今お持ちの資産を有効に活用して、不労所得を得たいとお考えの方は多いのではないかと思います。不動産投資を行えば節税もできると言われますが、節税を目的として不動産投資を行うと失敗するとも言われます。

 

それでは、どのような仕組みで節税となり、どのようにしたら節税が可能なのでしょうか。この記事では、節税ができる税金の種類と節税の効果について解説いたします。

不動産投資における節税の仕組み

不動産投資で節税できるのは、所得税および住民税、相続税であると言われますが、まず節税の仕組みについて解説をいたします。

節税できる税金は「所得税」と「相続税」

◎所得税

所得を得た場合には、所得税を支払う義務が生じますが、不動産所得を得た時も同様です。不動産所得は、家賃等の収入から必要経費を引いて算出しますが、不動産所得が赤字である場合には、ほかの所得と合計して計算を行います。

これを損益通算と呼び、不動産投資の必要経費が大きくて不動産所得が赤字になると 、トータルの所得税を節税できます。特に初年度は、登記費用や不動産取得税、司法書士への報酬等の経費がかかりますので、節税効果が大きいと言えます。なお、これは所得税だけではなく、住民税にも適用できます。

◎相続税

相続税を納める場合、現金は金額がそのまま評価されますが、不動産は実勢価格よりも評価が低くなりますので、税金を抑えることが可能です。

例えば、土地を評価する場合には、路線価方式と倍率方式があります。路線価が定められている道路に面している土地を評価する場合には、路線価方式になりますが、その評価価格は実勢価格の70~80%程度 なので、評価を下げることができます。

路線価が定められていない地域の場合、倍率方式になります。倍率方式では、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて算出しますが、こちらも実勢価格の70%前後となっていますので、評価を下げることができます。

またお持ちの土地に、家屋を建築して貸している場合には、さらに低く評価されますので、相続税を抑えるには効果があります。建物については、固定資産税評価額と同じであり、建築費用の5070%程度で評価されますので、相続税対策として効果があると言えます。

不動産投資で節税するためのポイント2つ

不動産所得は「総合課税」になるから

不動産所得は、総合課税の対象となるので、給与所得などの金額と合計して総所得金額を算出します。不動産に対してかかる固定資産税や管理費・保険料・減価償却費・修繕費などは必要経費になり、トータルの所得額から控除することができます。

帳簿上でマイナスになれば所得税は0円

必要経費が大きくなり、収支がマイナスになれば所得税を納める義務はなくなります。特に減価償却費は帳簿上の経費であり、実際にはお金がかからない経費です。これを所得から差し引くこと により、所得税や住民税を抑えることが可能になります。

節税目的は危険!不動産投資の4つのリスク

比較的安全と言われる不動産投資ですが、投資である以上リスクはつきものです。あらかじめ起こりうるリスクを想定して、対処策を講じておくことが望まれます。

①家賃下落のリスク 

新築の時には高い賃料を得ていた物件も、建物が古くなると家賃が下落していきます。一般的には、築10年では10%前後、築20年では20%前後価格が下落することもあります。加えて、日本の経済状況や物件がある地域の人気の低下などによっても、価格は下落することもあります 。

また古くなった住宅は、住みにくくなるため空室も多くなります。空室リスクに対処するためには、リノベーションやリフォームをしたり、設備を新しくしたりするなどの手だてを行う必要があります。

②サブリース契約の落とし穴

サブリース契約とは、管理会社が物件を一括で借り上げ、入居者に転貸し、オーナーは家賃保証を受けることができます。

 

しかし、当初決めた家賃保証額が永遠に続くわけではなく、数年に一度見直しを要望されます。建物が古くなるに従って、管理会社から賃料値下げの要求もあり、当初決めた家賃保証額は下落していきます。

③すぐに売却できない可能性が高い

株やFXなどは、売りたいときにすぐに売却することができます。しかし不動産は流動性が低く、売りたいときには売れないリスクがあります。

④不動産会社は物件を必ずしも買取してくれない

物件を売却しようとする際には、市場に出して買主を探す方法と、不動産会社に直接買い取ってもらう方法があります。不動産会社に買い取りを依頼しても、足元を見て買い叩かれるような場合もあります。

 

不動産投資を始めた時点で、物件を売却する際の出口戦略の時期や方法についても考えておくようにしましょう。

節税目的ではじめた不動産投資の落とし穴とは?

