【FP監修】財形貯蓄の制度で気づかぬうちにお金が貯まっていく!?

社会人になり、貯金が出来ないと悩んだことはありませんか?自力で毎月コツコツ貯められる人もいますが、なかなか貯まらなくて悩んでいる人もいると思います。ここでは効率的な貯金方法の一つである「財形貯蓄」について紹介していきたいと思います。
目次
財形貯蓄制度とは?
財形貯蓄制度とは厚生労働省が作った制度であり、はたらく人に向けた貯蓄方法です。労働者財産形成促進法に基づき、はたらく人の貯蓄や住宅取得の促進を目的に作られました。会社を通しているので、引き出す際や解約の際には手続きが必要なため簡単に引き出せないことから貯金が苦手な人に向いている制度と言えます。
財形貯蓄って?
財形貯蓄とは簡単に言うと、勤務先が金融機関と提携して従業員の貯蓄を強制的に行うシステムです。「強制的」というと聞こえが悪いですが、給料やボーナスから天引きされるので、貯金が苦手な人でもコツコツと貯めることができます。
財形を利用できる人
財形は職業や雇用形態に関わらず、すべての勤労者が利用することができます。会社員や公務員はもちろん、アルバイトやパートタイマーの人も以下の条件を満たせば利用可能です。
アルバイト・パートタイマーの人の条件
・一般財形貯蓄は3年以上、財形住宅貯蓄・財形年金貯蓄は5年以上の積立期間が見込まれること
公務員についても労働基準法が適用されないような国家公務員、地方公務員、船員も財形を利用することができます。
注意点として財形を契約する際は、住宅財形と年金財形に関しては契約時の年齢が55歳未満であることが条件です。
この制度は勤労者、つまり雇われている人に向けて作られた制度のため、会社の役員や自営業の人は利用することができません。
出典:はたらく人とがんばる社会の財形 「財形貯蓄制度」http://www.zaikei.taisyokukin.go.jp/service/save/index.php
目的別にお金が貯められる!3種類の財形
財形貯蓄はただ貯蓄をするためだけの制度というわけではなく、目的別に3種類に分かれています。将来のライフイベントに沿った財形貯蓄を行いましょう。
一般財形
一般財形は使用目的が限定されていないので、貯めたお金は自由に使うことができます。結婚や出産、子供の教育などの将来的に必要な費用や、車の購入、旅行費用など短期的な貯蓄などさまざまな目的に対応した積立です。
一般財形は契約開始から1年経てば好きな時に解約ができるのでケガや病気、引っ越しのなどの急な出費にも対応することができます。
一般財形の条件は以下の通りです。
使用目的 |
自由 |
契約制限 |
一人一契約 |
積立期間 |
3年以上、給料・賞与から定期的に積み立てを行うこと |
非課税措置 |
なし |
一般財形は目的が決まっていないけれど、コツコツと貯めたい人に向いている制度と言えます。
出典:はたらく人とがんばる社会の財形 「一般財形」http://www.zaikei.taisyokukin.go.jp/service/save/general.php
住宅財形
住宅財形は文字通り、マイホーム購入やリフォームのための資金づくりを目的とした制度です。住宅以外の用途で解約する場合、ペナルティがあるので注意しなければいけません。逆にマイホーム購入という目標のための貯金であれば大きなメリットを得ることができます。
住宅財形の条件は以下の通りです。
使用目的 |
住宅取得、工事費が75万円を超えるリフォームなど |
契約制限 |
一人一契約 |
積立期間 |
5年以上 |
非課税措置 |
利子等あり ※後述「財形貯蓄のメリット」参照 |
ペナルティ |
住宅以外での引き出しの場合 預貯金の場合:5年間さかのぼり、利子について課税される。 保険商品の場合:解約時に差益が発生するため、全期間の利子に対し課税される。 (ただし、災害、疾病や寡婦(寡夫)になった場合の引き出しには非課税措置が取られている) 出典:厚生労働省 URL http://www.zaikei.taisyokukin.go.jp/pdf/tokurei_haraidashi.pdf |
その他条件 |
契約時に55歳未満であること |
マイホームの条件については
・床面積が50m2以上であること
・20年以内に建設された中古住宅(耐火構造:25年以内)または一定の耐震基準を満たすもの
・購入する住宅には勤労者が住むこと。単身赴任の場合はその家族が住むこと。
・リフォームの場合、床面積が50m2以上であること
・リフォーム費用が75万円を超えること
以上が住宅財形を引き出すための主な条件となります。
出典:はたらく人とがんばる社会の財形 「住宅財形貯蓄」http://www.zaikei.taisyokukin.go.jp/service/save/house.php
年金財形
年金財形は、はたらく人の老後の資金づくりを目的とした積立制度です。60歳で退職後、65歳まで公的年金が支払われない間のつなぎとして利用している人も多く、将来の不安を少しでも解消したい人におすすめの財形です。
年金財形の条件は以下の通りです。
使用目的 |
年金受取 |
契約制限 |
一人一契約 |
積立期間 |
5年以上 |
受取期間 |
60歳以降に5年以上20年未満 |
非課税措置 |
利子等あり ※後述「財形貯蓄のメリット」参照 |
ペナルティ |
年金以外での引き出しの場合 預貯金の場合:5年間さかのぼり、利子について課税される。 保険商品の場合:差益について一時所得課税(差益-50万円控除)×1/2に総合課税となる。 (ただし、災害、疾病や寡婦(寡夫)になった場合の引き出しには非課税措置が取られている) 出典:厚生労働省 URL http://www.zaikei.taisyokukin.go.jp/pdf/tokurei_haraidashi.pdf |
その他条件 |
契約時に55歳未満であること |
年金財形は将来に向けたお金を確実に貯めたい人に向いている財形だと言えます。
