最近(2017年度の税制改正あたりから)特に「扶養」という言葉をよく聞きますよね。実は税法上の扶養と社会保険上の扶養では定義が異なります。そのため、税法上の扶養にはなっているけれども社会保険上の扶養にはなっていないなんて人もいます。

それでは意外と知っているようで知らない扶養についてそのポイントを詳しく見ていきましょう。

いわゆる扶養とは

単に扶養とは子どもなどを養っていることを指します。そして、扶養をしている人がいる場合には同じ収入であっても1人で暮らしている場合よりも生活の負担度合いが大きくなります。そのため、扶養をしている人の年齢や人数に応じて税金や社会保険の負担を減らす制度があるわけです。

所得税に関する扶養の範囲とその対象とは

所得税法上で扶養の範囲となる親族等とは年末基準で「納税者と生計を一にする配偶者以外の親族で6親等内の血族または3親等内の姻族」と定められています。

血族(けつぞく)「親子・兄弟等の血縁関係にある親族を指します。ただし、法的な意味を指す場合の血族とは必ずしも生物学上の血縁関係である必要はありませんので養子などの場合も血族となります。」

姻族(いんぞく)「配偶者や配偶者の血縁関係である親族を指します。つまり、配偶者の両親や兄弟姉妹などが姻族にあたります。」

参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm

扶養は同居している人に限定!?例外は?

扶養の対象となる条件には「生計を一にしていること」とあります。生計を一にしている状態とは基本的に同居している親族等だけと見えますが、必ずしも同居をしている必要があるわけでもありません。

子どもが通学のために下宿している場合や高齢で収入が少ない両親に仕送りしている場合なども「生計を一にしている」と認められる場合には同居していなくても扶養の対象となるわけです。

扶養控除の意味ってなに?

扶養控除とは納税者が扶養している収入が少ない親族等がいる場合に限り一定額を所得から控除できる制度です。仮に同じ収入の方の場合、1人で暮らしている方よりも収入の少ない配偶者や子どもを養っている方が担税能力(税金を支払う余力)も小さいため、扶養控除はその分の税金を優遇することを目的としているわけです。

扶養控除として所得から差し引くことができますので「控除額×税率(所得額によって決まる)」の金額部分が実際に支払わなくてもよい金額となるわけです。

配偶者に関する控除について

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配偶者に関する控除には配偶者控除と配偶者特別控除があります。それでは、それぞれの適用要件と控除額は一体どのようになっているのかも見ていきます。

最初に配偶者控除とは

配偶者控除とは所得(一定額以下)の少ない配偶者がいる場合に所得から控除できる制度です。配偶者控除の適用要件は以下の通りです。

①納税者自身の合計所得が1,000万円以下であること

②生計を一にする(同じ家計で生活している。必ずしも同居が必要なわけではない) 配偶者(妻または夫)がいること

③扶養の対象となる配偶者(妻または夫)の所得が38万円以下であること

④扶養の対象となる配偶者(妻または夫)が青色申告または白色申告の専従者として事業専従者控除を受けていないこと

控除額は納税者の合計所得金額により違って来ます。以下()内は70歳以上の配偶者の場合

900万円以下⇒38万円(48万円)

900万円超950万円以下⇒26万円(32万円)

950万円超1,000万円以下⇒13万円(16万円)

それでは配偶者特別控除とは何?

配偶者特別控除とは扶養の対象となる納税者の配偶者(妻または夫)の所得が「38万円超123万円以下」の場合に収入に応じて納税者の所得から控除できる制度です。

納税者と扶養の対象となる配偶者の所得によって控除額は決まります。「最大38万円から最低1万円」の所得控除となります。

参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm

配偶者以外の親族に関する控除はあるの?

