年金破綻はあるのか?財政検証結果を読み解く!〜FPコラム〜
こんにちは。
東京都内でワンルームマンション投資をしている、
個人投資家兼ファイナンシャルプランナーの川井えりかです。
2019年は5年に一度の公的年金財政検証の年です。
「公的年金だけでは老後に2,000万円不足する」という金融庁からの報告書が今年は話題になりました。(※この報告書はその後撤回されています)
これを機に、証券会社のNISA口座の開設や、個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入者が大幅に増加しました。
日本の公的年金制度は戦後間もない頃にできたもので、今の高齢者の収入の大部分は公的年金です。
セカンドライフに向けて貯蓄や投資をはじめる私たちは、年金をどの程度もらえると思っておけばよいのでしょうか?
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目次
年金は、若者がいる限り破綻しない
私自身の個人的な資産運用の前提では、「年金はもらえない」と想定してライフプランを設計しています。
ですが、年金が0円になることは、まずありえないと思って大丈夫です。それは、年金の仕組みにあります。
現在、高齢者がもらっている年金の原資は「年金保険料」と「積立金」です。
年金保険料とは、20歳から59歳までが支払っている国民年金保険料と、会社員・公務員の支払う厚生年金保険料のことです。
「若いうちからコツコツ払ってきたから年金がもらえる」と思っている方は多いですが、それは違います。若い方が毎月払っている年金保険料は、そのまま高齢者の年金給付にスライドして支払われています。公的年金はコツコツ貯めるものではなく、高齢者へすぐに仕送りされているものなのです。
これを「賦課方式」といって、戦後から変わらない日本の公的年金のしくみです。そして、若者たちの保険料から、高齢者への給付を引いた残りは「積立金」にまわります。積立金とは、将来の高齢者への年金給付のために運用に回すお金です。積立金の残高は、2018年度時点で約166兆円あります。
今後若者が減り、高齢者が増えることで支出(年金の給付)が多くなることが予想されるので、株式や債券、不動産等に分散して資産運用をしています。
今回の財政検証で、最悪のケース(※)で2052年に積立金が枯渇するというシミュレーションが発表されました。33年後の話です。
※厚生労働省が発表した財政検証ケースⅥの場合。後に解説します。
現在32歳以上の方は全員、2052年に65歳を迎えており、年金を受け取る側になる予定です。
この時に積立金が0円になっていると、高齢者への給付は若者の保険料のみが原資となります。積立金がないので年金の給付額は大幅に減少しますが、若者の保険料を高齢者への給付にあてる現在の「賦課方式」の年金制度が変わらない限り、保険料を支払う20歳~59歳の若者がいれば、もらえる年金が0円になることはありません。
ですが、積立金がなくなること、人口が減少して保険料を支払う若者が減少することは、私たちの老後の生活に大きく関係する重大な問題です。
余談ですが、公的年金のように、収入(若者の保険料)から支出(高齢者への給付)を引いて、残りを運用という「余ったら貯める」スタイルは家計の管理ではNGです。
年金の積立金が枯渇する可能性があるように、将来住居費や教育費がかさみ、家計の資産が枯渇するかもしれません。
みなさんは先に積立金の額を決めて、運用に回しましょう。
将来の年金額は、良くても手取り収入の約半分
財政検証の結果から抜粋して、一体年金がどの程度の水準でもらえるのかを確認してみましょう。
財政検証では、
・今後の人口(出生率)
・労働力(労働人口)
・経済の動向(物価、賃金、経済成長率)
によって将来の年金の給付にどのような変化が出るかをシミュレーションしています。
その結果はケースⅠ~Ⅵの6通りあり、最もポジティブなシミュレーション(ケースⅠ)の場合、老後の年金額は、手取り収入の51.9%と試算されています。手取りの収入が月30万円の人の老後の年金は月額15.6万円程度です。つまり、最も良い結果でも現在の収入の2分の1程度になります。
この最もポジティブなシミュレーションの前提は、物価上昇率2%、賃金上昇率1.6%、経済成長率0.9%という数字です。物価上昇率2%は、アベノミクスで目標とされている数字で、未だ達成できていません。
そして最もネガティブなシミュレーション(ケースⅥ)の場合、老後の年金額は、手取り収入の50%と試算されています。さらに続きがあり、積立金が枯渇する2052年以降は、手取り収入の38~36%と試算されています。
仮に最も低い36%で計算すると、手取りの収入が月30万円の方の老後の年金は月額10.8万円です。夫婦二人で賃貸暮らしだと、家賃の支払いだけで年金を使い切ってしまうようなイメージです。
実際の老後の年金額はさらに少ない?!