節税目的で不動産投資を始めた場合には、思わぬ落とし穴に落ちるリスクもあります。不動産投資の目的は、収益を得ることであるということを忘れないようにしましょう。

赤字経営によるクレジットの悪化

節税目的で不動産経営を赤字にしておくと、金融機関からの評価は低くなってしまいます。新たに2件目の借り入れを申し込む場合に、金融機関から融資を受けられなくなることもあります。

 

物価下落リスクによる資産価値の減少

経済が右肩上がりで上昇しているときは良いですが、経済が低迷すると物価は下落します。物価が下落するような局面では、せっかく高いお金を使って購入した不動産の価値も減少してしまいます。

黒字経営=増税

所得税は総合課税であり、ほかの所得と損益通算をすることにより節税することが可能です。しかし不動産投資で黒字経営が続くと、節税にはつながりません。

不動産投資の節税に欠かせない経費について

不動産所得は、「不動産収入ー必要経費」の式で表せますので、経費が増えれば所得金額を抑えることができます。それでは不動産投資を行う上で、経費として計上できるものにはどんなものがあるのでしょうか。

不動産投資で経費計上できるもの

不動産投資を行う上で、経費に計上できる項目としては次のようなものがあります。

1.税金

固定資産税、都市計画税、不動産取得税、印紙税

 

2.保険料

火災保険、地震保険

 

3.管理料

不動産会社に支払う管理料

 

4.司法書士や税理士への報酬

不動産登記をする際の司法書士への報酬、確定申告をする際の税理士への報酬

 

5.減価償却費

物件購入に要した費用を、耐用年数で割ったものを経費として計上できます。耐用年数は木造住宅の場合には22年、鉄骨造りは34年、鉄筋コンクリートは47年と決まっています。

 

6.修繕費

建物は年数を経ると共に老朽化しますので、リフォームなどのための費用を修繕費として計上できます。修繕積立金も経費にすることが可能です。

 

7.ローン金利など

金融機関から借り入れをした場合には金利がかかりますが、金利は経費として計上できます。またローン手数料も経費にできます。

 

8.その他

不動産についての書籍代金や物件を見に行った場合の交通費、手土産代なども経費にできます。

不動産投資で経費計上できないもの

借入金の元本部分や所得税、住民税など は経費にすることはできません。

不動産投資で「法人化」すると節税できる場合もある

不動産投資事業を法人化し、家族を役員にすれば、発生した利益を役員報酬として支払うことが可能です。所得を分散することにより、税金を低く抑えることができますので、節税につながります。

不動産投資で節税するために押さえておきたいこと

不動産投資は、上手に運営できれば収入を得ながら所得税や相続税などを節税できます。それでは節税するために、押さえておきたい事項について解説をいたします。

キャッシュフローのシミュレーションを行う

不動産投資を全額自己資金で賄う方は稀で、一般的には金融機関から融資を受けて行います。

不動産投資におけるキャッシュフローとは、不動産経営を行って得られる収入から支払うべき支出を差し引いて手元に残る金額を言います。

キャッシュフローをきちんと把握しておかないと、金融機関への返済などが不能になることも起こり得ます。不動産投資におけるキャッシュフローは下記の式で表されます。

キャッシュフロー=家賃等収入-支出(借入金返済+経費)

なお経費の中には、管理費や修繕費用・保険・税金など が含まれます。建物は、年月を経ると古くなり家賃は下げざるを得ないこともあるでしょうし、修繕が必要になる場合や空室が発生することもあるでしょう。

不動産投資では、考えられるリスクをすべて経費に計上しシミュレーションをすることで、安全な投資が可能になります。

所得税の計算方法

所得税は総合課税であり、給与所得などの所得が別にある場合には、それらを合算した額に対して所得税率をかけて計算します。はじめに不動産所得を計算し、それにそのほかの所得をプラスし、各種控除額を引いたものに税率をかけて算出します。

不動産所得=家賃等収入-必要経費

所得税={(不動産所得+給与所得等)-各種所得控除額 }×税率

なお所得税は超過累進税率であり、所得が増えれば税率も高くなります。

所得税の速算表

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

【出典】国税庁:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

 

住民税の計算方法

住民税は、自分が住んでいる地方自治体に支払う税金であり、所得税額が決まれば自治体により計算される仕組みとなっています。そのため住民税は前年の所得によって決まる前年度課税であり、所得を得た翌年に支払うことになります。

なお、税率は都道府県民税4%、市区町村民税は6%で合計10%となっています。またこれに、所得にかかわらす課税される均等割が加わります 。

個人は青色申告を活用する

不動産投資を行っている方は、毎年確定申告をする必要があります。その際に青色申告で確定申告をすれば、最高65万円の特別控除を受けることができます。なお、条件を満たさなければ、白色申告となり、控除額は10万円ですので大きな差となります。

「事業的規模」が適用される物件を選ぶ

青色申告が適用されるには、不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいることが条件です。

事業としているか否かの判定は、貸間やアパートなどについては室数がおおむね10室以上であること、及び独立家屋についてはおおむね5棟以上であることが基準となっています。青色申告の特権を得るためには、事業規模まで拡大する必要があります 。

最後に

不動産投資の目的は、安定した収益を得て資産を形成することです。節税を主目的にすると、思わぬ落とし穴にはまってしまうこともあり得ます。不動産投資のリスクをよく考慮して、間違いのない不動産投資をするようにしましょう。

 

監修者:青野 泰弘(ファイナンシャルプランナー)