もちろん配偶者以外の親族を扶養している場合は扶養控除があります。この扶養控除の対象となる親族は以下の通りです。

①納税者と生計を一にする配偶者以外の6親等内の血族または3親等内の姻族

②合計所得が38万円以下であること

③扶養の対象となる親族が青色申告または白色申告の専従者として事業専従者控除を受けていないこと

控除額は合計所得ではなく年齢等により異なります。納税者が扶養をしている子どもなどの年齢により金銭的な負担度合いには差があるため、担税能力を考慮して控除額が決められているわけです。

年齢16歳以上18歳以下⇒38万円

年齢19歳以上22歳以下⇒63万円

年齢23歳以上69歳以下⇒38万円

年齢70歳以上(同居) ⇒58万円

年齢70歳以上(非同居)⇒48万円

「19歳以上22歳以下の子どもなど」は大学生である可能性が高く学費や下宿費用等の負担が大きいため控除額がその分大きくなっています。また、70歳以上の両親等も介護費用がかかる場合があるため控除額がこちらもその分大きくなっています。

両親が仕事をリタイアしていて納税者と生計を一にしている場合は必ずしも同居をしていなくても扶養の対象となる可能性があります。扶養控除額が増えると節税に繋がりますので検討してみてはいかがでしょうか。

参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm

所得税の扶養と住民税の扶養の違いって何?

扶養控除は「所得税と住民税」に適用できます。基本的な考え方は同じですが所得税と住民税の扶養は何が違うのでしょうか。それでは、両者の違いをく詳しく見てみましょう。

最初に扶養控除の金額の違い

所得税と住民税では適用した場合の扶養控除の「金額」が違います。年齢16歳の子どもがいる場合の所得税の控除額は38万円ですが、住民税の控除額は33万円です。

次に反映させる年度の違い

反映させる年にも違いがあります。所得税の控除の場合は反映させる年の年末(12月31日)の扶養の状態により適用できます。ところが、住民税の控除の場合は適用する前年末の扶養の状態により適用することができます。

最後に扶養控除の対象となる条件と控除額の違い

扶養控除の対象となる条件にも所得税と住民税では違いがあります。まず、給与所得の場合は所得税の控除の対象となるのは給与所得が103万円までで、住民税の場合は給与所得が98万円までの方が対象となるという違いがありますが扶養控除を適用することができます。

参考:http://www.sumida-tax.jp/article/13857930.html

それでは所得税の扶養と社会保険の扶養の違いはどうでしょう?

「扶養」の意味には「所得税法上の扶養」と「社会保険上(健康保険や厚生年金)の扶養」があります。それでは両者にはどのような違いがあるのでしょうか。詳しく見てみましょう。

最初に対象範囲の違い

ずばり、「所得税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」とでは対象となる範囲が違います。まず、社会保険の扶養の対象となる家族の範囲とは、「配偶者と3親等内の親族」です。所得税と比べてみると「生計をともにしている実態の方」が優先されています。

所得税の扶養の対象とはならない「内縁関係の配偶者や内縁関係の妻や夫が亡くなった後の子供や両親まで」も対象とすることができます。社会保険の扶養のほうがより血縁関係等よりも生活の実態を鑑みて扶養の対象となるかを判断しているわけです。社会保険の生計を一にしている範囲は一般的には以下の通りと言われています。

同居している場合⇒収入が被保険者の収入の2分の1未満であること

同居していない場合⇒収入が被保険者本人からの仕送りより少ないこと

ただし、この基準はあくまで目安となるだけで、同居している場合等は収入が被保険者の収入の1/2を超えていたケースでも、例外的にその世帯の状況を総合的に判断して扶養の対象となる場合があるわけです。

次に扶養の収入基準の違いとは

もちろん、収入の基準にも違いがあります。社会保険上の扶養の対象については収入が130万円(「今後向こう1年間(12カ月)の収入が一定額(130万円)を超える見込み」という一般的な定義があります。障害者または60歳以上の場合は180万円)未満の場合には対象になります。

所得税法上の扶養とは異なり控除のある「所得」ではなくあくまで「収入」が基準となりますので、個人事業主などの場合で、経費が多く「所得」は少ない場合でも収入が130万円を超えると扶養から外れてしまう(国民年金保険料や国民健康保険料の支払い義務が発生)ことになります。

https://www.freee.co.jp/kb/kb-payroll/the-difference-on-dependants-in-social-insurance-and-income-tax/