これは実際にライフプランニングをしてみると、殆どの人に共通して言えることです。年金は、手取り収入の半分より少ない水準になることが多いです。
それは、厚生労働省がシミュレーションする前提となる「モデル世帯」が、実際には少数派だからです。
年金の財政検証の前提条件は、
夫:会社員(国民年金+厚生年金)
妻:専業主婦(国民年金のみ)
となっており、夫の扶養に入っている(=保険料の支払いをしない)妻も、年金が受け取れます。夫だけの収入に対して夫婦の年金合計額で計算するため、収入に対する年金の割合は高くなります。
ですが、現在の夫婦は多くが共働きで、
夫:会社員(国民年金+厚生年金)
妻:会社員(国民年金+厚生年金)
という構成が多いです。
独身の人も同様で、専業主婦のように保険料を払わずに年金を受け取ることはありません。
専業主婦のいない世帯のシミュレーションは、年金の財政検証の結果には出ていません。ですが、今の年金給付の水準から計算することができます。
独身、共働き世帯の年金額は、手取りの3割が現実的?
財政検証の結果、最もポジティブな将来の年金給付は手取り収入の51.9%と紹介しました。ちなみにこの数字、現在年金を受け取っている高齢者世帯は61.7%です。将来の最もポジティブな予測よりも10%程度高いのが現状です。
この数字は、夫の手取り収入と、夫婦の年金額の合計で計算しています。妻は専業主婦という前提のため、妻の収入はありません。
現代では夫婦共働き世帯や独身世帯が多く、これらの世帯は専業主婦がもらう年金がない分、収入に対する年金の水準が下がり、現時点でも手取り収入の43.4%程度になります。
ここから将来の予測をすると、最もポジティブなケースでも10%程度下がるので、手取りの収入の33%程度が、将来の年金額と推測できます。
手取り収入が月30万円の独身会社員の老後の年金は、月額10万円程度です。独身だとマイホームを購入しない人も多いので、老後、賃貸暮らしで月10万円の年金収入では生活は破綻しかねません。
夫婦とも月30万円(合計60万円)の収入がある世帯は、月額20万円の年金収入です。月20万円あれば最低限の生活は可能ですが、今まで毎月60万円もらっていた夫婦が20万円の生活レベルに下げるのは簡単ではありません。
「年金はゼロにはならないけれど、年金はアテにできない。」これが、今の働く世代に知っておいてほしい考えです。
やっぱり老後にむけて2,000万円ためるべきか?
答えはNOです。
結婚している夫婦でも、独身でも、まずはじめにすべきはライフプランニングです。
【老後2,000万円問題】で、多くの方 がiDeCoやNISAを使った資産運用をはじめました。
ですが実際は
「本当に2,000万円も必要なのか?」
「本当に2,000万円で足りるのか?」
と疑問に思っている方が多数です。
ちなみにこの2,000万円の根拠は以下の通りです。
・年金収入だけでは、毎月5万円の生活費が不足する。
・夫65歳、妻60歳の夫婦は老後30年生きる
・毎月5万円×12カ月×30年=1,800万円(約2,000万円)
つまり、毎月5万円くらいの赤字になりそうな夫婦は2,000万円準備しておきましょうという話です。独身世帯のことには触れられていません。
そして、月5万円の赤字で済まない夫婦は2,000万円では足りません。老後30年以上生きることを想定している夫婦は、2,000万円では足りません。
反対に、夫婦どちらかが70歳まで働けば2,000万円も必要ないかもしれません。不動産投資などの不労所得がある世帯も、2,000万円も必要ないかもしれません。
ライフプランニングをして不足額を確認してから、お金の貯め方、投資の仕方、働き方を考えてみましょう。
2,000万円問題の解決だけでなく、快適なセカンドライフの過ごし方のヒントも得られるはずです。
記事・監修 川井えりか(ファイナンシャルプランナー)
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