【FP監修】初めての投資に少額投資非課税制度を利用するには?

初めて投資をしようと調べてると、少額投資非課税制度(NISA)という言葉が出てきたことはありませんか。投資の利益に税金がかからない、積立することができる、子どもでも使えるなどなど、NISAについての説明は様々です。結局どういう制度で、使うにはどうすればいいか、いまいちわからなくなることもありますよね。そこで今回は、初めての投資で少額投資非課税制度(NISA)を利用するために知っておきたいことと、実際にNISAを利用する方法のキホンをご紹介します。
少額投資非課税制度とは?
そもそも少額投資非課税制度(NISA)とはどういう制度なのでしょうか。
NISAのはじまり
NISAがスタートしたのは、2014年1月からです。少額からの投資を行うための非課税制度として作られました。NISA口座という非課税口座を利用した投資で得られる利益について、税金がかからなくなる制度です。
NISAという呼び名の由来
NISAという呼び名は、もともとイギリスが発祥です。イギリス国内に住む人に対する少額投資の優遇制度である個人貯蓄口座が由来になっています。この個人貯蓄口座は Individual Savings Account(通称:ISA)と呼ばれ、ISAをモデルにした日本版の個人貯蓄口座= Nippon Individual Savings Account=NISAという愛称になりました。
NISAは誰でも使えるの?
NISAは日本に住んでいる人であれば、誰でも利用することができます。また年齢によって、20歳以上が利用できる一般的なNISA・つみたてNSIA、0歳から19歳までの方が利用できるジュニアNISAがあります。
NISAの種類は3種類!
それでは次にNISAの種類を見ていきましょう。NISAは利用目的によって3つの種類があります。
一般NISAとは
まず、一般的なNISAです。
利用できる年齢:20歳以上
非課税対象:株式・投資信託などから得られる配当金や分配金、譲渡益
※
・配当金とは
株主が企業から利益の分配として受け取れるお金のこと
・分配金とは
投資信託の運用で得られた収益を決算ごとに投資家に分配するお金のこと
・譲渡益とは
手持ちの株などを売ったときに発生する利益のこと
非課税投資枠:毎年120万円まで
非課税期間:最長5年間
投資可能期間:2014年から2023年まで
一般的なNISAは、毎年120万円まで商品に投資することができます。また、投資期間は最長5年間ですので、120万円×5年=600万円までの投資で得られる利益が非課税になる制度です。
つみたてNISAとは
つみたてNISAは、2018年からスタートした長期・積立・分散投資を支援するために作られた制度です。
利用できる年齢:20歳以上
非課税対象:一定の投資信託から得られる分配金や譲渡金
非課税投資枠:毎年40万円まで
非課税期間:最長20年間
投資可能期間:2018年から2037年まで
つみたてNISAは長期的にコツコツ資産形成をしたい方におすすめなNISAです。一般的なNISAと比べ、1年間の投資可能額は少ないですが、最長20年利用すると、40万円×20年=800万円までの投資で得られる利益が非課税になります。
また、投資できる金融商品も長期・積立・分散を考慮し、国が定めた基準を満たした投資信託になっていますので、運用方法を悩むことが少ないです。
ジュニアNISA
ジュニアNISAは、2016年から始まった未成年者を対象にしたNISAです。
利用できる年齢:0歳から19歳まで
非課税対象:株式・投資信託などから得られる配当金や分配金、譲渡益
非課税投資枠:毎年80万円まで
非課税期間:最長5年間
投資可能期間:2016年から2023年まで
主に親や祖父母が子供の教育資金や就職までの準備金を貯めるために使ったり、子どもの金融や投資への知識や理解を深める「金融リテラシー」を身につけるために利用されています。運用管理については、一般的に口座開設者である未成年の両親・祖父母などの親族が行います。
出典:NISAとは|金融庁
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/index.html
NISAのメリットはどのようなもの?
利益が非課税にできるNISAについて今度はメリットをまとめてみましょう。
非課税という特典
NISAの最大のメリットは投資した利益が非課税になるということです。例えば、一般口座で投資した場合、利益について20.315%が課税されることになります。
1株300円の株を120万円分(4,000株)買った場合に、1株につき年に10円配当があったとすると、
10円×4,000株=40,000円
40,000円×20.315%=8,126円が課税されることになります。ですが、NISA口座ですとこの配当に課税されることがなくなります。
・非課税の対象になるもの
それでは、非課税になるものについて見ていきましょう。
一般的なNISAとジュニアNISAの対象になる商品は以下のようになります。
NISAで投資できる商品
・国内外の上場株式
・公募株式投資信託
・国内外ETF
※ETFとは、特定の指数(日経平均株価など)の動きに連動する運用を目指す投資信託です。
・国内外のREIT
※REITとは、不動産で運用する投資信託で、国内のREITは、J(Japan)-REITと呼ばれています。
以下の表でも取引できる金融商品を確認できますので、参考にしてみてください。
出典:NISAの基礎知識|金融庁
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa/knowledge/index.html
つみたてNISAは他のNISAに比べて投資対象の選択肢が少なく、国が定めた基準を満たした投資信託になっています。
例えば、公募株式投資信託であれば、
・販売手数料がいらない(ノーロードと呼ばれています)
・分配頻度が毎月ではない
・信託報酬が一定の水準よりも低い
など一定の基準を満たすことが要件となっています。
