住宅には、賃貸と購入の2つの選択肢があります。多くはライフスタイルの変化に合わせて「どちらを選ぶか」を検討する機会が訪れますが、両者とも一長一短で、なかなか決断しにくいというのが本音でしょう。ここでは、いざそのときが訪れた際に合理的な判断を下せるよう、それぞれのメリットとデメリット両方の視点から徹底分析します。

賃貸のメリット

賃貸マンションやアパート、賃貸の一戸建ても含め、「まずは賃貸から」というイメージが定着しやすいのには、大きな理由があります。

環境の変化に簡単に対応できる

家族構成や住環境の変化に応じて、自由自在にライフスタイルに見合った広さ、家賃帯の住居へ引越しができるのが最大のメリットといえます。

この先の人生、どのように環境が変化していくか未知数です。時と場合によって柔軟な選択ができるのは精神的な面で負担は大きく変わります。

万が一、隣人トラブル等が発生した場合も引越しが容易ですし、何らかの事情で世帯主の収入が激減しないとも限りません。また老後まで加味すれば、最終的に老人ホームや高齢者向け介護施設へ入所するという選択を取ることもできますね。

税制面で有利

マンションや一戸建て等を購入すると毎年かならず「固定資産税」「都市計画税」の費用がかかります。一方、賃貸であればあくまで所有者は大家または管理会社になるため、間借りしている立場の入居者はそれらの税金を支払う必要がありません。

賃貸は節税としても効果的というわけですね。

大きな初期費用が不要

賃貸・購入いずれも住み始めてからしばらくは、さほど費用の開きはありません。ただ大きな違いは契約段階にあります。

購入の場合は初期費用として大きな金額を支払う必要があるため、購入時にある程度の元金を用意しておく必要があります。一方、賃貸の初期費用は購入に比較すると大幅に割安で済みます。

賃貸借契約の初期費用の項目は、大まかに以下の7つです。

  • 引越し料金
  • 敷金・礼金
  • 前家賃
  • 仲介手数料
  • 火災保険料
  • 鍵交換費用
  • 保証料

家賃帯が高めの賃貸住宅だとしても、数十万単位でおさまるはずです。数百万~場合によっては1,000万円単位の初期費用が見込まれる購入に比べると、最初の負担は遥かに少ないことがわかりますね。

賃貸のデメリット

一見、身軽に動けて初期の費用面でも言うことなしと思われる賃貸住宅ですが、少なからずデメリットも存在します。

家賃の支払いが半永久的に続く

購入の場合、住宅ローンの支払いが終われば住居費がぐんと減ります。しかしながら賃貸の場合は、住み続ける限り半永久的に家賃の支払いが続くという点が最大のネックです。

自分が働いているうちはさほど気にはならないでしょう。ただ、自分の老後を想像してみてください。退職し、定職に就かなくなって以降も果たして同じ家賃を払い続けられるでしょうか?

ですから「一生賃貸」を考える場合、老後の生活費に加えて「老後の住居費」も念頭に置きながら貯蓄をしておく必要があります。もし将来的に家賃を払うのが難しくなり、家賃帯の低い住居へ住み替えを検討したとしても、体の負担を考えると思うように引越しができないケースもあるようです。

自分の好みにアレンジできない

賃貸はあくまで「借りている」だけですので、退去する際に入居時と同様の状態にまで戻して返す必要があります。これを原状回復義務といいます。

(出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」)

入居の際に原状回復費用に充てる敷金を貸主へ預け、退去の際に充当する形です。もし不用意に部屋を改造したりしていた場合、ここで大きなリフォーム費用を請求される羽目になります。

このことから、賃貸を選択する以上は居住スペースを自由に装飾できないということになります。制約が多く、窮屈に感じる人もいることから十分デメリットになり得る要素です。

資産として残すことができない

賃貸の場合、賃貸借契約に則り一定期間「住まわせてもらっている」だけといえます。つまり、賃貸借契約を満了し、更新しなかった時点でその住居はあなたと何の縁もなくなるわけです。

いくら賃貸として長期間居住し、愛着が湧いていたとしても、厳密にいえばあなたの家ではないということです。あなたの資産ではないのですから、当然子どもに託すこともできません。

これが「賃貸は掛け捨て」といわれるゆえんというわけですね。

不動産購入のメリット

賃貸ひとつ取っても、メリットとデメリット両者の顔が存在することがよくおわかりいただけたと思います。

では同じ要領で、不動産を購入する場合についても検証を続けていきます。

高品質な物件に住める可能性が高い

賃貸専用の物件というのは、得てして設備が賃貸のグレード止まりです。一方、分譲・もしくは販売用一戸建てのケースでは設備グレードも申し分なく、一生住むのに相応しい高品質な住居であることがほとんど。

それは建物の構造に始まり、専有部分のクオリティや間取りなどにもあらわれます。

賃貸とは異なるラグジュアリー感を体感できるのは、不動産購入の大きなメリットといえるでしょう。

自由にアレンジできる

先の賃貸では、退去時の原状回復義務に基づき、居住スペースを自由に装飾することができないと解説しました。一方、物件を購入するケースでは借り物と違い、自身の「所有物」となるのですから、当然ながら装飾・改造も自由に施すことができます。

