【FP監修】税金の滞納に時効はある?差し押さえられる前に知っておきたいこと

税金を支払えずにいるが、実際に差し押さえがあるのかどうか知っておきたいと思う方もいらっしゃると思います。そこでこの記事では、もしも税金を滞納してしまったらどんなデメリットがあるのか、差し押さえられる物の種類、税金滞納の時効についてご紹介します。
税金滞納によるデメリットと時効を知り、無駄なく支払いができるようにしましょう。
目次
もしも税金を滞納してしまったら?
もしも税金を滞納してしまったらどうなってしまうのかをご存じでしょうか。税金を納めない場合のデメリットはかなり大きいので、知っておきましょう。
社会的信用を失う
税金を滞納してしまうと、ブラックリストに載るわけではありませんが、住宅ローンや教育ローンなどの審査が通りにくくなります。
よって、新居を購入しようと考えていたり、子どものために教育ローンを組もうと考えていたりした場合、税金滞納をしていると不利になる可能性がありますので覚えておきましょう。
出典元: 滞納処分について
http://www.pref.nara.jp/43784.htm
財産や給与が差し押さえられる
税金を滞納すると、財産や給与が差し押さえられます。具体的な差し押さえ対象は、給与口座、生命保険、自動車や不動産などの家財が該当します。
給与口座などからはお金を引き出され、生命保険は生命保険会社へ解約の申し出を行い、解約返戻金で税金を納める必要があります。そして、自動車や不動産などの家財はインターネット公売を利用して売却されます。
出典元:差し押さえの要件/国税庁
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/chosyu/05/01/01/047/01.htm
税金を滞納したときの処分の流れ
ここでは、税金を滞納した時の処分の流れについてご紹介します。もしも、今税金を滞納している方は、ご自身がどの段階にいるのか確認をしておきましょう。
出典元:差し押さえの要件/国税庁
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/chosyu/05/01/01/047/01.htm
1:税金支払い期限が過ぎる
税金の支払い期限が過ぎても、すぐに処分されるわけではありません。市役所は20日程度、督促状を送付することを待ってくれます。この期間に税金を納められる場合は、すぐに税金の支払い窓口へ行き、納付するようにしましょう。
2:滞納20日後に督促状が送られてくる
納付期限を20日間過ぎた場合、督促状が発送されます。督促状が発送されると、督促状1通につき、手数料が100円前後加算されます。(住んでいる自治体ごとに手数料は異なりますので、お住まいの地域の手数料を調べておきましょう。)
督促状を発行した日から、おおよそ10日以内に滞納金を支払うと、差し押さえ処分には至りません。督促状が届いたらすぐに納めるようにしてましょう。
3:電話、文書での催告
督促状が発送された日から10日以上経っても納付されない場合は、電話や文書で催告通知が行われます。また、訪問にくる市役所などもあります。
督促状、もしくは催告通知書を発送した後6カ月以上を経た場合、差し押さえの対象となることがありますので、注意しておきましょう。
4:財産調査
督促状、催告通知を行ってなお納税が行われない場合、市役所職員の方々は財産調査に乗り出します。財産調査は、以下の2つのことが行われます。
身辺調査
財産調査を行う場合は、始めに税金滞納者の身の回りを調査します。例えば、どこに住んでいるのかを知るために住民票を取得したり、勤務先や取引先の調査を行ったりします。また、税金滞納者がいくら収入を得ているのかも調査されます。そのほかに、戸籍の調査や家族構成なども調べられます。
財産調査
税金滞納者が所有している財産がどの程度あるのかを把握します。次に財産調査が行われます。財産調査とは、給料や自動車、生命保険などが主な調査項目となります。
5:差し押さえ
督促、催告をしてもなお納付がない場合は、財産調査で判明した財産(給与、預貯金、不動産、保険等)が差し押さえられます。差し押さえられたものは、所有者として処分することができなくなります。
6:登記・通知
差し押さえが実行される場合は、利害関係人へ「差押通知書」が発行されます。利害関係人とは、勤務先、金融機関、保険会社、不動産の抵当権者など)。また、不動産が差し押さえられると登記には「差押」と表記されることになります。
差し押さえられた不動産は、実質的には処分や売買が行えなくなります。なぜなら、差し押さえ後に所有権の移動があったとしても、差押登記が優先されます。つまり、前の所有者が税金滞納していて差し押さえられた後に所有権を移転えとしても、所有権移転前の滞納者の財産として競売より処分されてしまう可能性があります。
