株式投資を行う方が使う本に「四季報」と呼ばれるものがあります。辞書の様に分厚い中身は日本の株式市場で上場している企業の概要が全て書かれているのです。したがって株式投資をする上で非常に役立つ本だと言えます。

一方で初めて株式投資を行う方から見れば、四季報をどのように活用すればよいのか難しいと言う話を聞ききます。しかし株式投資の目的に合わせた「見るべきポイント」を抑えることで、効率的に投資先を評価することができるのです。

そこで今回は長期的な資産形成を目的に株式投資を行いたい初心者向けに、四季報の見るべきポイントについて解説します。

また、見るべきポイントについて参考になる筆者の過去記事を紹介していくことで、より深い理解を得ていただきます。さらに事例紹介として「沖縄セルラー電話」「ナガイレーベン」を取り上げてこの度解説した手法に従って投資先としての有望度を評価します。

ぜひ最後までお読みください。

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目次

「会社四季報」とは昭和11年から続く伝統ある経済専門誌

※最新の会社四季報です。筆者も少しずつ読んでよい企業を探しています。

四季報とは正式名称を「会社四季報」と言います。東洋経済新報社という出版社から年4回発行されている経済情報雑誌です。昭和11年(1,936年)に初めて発刊され、敗戦の年(1945年)を除いて発刊され続けています。上場企業の情報誌として多くの方から支持を受け続けている雑誌の1つです。

現在ではCD-ROM版やオンライン版があり、派生品として就活版や米国版なども出版されています。

四季報を使えば上場企業をざっくり分析できる

※この構図の下にさらにもう1社分の記事が掲載されています

四季報の記事には基本的な構成が決まっています。1ページにつき2社分の記事が掲載されています。そしてページの上部には2社の株価チャートと株価の指標が記されています

そしてチャート図の下には2社に関する記事が上下に分かれて掲載されています。各社記事面の構成は上の図のようになっており、これら記事は株式に携わる様々な立場の人が有効に使うことができる情報が掲載されているのです。

そして今回の記事では、「初心者が株式を長期投資する」という立場に合わせて四季報をどのように読み進めていくべきかをこの後解説していきます。

初めてでもできる「四季報の見方」7つの手順

長期的な株式投資で十分な結果を得るためには、長期的な保有に向かない株式へ投資しないためのチェックが重要です。それをもとに考えると、上図の①から⑦の手順で投資に値する企業であるかの判別を進めることをお勧めします

次にこれら①~⑦のチェック項目について1つずつ解説していきます。

①業績を見てビジネスの状況を分析しよう

はじめに確認すべきことは、左下の「業績数値」です。この欄には過去数年ほどの売上高・各種利益、そして配当が掲載されています。初心者の投資家が危険な投資を行わないために、この項目では以下の2点に注意しましょう。

売上高が減少傾向になっていない

売上高が減少傾向にある企業は行ってるビジネス自体が縮小傾向にある可能性があります。もちろん新規のビジネスで売上が回復する可能性があります。しかし初心者でかつ限られたお金で資産形成を目指す投資にはお勧めできません。

 ※筆者の過去記事です。ビジネスが縮小傾向にある企業への投資には注意が必要です。

【投資コラム】大塚家具倒産の危機から株式投資を考える~資産の内容と業績の推移に注意しよう

赤字や利益の大幅な減少が無い

一時的な景気悪化や業界全体の逆風で利益が減少することはどの企業にもあることです。その一方で長期的に持続できる企業は好景気でも売上げや利益を管理することで、不況に備えています。一方で赤字や大幅な減益になる企業は、ビジネスそのものに大きな弱みを有している可能性が懸念されるのです。したがって初心者がわざわざ手を出す必要性は低いと言えます。

②財務情報を見れば倒産のリスクを査定できる

次に財務情報を確認されることをお勧めします。財務情報を確かめることで倒産のリスクを減らすことができます。この項目では以下の2点に注目してください。

自己資本比率50%以上

自己資本比率とは企業が有する資産のうち、企業が生み出した資金から生まれた割合を表しています。この比率が低いと、借金など返済の必要な資産の比率が高くなりビジネスが立ち行かなくなった時に倒産の可能性が高まるのです。したがって長期の投資を目指す初心者は自己資本が半分以上の企業を中心に検討することをお勧めします。