・非課税期間
3つのNISAについて非課税期間を取り出してみましょう。
一般的なNISA:最長5年間
つみたてNISA:最長20年間
ジュニアNISA:最長5年間
・非課税投資枠
年間非課税投資枠と最長非課税期間までの最大非課税投資枠は以下のようになります。
一般的なNISA:年間120万円・最大非課税枠600万円
つみたてNISA:年間40万円・最大非課税枠800万円
ジュニアNISA:年間80万円・最大非課税枠400万円
自分に合ったNISAの使い方
以上のように3つのNISAには違いがあります。
この特徴をふまえて、自分に合ったNISAを選びましょう。
例えば、口座の使い方に注目してみると、
・値上がり重視で
一般的なNISAで、様々な商品の特徴を見ながら、値上がり益が期待できる株式や積極的な運用を行っている投資信託で運用する。
・一定額ずつ
つみたてNISAで、将来の資産形成をメインに毎月一定額貯めながら、運用する。といった方法などがあります。
知っておきたいNISAのデメリット
それではNISAを使うにあたって、知っておきたいデメリットもご紹介しておきます。
非課税の対象外となる場合がある
商品によっては利益が非課税の対象にならない商品もあります。
まず、金融機関でご自身が使うNISAで非課税になる商品は何が当てはまるのかしっかりと理解しておきましょう。
非課税期間が決まっている
NISAの利益が非課税になる期間は決まっています。無期限で使えるわけではないので計画的に利用することが必要です。
非課税投資枠は一度しか使えない
非課税投資枠は1度しか使えません。例えば120万円の非課税投資枠のうち100万円で商品を購入し、その年に100万円分全て売却したとしても、非課税投資枠はもとには戻らず、その年は残り20万円分の投資しか非課税になりません。
損益通算ができない
損益通算とは、1月から12月までに行われた取引で損失が出た場合には、他の利益が出た取引の金額から差し引いて、最終的に利益があれば課税されるしくみです。
例えば、A取引で100万円利益があり、B取引で30万円損失が出たとします。
この場合、損益通算を行うと100万円-30万円=70万円となり、利益の70万円に対して課税となります。
しかし、NISA口座で発生した損失は税務上ないものと見なされ、NISA口座内、また、他の特定口座や一般口座で発生した利益とは損益通算することができなくなっています。
繰越控除ができない
繰越控除とは、その年の株式投資の取引が損失だった場合に、確定申告することで、その年以降3年間は、株式投資で得られた利益から損失分を減らすことができるしくみです。
しかし、NISAはそもそも利益が非課税になっています。ですので、もし損益がでても繰越控除の適用はありません。
非課税期間を過ぎたら口座変更が必要
非課税期間が過ぎたとき、口座に金融商品があり今後も保有していくには、翌年の非課税口座に移すかそれとも特定口座・一般口座に移すかを検討しなくてはなりません。
相続が発生すると税金がかかるようになる
もしNISA口座を持っていた人が亡くなった場合、その商品を他の人が持っているNISA口座に移すことはできません。課税対象となる特定口座や一般口座に移す必要があります。
NISAを実際利用して投資する
それでは最後に、メリット・デメリットをふまえて、実際にNISAを利用する場合の方法をご紹介します。
NISA口座を開設する
NISAを利用するためには、まず、銀行や証券会社などでNISA口座を開設する必要があります。
金融機関の選び方
実際にNISAを利用できる金融機関か、どのような金融商品を扱っているか、手数料はかかるのか、細かなケアをしてくれるのかは金融機関によって異なります。いくつかの機関の説明を聞いて、ご自身が関わりやすい機関で口座を作りましょう。
金融商品を選ぶポイント
・株へ投資する
まずは身近な株式から選ぶのはいかがでしょうか。ご自身にとって身近であれば、どういった会社なのか、どういう商品を扱っているかなどに興味もわきやすいです。
またNISAは期間限定の非課税制度ですので、その中でも、安定して高い配当金が期待できる成熟した企業や期間内で値上がりが見込めそうな株など急激な変動が起こりにくい商品がおすすめです。
・投信へ投資する
投資の専門家であるファンドマネージャーに運用を任せる投資信託ですが、NISAでの運用を考えると以下の2つがおすすめです。
・リスクを抑えてバランス型の投資信託
バランス型は株や債券など複数の商品に投資する投資信託です。複数の商品に投資するので投資した金額よりも値下がらないリスクを低減した運用をすることができます。
・値上がり益重視のアクティブ型の投資信託
アクティブ運用は市場の平均を上回って運用することを目的とした投資信託です。積極的に利益を得ることができますが、ファンドマネージャーの腕が重要であったり、手数料が他の運用型に比べ高いこともあることを覚えておきましょう。
自分に合った投資スタイルは
・利益追求投資への活用
利益追求投資を行うのでしたら、一般的なNISAがおすすめです。短期間で、値上がり益がでそうな、国内成長株や新興国株式やアクティブ運用の投資信託と組み合わせることもできます。ご自身で金融商品や経済状況を研究できる方に向いています。
・長期投資への活用
長期投資を活用したい方は、つみたてNISAがおすすめです。少額からつみたてすることができ、リスクを最小限にするしくみになっています。投資信託ですので、投資の専門家であるファンドマネージャーが運用してくれる点は初心者でもスタートしやすいポイントです。
まとめ
「初めての投資に少額投資非課税制度を利用するには?」、いかがだったでしょうか。今回は初めてNISAを利用するときのポイントをご紹介しました。投資した利益が非課税になるNISAは、非課税の特徴を活かしつつ、ご自身のスタイルにあった方法を選ぶことができます。まずは少額から投資をスタートしようかなと考えているのでしたら、ぜひNISA口座から始めてみてはいかがでしょうか。
監修者:杉浦 詔子(ファイナンシャルプランナー)