金融庁が掲げる「貯蓄から資産形成へ」の実現に向けた取り組みとして開始された少額投資非課税制度「NISA」。ここでは、NISAの基本から、口座を開設する金融機関の選び方、また投資スタイルに合った金融商品の提案まで、幅広く解説していきます。

そもそもNISAとは?

「NISA」の正式名称は少額投資非課税制度。投資による資産形成を支援するために設けられた制度です。通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をすると、これらを売却して得た利益や配当に対して、20.315%の税金がかかります。しかしNISAを利用した場合には税制優遇措置により、これらの税金は一切かかりません。

NISAの歴史

NISAは、もともと1999年にイギリスで導入された「ISA」という制度をお手本に2014年1月からスタートした制度です。昔から、日本人は欧米諸国と比較して、金融資産の中で預貯金の割合が高い一方で、株式などの証券を保有している割合が極端に低いことから、個人の金融資産を資産運用へ促すために作られた政策のひとつです。

利用できる人の条件

NISA口座を開設するには、口座を開設する年の1月1日時点で、日本在住の、20歳以上であることが条件です。20歳未満の方には、別途として未成年者少額投資非課税制度「ジュニアNISA」が用意されています。

年間120万円まで投資できる

NISA口座では、毎年120万円分の金融商品(株式や投資信託など)が購入可能です。各年に購入した金融商品を保有している間に得た配当金や、売却で得た利益は購入した年から数えて5年間、課税されません。なお、非課税で保有できる投資総額は、最大600万円(120万円×5年分)となります。

投資対象は幅広い

NISAで取引できる金融商品は、株式投資信託、国内・海外上場株式、国内・海外ETF、ETN(上場投資証券)、国内・海外REIT、新株予約券付社債(ワラント債)…と幅広く網羅されています。これらの商品をNISA口座で保有すれば、5年間は売却益や配当にかかる税金が非課税となります。

配当金を非課税で受け取るには株式数比例配分方式の選択が必要

NISA口座で購入した金融商品の配当金等を非課税にするためには、配当金の受取方法は「株式数比例配分方式」を選択しなければなりません。株式数比例配分方式とは、保有している国内上場株式等の配当金等を、権利確定時の保有数に応じて、各証券口座で受領する方法です。この方式を選択していないと、配当金に課税されてしまうため、NISA口座で資産運用する場合は必須の確認事項といえます。

非課税期間が終わると、次の対応が必要になる

非課税期間である5年間が終了する金融商品を、売却せずそのまま継続して保有し続けたい場合には、次の2通りの対応から選択することができます。

特定口座に移管する

通常課税される特定口座へ、資金を移管する選択を取ることができます。NISA口座で、新たに保有したい金融商品の買い付けを検討していて、そのために非課税投資枠を使いたい場合には、有効な手段といえます。

翌年以降の非課税枠を利用する

保有している金融商品を、翌年の非課税投資枠に移すことができます。これを、ロールオーバーといいます。なお、ロールオーバー可能な金額に上限はなく、当初120万円で購入した金融商品が値上がりし、時価で130万円となっていたとしても、その全額をロールオーバーすることが可能です。但し、その時点でその年の非課税投資枠はなくなりますので、NISA口座で新たな買い付けはできなくなる点には、注意が必要です。

NISA口座を開設する方法

NISAは、多くの金融機関が対応しています。まずは証券会社や銀行から、口座開設書類を取り寄せます。ネットや電話で請求するとお手元に早く届くでしょう。マイナンバーが記載されている書類と、運転免許証などの本人確認書類を、予め準備しておくと手続きがスムーズに進むでしょう。郵送される申込書類に記入し、必要書類を添付して返送すれば、2~4週間ほど後に手続きが完了し、NISA口座が開設されます。

NISA口座を他の金融機関に乗り換える方法

NISA口座を開設する金融機関は、1年単位で変更することが可能です。変更手続きには毎年期限があり、変更したい年の前年の10月1日から変更したい年の属する年の9月30日までに、次の手続を行う必要があります。

まず、変更前の金融機関に「金融商品取引業者等変更届出書」を提出し、「非課税管理勘定廃止通知書」の交付を受けます。次に変更しようとする金融機関に、「非課税口座開設届出書」に、「非課税管理勘定廃止通知書」を添付し提出します。

なお、旧NISA口座で保有している金融商品を残すことができます。その金融商品は、最長5年間の非課税の対象となります。但し、旧NISA口座で新規買い付けは不可能となりますので、気をつけましょう。

NISAのメリットは?

