのか、気になるところですよね。そこで、今回は住宅ローンの繰り上げ返済のメリットとデメリットを中心に、一緒に確認していきましょう。
目次
- 1 住宅ローンの繰り上げ返済とは?
- 2 「期間短縮型」と「返済額軽減型」のメリットとデメリット
- 3 住宅ローンを繰り上げ返済にするタイミングは?
- 4 住宅ローンを借りる前にシミュレーションをしよう
- 5 最後に
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住宅ローンの繰り上げ返済とは?
さっそくですが、そもそも住宅ローンの繰り上げ返済とは何なのかをご説明しておきます。
住宅ローンの繰り上げ返済の仕組みについて
住宅購入時の諸費用は、物件の価格だけでなく、さまざまな費用がかかります。例えば、仲介手数料は不動産会社へ、保証料は住宅ローンの契約時に金融機関を通じて保証会社に、不動産取得税などの税金は購入後納税通知書で、物件にかける火災保険料や地震保険料は損害保険会社へ支払います。
この物件価格と諸費用を合わせたものが、購入物件の価格となり、一般的には20~30%程度以上を自己資金として準備し、残りを住宅ローンでまかなうことが多いようです。
住宅ローンでは、借り入れた金額である元金部分と元本に対する利息を返済することになります。住宅ローンの繰り上げ返済では、ローンの元金の一部を返済する方法となります。
2種類の繰り上げ返済
繰り上げ返済の方法は、2種類あります。それは、「期間短縮型」と「返済額軽減型」と呼ばれるものです。
①期間短縮型
期間短縮型は、毎回の返済額は変更せず、返済期間を短くする方法になります。繰り上げ返済した金額は、元金の返済に充てられ、返済期間が短縮することで、その期間分の利息を支払わなくてよくなります。
②返済額軽減型
返済期間は変更せず、月々の返済額を少なくする方法になります。元本が減るのは、期間短縮型と同じですが、返済期間が変わらないので、繰り上げ返済後の元金と残りの期間を基に返済プランの見直しを行います。元金は減っているわけですので、毎月の利息も少なくなることになります。
「期間短縮型」と「返済額軽減型」のしくみは下のような図になります。
出典:Ⅲ.住宅ローンを見直す|知るぽると
https://www.shiruporuto.jp/public/house/loan/ksikin/ksikin301.html
繰り上げ返済額が同じであれば、「期間短縮型」と「返済額軽減型」ともに、繰り上げ返済の時期が早いほど利息の軽減効果が大きくなります。
また、この2つの繰り上げ返済を比較すると、「期間短縮型」の方が、利息の軽減効果が大きくなります。
「期間短縮型」と「返済額軽減型」のメリットとデメリット
それでは、繰り上げ返済のメリットとデメリットについて、「期間短縮型」と「返済額軽減型」に分けてご紹介します。
「期間短縮型」のメリット・デメリット
メリット1:支払いの期間を短縮できる
期間短縮型は、名前の通りローン返済の期間を当初の予定よりも短縮できることがメリットです。例えば、定年までにローンの返済を終わらせたいといった場合にも活用できます。
メリット2:支払利息総額が返済額軽減より抑えられる
返済期間が短くなれば、同時に利息を支払う期間も短縮されます。よって、利息の総額も当初よりも少なくなり、利息軽減効果もあります。
デメリット1:急な出費に対応できなくなる
繰り上げ返済を行う場合には、まとまったお金が必要になりますね。確かに将来的にみれば、利息軽減効果があるのですが、繰り上げ返済を行った後に、予期せぬ事故や病気などでお金が必要になったとき、貯蓄がなくて対応できないといったことも考えられます。
デメリット2:毎月の返済額は変わらない
こちらはあくまで「期間短縮型」であるため、毎月の返済額は一定のままです。そのため、支払いを行ったあとの貯蓄減少で、以後の支払いが苦しくなることもあります。
「返済額軽減型」のメリット・デメリット
メリット:毎月の返済額を少なくすることができる
月々の返済額が減るので、家計の圧迫が少なくなります。将来のライフイベントでの出費を考えると住宅ローンの返済が負担になると思われる場合やローン返済によって、今後家計の貯蓄がままならない場合は、「返済額軽減型」を選べば、日々のやりくりや貯蓄をスムーズに行うことができます。
デメリット1:支払利息の総額は期間短縮型より多い
返済額軽減型は月々の負担を減らすことが可能ですが、返済期間は同じになります。期間短縮型と比較すると、条件(借入金額や支払年数など)が同じ場合、「期間短縮型」よりも利息の支払い総額が多くなってしまいます。
デメリット2:急な出費に対応できなくなる
こちらも同じく、繰り上げ返済にはまとまったお金が必要になります。やはり利息軽減効果や月々の支払い軽減が見込まれるわけですが、繰り上げ返済を行った後は貯蓄少なく、急な出費に対応できないといったことも考えられます。
また、繰り上げ返済を行うときには、手数料がかかる場合があります。利息が軽減されても、手数料がかかりすぎてしまうと、その軽減効果も少なくなってしまいます。繰り上げ返済を行うときには、借入をしている金融機関に問い合わせをしておきましょう。
住宅ローンを繰り上げ返済にするタイミングは?
