賃貸契約を結ぶ前に必ず通過する関門が「入居審査」です。借主としては、気に入った物件に無事入居することができるかどうか、ただ待つことしかできないと思われがちですが、実は入居審査の流れや内容を細かく理解していれば、事前に準備し、審査を有利に運ぶことできるです。そこでまずは、入居審査の基礎から詳しく解説していきます。

賃貸契約の入居審査についての基礎

住みたいと思える物件が見つかった場合、まず不動産仲介業者を通して、その物件の大家さんもしくは管理会社へ入居の申し込みをおこないます。申し込みが受理されると、順次「入居審査」に入ります。入居審査を無事に通過すれば、賃貸契約へ進むことができる流れです。では、その「入居審査」とは、いったいどのようなものなのでしょうか。

入居審査とは

入居審査とは、ずばり「入居者として相応しいかどうかのチェック」です。中でも重要視される項目は、入居者と連帯保証人の支払い能力です。判断材料は勤務先や年収、勤続年数といったさまざまな項目となり、総合的に判断されます。

なぜ入居審査が必要なのか

貸主側の立場にたてばわかりますが、安易に入居を受け入れたものの、家賃を滞納されたら困ってしまいますよね。そのため、入居前の段階で「家賃を滞納する心配がないか」、さまざまな項目から総合的に判断することで、ふるいにかけているというわけです。

誰が入居審査をするのか

入居審査は不動産仲介業者、保証会社、大家さんまたは管理会社の3段階でおこなわれます。

入居審査の時に記入する内容

管理会社によって申込書類の書式は異なりますが、一般的には申込者の住所、氏名、連絡先、勤務先は必須項目です。中でも、勤務先については細かな記入項目があり、資本金や従業員数の記入を求められる場合もあります。また上記項目については連帯保証人にも同様の記入を求められるため、事前に確認しておくといいでしょう。

また連帯保証人とは別に、緊急連絡先の記入を求められることがあります。こちらは緊急時にすぐ連絡のつく人を記入する必要があります。なお、緊急連絡先は連帯保証人ではありませんので、家賃の支払い義務は負いません。

入居審査で必要な書類

入居審査に必要な書類はおもに、本人確認書類、住民票、収入証明書(源泉徴収票または納税証明書など)、印鑑証明書、連帯保証人の同意書、また連帯保証人の印鑑証明書などです。

入居審査の流れ

入居の申込書と、入居審査に必要な書類が揃った段階で、審査がスタートします。実際の流れに沿って見ていきましょう。

必要書類や申込書の内容確認

まずは申込書の項目にある勤務先や年収、勤続年数などから家賃の支払い能力を判断します。また、申込書と本人確認書類や、収入証明書の内容が一致しているかも併せて確認します。

入居者の勤務先への在籍確認

次に、申込書に記載の勤務先へ、申込者が実際に勤務しているかの電話確認をおこないます。但し、保証会社や管理会社によってはこの手順を省略するケースも多いです。

連帯保証人への確認

申込者の同意を得たうえで、保証会社や管理会社から連帯保証人へ電話連絡が入ります。この電話の趣旨は「連帯保証人になることの意思確認」です。連帯保証人から合意が得られた時点で、晴れて入居審査に合格という流れとなります。

連帯保証人はどうして必要なの?

ところで、賃貸契約の際に必要となる「連帯保証人」とは、具体的にどんな役割をもっていて、なぜ用意しなくてはならないのか、ご存知でしょうか。いざ賃貸契約をする際に困ることのないよう、連帯保証人の役割について理解しておきましょう。

「連帯保証人」と「保証人」の違い

連帯保証人とは、借主が家賃を支払わなかったときや、設備を壊してしまい弁償できないなど、何らかの問題を起こした場合に本人に代わって支払いをする人をいいます。このように、連帯保証人は借主と全く同じ義務を負うのに対し、保証人は借主がどうしても支払いができないときに限り、支払う義務を負います。連帯保証人と、保証人とでは、負う責任の重さが異なるわけですね。

大家さんが安心して部屋を貸すために必要

連帯保証人制度は、単なる慣習ではなく民法で定められているため法的な効力があります。貸主側の立場からすると、連帯保証人がいれば何があっても家賃や弁償費用を回収することができるわけですから、安心して部屋を貸すことができるのです。

