» 【投資コラム】任天堂の株式売り出しとガバナンス~株式を買って経営に参加しよう!のメインビジュアル  » 【投資コラム】任天堂の株式売り出しとガバナンス~株式を買って経営に参加しよう!のメインビジュアル

M life 記事

投資 2019.3.12

【投資コラム】任天堂の株式売り出しとガバナンス~株式を買って経営に参加しよう!

 

去る2月22日、任天堂株式会社【7974】から株式の売出しに関するお知らせという発表がされました。これによると、これまで銀行などが保有していた任天堂の株式を一部売却すると言うことでした。

 

実はこのニュース、昨今日本企業で問われている「経営の公正性」「効率的な経営」に向けた重要な動きであると言われています。これまでの日本の上場企業では「政策保有株」と言われる企業同士による株式の持ち合いが多く見られました。

 

しかし近年は株式の持ち合いによるデメリットが指摘され改善を求められているのです。ではなぜ株式の持ち合いが経営上問題となるのでしょうか。そして株式の持ち合いが解消される中で個人投資家は何をすべきでしょうか。

 

この記事ではコーポレートガバナンスと呼ばれる観点からこのニュースのポイントを解説します。そしてより多くの個人投資家が株式を保有し、経営に参加することがコーポレートガバナンスの理想形であることを解説します。

 

任天堂はゲーム機メーカーとして日本屈指の大企業

 

 

はじめに任天堂についておさらいしましょう。任天堂の歴史は古く創業は明治22年、京都市内で花札の製造をする企業として始まりました。明治35年には日本で初めてトランプの製造を始めました。戦後も様々なトランプ製造をしていましたが、昭和50年代からテレビゲーム機やゲームウォッチの製造を始めました。

 

そして昭和58に「ファミリーコンピューター」を発売すると、日本中で大ヒットしました。その後も時代に合わせた各種ゲーム機やゲームソフトを開発し、世界中の方たちに使われています。株式上場は昭和37年になり、現在は東証1部TOPIX Core30に指定されています。またアメリカやドイツの株式市場にも上場しています。

 

※TOPIX Core30:東証1部上場企業の中でも特に規模が大きく株式の取引が活発な企業上位30社を東京証券取引所が指定したもの。他の指定銘柄としてトヨタ自動車や武田薬品工業、NTTなど

 

投資やお金の殖やし方が学べる無料マネカツセミナー
↓ 詳しくは画像をクリック ↓

 

任天堂に長期にわたって出資していた金融機関が株を手放す

 

 

この度のニュースでは、任天堂が現在のような大企業になる前から出資していたと思われる金融機関が保有株式を売り出しています。発表内容は以下の通りです。

● 売出株式の種類と株式数:普通株式 2,428,700 株

● 売出人と売り出される株式数
  1. 株式会社京都銀行 :1,000,000 株
  2. 野村信託銀行株式会社(退職給付信託三菱UFJ銀行口):553,800 株
  3. 株式会社三菱UFJ銀行 :446,200 株
  4. 株式会社りそな銀行 :225,000 株
  5. 株式会社滋賀銀行 :203,700 株

そして、同社はこれら売出しの目的として以下のように発表しています。

【以下引用】
上場会社における政策保有株式への対応に注目が一段と高まる中、一部の株主様より、当社株式を売却したい旨の意向を確認したため、政策保有株式に係る当社の取り組みの一環として、上記売出しを実施いたします。当社としては、個人投資家層を中心に売出しを実施することにより、株主層の多様化を目指すものであります。

 

【出典】任天堂プレスリリース:https://www.nintendo.co.jp/ir/pdf/2019/190222_1.pdf

 同社の発表に「上場会社における政策保有株式への対応」と書かれています。これは近年日本の上場企業に求められている「コーポレートガバナンスの改革」によるものです。では今日本の上場企業が目指すべきコーポレートガバナンスとはどのようなものなのでしょうか。

 

コーポレートガバナンスとは「企業を正しく治める仕組み」

 

 

ここで「コーポレートガバナンス」について解説します。コーポレートガバナンスとは企業(コーポレート)が正しく運営を行っているかを監視する仕組み(ガバナンス)という意味です。

 

企業とは株主や従業員だけでなく取引先や顧客、そして地域社会とも深く関りを持ちます。コーポレートガバナンスではこれら利害関係者が不利益を被ることにならないように監視・統治する仕組みを作ります。任天堂では以下の図のようなコーポレートガバナンス体制を取っていると公表しています。

 

<任天堂のコーポレートガバナンス体制>

 

【任天堂CSRレポート2018より引用】:
https://www.nintendo.co.jp/csr/report2018/governance/index.html

 

株主(総会)はコーポレートガバナンス体制を決議できる

この図をご覧いただくと「株主総会」が最も上に表されていることが分かります。これは社内で作られたコーポレートガバナンス体制を株主総会が監視し決議する権利を有していることを表しています。前回の記事「伊藤忠とデサント」で解説した通り株主の過半数、もしくは3分の2以上の賛成を得られなければコーポレートガバナンス体制を始めることができないのです。

 

【参考】:【投資コラム】伊藤忠とデサントの全面対決~両社の支配権をめぐる攻防 https://manekatsu.com/blog/investment/20190227_23153.html

 

一部の株主だけで高い保有比率を占めていると機能が低下する

 

 

