【FP監修】住宅ローンの仮審査前に絶対確認しておくべき4つのポイント

日本の住宅価格は、異常なほどの平成初頭の好景気から平成3年のバブル崩壊を受けて下落を続けていましたが、今やすでに下落局面からは脱して都市圏等では上昇しています。つまり、マイホームを購入するには絶好のチャンスとなっています。
それでも住宅価格は、年収の5倍程度の価格になっており、ほとんどの方は住宅ローンを利用しないで中々マイホームは手に入れることは出来ません。しかしながら、住宅ローンにはかなり厳しい審査があり、まず最初の段階である仮審査に通らなければマイホームを手に入れることはできないわけなのです。
それではマイホーム購入のキーポイントとなる住宅ローンの仮審査について、その内容と審査に通るためのポイントについてもご説明していきます。
1:最初のハードル住宅ローンの仮審査とは?
大抵の方は住宅を購入しようと行動してようやく物件を見つけた時には、最初に住宅ローンを申し込む必要がでてきます。不動産販売業者などを通して申し込みをしたり、直接銀行に相談に行ったりすることもありますが、その際には第一のハードルとしてまず仮審査を受ける必要があります。
いわゆる仮審査の内容とは?
銀行の住宅ローン審査の第一段階(ハードル)になる仮審査とは、申し込まれた方の個人属性の確認や物件の評価額、内容をざっくりと確認する形になります。
なお、個人属性というのは、世帯主・住所・年齢・年収・勤務形態・勤続年数などの社会的な階層を示す大切な個人情報のことを指します。
住宅ローンの仮審査でまずチェックされるポイントとは?
通常は人生最大の負債である住宅ローンは、銀行などのフリーローンやカードローンと違って、10年から35年にわたる長期間にわたる融資になります。仮審査では、その間の通常返済を遅滞なく履行できるという借入人の返済能力を確認する必要があり、個人属性が一定レベル以上であることが最低条件になります。
また、貸し手にとって担保物件(原則融資対象)は借入人の返済が滞った時に転売をして資金回収が可能な価値のある物件かの確認も債権保全の上で大変重要となります。
仮審査はそれらを短期間に確認するために行われているものであり、以下のような項目が標準審査されています。
完済時の年齢について
住宅ローンは上記のように長期の融資になりますが、基本的には完済時の年齢は75歳までになっている場合が多いと言えます。
申し込まれた住宅ローンの借入期間においても原則75歳までに完済が可能になるかの確認が行われます。ただし例外があり、二世代ローンの場合は引き継がれる方の年齢で確認されます(関係属性)。
健康状態について
住宅ローンは個人融資の中でも最も長期間にわたるため、その長い期間の返済に耐えられる健康状態にあることが重要な必須条件になります。
仮審査段階では、住宅ローンのために特に健康診断などを要求されることはありませんが、銀行の担当者から見た外見と面談での確認で判断されるわけです。
ただし、本審査においては、団体信用生命保険の確認方法として既存の健康診断書などを要求されることがまれにあります。
借入時の年齢について
住宅ローンは長期間の融資であり、仮審査の段階で、完済時年齢75歳までの期間が短い場合(10年未満など)や、健康上問題があるように見える場合には融資を断わられる場合も当然あり得ます。
年齢が高い場合にはその分返済期間が短くなり、月々の返済負担が大きくなるため、審査上は一段と不利になるわけです。
担保の評価について
建設請負業者や販売業者からの資料によって物件の詳細が分析され、担保評価額が借入希望額を上回っているかどうかのおおまかな判断を行います。
ただし、まだ仮審査の段階では物件評価も担保評価もあくまで仮のものであり、本審査においては評価鑑定などの手段も使われます。
勤続年数について
長期間にわたって住宅ローンを返済するためには、継続的に安定した一定レベルの収入が必要であり、それを確認(可否判断を可能)にするのが勤務する会社の勤続年数になります。勤続年数が長ければ、地位も高くなり収入もそれなりに期待できるからです。