7:滞納した税金へ充当される
差し押さえを実行されても、すぐに税金を納めると銀行口座や給与等の差し押さえは解消されます。ただし、差し押さえられても納付しなかったり、納付額が足りなかったりした場合は、差し押さえした財産が税金へ充当されることになります。
給与の差し押さえは、滞納税金が完納されるまで、毎月一定額を給与から引き落とす仕組みになっています。不動産に関しては、市が売却し、その売却金が滞納税に充当されることになっています。
税金の滞納で差し押さえられるもの
上記でも少し触れましたが、ここでは税金滞納で差し押さえられるものをご紹介します。税金を滞納すると、一体どのようなものが差し押さえられるのか覚えておきましょう。
出典元:差し押さえの要件/国税庁
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/chosyu/05/01/01/047/01.htm
銀行口座
1つめの差し押さえ対象は銀行口座です。積立貯金の口座や、給与口座などが差し押さえの対象となります。滞納した税金を支払わない場合、預貯金や給与から税金が充当されてしまいますので、差し押さえられる前に速やかに滞納している税金を支払うようにしましょう。
所得
ご自身の「所得」も差し押さえられます。給料収入がある方は、給料の一部が差し押さえられます。そして、毎月の給与から一定額の滞納金を差し引かれることとなります。
個人事業主の場合は、売上が入っている通帳だけでなく、売掛金も差し押さえの対象となりますので注意しておきましょう。
不動産
ご自身で所有している不動産も差し押さえの対象となります。差し押さえ対象となる不動産は、建物や土地、マンションなどです。住む家が差し押さえされてしまうことになりますので、身の安全を確保するためにも、差し押さえられた後は、早急に税金を納めるようにしましょう。
上場株式
市町村等が認める上場企業の株式についても、差し押さえの対象となります。また、国債についても差し押さえの対象となりますので覚えておきましょう。
売却財産
売却財産も、差し押さえの対象となります。親から譲り受けた畑や山などを売って得たお金等も差し押さえられてしまいます。
副業の収入
税金を滞納していると、収入源は残らず差し押さえられます。副業も例外ではありません。副業収入が入ってくる口座は差し押さえ対象となります。せっかく副業で貯めたお金があったとしても、税金の納付をしておらず差し押さえられては意味がありません。よって、しっかりと税金を納付する必要があると言えます。
税金の滞納に時効は存在するのか?
「税金を滞納しても、時間が経てば時効になるのでは?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。そこで、この章では税金滞納の時効についてご説明します。
税金滞納の時効は3年〜9年
一般的に税金の滞納の時効は3年~9年と言われています。しかし、税金の徴収権の時効か、賦課権の除斥期間なのかで期間が異なりますので、違いを確認してみましょう。
税金の徴収権の時効は5〜7年
税金の徴収権の時効は5年~7年となっています。税金の徴収権については、法定納期限から5年経過した日に時効が成立します。しかし、不正行為があった場合は、時効は7年とされています。
出典元:国税通則法
http://www.houko.com/00/01/S37/066.HTM
出典元:国税庁
https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kohon/tuusoku/pdf/06.pdf#page=1
賦課権の除斥期間は3年〜9年
賦課権の除斥期間は3年~9年です。賦課権とは、提出された申告書に間違いがあったときなどに税金の金額を決めることができる権利のことを指します。除斥期間とは一定期間経過すると権利が消滅する期間のことを指します。
この除斥期間は3年から9年となっておりますが、ここでは省略しておきましょう。
出典元:徴収権の消滅時効について
http://www.masse.or.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/6/200612_p17.pdf
事実上、時効は存在しない
事実上、税金に時効というものは存在しません。なぜなら、税金の場合、時効にならないように取り立ての停止や中断の手続きが行えるからです。
例え、法定納期限から5年以上経っていたとしても、税務署や市役所の人たちが税金の徴収の中断や停止の手続きをしていれば、その分時効が伸びます。よって、時効の年数が経過したからといって必ずしも時効に達していない可能性があることは覚えておきましょう。
税金滞納者が亡くなったらどうする?
