カーブスが株式上場!スピンオフの背景とカーブスの将来性〜投資コラム〜

女性だけのフィットネスジムとして圧倒的な人気の「カーブス」が、株式を上場することになりました。カーブスファンの女性であれば、ぜひ株主になって投資してみたいものです。ところでカーブスの株式上場は、これまでとは少し違った形であることをご存知でしょうか。
今回、カーブスの株式上場では「スピンオフ」と呼ばれる方式が採用されました。スピンオフは、日本の株式市場では初めての事例です。では、なぜカーブスはスピンオフをする必要があったのでしょうか。これには、カーブスという会社の現状と将来性が加味された判断だったのです。
そこで今回の記事では、カーブスの株式上場とスピンオフについて解説します。そしてスピンオフを行うに至った背景を解説し、カーブスの将来性を考察します。最後までお読みいただければ、カーブスが良い投資先の1つであることを理解することができます。ぜひ最後までご覧ください。
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目次
カーブスの株式上場は2020年3月2日
2020年1月27日【2157】コシダカホールディングス(以下コシダカHD)は、東京証券取引所から同社の子会社である株式会社カーブスホールディングス(以下カーブス)が、株式上場の承認を受けたことを発表しました。これによってカーブスは、3月2日に株式が上場することになったのです。
そしてカーブスの株式上場では、株式の現物配当(スピンオフ)と呼ばれる方式が採用されました。ではこのスピンオフと呼ばれる方式は、一体どのようなものなのでしょうか。
カーブスが行う「スピンオフ」とは「のれん分け」
スピンオフとは、企業が行う事業を再編する手法の1つです。具体的には子会社や部門を独立させる時に、株主に対して子会社や部門に値する株式を分配します。今回のカーブスのスピンオフでは、コシダカHD株式100株に対してカーブス株式100株が分配されるのです。
したがってカーブスの株式上場直後における株主構成は、コシダカHDの株主と全く同じになります。では、スピンオフにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
スピンオフのメリットは「企業価値を明確にする」
スピンオフは、株式を分割するだけで子会社や部門を独立させることができます。そのため、以下のようなメリットがあるのです。
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子会社や部門を他社に渡す必要がない
子会社や部門を分離・独立させる時、他社に売却することが多く見られます。しかしこの手法になると、子会社や部門の所有権を失うことになります。しかしスピンオフを行えば、親会社が持つ所有権は変わりません。
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子会社や部門の自立度を上げる
一方で子会社や部門を独立させると、子会社や部門に経営の自由度が高まります。また親会社も子会社や部門の運営から一歩引いて関わることができるので、負担が軽減されることになるのです。
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子会社や部門が妥当な評価を受けられる
収益力や成長性の高い子会社や部門がある場合、親会社では株式市場で正当な評価を受けられないことがあります。また親会社のメインとする事業と関連性が薄い場合も、株式市場の評価が低くなる傾向があるのです。そのような場合、子会社や部門をスピンオフで上場することで、企業価値を高める効果があります。
カーブスの親会社はカラオケ事業がメイン
では カーブスの親会社であるコシダカHDの事業について、おさらいしてみましょう。コシダカHDは、1967年に設立されました。その後様々な事業を展開し、現在は純粋持株会社となっているのです。傘下に持つ主な事業としてカラオケ事業、温浴事業、そしてカーブス(フィットネス事業)があります。本社は東京都港区と群馬県前橋市の2拠点で、従業員数はグループ全体で4244名(2018年8月31日時点)です。
傘下事業のメインであるカラオケ事業は、「まねきねこ」というブランド名で全国展開しています。またカラオケ事業は2011年から海外進出を開始し、東南アジア全域への出店を目指しているのです。
カーブスはアメリカのフィットネスジムを日本で展開
