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お金 2018.3.30

【税理士監修】誰でも適用できる?相続時精算課税制度とはどのような制度?

 

もしご自身が亡くなったとき、残された家族に財産を残しておきたいと考えたことはありませんか。財産は、死後の相続だけでなく、生きているうちに贈与という形で受け渡しは可能です。ただし、うまく贈与や相続を行わないと、想像していたよりも税金を引かれてしまうこともあります。今回は、財産を渡す方法の1つとして相続時精算課税制度についてご紹介します。

 

相続時精算課税制度は「贈与税」と「相続税」の制度

 

相続税精算課税制度とは、贈与税と相続税を通じた制度です。この制度の適用を受けた贈与者(贈与する人)からの贈与は2500万円まで控除され、その贈与者が亡くなった時に、その贈与財産の贈与時の価格と相続財産の価格を合計した金額をもとに相続税額を算出し、その相続税額からすでに納めている贈与税相当額を控除されるといった流れで行われます。

 

ちょっと分かりづらいかもしれませんね。簡単にいうと、財産を贈与した人がお亡くなりになって相続があったときに、贈与時には非課税であった贈与財産を相続する遺産に合計して精算する制度です。

 

相続時精算課税制度と生前贈与に違いはあるのでしょうか

相続時精算課税制度についても生前に財産を贈与するので、生前贈与にあたります。相続税精算課税制度は特定の贈与者からの贈与財産について、2500万円になるまで控除することができる制度です。また生前贈与のもう1つの選択肢として暦年贈与という制度があり、こちらは1年間に110万円までの贈与について控除されます。

 

 

どういった場合に適用できる?

 

それではこの相続税精算課税制度はどういった場合に適用ができるのでしょうか。適用の対象者、適応財産、手続きについてご説明します。

 

適用対象者

相続税精算課税制度の適用条件は、贈与者は60歳以上の父母または祖父母で、受贈者(贈与を受け取る人)は贈与者の推定相続人(すぐに相続が始まった場合に相続人となる人)である20歳以上の子どもか孫であることになります。

 

適用対象財産の種類に制限なし

対象者には制限がありますが、対象財産の種類に制限はありません。ただし、財産の種類、金額、贈与回数に制限はありませんが、合計して控除されるのは2500万円までです。

 

適用手続きの方法

相続税精算課税制度の適用を受ける場合は制度に関わる贈与を受けた最初の年の翌年2月1日から3月15日までの間に贈与税の確定申告手続きが必要です。贈与税の申告書に「相続時精算課税選択届出書」を添付して提出します。また、この届出書には以下の書類を添付する必要があります。

 

・受贈者の戸籍謄本

・受贈者の戸籍の附票(住所の移転履歴を記録してある書類)

・贈与者の住民票の写し

 

相続時精算課税制度を適用する際の注意点

 

それでは、相続時精算課税制度を適用した場合に気をつけておかなければならないことはあるのでしょうか。

 

一度選択すると暦年贈与には戻れません

相続時精算課税制度を選択してしまうと、取り消しはできません。対象の贈与者からの贈与はすべて相続時精算課税制度の適応を受けることになり、暦年課税制度を使うことはできなくなります。

 

贈与財産の価値が下がるとその分多くの税金を納めることになる

相続時精算課税制度では、贈与者が亡くなった際に相続税の課税価格に贈与財産の価格を加算することになります。そのときの贈与財産の価値は、贈与者から財産を取得したときの価格となります。

 

生前贈与した財産が将来値下がりしてしまった場合のように、その時点の価値よりも贈与したときの方が価値が高いと、その分多く税金を支払うことになってしまいます。逆に将来値上がりする可能性が高い財産について、生前贈与しておくことは、実際の価値より低価格の評価を受けることができるので、相続税の節税対策になります。

 

 

相続時精算課税制度を適用する際の贈与税の算出方法

 

それではここで、相続税精算課税制度の適用した場合の贈与税の算出についてご紹介します。贈与者が亡くなったときの相続税の算出は後でご紹介しますので、もし、そちらに興味がある方は先に読んでいただいてもかまいません。

 

ではまず、Aさんという人物が父親から2000万円の贈与を受けた場合を考えてみましょう。相続時精算課税制度の適用を受けると、贈与財産について2500万円まで非課税になります。

 