※筆者の過去記事です。自己資本比率の高さが倒産リスクを減らす理由について解説しています。

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営業キャッシュフローが純利益より上回っている

もう1つ重要なのは「営業キャッシュフロー(営業CF)」の項目です。営業キャッシュフローとは企業がビジネスにおいて実際に得られた現金の総額を表します。基本的には①業績にある「純利益」より営業キャッシュフローが多くなることが健全な運営をしている企業だと言われています。したがって営業キャッシュフローが十分な企業に投資されることをお勧めします

※筆者の過去記事です。キャッシュフローが良好な企業は安心して投資できる理由を解説しています。

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③株主を見ることで「誰が支配しているか?」が分かる

株主の状況を見ることは、長期間の投資では影響が大きくなる項目です。この項目では大株主の一覧と保有比率(株主名の右側にカッコで記載されている数値)を確認してください。

子会社や関連会社の場合、筆頭株主も調べよう

例えば上位の株主の中には保有比率が20%以上、多い場合は50%を超えていることがあります。これら高い保有比率があれば、その企業に関する強い決定権を持っている株主です。したがって保有比率の高い大株主の動向によって企業の方針が大幅に変わる可能性があります。

もし保有比率の突出した大株主のいる企業へ投資をされる場合、その大株主の状況も合わせて調べることをお勧めします。

個人名の大株主が多い場合企業としての成熟度が低い

また、大株主の一覧に同じ苗字の個人名が多い企業や、社長が筆頭株主になっている企業はいわゆる「オーナー企業」だと言えます。この場合も長やオーナー一族の動向に左右されやすいため、初心者が長期保有目的で投資をすることはお勧めできません

大株主の一覧として理想的なのは各種投資信託が名前を連ねている企業です。こういった企業は組織としての完成度が高いため安心して長期保有できる企業の証だと言えます。

※筆者の過去記事です。大株主の存在とその影響について2つの事例を用いて解説しています。

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④配当に対する企業の考え方を知る

配当金の経緯を知ることも投資先として株主になる場合、大切な項目です。ここでは①の業績通知にある「1株益(円)」「1株配(円)」の列も併せて見てください。

業績アップに合わせて増配していればベター

業績の向上に合わせて配当も増額されている企業が理想的な投資先だと言えます。この項目に記載されている「配当利回り」ですが、もしこれまで解説した項目に問題が無ければ、神経質になり過ぎないことをお勧めします。

なぜなら業績や財務が堅調でかつ特定の大株主の支配が無い企業であれば、企業の成長に合わせて配当も増えていくと考えられるからです。

無配や減配がある企業は避ける

投資先として避けるべき企業は、これまでに無配や減配をしている企業です。そういった企業は配当を減らさざるを得ないほど業績が不安定であるか、株主への還元に消極的な企業だと言えるからです。例外として記念配当として大幅な増配を実施した翌年に減配となるケースがあります。

配当金の出るペースを確認

さらに⑤の項目では配当金が支払われる頻度とその都度の配当金額が分かります。日本企業の多くは1年に2回、もしくは1回のペースで配当金を出しています。長期的に投資をする場合、両者に大きな差は出ません。

しかし一般的に株主還元の意識が高いのは年2回の企業です。株主としても長期投資をする上で配当金はモチベーションを保つ要素だと言えます。したがって年2回の配当金を継続している企業をお勧めします。

⑤企業のビジネスを再チェックしよう

ここまで投資先を評価した後で、ビジネスの概要を再確認しましょう。大企業の場合、様々なビジネスを同時に行っています。皆さんが良いと思ったビジネスが企業にとってはそれほど影響のないビジネスであることもあるのです。その場合、投資先として考え直す必要があります。

