【株式投資入門】投資のためにチェックしておきたい3つの経済指標

経済指標には様々な種類がありますが、今回は「景気」を判断するための代表的な指標(GDP、景気動向指数、日銀短観)をご案内します。景気は、金利や為替・株価動向に大きな影響を与えます。投資を行う際は、まず日本全体の景気を把握することが大切です。それでは、そもそも景気とは何なのかを解説していきます。
目次
景気とは
景気とは、経済活動全般の動向を表しています。つまり、事業(ビジネス)がうまくいっているかどうかということです。日本全体で事業がうまくいっている状態が「好景気」、うまくいっていない状態が「不景気」です。
景気とマーケットの関係
景気は、マーケット(金利や為替、株式)と深い関係があります。ですから、投資家としてマーケットに影響を与える「経済指標」に関する知識を十分に備えておくことが大切です。
まずは、景気とマーケットの関係を見ていきましょう。
景気と金利の関係
景気が良くなると、企業の設備投資が活発化し、資金需要が増加するので金利は上昇。景気が悪化すると、資金需要が減少するので金利は低下します。
一般的に、次のようなサイクルとなります。
景気回復→金利上昇→景気低下→金利低下→景気回復
景気と為替の関係
為替の変動要因には、様々なファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が影響を及ぼしますが、景気と金利の関係から為替の変動要因を見てみましょう。
内外金利差
一般的に、お金は金利が高い方に流れる傾向があります。日米間の為替レートで考えた場合、米国が金利を引き上げると日本から米国にお金が流れ、米ドル高・円安傾向になります。逆に日本の金利が上昇すると、円高・米ドル安になります。つまり、以下のような流れになります。
米国の景気回復→米国の金利上昇→(米ドルの人気が上がり、円が売られてドルが買われ)米ドル高・円安
日本の景気回復→日本の金利上昇→(円の人気が上がり、米ドルが売られて円が買われ)円高・米ドル安
このように為替レートは、2国間の景気・金利状況を分析する必要があります。
景気と株価の関係
景気が回復すると株価は上昇する傾向にあります。また、景気が後退すると株価は下落する傾向にあります。ただ、「株価は景気に先行して動く」といわれ、一般的に株価は実際の景気より、半年程度先行して動く傾向にあります。
後ほどご案内する景気動向指数でも、景気の先行指数として「TOPIX(東証株価指数)」が採用されています。実際の株式投資においては、足元の景気を確認しながら将来の株価を予想して投資を行うことになります。これが株式投資の難しさでもあり、面白さでもあるのです。
景気の状況を判断する客観的な指標が「経済指標」です。それでは、景気を判断するために代表的な経済指標を見ていきましょう。
景気判断のための経済指標
景気判断のための代表的な経済指標は以下の3つです。
- GDP
- 景気動向指数
- 日銀短観
それぞれ、詳しく解説します。
GDPは最も重要な経済指標
GDPは”Gross Domestic Product”の略で、「国内総生産」と呼ばれます。一定期間にある国における経済活動により生み出された付加価値の合計のことで、その国の経済規模を表しています。
付加価値とは、商品やサービスの総生産額から、それらを生産するためにかかった費用で、要するに「儲け」や「利益」のことです。ある商品を1,000円で仕入れて1,500円で売却した場合、利益は500円になります。この500円が「付加価値」となります。
つまり、GDPとは日本国内で、どの程度「儲け」や「利益」がでているのかを判断する経済指標なのです。GDPが昨年と比べて大きくなれば、「景気が回復している」と判断できます。
GDPには「名目GDP」と「実質GDP」の2種類あります。名目GDPとは、その時の生産数量に市場価格を掛けて、すべて合計したものです。名目GDPから物価変動の要因を取り除いたものを実質GDPといいます。
GDPは経済規模を表しているので、各国の比較ができます。IMFの調査による2017年の名目GDPの順位は以下のようになっています。(単位:百万USドル)
1位 米国 19,485,400
2位 中国 12,014,610
3位 日本 4,873,202
4位 ドイツ 3,700,613
5位 イギリス 2,628,410
日本は長らく世界2位でしたが、2010年に中国に抜かれ、現在では2倍以上の差となっています。米国は日本の4倍近くのGDPで、世界でも圧倒的な経済規模を誇っていることがわかります。
GDPによる経済成長率を見るには?