ですので、Aさんは贈与税を支払う必要はありません。さらに、500万円まだ非課税枠にあまりがありますので、同一の贈与者からの贈与はあと500万円分控除されることになります。

 

それでは、3500万円を父親から贈与したBさんを場合はどうでしょうか。まず、2500万円は控除されるので、残りは1000万円となります。相続時精算課税制度では、2500万円を超えた部分については一律20%の贈与税が課税されるので、1000万円×20%=200万円となり、贈与税として200万円を支払うことになります。

 

 

適用するならいつ決断が必要か

 

相続時精算課税制度は、贈与時に2500万円まで贈与税がかからない制度ではあるのですが、相続の段階でその贈与した財産についても相続税の算出を行わなければならないので、見方によって、結局は先延ばし制度であるといえるかもしれません。例えば、贈与者から2500万円贈与があり、相続時精算課税制度で、贈与税が課税されていなかったとしても、贈与者が亡くなったとき、その2500万円は相続財産として、課税されることになります。

 

では、この制度を適用するかしないかはいつ決めるべきなのでしょうか。それは、贈与者が亡くなり相続となったときに相続財産が基礎控除範囲内に収まるであろうとわかったときです。相続時精算課税制度は相続が発生したときに相続税に合わせて贈与した財産を加算する制度です。

 

相続財産が基礎控除の範囲内であると、相続税を納める必要がなくなるので、相続時精算課税制度で贈与した財産についても相続税を納める必要はなくなります。さらに、2500万円の非課税枠を超えた分の贈与税が清算され還付される場合もあります。

 

暦年課税制度と何が違うのか?

相続税精算課税制度は特定の贈与者からの贈与財産について、2500万円になるまで控除することができる制度でした。それに対して、暦年課税制度は贈与した人によって110万円控除されるわけではなく、贈与を受ける人(受贈者)1人につき、1年間で110万円控除される制度です。また、相続時精算課税制度では、控除額を超えた金額に対して20%の一律税率に対して、暦年贈与では、110万円の基礎控除後の金額に、速算表にあてはめた税率と控除額が適用されます。

 

暦年課税の速算表については以下を参考にしてください。

 

No.4408贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁https://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4408.htm

 

メリットとデメリット

それでは、相続時精算課税制度のメリットとデメリットを紹介します。上記で出てきた内容も含みますが、今一度整理しておきます。

 

メリット

・一度に多額の贈与が行える

相続時精算課税制度の控除限度額は2500万円と高額です。暦年贈与に比べて一度に多額の贈与を行うことができるので、親から子への財産移動が簡単です。

 

・値上がりする財産を贈与すると節税になる

相続時精算課税制度は相続のときに贈与財産の金額を加算するので、将来値上がりすることが見込まれる財産であれば、生前に贈与しておくことで、節税することができます。

 

・収益物件の贈与は節税になる

収益物件であるアパートやマンションなどを贈与すると、その後の家賃などは受贈者の収益になりますので、贈与者の財産を増やさなくてよくなり、相続税の節税になります。

 

・将来の相続争いを回避できる

財産を譲ることを決めている相続人に先に生前贈与をしておけば、相続時に争いが起こったとしても巻き込まれる心配がなくなります。

 

<デメリット>

・贈与税の申告が手間

相続時精算課税制度を選択した場合には、その贈与の額に関わらず申告が必要になります。また申告書の控えをとっておいて、相続のときに開示しないと相続税額が正しく計算できません。

・撤回不可能

前の章でもご説明していますが、もし相続時精算課税制度を選択し書類を提出してしてしまうと、もう暦年課税には戻れません。その贈与者からの贈与はすべて相続時精算課税となります。ただし、その他の人からの贈与については暦年贈与を使うことができます。

・小規模宅地等の特例が使えない

相続時精算課税制度を利用して、土地を贈与した場合には小規模宅地等の特例を使うことができなくなります。そのため、もし小規模宅地等の特例を使った方が節税になる場合には、小規模宅地等についての相続税の特例を使いましょう。

※小規模宅地等の相続税の特例とは、相続または遺贈によって取得した財産のうち、一定の要件を満たす被相続人の住居用、事業用の宅地のうち、限界面積までの部分について相続税の算出の際に一定の割合減額する特例です。