また長期的な投資の場合、明らかに衰退するビジネスでないことも再確認してください。ざっくりでも良いので「10年ぐらいは大丈夫」と思えるビジネスであることをお勧めします。さらに、業界内で高いシェアを有していれば投資先としてさらに有望です。

⑥可能であれば同業他社と比べてみよう

ビジネスに投資をする場合、ライバル会社との比較は必須項目です。四季報では上場企業に限り同業他社を掲載しているのです。ここまで良い評価を与えられる内容であっても、同業他社はより良好な業績や財務を残しているかもしれません。場合によっては似たような業績のライバル会社の方が株価や配当面でお得なことがあるのです。そのような場合も投資先として再検討する価値があります。

※筆者の過去記事です。一見有望な投資先でも同業他社と比較するとそれほどでもないことがあります。

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⑦最後に「今ならいくらで株主になることができるのか?」を意識

株式投資で一番気になる株価やチャートに関しては最後に確認する項目です。チャートや指標にも様々な考え方や見方があります。しかしここでは初心者が長期保有を目指すことを考えて、以下のポイントを基準にされることをお勧めします。

A)PBR1以下

B)「業績や財務が優良(ROE8%以上)and 業界内の大手企業」であれば1.5以下

なぜこの基準を進めるのかというと、高いPBRは企業に対する有望度を表していると言えます。したがって今流行・有望なビジネスをしている企業のPBRは高くなるのです。しかし株式市場はこういった期待度を過剰に評価する傾向があります

しかしそういったビジネスの多くは高いPBRで株式を買うほど、長期的に有望なビジネスを維持し続けられるか疑問が残ります。であれば、地味なビジネスをする会社であっても長期的に存続できそうであれば、投資先として有望と考えられるのです。

なおB)の基準の根拠ですが、ROEは企業がビジネスで生み出す「金利」です。ROEが8%以上あって、さらに業界大手でかつ優良な業績を上げられる企業はPBRが1倍を超えていても、長期的には十分なリターン出せるからです。

※筆者の過去記事です。低いPBRの企業に投資する良さは学術的にも検証済みなのです。

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事例研究【9436】沖縄セルラー電話 【7447】ナガイレーベン

次はここまでの解説を元にして、実際の企業を評価してみましょう。四季報の最新号である2019年夏号に掲載されている企業のうち、2社をピックアップしました。

これらの企業はいずれも優良な企業ですが、投資先として上記のポイントを分析すると考慮すべき点が見られるのです。四季報をお持ちの方は、これら企業のページをご覧いただきながら読み進めてもらえれば幸いです。

沖縄セルラーは業績・財務良好で株価も手ごろだが大株主を確認しよう

はじめに紹介する企業は【9436】沖縄セルラー電話です。同社は沖縄県で携帯キャリア事業を中心にビジネスをする総合通信会社です。

①業績は優良

四季報によると業績はいたって順調です。2015年3月期以降売上高・純利益ともに増加し続けています。通信ビジネスは国民生活に必須のインフラビジネスです。また沖縄県は日本でも貴重な「人口増加県」なので、将来的な不安も少ないと言えます。

②財務も問題なし

次に財務面です。自己資本比率は81.9%と良好だと言えます。キャッシュフローに関しては純利益を上回る営業キャッシュフロー(営業CF)です。通信ビジネスは顧客からの定期的な収入が安定しています。そのため資金繰りが苦しくなる可能性は低いのです。

③KDDIの子会社である点はチェックポイント

株主の一覧ではKDDIが過半数の株式を保有しています。同社はKDDIの沖縄部門として事業を展開しているのです。そのため以下の2点について意識されることをお勧めします。

ア)KDDIの業績や動向に影響を受けやすい

イ)沖縄県を越えた事業の進出は難しい

④配当も連続増配中

配当金も業績に合わせて増加し続けていると言えます。配当金の支払いペースは年2回です。予想配当利回りも4.03%なので比較的高い配当利回りだと言えます。ビジネスが順調でかつ高い配当利回りである点は投資先として魅力的です。