次にカーブスが、どのような形で日本に浸透したのかを解説します。実は、カーブスの起源はアメリカです。1992年ゲイリー・ヘブン氏が中高年女性に適度な運動ができる施設を作ることを目指して、テキサス州で「Curves」を設立しました。
その後、Curvesは全世界に向けて事業を展開しました。その結果80か国で1万店舗を運営することとなり、世界最大のフィットネスクラブとしてギネスブックにも認定されているのです。
日本では2005年にカーブス・ジャパンとして、Curvesとのフランチャイズ契約を結ぶことから始まりました。その後、2008年に株式会社コシダカ(現コシダカHD)の子会社となったのです。そして 、大学や自治体との協業により 全国に拡大し、 今では2,000店舗を超え、会員数も86万人以上いるのです(2019年10月時点)。
日本で大成功したカーブスが本部を逆買収
ところがアメリカのCurvesは、2008年のリーマン・ショックを機に業績が低迷しました。そして、投資ファンドの資金援助を受けざるを得なくなったのです。その後、大株主となった投資ファンドも撤退を表明しました。そこで日本でのカーブスの親会社であるコシダカHDは、2018年にカーブス・インターナショナル・ホールディングスと関連会社の株式を買い取ることになったのです。
日本のカーブスを世界のカーブスにする戦略
この逆買収によって、カーブスは様々なメリットを得ることになりました。
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ロイヤリティ費用の削減
これまでカーブスはアメリカ本部に対して、屋号や権利の使用料(ロイヤリティ)を支払ってきました。ところがこの逆買収によって、ロイヤリティ費用が無くなるのです。これは大幅な経費削減となり、株主への還元や新規事業への投資が容易になります。
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独自の海外進出が可能
これまでカーブスは、日本国内での営業権しかありませんでした。しかし逆買収によって本部の立場になったので、海外進出も独断で実行できるのです。
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ノウハウや屋号を売ることができる
カーブスが本部の権限を得られたため、これまでアメリカ本部が行ってきたフランチャイズ展開ができるようになったのです。日本で大成功したカーブスのノウハウを、海外に売り込むことができます。
カーブス事業のブランドと将来性は子会社では収まらないレベル
このようにしてカーブスは、「Made In Japan」として世界で戦えるブランドに成長しました。コシダカHDもカーブスは日本での盤石な地位を足掛かりにして、海外進出を図るとしています。ところが、カーブスの成長に伴い、いくつかの問題が生じてきたのです。それはコシダカHDの他の事業との関連性が薄いため、カーブスの企業価値が反映されにくいことです。
コシダカHDは、カーブスの他にカラオケ店や温浴事業を運営しています。どの事業も順調ではありますが、カーブスの突出したブランド力が他の事業によって打ち消されることが懸念されたのです。しかし、カーブスの事業を売却する選択肢は考えられません。
そこで考え出されたのが、「スピンオフ」という手段だったのです。スピンオフは前述の通り、事業を売却することなく上場企業として独立させることができます。そしてカーブスに高い評価(株価)を得ることができれば企業の買収も容易なり、海外進出を加速することができるのです。
独立したカーブスの今後の展開に期待
今回はカーブスの株式上場とその手法・背景について解説しましたが、いかがで したでしょうか。今回の記事のポイントは、以下の通りです。
・女性だけのフィットネスとして有名なカーブスが株式上場する
・カーブスの上場は親会社からの「スピンオフ」によって行われる
・スピンオフとは親会社から「のれん分け」すること
・親会社であるコシダカHDはカラオケ店などをする複合企業
・カーブスはアメリカから借りてきたブランドだった
・カーブスがアメリカの本部を買い取った
・世界本部となったカーブスはさらなる成長を目指す
・カーブスの事業拡大には株式の単独上場が最良の選択肢であった
カーブスとコシダカHDの事業戦略は、今後も着実に進んでいくものと思われます。日本の女性を健康にしたカーブスが、世界の女性を健康にするビジネスとなることを期待したいですね。
記事 湯川 国俊
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