【FP監修】あまり知られていない投資銀行の実態

「投資銀行」という言葉を聞いたことはありますか?あまり聞きなれない言葉ですよね。外資系企業ですと、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー(三菱UFJモルガン・スタンレー証券とモルガン・スタンレーMUFJ証券の2社体制)、メリルリンチ日本証券などがよく知られています。しかし、投資銀行が行う業務というのは、みなさんが知っている身近な銀行でも事業の1つとして行っている会社もあります。今回はこの「投資銀行」というものについて内容を掘り下げて説明していきたいと思います。
投資銀行の特徴と仕事内容
「投資銀行」とは、日本の金融制度では「証券会社」に位置付けられます。位置づけからもわかりますが、行っている仕事というのは、銀行というイメージよりも証券会社というイメージのほうが近いかもしれません。
一般的な銀行ではない
投資銀行が行う業務というのは、投資という名前がありますが、投資する会社ではなく、銀行という名前がつきますが、一般的な預金や融資などのみなさんの想像する銀行業務なども行いません。また、個人に向けてのサービスも行わず、法人に向けた専門金融サービスを提供します。具体的にこれから説明します。
常に収益を求められるビジネスモデル
クライアント会社が新規事業を行うときなどに設備投資が必要になったとします。その際に、クライアント会社は資金が必要となります。しかし、その資金がなく、資金を作るためにどうしたらいいのかという課題に対して、投資銀行があります。投資銀行は、クライアント会社の証券を発行して、それをすべて買い取り、投資家に販売するという「引受業務」を行います。クライアント会社側は証券を発行することで資金を調達できます。
投資家は、リターン(利益)を追求できます。これを成り立たせるために投資銀行は高度な知識や技術などのノウハウが必要となります。投資銀行の部門は大きく営業部門と製造部門に分かれています。営業部門は、資金調達のプランをまとめた資料を作成し、提案書を持参します。この資料を作成するのに市場や企業の情報を収集、分析するなどするため、膨大な時間が必要になります。また製造部門はクライアント会社に合わせて価格を検討、設定します。契約後のファイナンスを実行したりもします。
幅広い金融サービスを提供している
「引受業務」を中心にしてきた投資銀行も、現在は業務の幅がだいぶ広がってきています。株式市場や債券市場での資金調達から、クライアント会社の株式公開の支援業務や企業の買収や合併および事業譲渡などのコンサルティング業務など様々です。クライアント会社にとっていろんな場面で相談できるアドバイザー的位置づけに変化してきています。
特定の分野に特化した会社もある
様々な業務を対応するようになってきた中で、近年では、ある分野に特化した事業を展開してきている「投資銀行」もあります。特に日本ではM&Aが活発になっていますが、そのM&A市場に注目して、その分野に特化した「投資銀行」が増えてきています。
日本の投資銀行の分類
日本の投資銀行または投資銀行の業務を行っている会社を「証券系投資銀行」「銀行系投資銀行」「政府系投資銀行」「独立系投資銀行」と4つにわけて、代表例を下記に挙げてみました。
証券系投資銀行の代表例
大和証券、野村證券、みずほ証券、SMBC日興証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券
銀行系投資銀行の代表例
三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行
政府系投資銀行の代表例
日本政策投資銀行
独立系投資銀行の代表例
日本M&Aセンター、PwCアドバイザリー、GCA
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外国の主要投資銀行
投資銀行とは、アメリカで大口顧客を対象として株式や社債の引受業務やM&Aなどの仲介業務のコンサルティングなどを行って発展してきた銀行の業務です。そのため海外の投資銀行はどのようものなのかご紹介いたします。
銀証分離のアメリカ
Investment bank(投資銀行)という法律用語を作ったのはアメリカ政府となります。アメリカでは1933年にグラス・スティーガル法により投資銀行業務と日本の一般的な銀行業務である商業銀行業務の兼業を禁止しています。これを「銀証分離」といいます。投資銀行として有名なのは、日本でも有名な「ゴールドマン・サックス」「モルガン・スタンレー」「JPモルガン」などがあります。
出典:IRI M&A consulting
「投資銀行(Investment Bank)
http://www.iri-ma.co.jp/word/?p=56
出典:カブドットコム証券 「グラス・スティーガル法」
https://kabu.com/sp/glossary/1204852_3152.html
「investment banking」
https://kabu.com/sp/glossary/1204810_3152.html
三大銀行が中心のカナダ
カナダは投資銀行業務と商業銀行業務を統合して、総合的なサービスを提供している金融機関が多いです。長年、カナダでは「カナダ五大銀行」と言われていましたが、現在では、大きく収益を伸ばしている「RBCロイヤル銀行」、「TDカナダトラスト」「スコシア・バンク」の三大銀行になりつつあります。