税金を滞納している方が亡くなってしまったら、滞納税は払うべきなのか、それとも払わなくても良いのか分かりませんよね。亡くなった方の税金は絶対に払わなければならないのでしょうか。
配偶者や子どもに課せられる
基本的に、税金滞納者が亡くなった場合は、配偶者や子に滞納金が課せられます。また、亡くなる前に賦課され、亡くなった後に納税期限が来るものであっても配偶者や子に納付の義務が移行します。
しかし、相続放棄を行えば亡くなった方の税金を納めずに済むことを覚えておきましょう。
出典元:第139条関係 相続等があった場合の滞納処分の効力/国税庁
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/chosyu/05/06/01/139/01.htm
税金滞納には利息がつく?気になる延滞税について
税金滞納に利息がつくことをご存じでしたか?国の税金だから滞納しても利息がつかないと思っている方は危険です。税金を滞納すると利息が発生して、余分なお金も支払わなくてはなりませんので覚えておきましょう。
延滞税は法定納期限の翌日から発生
基本的に延滞税は法定納期限の翌日から発生します。法定納期限とは、その名のとおり「お金を納めるまでの法的な期限」です。
延滞税は延滞期間によって変わる
延滞税は延滞期間によって変わってきます。具体的な利率は以下のとおりです。
2カ月を経過するまで・・・原則年7.3%
滞納期間が2カ月を経過するまでは原則利息7.3%となります。例えば、10万円の税金を滞納していたとすると、延滞税として7,300円も徴収されることになります。
出典元:国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9205.htm
2カ月を経過すると・・・原則年14.6%
滞納期間が2カ月以上経過すると、原則14.6%が延滞税として徴収されます。例えば、30万円の税金を滞納したとすると、43,800円もの延滞税を支払うことになります。
出典元:国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9205.htm
延滞税の計算期間に含まれない事例
延滞税の計算期間に含まれない事例として、相続や贈与があった場合などは、相続した日から10カ月以内、贈与された日から翌年の3月15日までが延滞計算期間に含まれない期間となります。
出典元:延滞税の計算方法/国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/nozei/entaizei/keisan/entai.htm
税金を滞納している人必見!相談窓口を活用しよう
税金を払いたいけどどうしたら良いのかわからないという方は、相談窓口へ行ってみましょう。税金を滞納してしまうのは良くないことですが、滞納したまま放置しておくと延滞税も増えてより状態を悪くしてしまいます。
しかし、適切な窓口に相談をしに行けば、対処法などを教えてくれ、現在抱えている問題を1人で抱え込まずに済みます。よって、以下で紹介する窓口へ、ぜひ相談しに行ってみてください。
一刻も早く税務署や市役所に相談すること
まずは、一刻も早く市役所へ相談しに行くようにしましょう。税金滞納の相談は、市役所の「税務課」が対応してくれます。納めるお金がない時は、速やかに窓口へ行き、どうしたらよいのか相談してみましょう。
ライフサポートセンター
税金滞納をしてしまった時に相談する窓口として、ライフサポートセンターと呼ばれる機関があります。ライフサポートセンターとは、各都道府県に設置されている相談機関で、高齢福祉・生涯福祉・暮らし・税金・法律など、さまざまな相談を取り扱っているところです。
税金滞納の相談だけでなく、お金にまつわる相談も受け付けていますので、悩み事を全て一緒に相談してみてはいかがでしょうか?
滞納相談センター
税金を滞納してしまった時、滞納相談センターに相談することも可能です。滞納相談センターとは、その名のとおり税金を滞納してしまいどうしたら良いか分からない人の相談窓口となっています。税理士などの専門家がアドバイスをしてくれますので、困った時のために覚えておきましょう。
以下が、滞納相談センターのURLとなります。
滞納相談センター:http://www.tainousoudan.jp/
税金滞納ホットライン
最後の相談窓口として、税金滞納ホットラインがあります。税金滞納ホットラインとは、中央社会保障推進協議会が行っている税金を滞納している方、差し押さえをされている方の相談窓口となっています。
下記は中央社会保障協議会のURLですので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
最後に
税金滞納の時効とその流れなどについてご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。税金を滞納し、差し押さえられるまでには意外と期間が短いと感じられた方もいらっしゃると思います。
督促状が来て催告まで来たら、あとは差し押さえが実行されてしまいますので、しっかり催告期限が過ぎないうちに納付するよう心がけることが大切です。また、万が一税金が納められそうにない場合は、相談窓口へ行き、話しを聞いてもらい、今後の対応を一緒に考えてもらうことも必要となります。
税金は納めることが国民の義務とされています。しかし、やむを得ない理由で納められない時もあるかと思いますので、1人で悩まず周りに相談してみたり、市役所の税務課などに相談してみたりして、差し押さえされないよう行動してみましょう。
監修者:元木 進一(ファイナンシャルプランナー)