お勤めの場合で勤続年数が短い場合には、転職する可能性も比較的に高いと見なされ、審査的には評価は低くなると言えます。
年収について
住宅ローンを返済するためには、その融資額に見合った毎月の返済額を支払うことのできる収入が必要です。通常は、年間収入の3割程度が年間返済能力の限界と言われており、それを越える借入希望額の場合には、単独では審査に通ることは難しくなるわけです。
連帯保証人について
連帯保証人は、通常、現在の住宅ローンにおいては特段立て無くても融資を受けることはできます。ただし、連帯保証人を立てない場合には、保証会社の保証を受けることになり、この保証料が諸費用としてかなりの部分を占めることになるわけです。
そのため、連帯保証人が立てられる場合には諸費用をかなり安くすることができます。但し、連帯保証人にも審査が行われますので、この保証人にも資産がなく、高齢の親(別途担保提供者は可)の場合などには審査が通らない場合もありますので、注意して連帯保証人を依頼する必要があると言えます。
返済比率について
返済比率は、年間収入に対する住宅ローンの年間返済金額の割合で、返済能力を計る際の目安になるものです。基本的には20%程度までが無理なく返済できる負担率ですが、大抵の金融機関の審査では30%程度までは許容してくれます。
参考:フラット35の場合は年収400万円未満で30%、400万円以上で35%になっています。また、個人事業主や会社の経営者などは日本政策金融公庫等からの事業資金の借入がある場合は、これらの借入分を含めて融資の可否が判断されます。
将来的に役職が上るなどで、余裕が出てくることを前提にしている訳です。
ただし、余裕のない無理な借入は、入居後の生活に当たって住居費の負担が重くなり生活的にも無理を強いることになりますので、長い期間では離職や病気に繋がる可能性もあり、注意が必要です。
融資可能額について
融資可能額の判断は、金融機関で行われますが、返済比率も合わせて検討することが重要です。融資可能額自体の判断は収入と返済比率から、どの程度まで融資が可能かを数字で判断します。
通常は、返済比率が30%までは融資は可能ですが、それだけでなくさまざまな要素も含めて総合的に判断されます。これは金融機関の判断です。ご自分がいくらまで借入が出来るのかと個々人の返済負担度合とは別物ですのでよくよく注意して検討しましょう。
基本的には住宅ローンに限らず、通常は借入をする方の返済能力に応じて融資可能額は決まってきます。返済比率だけでなく、個々人の他社の借入金額、返済実績、勤務先から見た収入の安定性などを勘案して総合的に決まるわけです。
雇用形態について
住宅ローンは、長期間にわたる融資であるため、雇用形態は継続的な収入の安定性につながる主に正社員であることが基本的な条件になります。契約社員やアルバイトの場合には、雇い止めの可能性が高いため、継続的に安定した収入が望めませんので、通常、審査には通りません。
他債務等の取引状況について
金融機関、特に銀行の場合には、借入申込人が他で借入やクレジットカード利用額がある場合には、借入申込人の同意を取り付けた上で個人情報を取得して、その金額と返済状況を幅広く厳しく調査します。個人の借入やクレジットカードの利用情報は、これらの個人情報を取り付けた信用機関からの情報で判断されるのです。
金融機関が個人情報を取得できる信用機関はいくつかあります。銀行業界ではKSC(全国銀行個人信用情報センター)がありますが、ただそれだけではなく、消費者金融業界のJICC(日本信用情報機構)・クレジットカード業界のCIC(CREDIT INFORMAITION CENTER )の情報も住宅ローンを取り扱う金融機関は見ることができると心得ましょう。
それらの情報を最大すべて見て判断するものと心得る訳です。
過大な借入があったり、返済で延滞がある場合には審査で通ることはかなり難しくなると言えます。
【参考】KSC:https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/
仮審査の期間について