・相続時の物納ができない

税金は原則、金銭で一括納付が原則ですが、相続税に関しては金銭での納付が困難な場合に、物納(相続した財産そのものを納めること)することができます。例えば、国債、地方債、不動産、船舶、社債、株式などがあります。しかし、相続時精算課税制度の対象財産に関しては、物納することができません。

 

 

相続時精算課税制度を適用した場合の相続税の算出方法

 

先ほどは、贈与した場合の算出についてご紹介しましたが、今度は受贈者(Bさん)が亡くなった場合にどういった相続税の算出がなされるかについて、ご紹介します。

 

例えば、

受贈者:Bさん

贈与者:父親

相続人はBさんを含めて子ども2名、遺産の総額が1億円、生前贈与が3000万円だった場合。

 

まず、贈与が2500万円を超えたので、超えた部分に対し贈与税が課税されます。

30,000,000円-25,000,000円=5,000,000円

5,000,000円×20%=1,000,000円:贈与時の贈与税額

 

その後父親が亡くなると相続が開始されますので、相続税の算出が行われます。

 

まず、基礎控除額を求めます。今回は法定相続人は2名なので、

30,000,000円+6,000,000円×2(法定相続人数)=42,000,000円

 

遺産の1億円と生前贈与している3000万円(相続時精算課税制度の適用されているため)が合計され、そこから基礎控除を差し引きます。

100,000,000円+30,000,000円-42,000,000円=88,000,000円

これで、課税遺産総額算出されます。

 

さらに、納税額を算出していきます。

まず、各法定相続人の取得金額を算出します。

 

88,000,000円÷2=44,000,000円

 

相続税の速算表をもとに、相続税のもとになる税額を算出します。

44,000,000円×20%-2,000,000円=6,800,000円

 

そして相続税の総額を算出します。

6,800,000円×2(法定相続人の数)=13,600,000円

 

この相続税の税額から支払った贈与税を引きます。

13,600,000円(相続税)-1,000,000円(贈与税)=12,600,000円

これが、相続時の相続税の総額になります。

 

ちょっと分かりづらいかもしれませんが、遺産総額を計算するときに贈与財産を加えることと相続税の税額を計算するときに贈与税の支払い税額を引くことさえ覚えておけば、計算は難しくありません。

 

 

こんな時はどうなるのか

 

最後にもし相続税精算課税制度の適用を受けた後で以下の事態が起こった時どうなるかについてまとめておきます。

 

相続時精算課税で贈与を行っている最中に受贈者が亡くなってしまった場合

もし相続時精算課税制度の適用を受けた受贈者が贈与者より先に亡くなってしまった場合には、相続時精算課税にかかわる権利は、受贈者の相続人に継承することになります。ですので、もし受贈者が亡くなった場合でも、贈与者が亡くなったときには、相続税の算出と納税を行わなければなりません。

 

相続時精算課税で贈与を受けたが相続放棄がしたい場合

相続時精算課税制度は贈与税と相続税がつながった制度であるとご説明したので、制度の適用を受けた場合には相続しなくてはならないように見えますが、実は相続放棄をすることも可能です。ただし、相続税の課税がなくなったわけではなく、贈与財産については遺贈されたものとして扱われるので、相続税の課税対象になる場合があります。

 

相続税の基礎控除以下になった場合

相続税が基礎控除以下になった場合には、相続時精算課税は行われません。また、支払った贈与税の額が多ければ、還付されることになります。

 

小規模宅地の特例を受けたい場合

相続時精算課税制度の適用を受けた場合、小規模宅地等の特例は適用されなくなります。

 

相続時精算課税開始後に株と土地が値上がりした場合

相続時精算課税制度の特徴は贈与財産については贈与したときの価格で相続税の課税価額の算出を行うことです。なので、贈与してから値上がりした場合には、節税効果があります。

 

まとめ

 

いかがだったでしょうか。相続時には贈与財産についても合算して算出することになりますが、相続時精算課税制度を使うことで、暦年課税を選択するよりも贈与税の節税が期待できる場合もあることをお分かりいただけましたか。ただ、1度選択すると取り消しはできませんし、もし相続税の制度改正があったときには、適用したことで不利益を被る場合も考えられるので、相続時精算課税制度を選択する際には、よく贈与者、受贈者の状況を見極めて慎重に検討してしてみてください。

 

監修者:添田裕美(税理士)

 

 

 

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