【FP監修】積立NISAとは?主な特徴と他制度との比較

株式や投資信託などの金融商品から得られた利益について、一定金額・一定期間非課税になる制度であるNISAですが、2018年1月から「積立NISA」と呼ばれる制度がスタートしています。この積立NISAは他のNISAとどのように違うのでしょうか。今回は積立NISAとはどんなNISAなのか、主な特徴と他の制度との比較を紹介します。
そもそも積立NISAとは
それでは積立NISAのキホンから見ていきましょう。
2018年から始まった新しい制度
積立NISAは、2018年1月からスタートした新しい制度です。今までは、一般的なNISAとジュニアNISAという2つの制度がありました。一般的なNISAとは2014年1月からスタートした、20歳以上の日本に住む方が対象で、毎年決まった金額の非課税枠内での上場株式や投資信託などの金融商品から得られた所得等が非課税になる制度です。
一方ジュニアNISAとは2016年度から始まった、日本に住む未成年者(0~19歳)を対象としたNISAで、一般的に子供や孫の教育資金を援助する方法として利用されることが多いです。
上記2つのNISAに比べ、2018年からスタートした積立NISAの特徴は、少額からの長期・積立・分散投資を主軸にし、それを支援することを目的とした非課税投資であることです。NISAは、将来に向けて長期的に資産運用をしたいと考えている方に向けた制度となっています。
年間で投資できる金額は40万円まで
一般的なNISAは、毎年120万円まで投資でき、ジュニアNISAは、毎年80万円まで投資できます。一方積立NISAは、毎年40万円まで投資できます。積立NISAの非課税期間は最長20年間続きますので、非課税投資額は20年間で、合計800万円になります。
定期的で継続的な積立投資が条件
積立NISAは積立投資を目的に作られた制度ですので、おのずと定期的に安定した資産形成を行うことが条件となっており、長期・積立・分散投資に適した商品について投資することになります。
投資商品の選択肢は多くない
長期・積立・分散投資できる投資商品を対象にしている積立NISAでは、投資できる商品はあまり多くはありません。一般的なNISAが、国内株式、海外株式、投資信託、ETFやREITなど幅広く対象になるのに対して、積立NISAで対象になるのは、長期の積立・分散投資が可能な一定の「投資信託」のみとなっています。
例えば公募株式投資信託であれば、
・販売手数料がいらない(ノーロードと呼ばれています)
・分配頻度が毎月ではない
・信託報酬が一定の水準よりも低い
など国の定めた一定の基準を満たすことが要件となっています。
法令上の条件が設けられた投資できる対象商品は、以下のサイトで確認することもできます。
つみたてNISAの対象商品|金融庁
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/tsumitate/target/index.html
積立NISAのメリット
それでは、積立NISAのメリットを見ていきましょう。
利益が非課税になる
他のNISAと同じく最大のメリットは、金融商品から得られた所得等が非課税になることです。特に積立NISAの場合は、一定の投資信託という制約はありますが、年間40万円を上限として購入した投資信託の分配金、売却して得た利益(譲渡益と呼びます)が20年間も課税されません。
長期的な資産形成に適している
積立NISAの対象は、長期・積立・分散投資に適した商品に限定されています。そのため、おのずと保有する商品は長期保有・積立・分散投資となり、投資リターンが安定することになります。
なぜ投資リターンが安定するかというと、1つは積立投資という方法にあります。積立投資は決まった金額を同じタイミングで続けて投資する方法です。例えば、毎月15日に1,000円積み立てるといった形になります。そのため、値上がりしているときに購入したり、値下がりしたときに売ってしまったりというリスクを減らすことができます。
もう1つは、分散投資という方法です。1つの商品を買うだけだとその商品の値上がりまたは値下がりの変動が直接運用している資産に影響してしまいますが、A商品とB商品という値動きが違う2つに分散して投資していると、Aが値下がるときにBが値上がるといった逆の動きをすることで、損失が出にくくなります。以上の2つを長期的に行うことで元本割れの可能性を低くする資産運用を行うことができます。
積立NISAのデメリット
次に積立NISAのデメリットを見ていきます。
売買のルールが分かりにくい
