住宅ローン契約時の団信(団体信用生命保険)選び注意点

住宅ローンの団信(団体信用生命保険)についてどれくらいご存知ですか?以前は保険料負担が重い、保障内容が限られている、といったイメージもあったのではと思います。最近の団信には様々な特徴が見られ、住宅ローン選びの決め手にもなると言っても過言ではないかもしれません。団信に関する新しい情報や選ぶときの注意点についてご説明していきます。
団信とは
団信(団体信用生命保険)とは、加入者(住宅ローンの債務者)に死亡など万が一のことが起きた場合に、ローン残高が保険金で返済されるというものです。
万が一の際は住宅ローン返済が免除される
団信は住宅ローンを利用している人(債務者)を被保険者、銀行など(債権者)を保険契約者および保険金受取人として保険契約されます。債務者に万が一(死亡または所定の高度障害状態)のことが起きた場合に保険金が債権者に支払われ、その保険金がローン残高の返済に充てられるという仕組みです。
一般的に債務者は一家の収入を支える方なので、万が一の場合に住宅ローンの返済が続くかどうかは、ご家族その後の生活に大きく影響します。
出典:団体信用生命保険について知りたい|生命保険文化センター
http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifeevent/house/9.html
民間金融機関の住宅ローンを利用する場合、団信加入は必須
銀行などの民間金融機関では、団信加入が住宅ローン利用の条件となっています。団信は生命保険なので、加入には健康状態の告知(条件により健康診断書の提出も求められる)が必要であり、健康状態によっては団信に加入できないことがあります。
出典:団信・全疾病保障|住信SBIネット銀行
https://www.netbk.co.jp/wpl/NBGate/i900500CT/PD/hl_ins
フラット35を利用する場合、団信加入は任意
「フラット35」は住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利住宅ローンです。銀行など民間金融機関を通じて申し込むことができます。フラット35に関しては団信加入が任意となっているので、何らかの理由で団信に加入しない場合でもフラット35は利用できます。
また健康上の理由で団信に加入できないという方でもフラット35で住宅ローンを利用することが可能です。
出典:【フラット35】ご利用条件 団体信用生命保険|住宅金融支援機構
https://www.flat35.com/loan/flat35/conditions.html
条件は金融機関によって異なる
団信に加入するためには、主に年齢と健康状態が加入条件となります。金融機関により多少異なりますが、年齢条件は一般的な保障の団信で満18~20歳以上、満65~70歳までというものが多いです。疾病保障付き団信では加入時の年齢を50歳までとしているのが一般的です。
健康状態は金融機関指定の告知書に基づいて判断され、告知の内容によっては加入できないこともあります。一般的な団信に加入できない場合でも、加入条件を緩和した「ワイド団信」に加入できることもあります。
保障内容は一般的な団信と同じですが、金利が上乗せになる(年0.3%程度が多い)ほか、加入できる年齢条件等が異なる場合もあります。健康上の問題で団信に加入できるか心配な方は、借り入れを検討している金融機関にワイド団信の取扱いがあるかを確認しておくと良いでしょう。
出典:ワイド団信付住宅ローン|イオン銀行
https://www.aeonbank.co.jp/housing_loan/wide_danshin/
最近は特約が付いている
団信の基本的な保障は、死亡または所定の高度障害状態といった「万が一」の場合に保険金が住宅ローンの返済に充てられるというものです。しかし最近では慢性疾患に罹って収入が減ってしまった場合など、様々なケースで保障が受けられる団信が増えています。
団信に付けられる保障内容は扱っている金融機関によって異なります。各金融機関とも複数のプランを用意していることが多く、保険料負担や保障の手厚さを比較して選べるようになっています。団信に付けられる保障の種類については後で詳しくご説明します。
フラット35の制度変更点