では繰り上げ返済したいと思ったとき、いつからするのが返済に有利なのか、気になるところですよね。
より早いほうが返済に有利
繰り上げ返済は、返済した資金を使って元金部分を減らすことができます。よって、支払うはずだった元金への利息を軽減することができるようになります。なるべく早い段階から繰り上げ返済することで、最終的に支払う返済額を減らすことができます。
住宅ローン減税との兼ね合いも考える
住宅ローン減税制度は、住宅ローンを使って住宅を購入するとき、金利負担を軽減してくれる制度です。毎年末の住宅ローン残高又は住宅の取得対価のうち、いずれか少ない方の金額の1%が10年間に渡り所得税の額から控除されます。控除限度額は1年ごとに40万円で認定住宅の場合は50万です。
住宅ローン控除額は、借入額が多く残っていると減税額も増えることになります。早いうちに繰り上げ返済を行っておくと、確かに総支払額を軽減できるのですが、もし住宅ローン減税の適用を受けるのであれば、繰り上げ返済することで、借入額が減り、減税効果が薄くなってしまうことも考えられます。
繰り上げ返済を考えるときには、住宅ローン減税制度の適用期間との兼ね合いも考える必要があります。
出典:住宅ローン減税制度の概要|すまい給付 国土交通省
http://sumai-kyufu.jp/outline/ju_loan/index.html
住宅ローン減税との兼ね合いをシミュレーションしたい時には以下のサイトを使うと便利です。
・すまい給付金シミュレーション| すまい給付 国土交通省
URL:http://sumai-kyufu.jp/simulation/index.html
住宅ローンを借りる前にシミュレーションをしよう
ここまで基本的な繰り上げ返済についてご紹介てきましたが、やっぱりご自身の住宅ローンについても知りたいですよね。そこで最後に、ご自身の住宅ローンの返済シミュレーションができるツールをご紹介しておきます。
住宅ローンのシミュレーションはリスク管理のために必須
パンフレットや窓口の相談で、住宅ローンのしくみは理解できると思いますが、ご自身が住宅ローンを組むとき、将来にどんな金銭的負担がかかるのかを具体的に理解するには、シミュレーションを行うことが大切です。
ご自身のライフプランを加味して住宅シミュレーションを行い、確認することで、将来の支出との兼ね合いが分かり、家計のリスクを減らす助けになります。
シミュレーションに必要な情報
住宅ローンのシミュレーションを行うのであれば、以下の情報を想定しておきましょう。
1:借り入れ金額
物件に合わせて、ご自身がどのくらい自己負担をするかを想定し、借入金額を決めておきましょう。冒頭でもお伝えしましたが、物件価格に対して、一般的に20~30%程度以上を自己資金として準備し、残りを住宅ローンでまかなうことが一般的です。
2:現在の収入
あなたの現在の収入も大事な情報になります。月々の返済や今後の返済期間を決めるときに、無理のないプランかどうかを判断するためにも使われます。
3:毎月の返済額
収入や年齢、今後の勤続年数などを考慮し、毎月の返済額を決めましょう。将来の負担を減らすために、毎月の返済額を増やして期間を短くするか、今の家計の負担を減らすために、返済額を抑えるか、ご自身のライフプランに合わせて、月々の返済額を決めましょう。
おすすめのシミュレーションサイト
住宅ローンシミュレーションは、専用のサイトがいくつもあります。各金融機関のサイトだけでなく、住宅ローンに特化したサイトでも無料で使うことができるのでオススメです。今回はその中から、詳細に設定できる2つのシミュレーションサイトをご紹介しておきます。
イー・ローン
イー・ローンは、無料でローン比較や申し込みができるローンデータベースを持っており、住宅ローンについても、新築か中古かといった用途別に自分にあったシミュレーションを行うことができます。また、シミュレーション結果から、条件に合うローンを提供している金融機関を表示してくれる機能もあります。
URL:https://www.eloan.co.jp/sim/homePayment.php
高機能住宅ローンシミュレーション|みかローン
金利変動や返済パターン、ローンの分割など細かな設定を行い、シミュレーションができます。ご自身が利用する住宅ローンの条件の形がしっかりイメージできている人にオススメです。条件を保存すると他の条件との比較も可能です。
URL:http://loan.mikage.to/loan/
この他にも、もしご自身がローンを組みたい金融機関が決まっているのなら、その金融機関のシミュレーションサイトを使うことで、金融機関ごとの特色を反映した結果を見ることができます。
最後に
今回の内容をまとめておくと、
・住宅ローンの繰り上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つがある。
・「期間短縮型」の方が、返済総額が少なくなる。
・どちらの方法でも早く返済したほうが効果ありだが、住宅ローン減税制度との兼ね合いも重要。
・返済する前に、住宅ローンシミュレーションをしておくと将来のリスクに備えられる。
となります。
住宅ローンの繰り上げ返済は支払う利息を減らすことができる制度です。
借金を減らすことができるので、不安も軽くなるかと思うのですが、それによって、今後の家計が破綻してしまえば、なんのために繰り上げ返済したかわからなくなってしまいます。返済方法は、ひとりひとりに合った方法で無理のない範囲でできるよう、しっかり事前準備もしましょう。
監修者:堀口 雅子(ファイナンシャルプランナー)

記事筆者
マネカツ編集部 Manekatsu Henshubu
"将来への漠然としたお⾦への不安はあるけど、何から始めていいのかわからない…"
そんな方に向けて「資産運用」や「節税」など、お金に関する情報を発信しています。

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