非課税枠で取引するにあたって、いくつかルールがあります。例えば、投資した商品からの分配金は非課税ですが、その分配金を再投資する場合は新規購入として、非課税枠を使うことになります。そのため、その年の非課税枠を使ってしまっていると、非課税枠での新規購入はできません。
また、逆にその年の非課税枠が残っていたとしても、次の年には非課税枠の繰り越しはできません。例えば、その年30万円購入し、10万円非課税枠が残っていたとしても、次の年の非課税枠は規定通り40万円となります。
通常のNISAとは併用できない
NISA口座は原則1人に1口座です。また、通常のNISA口座と積立NISA口座を併用して持つことはできず、NISA口座を開設する際にはどちらかを選択しなくてはなりません。
損失が発生しても損益通算できない
通常、証券口座を複数使って投資していると、それぞれの損益を差し引いて税金の負担を減らすことができます。この制度を損益通算と呼びます。
例えば、A口座で100万円利益がでて、B口座で50万円損益が出た場合、100万-50万=50万円が課税されますが、NISA口座は損益通算できないので、NISA口座の損益を他の口座の損益と相殺する節税ができません。
損失が発生しても繰越控除できない
繰越控除とは、その年の株式投資等の取引が損失だった場合に、確定申告することで、その年以降3年間は、株式投資等で得られた利益から損失分を減らすことができるしくみです。
例えば今年の株式投資等の損失が50万円だったとします。この損失を確定申告しておくと、翌年株式投資で100万円の利益があった場合、100万円-50万円=50万円となり、前年の損失を繰越控除し50万円が課税対象になります。
しかし、そもそもNISAは利益が非課税になるしくみになっていますので、もし損益が出ても繰越控除が適用されることはありません。
通常のNISAとの比較
積立NISAのキホンとメリット・デメリットをご紹介しましたが、ここで一般的なNISAと積立NISAはどういった点で違いがあるのか、2つのNISAを比較してまとめてみましょう。
投資期間は積立NISAの方が長い
まず、大きな違いは非課税になる期間です。一般的なNISAの非課税期間が5年に比べ、積立NISAは20年と長期になっています。頻繁に取引を行うには向きませんが、少しずつ資産形成するには積立NISAの方がおすすめです。
投資金額の年間上限額は通常のNISAの方が大きい
次に年間投資金額の上限です。
一般的なNISAは年120万円まで投資が可能ですが、積立NISAの方は年40万円までしか投資ができません。しかし、合計投資金額となると、一般的なnisaが600万円に対し、積立NISAは800万円となります。
投資対象の選択肢は通常のNISAの方が幅広い
最後に投資対象の選択肢ですが、一般的なnisaは
・国内外の上場株式
・公募株式投資信託
・国内外ETF(日経平均株価などの特定の指数の動きに連動する運用を目指す投資信託)
・国内外のREIT(不動産で運用する投資信託)
など、幅広い投資対象があります。
一方で積立NISAは、長期・積立・分散投資が可能な投資信託に限定されています。
投資経験者の方なら、選択肢が多い一般的なNISAが、投資初心者なら、資産形成をメインに投資信託だけで運用する積立NISAがおすすめです。
一般的なNISAと積立NISA、ジュニアNISAの比較をまとめた表を参考に載せておきます。
ジュニアNISA | 一般NISA | つみたてNISA | |
対象者 | 日本に住む0~19歳の未成年 | 日本に住む20歳以上の成人 | 日本に住む20歳以上の成人 |
運用方法 | 通常買付・積立方式 | 通常買付・積立方式 | 積立方式 |
年間投資上限額 | 年間80万円 | 年間120万円 | 年間40万円 |
非課税となる期間 | 投資した年から最大5年 | 投資した年から最大5年 | 投資した年から最大20年 |
対象商品 | 国内株式・投資信託 | 国内株式・海外株式・投資信託 | 国が定めた基準を満たした投資信託 |
非課税対象 | 対象商品にかかる配当金・売却益等 | ||
口座開設期間 | 2023年開始分まで | 2023年開始分まで | 2037年開始分まで |
運用管理 | 原則として親権者等が 代理で運用する |
本人 | 本人 |
金融機関変更 | 不可 | 各年ごと可能 | 各年ごと可能 |
払出し制限 | 18歳まで払出し制限 ※3月31日時点で18歳である 年の前年12月31日 |
なし | なし |
出典:NISA(ニーサ):少額投資非課税制度|楽天証券
