株式市場で「アクティビスト」という言葉をよく聞くようになりました。かつてはネガティブなイメージの強かったアクティビストですが、最近は株主総会などで機関投資家も、アクティビストの提案に賛成票を投じるようになっています

アクティビストとはどのような存在なのか、そして株式市場にどのような影響を与えているのかについて解説します。

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アクティビストとは

株式を取得した上で、投資先企業の価値を向上させるために経営改革などを働きかける株主を「アクティビスト」といい、「物言う株主」とも呼ばれています

時には無理な増配を要求したり、要求が通らないと取締役の解任を迫ったりするなど、横暴な姿勢や態度を見せることがあるです。このように強引な手法を使うアクティビストを、欧米では「グリーンメーラー」と批判する声もあります。

グリーンメーラーとは、経営に参加する意思がないのに経営陣に揺さぶりをかけ、安い値段で買った株式を高値で買い取らせて、利ザヤを稼ぐ業者です。

日本では、かつての「総会屋」と比べられることがあります。総会屋は株主総会に出席する目的で、少数の株式を保有します。

そして、会社に金品をせびる目的で、株主総会で発言して議事を混乱させたりするのです。

ただ、総会屋は株主総会だけですが、アクティビストは年中経営に圧力をかけてくるので、「総会屋よりも始末が悪い」と漏らす経営者もいます。

アクティビストはイベント・ドリブン型のヘッジファンド

アクティビストのファンドは、イベント・ドリブン型のヘッジファンドに分類されます。

イベント・ドリブン型とは、M&Aや分社化、事業再生などのイベントを利用して利益を狙う手法

こうしたイベントのときは株価が激しく上下するので、その値動きを利用して収益を狙うのです。

日興リサーチセンターの調べでは、ヘッジファンドの戦略別構成比は以下の通りです。

 

    • 株式ロング・ショート 6%
    • マルチ・ストラテジー 6%
    • イベント・ドリブン  9%
    • マネージド・フューチャーズ 9%

 

イベント・ドリブンは、ヘッジファンドで3番目に多い手法なのです。アクティビストファンドと似たようなファンドに「バイアウド(買収)ファンド」があります。

ただ、バイアウトファンドは対象企業の株式の50%以上を保有し、経営権を取得した上で企業価値を高めて売却しますが、アクティビストファンドはせいぜい20%程度にすぎません。

アクティビストの目的は「利ざや」

アクティビストは数%から20%程度の株式を保有して、株価が上昇したら売り抜けることが目的です。

そのために配当金を増額させたり、企業価値のアップを通して株価上昇につなげたりします。

アクティビストファンドは、米国では主に次のようなことを行い、経営陣に圧力をかけているのです。

  • 株主名簿や帳簿の閲覧要求
  • 役員報酬への反対
  • 株主総会の委任状の争奪戦(プロキシーファイド)
  • 株価低迷への責任追求

アクティビストファンドの平均的な投資期間は1~2年程度で、あくまでも「利ザヤ」の獲得を目的としています。短期間の間に高値で売り抜けるためには、さまざまな戦略を駆使する必要があるのです。また、ターゲットの企業の株価が下落しても、カラ売りなどの手法を使って収益を狙うこともあります。

ただ、アクティビストは年金基金など他の機関投資家の支持も味方につけて影響力を強めており、最近ではアクティビストの要求が通るケースが増えてきています

経営陣と対立した場合は、株主総会での多数決で議案を決めます。これが「プロキシーファイト(委任状争奪戦)」です。投資先をメディアに公開し、一般投資家を巻き込んで株価をつりあげようとするアクティビストもいます。

