最近は「逆イールド」という言葉が、株式市場で注目されています。逆イールドとは、短期債の利回りが長期債の利回りを上回ることで、景気後退局面を示唆するとみられています。

短期債と長期債の利回りを結んだ曲線を「イールドカーブ」といいます。景気の局面によってイールドカーブはどのように変わるのか、そして逆イールドが起こると景気や株価にどのような影響を与えるのかについて解説します。

イールドカーブとは

イールドカーブ(Yield Curve)とは、残存期間が異なる複数の債券における利回りの変化をグラフにしたものです。利回りとは、投資金額に対する1年間の利息の割合です。

横軸に残存期間、縦軸に利回りをとり、利回りと残存期間に対応する点をつないだ線がイールドカーブになります。代表的なのが、米国の国債や日本の国債などの「国債イールドカーブ」です。

債券の世界では、1年以内を短期、5年前後を中期、10年を長期というのが一般的です。期間が長いほど償還(投資した資金が返ってくること)までに時間がかかることや、金利が変動するリスクが高まることから、利回りは残存期間が長くなるほど高くなるのが通常です。

1年債よりも、5年債や10年債の利回りが高くなる傾向にあるのです。ただし、金融政策や経済状況によって、イールドカーブの動きは異なります。イールドカーブの形状を具体的に解説します。

イールドカーブの種類

順イールド

イールドカーブの曲線は右上がりで、短期金利より長期金利の利回りが高い状況です。正常な経済状態であれば、期間が長いほど利回りは高くなります

順イールドカーブは好景気にときに見られます。順イールドのときは、企業の資金需要も活発化するので、銀行の融資も増えます。また、住宅ローンの変動金利は短期金利の影響を受けます。短期金利が低めに推移するため、住宅を購入しやすくなるというメリットもあります。

逆イールド

イールドカーブの曲線が右下がりで、短期金利の方が長期金利より利回りが高い状況です。短期金利は金融政策の影響を受けます。景気拡大は良いことですが、加熱しすぎると土地や株の価格が本来の価値以上に上昇してしまうことがあります。その結果、モノの価値が上がるインフレの起こる可能性が高くなってしまうのです。

その状況を防ぐため、中央銀行(米国:FRB、日本:日銀)は金融政策で金利を上げ、加熱する景気を抑えようとします。

金融政策で短期金利は上昇しますが、長期金利はそれほど上がらずに長短の金利が逆転することがあります。これが「逆イールド」です。

また足元の景気が好調でも、将来は低迷する可能性があると見て、投資家が積極的に長期債を購入し、逆イールドが発生する場合もあります。

通常、債券を購入するのは利回りが魅力的だからです。しかし、将来不景気が来そうだと投資家が判断すると、長期債が買われる傾向にあります。債券価格が上がると利回りは低下するのですが、債券の値上がり益が期待できるので、値幅取りの買いが進むのです。

短期債は中央銀行による金融政策の影響を受けやすい一方、長期債は投資家の景気に対する見方を反映する傾向があるのです。

イールドカーブのフラット化

景気が転換期を迎えると、金利水準が今後どうなるか不透明になります。その場合、短期金利と長期金利の差が小さくなり、イールドカーブが緩くなる傾向があります。これを「イールドカーブのフラット化」といいます。

イールドカーブのスティープ化

現在は景気が良くない状態でも、将来の見通しが明るくなっていくような状況では、長期金利が上昇し、短期金利との差が拡大することがあります。このような状況を「イールドカーブのスティープ化」といいます。スティープ(steep)とは、傾きが急という意味です。

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イールドカーブの重要性

好景気のときは順イールドが通常です。しかし、投資家が将来に悲観的な見通しを持つと長期債が買われて逆イールドが発生します。逆イールドが話題になるのは、景気拡大終盤で発生することが多いからです。

1998年5月に逆イールドが起こると、2001年3月に米国は景気後退局面になり、ITバブル崩壊を招きました。さらに2008年のリーマンショック前には、2005年12月に逆イールドが発生。2007年12月から景気後退局面に入っていました。

ただし、逆イールドが発生しても、すぐに景気後退局面になるわけではありません。およそ2年間の時間を要しているのです。

イールドカーブの活用法

米国景気には5年程度上昇し、1年から1年半程度後退するというサイクルがあります。つまり、順イールドが5年程度続き、逆イールドの時期は1年程度ということです。逆イールドの期間が何年も続いたということは過去ありません。

ただ、現在の米国経済は2009年から拡大期が続き、これまでの過去最長だった120ヵ月を上回りました。10年以上も景気拡大局面が続いているのです。

戦後最長の景気拡大局面が続く中、逆イールドによる景気後退をマーケットが意識していることは確かです。2019年8月14日のニューヨーク株式市場では、今年最大の800ドルを超える値下がりとなりました。米国10年債の利回りが、一時2年債の利回りを下回る逆イールドが発生したからです。

ただ、逆イールドは景気後退の可能性が高いという指標の1つに過ぎません。今後を警戒して株式の比率を減らすなどの対策は有効ですが、すぐに現金化して株式投資を止めてしまうというのはオススメしません。

投資は、短期的な変動に惑わされるのではなく、長くコツコツ続けることが大切だからです。

さらに逆イールドが起こったからといって、すぐに景気後退になるわけではありません。実際に、逆イールドが始まってから景気後退が始まるまで、NYダウは上昇してきたという歴史があります。

ITバブル崩壊時の米国逆イールド発生から景気後退局面(1998年5月~2001年3月)まで、NYダウは約11%上昇。リーマンショック前の景気後退局面(2005年12月~2007年12月)時は23.8%上昇しました。

逆イールドはあくまでも過去の経験則で、景気後退に陥るという理論があるわけではありません。ですから、短期的には逆イールドを不安視して売られることがありますが、ただちに株式市場が下落相場になると判断する必要はありません。

ただし、米国長期金利の低下は米ドル安・円高要因となるため、日本株にとっては上値を抑える要因になる恐れがあります。

まとめ

今回はイールドカーブについて解説しました。好景気の局面では「順イールド」、景気後退局面では「逆イールド」が起こります。景気拡大局面の方が長いので、順イールドの状態が通常です。

しかし、景気拡大局面でも逆イールドが起こることがあります。実際に、2001年のITバブル崩壊や2008年のリーマンショックなど、暴落が起こる前に米国債で逆イールドが発生していました。

ただし、逆イールドから発生してから景気後退局面に陥るまで、2年程度の時間を要しています。その間、NYダウなど株式市場は上昇しています。

逆イールドが発生した場合、将来的に景気後退局面になる可能性もあることを念頭に置きながらも、あくまでも経験則としてとらえ、長い目でコツコツ投資を続けるようにしましょう

記事 山下 耕太郎

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