https://www.rakuten-sec.co.jp/nisa/junior/
個人型確定拠出年金との比較
次にNISAから離れて、同じく積立に使える個人型確定拠出年金と比較してみましょう。個人型確定拠出年金とは、自分で作る年金制度で、毎月一定の金額を積み立て運用しながら、60歳以降に年金や一時金として受け取ることができ、「iDeCo」と呼ばれています。資産を積み立て運用し形成するという点については、積立NISAと似ている制度です。
積立NISAはいくつになっても使える
積立NISAは日本に住んでいる20歳以上であれば、何歳であろうと使うことのできる制度です。一方個人型確定拠出年金は、原則日本に住んでいる20歳以上60歳未満でなければ使うことができません。
個人型確定拠出年金には所得控除がある
積立NISAは投資から得られる分配金や譲渡益が非課税になる制度です。個人型確定拠出年金は、積み立てた掛金が全額所得控除となります。そのため、所得税と住民税の節税になります。また、運用益についても非課税になります。
個人型確定拠出年金の投資上限額は人によって異なる
積立NISAは投資できる上限は、誰でも年間40万円までです。しかし、個人型確定拠出年金では、年金の種別、企業年金の加入状況によって投資上限額が異なり、以下のようになります。
・第1号被保険者(自営業者など):月額68,000円、年額816,000円
・第2号被保険者(会社員):月額23,000円、年額276,000円(会社に企業年金がない場合)
その他、企業型確定拠出年金のみ加入、厚生年金・確定給付企業年金に加入など、条件によって金額が変わります。
・第2号被保険者(公務員など):月額12,000円、年額144,000円
・第3号被保険者(専業主婦・主夫など):月額23,000円、年額276,000円
出典:iDeCoの概要|厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/kyoshutsu/ideco.html
投資対象の選択肢は両者とも多くない
積立NISAが投資信託に限定されているように、個人型確定拠出年金についても選択肢はあまり多くありません。投資対象は、元本の確保ができる預金や保険、投資信託となっていますので、株式や債券、ETFなどに投資することはできません。
積立NISAは途中で引き出せる
積立NISAは資金について途中で引き出すことが可能ですが、個人型確定拠出年金については、原則60歳まで引き出すことはできません。個人型確定拠出年金は老後資金専用、積立NISAはその他さまざまな目的で活用できるといわれています。
積立NISAは口座管理料が不要
NISA口座は基本的に口座管理料が不要ですが、個人型確定拠出年金は、金融機関によって違いはありますが、運用期間中の口座管理料等が必要です。
積立NISAを始めるための心得
それでは、実際に積立NISAを始めるときどういったことを心得ておけばよいでしょうか。
目先の利益にとらわれずに長期的視点でみることも必要
積立NISAnisaは投資運用する期間が長いため、利益が出て資産が増えているのか不安になりますが長期継続的に運用することは、リスクを軽減し、資産形成に繋がります。多少目減りし不安になることもあるかもしれませんが、すぐにやめずに継続することが大切です。
何のために投資するのか決めておく
積立NISAは長期間投資しなければ効果が見えにくいので、途中で諦めてしまうこともあるかもしれません。そのようなときは、自分が何のために投資しているのか目標を決めておきましょう。「老後の旅行のため」「孫への資金援助」「友人との習い事」など自分の生活がプラスになる目標があればなんでもかまいません。こういった目標は継続投資を諦めないためのストッパーになります。
長い時間をかけて少しずつ資産形成したい人におすすめ
NISAを選択するのは長期間リスク軽減をして少しずつ資産形成をするのにおすすめです。
まとめ
「積立NISAとは?主な特徴と他制度との比較」いかがだったでしょうか。NISAという制度はいくつかの種類がありました。その中でも今回は長期・積立・分散投資を行うことで資産形成ができる「積立NISA」について紹介しました。積立NISAは長期間利益に税金がかからないことや投資に伴うリスクを軽減できるしくみであり、今後の資産形成の助けになってくれる制度です。同じく資産形成を行うことができる制度も一緒に比較して紹介しましたが、1つ1つ特徴が違いますので今回の内容を参考に自分が関わりやすい制度を見つけてみてください。
監修者:大間 武(ファイナンシャルプランナー)