ライフスタイルの変化に応じて、間取りを変える工事も不可能ではありません。

資産として残すことができる

購入の場合、住宅ローン中の支払いの負担は賃貸に比べて比較的大きくはなりますが、最終的に住居を「資産」として残すことができるのが最大のメリットでしょう。

賃貸の場合はいくら長期間居住しようとも、自分の資産になることはあり得ません。ただし購入なら、その住居を後世に残していくことができます。

団体信用生命保険に加入すれば安心感を得られる

住宅ローンを組む際にほぼ必ずというほど加入を強制される「団体信用生命保険」。世帯主に万が一の事態(死亡、高度障害)が発生した際、その保険金で住宅ローンを返済するための保険です。

金融機関側としてローンの残高が支払われないまま放置されるリスクがなくなるだけでなく、加入者側としても、もしものことが起こっても住宅ローンをカバーできるという安心感から、気兼ねなく住宅ローンを組むことのできる双方にとってメリットの大きい保険です。

不動産購入のデメリット

賃貸と購入は表裏一体。賃貸にとってデメリットになり得る要素が、購入のケースでは解消されていることにお気づきかと思います。

では、賃貸にとってのメリットというのは、購入のケースではデメリットとなる側面があるのでしょうか。詳しく見て行きましょう。

大きな初期費用が必要

先ほど賃貸のメリットで「初期費用が少ない」と挙げましたが、まさにそのとおり。不動産購入では、購入する際に賃貸と比較して何倍もの高額な出費が見込まれるのが、最大のネックです。

不動産購入では、初期費用として以下の項目の出費があります。

  • 頭金(物件価格の1~2割)
  • 購入諸費用(物件価格の3~10%)

これら合わせて数百万円単位の出費は覚悟しておく必要があります。そのため元金を用意できないうちは賃貸に居住しながら、貯蓄をする世帯が多いようですね。

修繕費や管理費が発生する

不動産購入の中で、一戸建てに関しては毎月の住居費を全額「住宅ローン返済」へ充てることができます。しかしながらマンション購入の場合、毎月のローン返済のほか「管理費」「修繕積立金」が発生することに注意が必要です。

相場は2~3万円が目安ですが、マンションの場合は毎月の住居費からこれらの費用を差し引いた残りが、住宅ローン返済額へ充てられると覚えておきましょう。

資産価値が変動する可能性がある

物件の資産価値というのは、年々変動するものです。一生の買い物のつもりでも、環境やライフスタイルの変化によっては、売却して他の物件へ住み替える選択を余儀なくされることもあるでしょう。

ただし、時と場合によっては思ったような値段がつかなかったり、買い手が見つからなかったりといったケースも想定されるため、注意してください。現時点で人気の高い物件だとしても、10年後、20年後も同じとは限らないわけです。

最低限知っておきたい豆知識

「賃貸か、購入か」。多くの人が悩む分岐点だからこそ、ひとえに正解というものはありません。

ここで、判断の助けになるべき項目をいくつか紹介し、締めくくろうと思います。

どちらが良いとは簡単に判断できない

率直に申し上げれば、どちらが良いとは明確に断言できません。

収入が安定しないうちや、ライフスタイルが刻々と変化しやすい若年層は、賃貸を選択するほうが引越しもしやすく、経済的にラクといえるでしょう。ただし、老後にまで長く居住することを見据えるとしたら、話は別。退職までに老後の家賃として、住居費1,000万円超を貯蓄しておく必要があるからです。

一方、購入は最初の費用負担が大きくても、住宅ローン返済後は住居費の負担が軽くなるのがメリットです。収入が少なくなる老後も「マイホーム」で継続して居住できるというのは安心ですね。

マンションは戸建てよりも維持管理費用が高くなる傾向にある

先に解説したとおり、マンションは住宅ローン返済のほか修繕費や管理費といった諸費用が継続して発生します。そのぶん一戸建てに比較して住居費は割高になる傾向があるといえますね。

たとえ住宅ローンの返済を終えたとしても、それらの費用は継続して支払う必要がある点にも、注意が必要です。

タワーマンションは管理費と固定資産税が高額

一般的なマンションと比較して、いわゆるタワーマンションは管理費、並びに固定資産税が高額になる傾向があります。

(出典:財務省「平成29年度税制改正の大網」)

不動産購入時は新築を購入するケースもあると思いますが、特に新築のタワーマンションにおいては、非常に高い固定資産税が課されます。装飾等に応じて「資産価値が高い」と判断される場合には、さらに上乗せもあります。

より高層階になるほど税負担が重くなる制度もあるため、慎重に検討しましょう。

まとめ

賃貸でも購入でも、住まいのための貯蓄が必要である点は同じです。

これを機会に自分たちもライフプランを見直し、どの時期までにどの程度の貯蓄ができそうか考え、それをもとに判断すると良いかもしれませんね。