個人の少額からの投資による資産形成を、政府が税制優遇措置を設けてバックアップしてくれる制度がNISAです。国が投資を推し進めたいとの思いから作られた制度であり大きなメリットがあります。

利益が非課税になる

まずなんといってもNISAの最大の魅力は、年間120万円までという投資額に上限はありますが、その投資で得られ利益が、全額非課税となる点です。通常、特定口座や一般口座では金融商品の利益に対し20.315%(所得税復興特別所得税住民税)が課税されることから、非常にお得なメリットですね。

確定申告の必要性がない

NISA口座で得られた利益は、前述のとおり全額非課税となり、売却損もないものとみなされるため、確定申告をする必要性がありません。しかし、また後述しますが、NISA口座で損失が出た場合、確定申告不要であるゆえに損益通算や繰越控除を行うことができない点はデメリットとなります。

NISAのデメリットとは?

このように、NISAには非課税をはじめとするメリットがたくさんありますが、その一方で、デメリットや、運用していくでの注意点も存在します。

損失が発生しても損益通算できない

損益を他の口座と合算して全体の利益を減らし、納める税金を少なくすることを「損益通算」といいますが、NISA口座ではこれができません。非課税を享受できる代わりに、損益通算までの恩恵は与えられないということですね。なお、NISAの見本となったイギリスのISAでも損益通算は不可となっています。

損失が発生しても繰越控除できない

損益通算してもまだマイナスが残っている場合その損失を確定申告でその年以降3年間繰り越すことができ翌年移行の投資の利益と相殺できる制度を「繰越控除」といいます。こちらも前述の損益通算と同様、NISAでは使うことができません。

代用有価証券として使うことができない

NISA口座で購入した金融商品は、信用取引の担保となる代用有価証券として利用することはできない規定となっています。

金融機関選びのポイント

NISA口座は、金融機関によって使い勝手が大きく異なります。以下にご紹介するポイントに絞り、比較して検討していきましょう。

資料請求で情報を集める

NISAは、証券会社や銀行などさまざまな金融機関が対応しています。まずは、興味のある金融機関へ問い合わせて資料を請求してみましょう。どの金融機関でも、初心者向けにわかりやすく開設されたNISAの資料の用意があります。

希望の商品が販売されているかが最重要

まず、株式やETFへの投資を視野に入れるのであれば証券会社での開設が必須です。銀行では株式やETFの取扱はありません。その中でも、コスト面や商品のラインアップを重視するのであれば、ネット証券が有利となります。但し、対面で詳細な説明を受けたい、運用の相談をしたいといった方であれば、対面の証券会社や銀行も選択肢に入ってきます。

手数料もしっかり確認する

金融機関選びの中で重視すべきポイントとして、「コストの安さ」が挙げられます。こちらは金融機関ごとに大きく異なり、大手ネット証券では売買手数料を「永年無料」と謳う機関が多いです。中には、買付手数料は無料なものの売却時には手数料が発生する機関もあるため、念入りに確認しましょう。

金融機関が提供するサービスの使いやすさも大事な判断材料

長い付き合いとなるNISA口座だからこそ、日頃の使い勝手も重要な要素のひとつです。管理画面や、トレードツールの使いやすさや見やすさの評価が高い金融機関を選択することは、ストレスを感じることなく取引できる環境を得るために欠かせないポイントといえるでしょう。

商品選びのポイント

NISAで取引できる金融商品は幅広く用意されています。ここでは、それぞれの投資スタイルによっておすすめできる商品をご紹介していきます。一例ではありますが参考にしてくださいね。

できるだけリスクを抑えたい人は、債券中心の投資信託がおすすめ

債券を中心に運用する投資信託は、株を中心に投資する商品と比較し、値動きが小さい傾向があります。元本割れのリスクを抑えつつ、預金プラスアルファの収益が期待できます。

外国の債券に投資をするタイプは為替の影響も受けます。為替相場が買った時より円高であれば日本円に換算すると評価額は小さくなり、円安であれば逆に大きくなります。外国債券や外国株式等の外貨建ての商品は為替変動リスクがありますので理解して検討してください。

大きな利益を狙いたい人は株式中心の投資信託がおすすめ

株式を中心に運用する投資信託は、「ハイリスク・ハイリターン」な商品で、大きな利益が期待できる一方、大きくマイナスとなる可能性もあります。国内株式に特化した国内株式型や、外国株式のみ組み入れた外国株式型、複数の国の株式に分散投資してリスク分散を図るタイプもあります。

安定志向の人はバランス型の投資信託がおすすめ

ある程度のリターンを期待しながら、リスクも押さえたいとご希望の方におすすめな商品として、バランス型の投資信託があります。国内外株式や国内外債券、国内外不動産など複数の資産をあらかじめ決められた資産配分で組み合わせて運用する商品です。

1つ商品だけで、国内外の株式や債券、不動産等、値動きの異なる資産に幅広く投資できるため、リスクを引き下げながら、ある程度のリターンを期待することができます。

NISAについて学ぶには、実際に運用してみることが一番の近道です。これまでご紹介したポイントを参考に、この機会をNISAで優遇税制を活かした資産運用を始めるきっかけにしていただければと思います。

監修者:寺野 裕子(ファイナンシャルプランナー)