出典:はたらく人とがんばる社会の財形 「財形年金貯蓄」http://www.zaikei.taisyokukin.go.jp/service/save/pension.php
財形貯蓄のメリット
上記では財形貯蓄制度について説明しましたが、財形貯蓄を行うメリットはあるのでしょうか?ここでは財形を行う5つのメリットを紹介します。
550万の非課税枠
財形を行う一番のメリットは非課税枠があることです。
3つの財形のうち、住宅財形と年金財形は2つの合計金額が550万円までは元本から生じる利子に対して非課税になります。ただし、使用目的に反した解約はペナルティがあるので注意してください。
非課税になる保険型
財形貯蓄には「貯蓄型」と「保険型」という2つの運用スタイルがあります。貯蓄型は銀行や証券会社の金融商品で運用されます。
保険型は生命保険会社、損害保険会社、生命共済等の保険商品で運用され、保険料や掛け金が385万円までに発生する利子に対しては非課税となります。550万円から385万円を引いた残りの165万円については住宅財形の非課税枠として使用することができます。
融資制度が使える
財形住宅融資という制度があり、財形貯蓄を行っている人なら誰でも利用することができます。主に住宅購入時に組むローンのことですが、一般財形、住宅財形、年金財形のうちどれか一つでも契約していれば融資可能となります。
融資制度を利用する人はいくつかの条件をクリアする必要があります。
・購入またはリフォームする家に自分が住むこと
・一般財形、住宅財形、年金財形のうちいずれかの貯蓄を1年以上続けている人
・申し込みする2年以内に財形貯蓄を始めた人
・申し込み時点での財形貯蓄の残高が50万円以上ある人
住宅融資制度の金利は5年間の固定金利ですが、常用労働者数が300以下の中小企業に勤めている人や18歳以下の子育て中の家庭は金利引き下げの特例があり、当初5年間は申し込み時点の金利から0.2%引き下げられる特別措置が取られています。
平成30年4月1日以降の金利は
通常金利 0.67%(財形転貸融資) 0.79%(住宅金融支援機構 財形住宅融資)
中小企業勤労者・子育て勤労者 上記金利の -0.2%です。
ちなみに主要都市銀行の3月の5年固定金利の最低金利は0.8%なので、住宅融資制度を使うことは大きなメリットがあると言えます。
出典:ZAI ONLINE 「2018年3月最新版 住宅ローン金利動向を借り換えプロが解説!17銀行の金利を比較してお得なローンを探そう」URL http://diamond.jp/articles/-/127188
貸付金額は財形貯蓄の10倍まで金額が可能で、最高4000万円まで借りることができます。たとえば財形貯蓄残高が100万円の人は1000万円まで借りることができます。資金が足りない場合は残りをフラット35と併用することができます。
また、財形融資制度の中には、財形住宅融資のように事務手数料・保証料といったローン以外での費用がかからないものもあります。
天引きなので貯金できない人も貯められる!
貯金ができない人の特徴に「手元にあるお金はすぐに使ってしまう」という性格の人が多くいます。そんな人には通帳に入る前に会社に預けておきましょう。財形は給料から自動的に天引きされるので、なかなか貯金ができない人もほぼ強制的にお金を貯めることができます。
また、給与明細にも財形貯蓄の残高が記載されるので、目に見えて溜まっていくのを楽しみにするのもいいですね。
引き出しにくいのでお金が貯めやすい
財形を解約するときには会社の窓口や提携先の金融機関の窓口を通さなければならず、必要書類の記入や署名・捺印などの事務的な手間がかかります。また、解約してもすぐにお金が手に入らないことがあります。
一般財形は1年以上経たないと解約が出来なかったり、住宅財形・年金財形は使用目的以外の引き出しは課税されたり、引き出しにくいというデメリットが逆にお金を貯めやすくなるというメリットになることもあります。
財形で注意すべきこと
財形貯蓄についてもメリットを述べてきましたが、財形を行う上で気を付けたいポイントがいくつがあります。
一般財形は課税される
住宅財形や年金財形には非課税枠がありますが、使用目的が自由な一般財形には非課税枠は設定されていません。通常の預金同様、利子に対し20.315%が課税されます。一般財形はあくまでも自動的にお金を貯めたい人に向けられた貯蓄制度だという認識を忘れないようにしましょう。
住宅財形と年金財形は目的以外に利用すると課税対象となる
お金を貯める目的がはっきりしていれば、財形貯蓄の恩恵を十分に受けることが可能ですが、目的外の引き出しはペナルティがあり、利子や差益に対して課税されます。したがって、財形のメリットを受けることができなくなります。
財形の種類は途中で変えられない
財形は一度契約すると、途中で財形の種類を変えることはできません。老後のために年金財形をしていたが、住宅を購入することになったので住宅財形に変更したい…ということができず、目的以外の引き出しとして見なされてしまいます。契約時にはよく考えて財形の種類を選ぶようにしましょう。
退職したり再就職先に財形制度がないと?
財形は勤めている企業の福利厚生の一環であり、退職すると一旦は解約の扱いになります。もし、新たな就職先に財形制度があれば、2年以内に手続きを行うと非課税のメリットを引き継いだまま新たな財形貯蓄の口座に移転することができます。
財形制度のない会社に就職した場合には、財形は払い出すことになります。その場合、最長5年間にさかのぼり利子に対して課税されることになるので、転職の際は財形制度の有無を確認する必要があります。
まとめ
財形って何?と思っていた人も少しは財形について興味を持った人もいるのではないでしょうか?これからの自分のライフイベントと照らし合わせて、あなたも財形貯蓄を始めてみてはいかかでしょうか?
監修:上津原 章(ファイナンシャルプランナー)