住宅ローンの仮審査にかかる期間は、金融機関によって異なりますが、一般的には1~2週間程度で回答されます。早いケースでは3日程度のところもありますが、早すぎる場合には審査に通っていない可能性が高いと言えます。
他社借入で現在延滞がある場合にはすぐに結論(断り)が出るためです。結論が出るまではドキドキしながら待つことにもなりますが、審査に期間がかかっているということは、ボーダーライン上にあり詳細に検討しているということです。期待して待ちましょう。
また、1つの金融機関で否決だからといってすぐに諦めるのではなく、別の金融機関への借入も検討しましょう。個人事業主や会社経営者の方も同じです。メインバンクで断られたとしてもサブバンクや新規バンクで融資可能なケースもある訳です。
2:住宅ローンの仮審査に必要な書類とは
それでは、住宅購入を決意して金融機関に住宅ローンを申し込んだ場合に必要になる書類について見ていきましょう。
基本的には審査項目を具体的に確認できる書類になります。勤めている場合と自分で事業をしている場合には書類に若干の違いがあります。まず本人確認ができる書類などはどのケースでも必要になり、その確認ができて初めて審査に入れるのです。
また、仮審査の段階ではあくまで仮ですので必要書類はコピーの提出で大丈夫です。また、印鑑も認め印で大丈夫です。
企業に勤めている方の場合について
企業(会社員)に勤めている方の場合には、次の書類が必要になります。
・本人確認書類コピー(運転免許証・マイナンバカードなどの裏表両方)
・源泉徴収票コピー(会社から年末にもらう)
・健康保険証コピー(裏表両方)
・物件資料(建設請負業者・住宅販売業者などに用意してもらいます)
・認め印(シャチハタは不可)
などが一般的です。
なお、新卒など会社の勤続年数が1年未満の場合には、源泉徴収票に代えて直近の給与・賞与の明細も必要になります。(ただし、3年未満の勤続年数ということで仮審査上かなり不利と言えます。)
また、住宅の買い替えですが自宅が持ち家の場合には、自宅の登記簿謄本や住宅ローンの借入明細も必要になる場合があります。この書類を必要とすることは、個人事業主や会社経営者の場合にも共通です。
個人事業主の場合について
個人事業主の場合にも収入関連書類以外はあまり大差なく、次の書類が必要になります。
・本人確認書類コピー(運転免許証・マイナンバカードなどの裏表両方)
・事業の確定申告書、決算書3期分コピー(原則3期分、例外的に1期分など)
「3期分の平均や一番低い所得を重視」
・健康保険証コピー(裏表両方)
・物件資料 (建設請負業者・住宅販売業者などに用意してもらいます)
・認め印(シャチハタは不可)
などです。
ただし、店舗兼住宅のニーズが高いため、その関連書類が必要です。これは、住宅部分の床面積部分についてのみ住宅ローンが適用されるからです。
収入書類ですが個人事業主の場合は、年間収入の継続的な安定性を確認するために3期分の決算書が要求されます。青色申告書類がオススメです。
経営者の場合について
会社の経営者の場合には、会社と個人の両方の審査が必要になります。その必要書類とは次のものです。
・本人確認書類コピー(運転免許証・マイナンバカードなどの裏表両方)
・会社の決算書3期分コピー(原則3期分、例外的に1期分など)
・源泉徴収票3期分コピー(本審査では公的証明が必要)
・健康保険証コピー(裏表両方)
・物件資料 (建設請負業者・住宅販売業者などに用意してもらいます)
・認め印(シャチハタは不可)
になります。
個人事業主と同様、年間収入の継続的な安定性を確認するため、3期分の決算書や源泉徴収票も要求されます。
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3:住宅ローンの仮審査に落ちた人の主な理由とは
住宅ローンの仮審査に通らなかった方の場合には、その原因は複数あります。一番多いのは他社借入などですが、申込以外にも過大な既存の借入があったり、返済の遅れがあったりです。金融機関からすると住宅ローンの返済は最優先にして頂くというスタンスが存在するからです。それでは、延滞がある場合を中心に見ていきましょう。
信用情報機関の情報に「異動」という文字があるのはなぜ?
