【FP監修】確定拠出年金の制度を初心者にも分かりやすく解説

皆さんのなかには、確定拠出年金への加入を検討している、もしくは既に加入しているものの、確定拠出年金制度についてもっと理解を深めたいと考えていらっしゃる方もいるかと思います。
そこで今回は、確定拠出年金制度の概要やメリット・デメリットなどを、初心者にも分かりやすく解説していきます。
目次
現代の年金制度だけでは足りない
まず始めに、確定拠出年金制度の話に入る前に、現代の年金制度について少し触れます。
結論から言うと、現代の年金制度だけでは、豊かな老後生活を送るための資金として、年金額が足りない可能性があります。
公的年金や企業年金などの従来の年金制度
現在の日本では、国民皆年金のもと、基本的に全ての方が公的年金に加入しています。企業にお勤めの方の中には、厚生年金に加え、企業独自の年金制度である確定給付年金などに加入しているケースも多いでしょう。
なお、日本の年金制度を建物と見なして、高齢者が受け取る基礎年金である国民年金を一階部分とし、厚生年金を二階部分、確定給付年金や確定拠出年金などを三階部分とする三階建てのイメージで例えられることが多くあります。
確定給付年金(※)
確定給付年金とは、従業員が受け取る給付額が、あらかじめ決められている企業年金制度です。DBと呼ばれることもあり、現在、日本で最も普及している企業年金制度です(※)。運用は会社が責任を負い、万が一、運用パフォーマンスが悪かった場合には、企業が給付に必要な不足分を穴埋めする仕組みとなっています。
出典:労働金庫連合会
http://www.rokinren.com/kigyonenkin-support/outline/db.html
余裕のある老後を送るには月35万円も必要!
生命保険文化センターの生活保障に関する調査(2016年度)によれば、最低限の日常生活費とゆとりのための上乗せ額を合計した、ゆとりある老後生活費は、平均で34.9万円となっています(※)。
(※)出典:生命保険文化センター
http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/oldage/7.html
最近では、老後難民や年金破綻といったネガティブなワードが飛び交っています。急速な少子高齢化を背景として、保険料を負担する現役世代の減少による財源不足が加速する一方で、高齢化により年金を受け取る世代が増え、社会保障費が増加していることなどが、懸念の主な理由として挙げられます。
実際に、 2017年に厚生労働省より年金支給額を0.1%引き下げると発表がありました(※)。国民年金と厚生年金ともに受け取れる金額が減少することになります。
(※)出典:厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12502000-Nenkinkyoku-Nenkinka/0000149802.pdf
そのため、従来の年金制度だけでは、豊かな老後生活を送るには十分でないと危惧されているのが現在の日本社会です。
自分で年金運用することで、公的年金を補完する必要がある
そして、これまで年金に関しては、運用も含め国や企業に頼っていた従来の年金制度から、自分自身で責任を持って計画的な年金運用を行い、公的年金を補完していく必要性が出てきています。
確定拠出年金について
そこで制度の普及・活用が期待されているのが確定拠出年金です。ここからは、確定拠出年金制度について解説していきます。
確定拠出年金とは?