平成29年10月1日申込受付分からフラット35の団信制度が改正されました。大きな2つの変更点についてご説明します。
団信保険料が住宅ローン金利に含まれるようなった
制度改正以前の団信特約料は、毎年1回ローン残高に応じた金額をまとめて負担することになっていましたが、平成29年10月1日以降にフラット35と新制度の団信(新機構団体信用生命保険制度)を申し込んだ場合は、フラット35の月々の返済額に団信の保険料が含まれます。
ただし団信加入は任意であり、健康上の理由等で団信に加入しなくてもフラット35を利用できる点は変更ありません。団信加入の有無によってフラット35の適用金利は異なります。
新制度団信の保障内容と保険料負担は次の通りです。障害や要介護の状態になったときの保険料を支払われる条件が分かりやすくなっている点にも特徴があります。(平成30年8月現在)。
新機構団信
・死亡したとき
・身体障害1級または2級に該当し身体障害者手帳の交付を受けたとき
上記のいずれかの場合に保険金が支払われます。
夫婦連生団信「デュエット」に加入できます(連生団信については後述します)。新機構団信付き「フラット35」の借入金利が適用されます。「デュエット」に加入する場合は上記借入金利に0.18%上乗せされます。
新3大疾病付機構団信
新機構団信の保障に加え、つぎの場合にも保険金が支払われます。
・3大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)が原因で一定の要件に該当したとき
・公的介護保険制度の要介護2~5のいずれかの状態になったとき
新機構団信付き「フラット35」の借入金利に0.24%上乗せされます。
出典:【フラット35】と【団信】が一つになってリニューアル|住宅金融支援機構
https://www.flat35.com/topics/topics_201703_danshin.html
団信保険料が引き下げられた
制度改正により団信特約料も引き下げられました。例として、機構団信に主債務者1人が加入し、元利均等返済で4,000万円の融資を受けた場合(返済期間40年未満)の初年分団信特約料の目安は、
平成29年9月30日以前申込の場合 143,100円
平成29年10月1日以降申込の場合 139,100円
となっています。
住宅金融支援機構のホームページでは、初年分の各種団信特約料の目安を早見表で確認できるほか、希望の条件を入力し団信特約料の目安を計算することができます。
出典:機構団信特約料シミュレーション|住宅金融支援機構
https://www.simulation.jhf.go.jp/simulation_danshin/index.php
主な特約の種類
各金融機関では様々なリスクに対応した団信プランが用意されています。よく見られる保障付き団信についていくつかご紹介します。
がん保障付き団信
死亡・所定の高度死亡状態に加え、責任開始日を含めて90日間の免責期間を経過した後、がんの診断が確定された場合も保険金が支払われ、住宅ローン残高が0円になる団信です。
特徴あるがん保障付団信として、じぶん銀行の「がん100%保障団信/がん50%保障団信」があります。死亡・所定の高度障害状態・余命6ヶ月以内と判断された時(「リビング・ニーズ特約」といい、じぶん銀行の全ての団信についています)以外にも、がん(所定の悪性)新生物の診断が確定した場合にがんの進行度に関わらず、ローン残高が「がん100%保障団信」は0円、「がん50%保障団信」は1/2になります。
がん50%保障団信の場合は、がん診断の保険金が支払われローン残高が1/2になった後も死亡・所定の高度障害状態やリビング・ニーズ特約の保障は継続します。がん50%保障団信は借入金利の上乗せ無しで加入でき、がん100%保障団信は年0.2%借入金利の上乗せがあります(平成30年8月現在)。加入できるのはいずれも満50歳までの方です。
出典:がん100%保障団信/がん50%保障団信|じぶん銀行
https://www.jibunbank.co.jp/products/homeloan/insurance/
疾病保障付き団信