ユニバーサルバンクが中心のヨーロッパ
ヨーロッパは「銀証分離」を規定する法律がないため、1つの会社で投資銀行業務と商業銀行業務を行っています。商業銀行や投資銀行や証券会社とは呼ばれずに「ユニバーサルバンク」と呼ばれることもあります。投資銀行業務の利益が会社の利益の大部分を占めている会社が増えてきています。
投資銀行の職場環境
外資系の金融企業は仕事が忙しいといわれていますが、その中でも投資銀行部門は群を抜いて激務と言われております。実際のところ現状はどのような職場環境なのかご紹介します。
人事制度
新卒より、経験を活かせる中途のほうが採用されやすい印象がありますが、実際はその時期の市場環境次第になります。就職氷河期のような時代はほとんど新卒を取らなかったこともありました。ただ、新卒採用を止めてしまうとその世代の人がいないわけですから将来困ってしまいます。それを考慮するとある程度は必要になるということになります。
また、中途採用については、今までの経験をどのように活かすことができるかがポイントです。投資銀行業務とのマッチングができれば有望となります。新卒の方が、中途の方がというのはあまり関係ないことになります。
出典:「投信銀行/戦略コンサルは、新卒より中途のほうが入りやすいのでしょうか?」STRONG CAREER
https://strong-career.com/239/
給与体系
正確な給与体系はオープンにはもちろんなっていませんが、激務と言われている業界なだけに30代で年収1,000万円以上クラスになるといわれています。外資系の場合はもっと高額になります。ただ、長期でこの忙しさに耐えながら高収入を得ることができるかとなりますとほとんどの方が体力的にも厳しくなってきます。そのため若いうちに老後資金まで蓄えている方も多いです。
出典:投資銀行業務の年収まとめ 転職会議
https://jobtalk.jp/salary_matome/jobs/245
※外資系はいろいろなサイトから高額と判断
出典:外資就活
https://gaishishukatsu.com/archives/35394
出典:外資系投資銀行への道標
http://www.highclass-jobchange.com/entry/16/12/02
若手の間は激務?
空いてる時間があれば勉強するため、必然的に寝る時間はほとんどないと言われています。寝れるのは、移動で歩いているときと、トイレのとき、という冗談もあるくらいです。もちろん案件の数にもよりますので案件が終わった時など落ち着いているときもあるでしょう。あとは、仕事が忙しいのであれば、できないものはできないと周りの人、先輩に相談する、もしくは頼るという判断も重要になってくるかと思います。何も言われなければ、やってもらえると相手側も勘違いしてしまいます。仕事を受けた時点の判断も重要な評価になるかと思います。
以前よりも働きやすくなっている
リーマンショック以降の市場の悪化、またSNSなどの発達により徐々に環境は改善されているといわれています。SNSによって職場環境が広まり、就職希望者への影響、労働基準監督署の指導などがあるためです。まだまだこの流れは続くでしょうから、少しずつですが改善はされていくことが考えられます。
投資銀行に向いている人とは?
投資銀行には、学部は専攻の差はないと言われております。それよりも、世の中の動きや経済の動きなどに常にアンテナを張っていて、動きを捉える心構えが重要です。また根本的な素質としては必要なものをいくつかご説明します。
弱音を口にしない前向きな人
投資銀行で行われている業務というのは、世の中やクライアント会社の調査、分析、成果物の作成を大量に行います。日々課題と直面しての作業になりながらもクライアント会社に対してベストなサービスの提案をし続けなければなりません。感情的になったり、弱音を吐いていたら、冷静な分析・判断ができなくなります。それでは、ベストな結果を生み出すことはできません。そのためにも精神面での成熟さが必要となります。
協調性のある人
クラアント会社の担当の方は、大企業の経営のキーマンであることが多いでしょう。そのため、年上の担当の方と接する機会が多くあります。礼儀をもったうえでの柔軟なコミュニケーション能力が必要となります。また、難しいことに立ち向かっていく根性も必要になります。忙しい中でも自分を磨く姿勢やアグレッシブさも大切ですが、チームワークも非常に重要です。一人ではどうにもならない部分が多々ある中で、少数精鋭により最大の成果を出すにはチームワークは必須の条件となってきます。アグレッシブさと協調性を持ち合わせる必要があるということでしょう。
数字が得意で論理的な理系の人
投資銀行の業務では日常的に数字を扱います。数字で会話するといってもいいくらいです。そのため数字への正確性から数学的に物事を判断するセンスは必要になってきます。難しい計算や公式などを覚えておいて使ったりするというわけではありません。
まとめ
「投資銀行」という言葉は聞きなれないかもしれませんが、少しは「投資銀行」というものを理解していただけましたでしょうか?金融の業界(世界)の中でも、かなりプロフェッショナルなスキルが必要となる分野になります。金融業界で上を目指していきたい方には注目しておくべき分野になるかと思います。
監修者:高橋 政実(ファイナンシャルプランナー)