最後に新しい配偶者控除とは?2017年の税制改正で変わったこと

「配偶者控除と配偶者特別控除」は2017年の税制改正で大きく変わりました。今回の制度は所得税で2018年(住民税は2019年)から適用されます。また、今回の改正では、納税者本人の年収や配偶者の年収によっても控除額が変わる仕組みとなりました。

それでは、これまでの制度と何がどう違うのか具体的にみてみましょう。

(1) 最初のキーポイントは配偶者控除額の上限引き上げです!
2017年の「配偶者控除・配偶者特別控除」の改正により所得控除額38万円の対象となる配偶者の年収の上限が「103万円から⇒150万円」に引き上げられました。配偶者控除の適用要件についてはこれまでと変わりませんが、配偶者特別控除の控除額が幾分拡大され、「103万円超150万円以下の所得がある配偶者」があっても納税者は38万円の所得控除が受けられるようになりました。

また、150万円を超えても38万円の控除枠が全て無くなるわけでもなく、段階的に控除枠が縮小していく仕組みになっています。つまり、「103万円~141万円のいわゆる壁から⇒150万円~201万円の壁に」変わりました。

つまり、配偶者の年収が2,016,000円(所得123万円超)以上となる方は配偶者特別控除(=0)を受けられません。この改正の背景にはこれまでの配偶者控除制度により、配偶者が年収を103万円以下に抑えるために努めて働くことを控えてしまったりすることがあります。

つまり、年収の上限を引き上げることで配偶者の活躍を促進するために今回法律が改正されました。この年収の引き上げにより実質的な「減税」となります。今回の税制改正により、年間の収入が増えた方が税金の方が高くなり手取り額が逆転してしまういわゆる「年収の壁」は緩和されました。

ただし、残念ながら社会保険における「年収の壁」はいまだに壁として残っています。年収が一定額を超えると納税者の配偶者は自分で社会保険(国民健康保険や国民年金保険等)に加入手続きをして保険料を負担しなければいけない為、年収が一定額を超えると手取り額の逆転現象が起きますので注意が必要です。

(2)納税者本人の所得によっても控除額が減少する!?
前述のように配偶者特別控除の対象となる配偶者(妻または夫)の年収の上限は引き上げられますが、控除額は「納税者本人の所得」によってもやはり減少、または0になってしまいます。

これまでは配偶者の年収によって配偶者控除・配偶者特別控除の控除額は算定されていましたが、「納税者本人(妻または夫:多くの場合夫)の年収」も新たに算定の要素として加わることになりました。これにより納税者本人の所得額が1,000万円(収入が1,220万円)を超えると配偶者控除そのものが受けられなくなりました。

つまり、納税者本人が高所得であれば、仮に配偶者の収入が0であったとしても配偶者控除を受けることができなくなります。つまりこれは高所得の納税者にとっては実質的な「増税」となります。

参考:https://www.nta.go.jp/users/gensen/haigusya/index.htm

まとめ

「所得税、住民税、社会保険」の扶養について少しはご理解いただけたでしょうか。それぞれ適用要件やメリットが異なります。また、適用できる(扶養となる)か否かによって支払う税金や社会保険料は大きく差が出て来ますので制度や適用要件を正しく理解して税金や社会保険料の節約に繋げると良いでしょう。

特に配偶者(妻または夫)がパートやアルバイトなどをしている場合、扶養から外れないためにも納税者本人の年収と配偶者の年収を加味して計算しなければならないため複雑な計算になりますので相当な注意が必要です。

また、2018年より従業員501名以上の会社に1年以上お勤めになる場合は106万の壁「社会保険加入(加入免除⇒「健康保険+厚生年金」加入)」にも要注意です。このように税制や社会保険等の制度改正が行われると個別のケースではメリットとなるかデメリットになるかは違いがあるものです。こうした制度の変化にはよく注意しましょう。

監修者:木村 正人(ファイナンシャルプランナー)