連帯保証人は親や兄弟に頼むのが基本

連帯保証人を依頼する際に一番面倒がなく、かつ貸主側から信頼を得やすいのはやはり両親でしょう。但し、両親が定年を過ぎて年金暮らしをしている場合、支払い能力を懸念され、認めてもらえないことがあります。

その場合、定職に就いている兄弟がいるのであれば、そちらが望ましいでしょう。両親、兄弟がいない場合、また依頼することができない場合は、祖父母やいとこなどの親族に依頼することも可能です。

連帯保証人を頼める人がいない場合は?

さまざまな事情があって両親や兄弟、親族にも連帯保証人を依頼できない場合は、「保証会社」を利用する方法もあります。「保証会社」は、保証人の代わりとして、第三者である保証会社が連帯保証人となって家賃の未払いや、現状回復費用を弁済してくれるサービスです。なお、保証料は契約時に数万円から、家賃1カ月分の数割程度の金額が相場です。

賃貸契約の入居審査ではどんな所を見られているのか

入居審査は、あらゆる項目から多角的に入居者を診断します。管理会社では、入居審査をマニュアル化していて、神経質にチェックしています。では具体的に、どんな所を見られているのか、ひとつずつ確認していきましょう。

職業

職業はライフスタイルに直結する部分なので、審査基準に大きな影響を与えます。反社会的勢力に属していないか、虚偽の申告をしていないか、収入や雇用形態が安定しているか。また、水商売を職業としている人に関しては、収入面の問題というより、他の入居者とのライフスタイルの違いから、騒音問題などに発展することを懸念される傾向があります。

年収、家賃の支払い能力

貸主側が一番気にするポイントが、何といっても家賃の支払い能力です。

収入が安定しているかどうか

年収が高ければ高いほど、入居審査においてはプラスの材料となります。また、時期により収入のムラがあることは懸念されます。定期的に安定した収入があるかどうかがポイントです。

収入と家賃のバランスがとれているか

収入と家賃との比率も大事なポイントです。目安としては、月収の3分の1程度に「賃料」および「管理費」がおさまっているかどうかが判断材料となります。

連帯保証人について

申込者と同様、連帯保証人についても厳しく審査の目が当てられます。前述のとおり、安定した職業に就いているか、家賃の支払い能力は足りているかといったポイントが焦点です。

接する態度・見た目

それ以外にも、態度や見た目も入居審査においてはかなり重要な部分となります。いくら年収が高くて安定した職業に就いていても、態度やマナーに問題があれば他の優良入居者とトラブルを起こし、他の入居者を退去に追いやるリスクが高いと判断されます。

引っ越しの理由

貸主側としては、一度入居になれば長く住んでもらいたいと思っています。だからこそ、今回の引っ越しにあたる「理由」に関しては神経質にチェックをしています。何の理由もなく転々と引っ越しをするような申込者であれば、手間ばかりかかるため避けたいと思うのが当然です。

賃貸契約の入居審査に通るための準備と心がけ

それでは、賃貸契約の入居審査に通過するためには、どのようなポイントに気をつけるといいのでしょうか。前もって頭に入れておくだけで、審査を有利に進めることのできるコツもあります。ぜひ一通り目を通しておいてください。

清潔感があり、好感の持てる身なりをする

人と会うとき、まず相手の判断材料とするポイントは第一印象の見た目ですよね。それは賃貸契約にあっても同様で、貸主側はまず申込者を見た目で判断します。服装は私服でも、清潔感のある身なりを心がけることが大切です。男性であれば、無精ひげなどはマイナスポイントです。女性でも、極端に派手な服装やメイクは敬遠されるため、気をつけましょう。

話し方や態度が横柄にならないように

申込者の話し方や態度もしっかりとチェックされています。なぜなら、アパートやマンションでは入居者同士のコミュニケーションも必要となるからです。信用できる人柄か、他の入居者とトラブルを起こすような性格ではないか、といった印象について診断されていることを肝に銘じつつ、担当者と接することが大切です。