銀行などの金融機関がKSCなどの信用情報機関から個人信用情報を得た場合には、「未入金情報」や「異動」と記された異動情報が示されている場合があります。
異動情報には、借入やクレジットカード利用において「延滞、長期延滞、債務整理、自己破産・代位弁済など」の情報があることを示しているのです。
クレジットカード会社や消費者金融会社(ノンバンク)では、見ることができるのはJICCやCIC の異動情報に限られますが、銀行はそれ以外にもKSCの情報を見ることができます(登録情報開示報告書)。
特に銀行は、異動情報はすべての借入、クレジットカード利用の延滞情報を把握することができるわけです。この異動情報が入っている場合には仮審査に通ることはまずできません。
複数のローンを組んでいる場合について
銀行などの金融機関が見る信用情報機関の情報には、返済状況だけでなく、すべての借入、クレジットカード利用情報が詳細(記録情報なども=銀行などからの照会記録を含む)に含まれており、それらの残高がいつでも分かるようになっています。
住宅ローンを申し込んだ方が、何社ものカードローンを申し込むことや既に利用していたり、その金額が年収の3分の1近くになっている場合には、もちろん仮審査に通ることは難しいでしょう。また、クレジットカード残高についても相当な返済(あるいは解約)しない限り同様に審査上不利になります。
返済比率がすでに他の借入(カードローンは限度額、目的別ローン=例:自動車ローン等)でほぼ埋まっており、住宅ローンを返済する余力がないと判断されてしまうためです。
税金を支払っていない、または遅れているケースについて
銀行などの金融機関の審査では、所得税や住民税などの納税証明書(公的証明書類)を要求する場合があります。税金の滞納や未納(重要)を確認するためです。
税金の支払いに対する姿勢は、返済意識に通じており、税金が支払われていない場合には返済に対する意識(住宅ローンの返済を最優先とする)が希薄で返済が滞る可能性を示唆していると見られてしまいます。
また、そもそも租税債権はその他の債権に対して先立って徴収できるため、返済が滞った場合や自己破産や個人再生法の申請をした場合には、回収されたお金は国税や地方税などの税金が優先的に充当されます。このため、債権保全を念頭におく金融機関では審査上警戒せざるを得ないわけなのです。
4:住宅ローンの仮審査を行える場所とは
それでは住宅購入を決意して住宅ローンを申し込む場合、どこに仮審査を依頼すればよいのかを見ていきましょう。
各種金融機関の窓口での申込について
住宅ローンは、各種銀行や住宅取得支援機構(旧住宅金融公庫)などの窓口に直接申し込むことができます。ただし、普段より銀行との取引が親密な方の場合は、専属の担当者が決まっているケースが多く、その担当者を通して申し込むと必要書類など丁寧に教えてくれますので、もちろん記入箇所なども親切に教えてくれるでしょう。
インターネットよりの申込について
最近のネット銀行や新興の銀行(異業種参入)などの場合には、インターネットでも住宅ローンを申し込めるところが増えています。しかも、申込も簡素化され入力すれば簡単にすぐに仮結果を示して、金利なども教えてくれる場合もありますので、申し込みがしやすいかも知れません。
不動産会社・住宅展示場での申込について
大きな不動産会社や住宅展示場、マンション販売業者などは、大抵は提携銀行を持っており、上記の申込も可能ですがその業者を通して申し込むこともできます。何件も紹介している実績を持っているだけに、審査のポイントもよく知っており、申込み内容についてもさまざまなアドバイスをしてくれます。
特に普段より銀行などとの付き合いが少ない方の場合には利用される方も多いわけです。
まとめ
現在はマイホームを手に入れるチャンス(消費税UP前、地価が低く低金利時代、住宅ローン減税など)ですが、一般的には人生で一番大きな買い物です。どうしても住宅ローンのお世話になる必要が出てきます。しかしながら、住宅ローンを借りる場合にはまず仮審査を受けなければなりません。
最初の段階(ハードル)である仮審査は、住宅を購入できるかどうかを決める重要な審査となります。今回はこの住宅ローンの仮審査の審査内容や審査に必要な書類についてご紹介しました。
住宅ローンなどの申込をする前に仮審査のポイントを確認して対策をたてておくことで、審査に通りやすくなれば幸いです。また、マイナンバーカードの活用による今後の住宅ローン契約などでの新しい動きもあります。変化にも注意しながら今回ご紹介しましたキーとなるポイントを押さえて、ぜひ、マイホームを実現してください。
監修者:木村 正人(ファイナンシャルプランナー)