そもそも、確定拠出年金制度とは、豊かな老後生活を送るための年金制度のことです。運用は加入者本人が行い、積み立て資産の受給も基本的に本人が受け取る仕組みとなっています。
確定拠出年金の制度が始まった背景
この確定給付年金制度が始まった背景としては、先ほどご説明した通り、従来からの年金制度だけでは豊かな老後を送ることが難しくなっていることに加え、物価上昇に対する対応策の1つとしても考えられます。
現在は企業にとっても年金資産形成のための運用負担が大きく、多くの企業が運用代行を手放しています。一方で、たんす預金や銀行の普通預金などに預けておいても、十分な資産形成を図ることが難しいのが現状です。
将来、物価が上昇していく場面を想定した際に、老後資産を着実に形成していくために、自分自身で資産運用を行っていく必要が出てきており、その手段として確定拠出年金制度に注目が集まっています。
確定拠出年金には個人型と企業型がある
その確定拠出年金制度には、個人型と企業型の2つがあります。次の項目より、個人型と企業型の違いを踏まえ、制度概要を見ていきましょう。
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確定拠出年金の制度概要
ここから、確定拠出年金制度の概要を解説していきます。
加入者
企業型は、確定拠出年金制度を導入する企業に勤務している方が加入できるものです。一方の個人型には、勤務先が企業型確定拠出年金を導入していないサラリーマンや、自営業者、公務員、専業主婦(夫)などが加入できます。
また、確定拠出年金口座の維持費用や引落とし手数料なども自己負担となることから、一般的に企業型よりも個人型の方が加入者本人の負担は大きくなると言えるでしょう。
掛け金の拠出先
掛け金の拠出先に関しては、企業型は、勤務先企業が負担してくれますので、基本的に加入者である従業員が費用を負担することはありません。一方で個人型では、掛け金を自分自身で負担することになります。
拠出限度額
次に拠出限度額に関しては、企業型には2通りあり(※)、1つ目が確定拠出年金以外に、他の企業年金がある場合は、月額2万7,500円(規約で個人型への加入を認める場合は15,500円)が拠出限度額となります。
2つ目が、確定拠出年金以外に、他の企業年金がない場合は、月額5万5,000円(規約で個人型への加入を認める場合は3万5,000円)となっています。他の企業年金をもらえないため、企業型での拠出限度額が多く設定されています。
(※)出典:厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/taishousha.html
一方で個人型に関しては、自営業は月額6万8,000円、会社員(企業年金なし)は月額2万3,000円、会社員(確定給付型年金あり)は月額1万2,000円、会社員(企業型DCあり)は月額2万円、そして2017年1月から加入できるようになった公務員が月額1万2,000円、専業主婦(夫)は月額2万3,000円が拠出限度額となっています(※)。
(※)出典:国民年金基金連合会
https://www.ideco-koushiki.jp/guide/
運用者
運用者に関しては、企業型・個人型問わず、加入者本人が責任を負うことになります。
そして、企業型の場合、会社が契約する確定拠出年金業務をサポートする金融機関と相談し、運用できる商品ラインナップを決めます。一般的には、元本確保型の定期預金や積極的にリスクをとりにいく株式投資信託などをバランスよく品揃えしています。
そこで、自己責任のもと資産運用をすることになりますので、加入者個々人のリスク許容度や、どのくらいのリターンを望んでいるかによって、適切な金融商品を選択していくことになります。
もし、確定拠出年金によって資産を大きく増やしたい場合には、リスクをとって株式型の投資信託を多めに保有する必要があるでしょう。資産が大きく目減りすることだけは避けたいと考えるのであれば、元本確保型の定期預金や保険の比重を高める必要があると考えられます。
また、一度どの金融商品に投資するか決めた後に、全く運用状況を確認せず放置しておくのは良策とは言えません。経済状況や投資環境に応じて、保有資産を適宜調整していくことも、着実に資産形成を図るうえで大切なことと言えます。
離転職の際の取り扱い
更に、確定拠出年金にはポータビリティ性がありますので、企業型に加入していた方が、他社に転職した場合でも、転職先に確定拠出年金制度があれば、積み立て資産をそちらへ移すことも可能です。転職先に確定拠出年金制度がなければ、個人型へ移換することもできます。
逆に、個人型に加入していた方が、企業にお勤めになる際、その企業が企業型を導入していれば、そちらへ資産を移換することも可能です。
確定拠出年金のメリット
それではここからは、確定拠出年金のメリットをご紹介していきましょう。