ところが、一部の株主が高い保有比率を有しているとその株主に優遇された決議ばかりが通ります。小さい企業では経営スピードが速くなるというメリットが活かせますが、同社の様に大企業になると偏った意思決定が重なることで効率的な経営が阻害される可能性があります。そしてそれが過度になると社会的な不利益が生じる温床になりかねません。

 

 

政策保有株式とは企業間で株式を持ち合うこと

 

 

ところが日本の上場企業では「政策保有株式」と呼ばれる株式が多くあると指摘されています。政策保有株式とは取引関係や資本関係のある企業が互いに株式を保有しあうことです。日本ではこういった「株式の持ち合い」で企業や金融機関が大株主になっていることが多くあります。日本の高度経済成長期、小さい企業が成長するときに取引先や銀行が出資して大株主になることは合理的だと言われていました。

 

しかし日本では高度経済成長が終わり、大企業になっても取引先や銀行が大株主で居座っていることが多く、企業同士の利益に偏った決議になりやすいと指摘されているのです。ちなみにこの度任天堂の株式を売出す企業のうち、京都銀行と野村信託銀行が大株主として公表(2018年3月期末)されています。

 

コーポレートガバナンスコードでは政策保有株式の逓減を指導している

 

 

このような状態に日本政府や東京証券取引所は2015年以「コーポレートガバナンスコード」と呼ばれるものを発表し、企業に指導しました。コーポレートガバナンスコードとは日本企業の更なる成長を促すために以下の原則をもとに様々なルールが定められています。

1. 株主の権利・平等性の確保
2. 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
3. 適切な情報開示と透明性の確保
4. 取締役会等の責務
5. 株主の対話

 

これを機に政策保有株式数は減少しましたが、その比率はまだ高いと指摘されていました。そして2018年6月、東京証券取引所から上場企業に適用する「改訂版」が発表されました。改訂版によると上場企業は(※)資本コストをより意識し、政策保有株式の削減をさらに促す内容になったのです。同社がこの度決議した内容はこのような流れに従ったものだと言えるのです。

 

(※)資本コスト:株主が出資したお金に対するリターンのこと。一般的に銀行からお金を借りるより高いリターン(コスト)になると言われている。

 

【参照】:【投資コラム】「村上ファンド」は個人投資家の味方だと言える理由〜新明和工業の資本政策 https://manekatsu.com/blog/money/20190214_22421.html

 

より不特定多数の株主で企業を統治することが理想

 

 

企業とは本来大きくなればなるほど、その社会的影響が大きくなります。そのため大きい企業ほど多くの人が経営に参加すべきです。企業の成長の流れとして、創業当初は創業者がほとんどの株式を保有し、場合によっては専門の投資ファンド(ベンチャーキャピタル)が出資をします。

 

さらに成長を目的として、他の企業や金融機関から出資を受けて大株主になってもらいます。そして大企業になれば年金や投資信託といった機関投資家や多くの個人投資家にも株主になってもらうのが理想的なコーポレートガバナンスだと言えます。

 

 

大株主の名簿を見て企業の成熟度を測ることができる

 

 

ところで個人投資家が投資をする上で、コーポレートガバナンスをどのように活用すれば良いのでしょうか。端的に言えば、大株主の名簿を見ることで「企業の安定性・完成度」を推測することができます。

 

例えば新興企業で有名なメルカリ【4385】の大株主(2018年6月時点)を見ると、筆頭株主は創業者になっています。さらに他の大株主もベンチャー企業向けの投資ファンドが名を連ねています。次にネット生命保険の草分けと言われるライフネット生命【7157】の大株主(2018年9月時点)はKDDIが筆頭株主になっています。

 

一方任天堂と時価総額が近い企業の1つである花王【4452】では(2018年6月時点)投資信託など機関投資家が大株主に名前を連ねています。

 

個人投資家は気に入った企業の株式を積極的に買うべき

 

 

したがって個人投資家でも株式投資を行うときは大株主の状況を把握することをお勧めします。当然ですが創業者が筆頭株主であることが間違っているとは言えません。しかし企業の経営においてどのような人たちに決定権があるのかを知ることは非常に重要です。そしてコーポレートガバナンス体制も理解した上で、気に入った企業があればぜひ株式を買ってみてください。そして経営の決定権を持つ一人として積極的に関わってみてはいかがでしょうか。

 

記事 湯川 国俊

 

 

【過去記事はこちらから】

【投資コラム】損しないための株式投資~投資指標を活用してリスクを減らそう!

【投資コラム】ライザップ赤字転落から株式投資を考える~成長株の利益について

【投資コラム】大塚家具倒産の危機から株式投資を考える~資産の内容と業績の推移に注意しよう

【投資コラム】ソフトバンク株を配当金目当てで投資する時の注意点~同業他社と比較しよう

【投資コラム】メルカリは有望な投資先なのか?~投資をする上で分析するポイント

【投資コラム】「村上ファンド」は個人投資家の味方だと言える理由〜新明和工業の資本政策

 

投資やお金の殖やし方が学べる無料マネカツセミナー
↓ 詳しくは画像をクリック ↓

 

記事一覧に戻る
記事一覧に戻る

高年収女性のためのスマート投資術セミナー情報 資産運用や投資についてのセミナー初めての方向け 高年収女性のためのスマート投資術セミナー情報 資産運用や投資についてのセミナー初めての方向け

セミナー一覧を見る