普段からクレジットカードの支払いなどをきちんとする

過去に滞納履歴があるかどうかは、調べればすぐにわかります。仮に滞納履歴を隠して審査を受けても、審査の厳しい管理会社であれば通過は困難でしょう。そのため、日頃からクレジットカードの支払いなどは滞りなく済ましておく必要があります。

引っ越しのスケジュールは余裕をもって

入居審査は、一般的に不動産仲介業者、保証会社、大家さんまたは管理会社の3段階でおこなわれます。そのことから、全ての審査が完了するまでには1週間から10日程度の期間を要します。現住居の退去通知をするタイミングなど、前もって余裕のあるスケジュールを組んでおきましょう。

月収の3分の1程度の家賃の部屋を選ぶ

賃料と管理費を足した金額が、自分の月収の3分の1以下となる物件に絞って部屋探しをしましょう。入居審査でも貸主側は同様の尺度で「月収に見合った物件か」判断しているため、大幅に超過するようでは審査通過は難しくなります。

書類に嘘を書いたり、虚偽の申告をしない

申込書類には事実を嘘偽りなく記入しましょう。年収を上乗せして記入しても必ず嘘は発覚します。虚偽の記載をすると、法的な契約解除の事項にも該当する可能性があります。

必要書類の取得はすみやかに

必要書類の提出期限をきっちり守れるか、不足書類はすぐに取得して提出されるか。こういった側面からも、貸主側は申込者の性格や人柄、信用するに足る人物であるかを見極めています。期日までに用意できないようであれば、信用されるのは難しいでしょう。

審査に通りにくい場合の対処法とは

それでも賃貸契約をしたいばかりに、現在の自分の状況を変えることはなかなか難しいものです。そこでここでは、本来は入居審査の通過が難しいケースでも、無事に合格に至るためのテクニックをご紹介します。

無職の場合

学生を除き、賃貸物件の入居審査でまず否決される要素は無職です。では、無職でも審査が通る方法はあるのでしょうか。

家族名義で契約してもらう

両親や兄弟名義で代理契約をしてもらう方法があります。但し、物件によっては契約者と入居者が同一であることを条件としていることがあるため、そうではないケースに限られます。

預貯金審査をしてもらう

預貯金や有価証券などの資産があるのであれば、家賃の支払い能力に見合う証拠を提出すれば認めてもらえることがあります。但し、賃貸契約は一般的に2年契約が多いため、初期費用1カ月と家賃24カ月の計25カ月分の資産を担保とすることから、決して甘い基準ではありません。

とにかく何かの職に就く

アルバイトや派遣社員でも、無職よりは何かしらの職に就いているほうが、審査では有利に働きます。

仕事が水商売の場合

水商売の場合、通常の賃貸の入居審査を通過する難易度は高いです。繁華街付近には水商売の入居者向けの物件もあるので、候補に入れてみましょう。一般の賃貸物件に入居を希望する場合は、昼間にアルバイトなどの仕事をして、そちらを本業として申告する手もあります。

個人事業主や自営業の場合

個人事業主や自営業者の場合、会社員と比較して安定した収入という面で劣って見られます。少なくとも1年以上の実績があり、確定申告書などで十分な収入の証明ができれば、認めてもらえる確率は高くなります。

保証会社に審査をかけてもらう

保証会社によって審査基準が違うので、1社でNGの場合は、違う会社に審査をお願いしてみましょう。

困ったら不動産会社へ事前に相談

これまで解説したように、入居審査は数カ所でおこなわれ、必要書類も多く、確認事項も多岐にわたります。不安な点やわからないことは、何でも不動産仲介業者へ問合せましょう。基本的には貸主側との窓口役を担っていることから、こちらの味方となってくれるケースが多いです。疑問点は前もってまとめておき、文書として残すと、あとあと確認することもできて便利です。

必要なことを準備してから部屋探しを始めよう

いかがでしたか?賃貸契約をするにあたって必要となる書類は予め準備しておくと、スムーズに提出することができ、入居審査にも有利に働きます。前もって対策を講じることでプラスに寄与する項目も多いです。あなたが素敵な部屋へ巡り合う手段として、参考になれば幸いです。

監修:小林 弘司(不動産コンサルタント)