死亡・所定の高度障害状態に加え、生活習慣病などの疾病に罹り所定の状態になった場合に、住宅ローン残高が0円になる保障がついた団信です。がん・急性心筋梗塞・脳卒中の3大疾病について保障するものや、3大疾病に高血圧症・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎を加えた8大疾病を対象とするものがあります。
例えばイオン銀行の「8疾病保障プラス付住宅ローン」はつぎのような保障内容となっています。
・がん(悪性新生物)と生まれて初めて診断された場合、進行度に係わらず住宅ローン残高が0円になる(免責期間90日間)
・急性心筋梗塞、脳卒中で所定の状態が60日以上継続した場合住宅ローン残高が0円になる。また就業不能状態となった場合は最長2ヶ月間のローン返済額が保険金として支払われる(免責期間3ヶ月間)
・高血圧症、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎により就業不能状態になった場合、最長12ヶ月間のローン返済額が保険金として支払われる。また就業不能状態が12ヶ月間継続した場合は住宅ローン残高が0円になる(免責期間3ヶ月間)
加入できるのは20歳以上50歳未満(ローン完済時80歳未満)の方で、健康状態告知による審査が必要です。借入金利は年0.3%上乗せになります(平成30年8月現在)。
出典:8疾病保障プラス付住宅ローン|イオン銀行
https://www.aeonbank.co.jp/housing_loan/8disease/
就業不能保障付き団信
死亡・所定の高度障害状態に加え、疾病等で働けない状態が続いた場合に保険金が支払われます。例として中央ろうきんの「就業不能保障団信」の場合、就業不能状態が3ヶ月を超えるとローン返済額と同額の保険金が支払われ、12ヶ月を超えると住宅ローンの残高相当額の保管金が支払われます。
「就業不能」とは、治療のために病院等へ入院している、または医師の指示による在宅療養中で所定の状態(身のまわりのことにある程度以上の介助が必要、日中の50%以上または終日就床している、自力での外出等がほぼ不可能、など)であることとされています。加入には年齢要件があるほか、保険料相当額として借入金利に年0.1%上乗せされます(平成30年8月現在)。
出典:就業不能保障団信|中央ろうきん
http://chuo.rokin.com/loan/jutaku_loan/assurance/
連生団信
連生団信とは夫婦で加入し、返済期間中に夫婦のどちらかが死亡または所定の高度障害状態になった場合に保険金が支払われ、住宅ローン残高が0円になるというものです。
一般的な住宅ローンでは夫婦のどちらかを主債務者、その配偶者を連帯債務者とした場合、住宅ローン残高が0円になるのは主債務者に万が一のことがあった場合のみです。連生団信は夫婦のどちら(主債務者または連帯債務者)に万一のことがあっても、住宅ローン残高が0円になることに特徴があります。
注意点としては、保険金により免除された部分のローン金額(もうひとりの債務者が返済するはずだった金額)が一時所得とみなされ所得税の対象になる場合があるということです。ローン残高が0円になっても税金の負担が重くなってしまう可能性があることを考えて検討することが大切です。
三井住友銀行の「クロスサポート」の場合、対象となる住宅ローンの融資利率に年0.18%の金利が上乗せされます(平成30年8月現在)。借入期間中の任意脱退はできません。
出典:連生団体信用生命保険付住宅ローン(「クロスサポート」)|三井住友銀行
http://www.smbc.co.jp/kojin/jutaku_loan/shinki/anshin/cross_support.html
自然災害時特約付き団信
地震や水害などの自然災害によってマイホームが損害を受けた場合に、罹災の程度に応じて最長24回返済済みの住宅ローン相当額が払い戻される特約が付いている団信です。
注意点は、払戻し期間の住宅ローン返済がなくなるのではなく、毎月の住宅ローンの返済をした後に金融機関所定の方法で払い戻しされるということです。つまり特約が適用されても通常通り住宅ローンの返済を行う必要があります。また払戻金は雑所得として所得税の対象になります。
例としてみずほ銀行の「自然災害支援ローン 約定返済プラン」では、地震・津波・噴火・落雷・水災(豪雨やこう水、土砂崩れ等)・風災(台風、竜巻等)・ひょう災・雪災