自分で運用できる
まずは、自分自身で責任をもって運用を行うという貴重な経験を得ることができます。更に、確定拠出年金は、何十年にも及ぶ長期的な視点での運用となる中、運用商品である投資信託は、保有の際にかかる費用である信託報酬が低く抑えられています。
そのため、他の制度と比較して運用コストを抑えながら、投資経験を積んでいくことが可能です。そこで、特に投資初心者の方にとっては、確定拠出年金制度を通じて、リスクが抑えられた投資信託で資産運用を始めてみるという選択もできるでしょう。
運用が好調であれば年金額が増える
次に、確定拠出年金制度は元本が保証された制度ではありません。運用が好調であれば受け取れる年金額が増えます。
3つの税制優遇が受けられる
そして、確定拠出年金制度の大きなメリットとして、3つの税制優遇を受けられます。まず1つ目が、拠出した掛金は非課税(全額所得控除)となるため、所得税・住民税を節税することが可能です。
2つ目は、運用益も非課税となることです。通常は、定期預金につく利子や、投資信託の譲渡益などに20.315%の税金がかかりますが、確定拠出年金では、非課税となるため、本来税金として差し引かれていた分も含め運用にまわせることから、資産を大きく増やしていける可能性が高まります。
3つ目が、受取時の節税効果です。まず、これまで確定拠出年金で積み立てしてきた資産を受け取る際には、受取方法としては年金方式、一時金方式、もしくはその併用を選択することができます。
そして、5年以上20年以下の年金方式を選択した場合は、公的年金など控除の対象となり、一時金方式の場合は退職所得控除の対象となり、それぞれ節税することができます。
具体的には、年金方式で受け取る場合、公的年金などの合計収入が65歳未満だと70万円まで、65歳以上だと120万円までは非課税となります。一時金方式の場合の退職所得控除の計算方法は、以下の通りです(※)。
勤続年数(iDeCo[個人型確定拠出年金のこと]の積立期間)が20年以下 40万円 × 勤続年数(80万円に満たない場合は、80万円) 勤続年数が20年超 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 - 20年)
(※)出典:国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm
確定拠出年金のデメリット
一方で、確定拠出年金制度のデメリットを解説していきます。
老後に受け取る年金額が事前に確定せず、元本割れの恐れがある
まずは、確定拠出年金は自分で運用する制度なので、受け取る年金額が増える可能性もありますが、逆に元本割れとなるリスクもあります。元本を確保するためには、定期預金など元本確保型商品に100%積み立てることになります。
運用に関する一定の知識が必要
そして、実際に運用を行っていくうえで、一定の知識も必要となってきます。
原則60歳までに途中引き出しができない
また、確定拠出年金制度は、豊かな老後生活を送るための年金制度であるため、基本的に60歳まで引き出しを行うことができません。
管理費用がかかる
加えて、特に個人型に言えることですが、確定拠出年金制度を続けていく上で、各種管理費用がかかってきます。そのため、確定拠出年金を申し込む際に、極力管理費用が抑えられた金融機関を選択する方が良いでしょう。
個人型確定拠出年金(iDeCo)の対象者
なお、個人型に関しては、加入できる対象者が拡大しています。
法改正により対象者が増えた
従来、個人型には、自営業者と企業年金がない会社員しか加入できませんでしたが、2017年の法改正により、厚生年金基金か確定給付年金のある会社員、企業型確定拠出年金のある会社員、公務員や専業主婦(主夫)でも加入できるようになっています。
個人型確定拠出年金に加入する条件
そして個人型に加入できる条件は、以下の通りです。
国民年金保険料を払っている方
まずは、国民年金保険料を確実に払っている方です。国民年金保険料が未納になっている方や免除・猶予されている方は加入できません。
ちなみに、会社員や公務員の方は厚生年金保険料の中に国民年金保険料も含まれていて一緒に納付しています。配偶者が会社員や公務員で、その配偶者に扶養されている専業主婦(国民年金第3号被保険者)に該当する場合も、国民年金保険料は配偶者の年金制度が負担する形で納付しています。
60歳未満の方
そして、60歳未満の方に限られます。
日本国内に在住している方
また、日本国内に在住していることが条件となっています。
確定拠出年金の制度を理解した上で運用に活かそう!
最後となりますが、これまで確定拠出年金制度の概要やメリット・デメリットなどを解説してきました。
確定拠出年金制度をしっかりと理解した上で、豊かな老後生活を送るために、着実に積立運用をおこなっていきましょう。
監修者:山田 圭子(ファイナンシャルプランナー)