GDPは内閣府より3ヶ月(四半期)ごとに発表されています。前期や前年比に対する経済成長率を確認することができます。これにより景気が拡大しているのかを判断します。以下は2018年11月に公表された2018年7-9月期速報値です。
出典:内閣府
景気動向指数で経済の基調を判断する
景気動向指数は、景気全体の動向を知るために、29の景気指標を使って算出します(2018年11月現在)。景気動向指数には、「DI(ディフュージョン・インデックス)」と「CI(コンポジット・インデックス)」の2種類があります。それぞれ見ていきましょう。
DIは景気の方向性を見る指標
景気の変化方法(上向き・下向き)を示す指標で、3ヶ月前と比べて改善している指標の割合を示します。景気拡大期では50%を上回り、景気後退期では50%を下回ります。
DIは景気の方向性を見る指標で、変動の大きさを示すものではありません。また、月ごとの振れがあるため、一般的には3ヶ月連続で50%の上下にあるかどうかで判断されます。
CIは景気の変化の大きさを見る
DIでは景気の方向性を判断できますが、どの程度の勢いがあるのか分かりません。その点をカバーしているのがCIで、景気変動の強弱を把握するのに適しています。
景気動向指数は月次指標で、内閣府より翌々月の上旬に速報値、中旬に改訂値が公表されます。2008年4月以降、CIを中心とした公表形態になっています。
DI・CIの代表的指数
DI・CIは共通の3つの指数を採用しています。
①先行指数(景気よりも先に動く指標)
● TOPIX(東証株価指数)
● 実質機械受注
②一致指数(景気と一致して動く指標)
● 有効求人倍率
● 鉱工業生産指数
など9指標に基づき算出されます。
③遅行指数(景気に遅れて動く指標)
● 完全失業率
● 家計消費支出
など9指標に基づき算出されます。
景気を見るには、「一致指数」が最も重要な指数です。
CI一致指数の推移を見てみましょう(下図)。
出典:内閣府
2018年9月の基調判断は、「足踏み」となりました。基調判断の定義と基準は以下のようになっています。
出典:内閣府
このように、CI一致指数の推移により、景気が拡大しているのか、後退しているのかを判断することができます。
日銀短観は市場の注目度が最も高い指標
日銀短観は、「全国企業短期経済観測調査」が正式名称です。日本銀行(日銀)が金融政策を行う際の重要な判断材料の一つとして利用され、 海外にも「TANKAN」として知られています。株式市場や為替市場で最も注目される経済指標の一つです。
調査時期は3・6・9・12月の3か月ごとで、それぞれの調査結果が4・7・10・12月に日銀より公表されています。
製造業・非製造業など業種別・規模別に分けた約1万社の企業経営者に、経営環境などについてアンケートします 。業況については、「良い」「さほど良くない」「悪い」の三つで回答します。
短観の中でも特に注目されているのが業況判断 DI(Diffusion Index)です。計算方法は以下のようになります。
業況判断DI =「良いと回答した割合」―「悪いと回答した割合」
マーケットの注目度が高いのは、「大企業製造業の業況判断DI」です。以下の図をご覧ください。製造業業況判断DIの推移を示しています。
出典:日本銀行
紫のシャドー部分は、景気後退期を表しています。製造業の業況判断 DI のピークとボトムが景気の山・谷とほぼ一致しているのが分かります。
まとめ
今回は、景気とマーケット(金利・為替・株式)の関係を解説し、景気を判断するのに役立つ以下の3つの経済指標を見てきました。
● GDP
● 景気動向指数
● 日銀短観
経済指標は他にもありますが、まずは代表的なこの3つを把握するようにして下さい。景気動向は、マーケットと深く関係しています。投資する際は、経済指標に関する知識を十分に備えておくようにしましょう。
記事執筆 山下 耕太郎