などの自然災害を直接または間接の原因として起きた、住宅の火災・損壊・埋没・流出を対象としています。
払い戻される期間は、「全壊(全焼・全流出を含む)」で最長の24回分、「大規模半壊」で12回分、「半壊(半焼を含む)」で6回分となっています。罹災の程度は市町村等が発行する罹災証明書の記載により判断されます。
住宅ローンの延滞等がある場合は特約が適用されないので注意が必要です。債務者の申し出により途中解約も可能です。契約する住宅ローンの融資利率に年0.1%の金利が上乗せされます(平成30年8月現在)。
出典:自然災害支援ローン 約定返済プラン|みずほ銀行
https://www.mizuhobank.co.jp/retail/products/loan/housing/new_branch/shizen_saigai/index.html
団信選びの注意点
団信に共通する注意点を挙げています。詳細については各金融機関により異なるので、住宅ローンの利用を考えている金融機関に確認する必要があります。
途中から特約を追加することはできない
加入済みの団信の保障内容は変更できないので、後から保障内容を追加することもできません。必要な保障が含まれているかよく確認してから申し込むようにしましょう。
途中で特約だけ外すことはできない
例えば上乗せ金利を軽減したいので保障内容を減らしたい、ということも加入後はできません(一部の特約を除く)。多くの保障を付けたくなるものですが、団信の保障は住宅ローンに関する部分のみということを考え、無理なく必要な保障が受けられる団信を選びましょう。
契約年齢に上限が設定されている場合がある
加入できる年齢の上限は、死亡・所定の高度障害に対して保険金が支払われる基本的なな団信では満70歳頃まで、疾病保障付き団信では満50歳頃まで、というのが一般的です。また上限に近い年齢で加入しても、保障される上限年齢までの期間が短いという場合もあるので注意が必要です。
商品の名前が同じでも保障内容は金融機関によって異なる
保障内容から商品名が付けられている団信が多く、保障内容や条件が大差ないこともあります。しかし保障内容の詳細や上乗せ金利など異なる点も多いので、よく比較検討することが大切です。不明な点は事前に金融機関に問い合わせるようにしましょう。
保険料の増加分は生命保険の見直しで補う
団信を申し込むときに、すでに他の生命保険等に加入している方が多いと思います。団信分の保険料増加が負担になる場合は、現在加入している生命保険の内容を見直すことをおすすめします。
万が一のときに団信で保障される住宅ローンの部分と、それ以外の生活費などにかかる費用の保障とのバランスを考え、過剰な保障内容で保険料負担が重くならないように注意しましょう。
保障内容を正確に把握して比較検討する
住宅ローンを利用する金融機関を選ぶ際に、どのような団信を扱っているかに着目するのも重要なポイントです。住宅ローンの金利プランだけでなく、団信の保障内容も正確に把握し、複数の金融機関を比較検討することがこれからの住宅ローン選びに重要なポイントです。
まとめ
・団信(団体信用生命保険)とは、死亡や所定の高度障害状態のときに住宅ローンの返済が保障される生命保険制度
・民間金融機関の住宅ローンの場合団信加入は必須
・フラット35の場合団信加入は任意
・団信加入の2大条件は年齢と健康状態
・フラット35の団信は平成29年10月1日制度改正され、保険料が借入金利に含まれるようになり保険料も引き下げられた
・死亡や高度障害に加え、疾病や就業不能などの保障が付いた団信が増えている
・「がん保障付き団信」はがんと診断されると保険金が支払われる
・「疾病保障付き団信」は疾病により所定の状態になったとき保険金が支払われる
・「就業不能保障付き団信」は病気等で働けない状態が続くと保険金が支払われる
・「連生団信」は夫婦のどちらかが万が一のときにローン残高が0円になる。課税関係に注意が必要
・「自然災害時特約付き団信」は自然災害のときにマイホームの罹災程度に応じて返済済みローン金額の一部が払い戻される。返済自体はなくならないことと、雑所得として課税されることに注意
・団信加入後の保障内容変更は不可。保障内容や条件、上乗せ金利、他に加入している生命保険との関係等を把握し、よく比較検討して選ぶことが必要