⑤沖縄ではシェア5割のトップシェアブランド

ビジネスの概要を確認してみると、沖縄県の携帯電話では過半数のシェアを有していると書かれています。日本全体ではNTTドコモがトップシェアですが、沖縄県では事情が違うようです。安定したビジネスで過半数のシェアを有している企業は今後もシェアを維持しながら有利に事業転換できると言えます。

⑥ドコモやソフトバンクは利益に変動がある

次は同業他社の比較です。四季報では【9437】NTTドコモ、【9984】ソフトバンクグループ、そして【9432】NTTが挙げられています。規模に関してはいずれの企業も同社を大きく上回ります。売上高は順調で、配当も十分出ています。ただしドコモとソフトバンクに関しては純利益に若干上下が見られます。

⑦株価はPBRで見ると手ごろ感がある

最後に株価です。PBRは1.15です。1倍を超えていますが、同社は業績や財務は良好でROEも8%を超えています。

あとは同社を業界大手とみなすかどうかです。同社のビジネスは沖縄県内という小さな経済圏になります。しかし同社は比較的安定したビジネスの業界首位で、かつ商圏内の経済成長が期待できます。これらを考慮する場B)の基準である1.5倍以下を当てはめることができると言えます。

ナガイレーベンは投資先としては有望なビジネスだが株価がやや高い

次に初回する企業はナガイレーベンです。同社は医療や介護業界の制服を中心としたビジネスの業界最大手で、業界内ではよく知られています。

①業績は増収増益継続中

同社の業績は好調です。売上高・純利益ともに2014年から増え続けています。業界内でも一定の人気を維持できている証拠です。

②財務も堅牢

財務面も固すぎるほどです。自己資本比率は90.8%で高すぎるぐらいだと言えます。キャッシュフローでも純利益を上回る数値です。リスクを抑えて着実な利益を上げることを意識した経営をしています。

③経営者の権力が残されている

株主面では筆頭株主が同社の社長です。また同族と推測される大株主も明記されています。影響力はありますが、過半数の保有にはなっていません。一方で、投資信託や海外の大手金融機関も大株主です。よって様々な立場の株主の意見をふまえた経営が進みつつある状態だと言えます。

④配当は年1回だが増配傾向

2016年は減配です。しかし前年は記念配当という扱いだったので大きな問題があっての減配とは言えません。全体的に見れば、純利益から配当金に回している割合(配当性向)は半分程度です。また純利益が増加していることに合わせて、配当金も増額しています。ただし配当金は1年に1回ペースになっています。

⑤日本では医療介護は大きな産業

同社のビジネスを再考してみましょう。同社の製品は医療介護業界の労働者と、患者や利用者に使われています。医療や介護は日本の社会保障制度にそって整備された非常に大きな業界です。

⑥同業他社も安定したビジネスだが「購入額」にも注意

本書で紹介されている同業他社として【3593】ホギメディカルと【3597】自重堂があります。両社も安定した業績です。しかし若干の利益変動が見られます。株価では両社の方が低いPBRです。ただしホギメディカルは同社と扱っている製品に違いがあります。また自重堂は株式の最低購入額が80万円以上な点も初心者には高いハードルです。

⑦株式市場は高い評価をしている

最後に株価です。PBR2.12は今回の基準を超えています。ROEは8%を超えていますが、際立って高いとは言えない数値です。今後より高いROEがでると確信できれば投資する価値はあると言えます。

家電製品や好きな洋服を買うようにじっくり分析しよう

このように四季報を使えば、投資先の収益力や安全性、他社比較、そしていくらで買うことができるかまで知ることができるのです。これは一般の消費で買物をする時と同じことができると言えます。

例えば自動車や家電製品を買うとき候補になる製品のカタログを読み、実物を見ることで分析や比較検討します。洋服でも試着をすることでじっくり見定めるものです。したがって株式投資でも四季報を活用してじっくりと投資先を選ばれてみてはいかがでしょうか。

※投資はあくまでも自己責任となります。利益を保証するものではありませんので、ご注意ください。

記事 湯川 国俊

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