アクティビストファンドの成功報酬

アクティビストはヘッジファンドの一種なので、成功報酬も膨大なものになります。

投資家の期待利回りが10%の場合、資金100億円のファンドなら年間10億円の収益をあげれば、投資家の期待に応えることができます

もし、20億円の収益をあげれば、ファンドマネージャーに対する報酬は期待利回りを超える20%と言われているので、

(20億円―10億円)✕20%=2億円

ファンドマネージャーは、2億円のボーナスを手に入れられるのです。また、ファンドマネージャーは自分の資金もファンドに拠出しています。

運用結果が悪ければ報酬がなくなるだけでなく、自分のお金も減ってしまうので、それだけ真剣に運用しているのです。

日本版スチュワードシップ・コードである「責任ある機関投資家の諸原則」の影響

アクティビストが企業に対する影響力を強めている背景には、日本版スチュワードシップ・コードである「責任ある機関投資家の諸原則」があります。

スチュワードシップ・コードとは、「受託者責任を果たすための原則」と訳されます。

つまり、機関投資家のあるべき姿を規定した指針で、投資先企業の成長や向上を促すことにより、顧客(投資家)の中長期的なリターンの拡大を図る責任のことです。

これまでも機関投資家に受託者責任はありましたが、2014年に2月に金融庁が「責任ある機関投資家の原則」を正式に作成し、従来より踏み込んだ内容となりました。

スチュワードシップ・コードによって機関投資家も投資結果に対する責任が増す中、アクティビストの提案でも、合理的な内容なら賛成票を投じるようになったのです。

2020年も日本に照準をあてるアクティビスト

2019年の国内株式市場は、アクティビストが存在感を高めた年でした。アクティビストから取締役を受け入れたオリンパスの株価は年初から2倍になり、半導体事業の分離などの要求を受けたソニーの株価は約4割の上昇となりました。

企業の変革を期待した海外投資家の買いが入ったからです。

これまで、アクティビストはせいぜい数年の期間で利益をだそうとするので、要求をそのままのむと経営も短期主義に陥ってしまうという弊害がありました。

しかし、最近では中長期の企業価値向上に向け、対話と協調の姿勢を重視するアクティビストも増えています

以前のようにアクティビストを脅威としてとらえるのではなく、企業価値を高めるきっかけになると判断する投資家が増えているのです。

2020年も、アクティビストは日本企業をターゲットにする流れに変わりはないでしょう。日本では企業統治(コーポレート・ガバナンス)改革の点から、企業が持ち合い株(政策保有株)を減らす動きが加速しています。

アクティビストにとっては、企業の株式を取得し、議決権を行使しやすい環境になってきているのです。

また、低金利が進み、アクティビストの資金調達を容易にしています。世界的なカネ余りの状況は、アクティビストにとって追い風になっています。

外為法改正がアクティビストにおよぼす影響

日本政府は、2019年の10月に外為法の改正案を閣議決定しました。安全保障上の理由で、重要な日本企業への外国資本の出資規制を厳しくするのが狙いです。2019年11月22日に国会で可決され、2020年春に施行される見込みです。

外為法は、電力業や通信・原子力など安全保障に関わる事業を手掛ける企業に対して、外国人投資家が1%以上株式を取得する場合は事前に届けを求め、政府が審査を行います。従来は10%以上としてきましたが、現行の規制を大幅に強めたのです。

現在の規制では10%まで自由に株式を取得できるのに対し、改正後は1%以上取得する時点で、事前に届け出をしなければいけません

しかし、外国人投資家や市場関係者から大きな反発が生じたことから、政府は経営に関与しない外国運用会社には例外措置を設け、日本株への悪影響を避けたい考えです。

財務省は外為法の届け出免除の対象となる「経営に関与しない投資家」の基準に、「役員に就任しない「事業の譲渡・廃止などを提案しない」などを例示しています。

しかし、アクティビストは株主提案を通じて、不採算事業の廃止などを訴えています。外為法の改正により、アクティビストの活動が抑制されるとの懸念がでているのです。

アクティビストの活動が抑制されると、個人投資家や機関投資家も企業との対話(エンゲージメント)がしづらくなるとの声が上がっています。

アクティビストファンドの事前申請が認められないような事例が起こると、日本のコーポレート・ガバナンス強化の流れは建前に過ぎず、非効率的な経営が行われているとの判断をされてしまう可能性もあります。

結果、外国人投資家が日本株のウェイトを下げる恐れもあるので、きちんとした制度設計が今後求められます

まとめ

「物言う株主」として恐れられてきたアクティビストですが、近年では株式市場での存在感が増しています。実際、アクティビストが投資している会社は経営の変革が期待できるとして買いが入り、大きく上昇した銘柄もあります

日本版スチュワードシップ・コードである「責任ある機関投資家の諸原則」により、アクティビストに賛同する機関投資家も増えています。

2020年以降も存在感を増していくことが予想されますが、今年春に施行される外為法の改正で、アクティビストの活動が抑制されるかどうかが注目されます

記事 山下 耕太郎

 

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