1年間の所得に対して決定する所得税、どの様な時に申告義務が発生するか正しく理解していますか?理解していないと、うっかり申告義務に違反して、納税漏れを起こしてしまうかもしれません。

正しく納税することは国民の義務なので、所得税の申告を忘れないように、申告義務について勉強していきましょう。

2種類の所得税と申告制度について


所得税には「申告所得税」と「源泉所得税」の2種類の納付方法があります。所得税とは何か、納付方法によって異なる2種類の所得税について解説します。

所得税とは?

所得税額を決める所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の10個の所得区分の事を指します。

税金に詳しくない人は「収入=所得」と考えがちですが、所得は収入からその収入を得るのに要した経費を控除した「純収入」であり全くの別物です。

八百屋さんでイメージすると、野菜を売って得たお金のことを収入と呼ぶのに対し、売上から野菜の仕入れ代、店舗代、お店の電気や水道料金など経費を引いて手元に残った金額が所得になります。

所得税とは、収入から経費を引いた(サラリーマンの場合は給与所得控除などがあります)純収入である所得にかかる税金を指します。

参考:国税庁 所得区分のあらましhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1300.htm

納付方法によって異なる2つの所得税

所得税は納付方法によって、「申告所得税」と「源泉所得税」にわかれます。どのような違いがあるのかというと、「働いてお金をもらった後」で自分がいくらの儲けがあったかを申告して払うか、「働いてお金をもらった時に既に税金が差し引かれている」かの違いです。

2つの納付方法を見ていきましょう。

「申告所得税」

申告所得税とは個人の所得を「申告納付制度」に基づき納める所得税の事を指します。申告納付制度は、「納税者ひとりひとりが自ら税務署へ所得等の申告を行う事により税額が確定し、納付する」制度であり、所得があった全ての人が正しくルールを守って申告することにより制度が維持されています。

参考:http://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/report/2005/04.htm

「源泉所得税」

申告所得税のようにお金をもらった人が申告するのではなく、給与や報酬を支払う側があらかじめ税額に相当する額を差し引いて納税する仕組みを源泉所得税と指します。

「そんな制度、あまり聞いたことない」と思うかもしれませんが、給料などはサラリーマンが給与や賞与を受け取る前に会社などの給料支払者が納税者であるサラリーマンの所得税を代替計算して源泉徴収する制度です。つまり、サラリーマンの手取りの給料は既に所得税が給与支払者によって差し引かれているのです。

所得税は「申告納税制度」が原則

源泉所得税も所得税の一種ですが、原則は申告納税制度です。つまり、納税者(所得者)本人が1月1日から12月31日までの1年間に稼いだ所得を基に自分自身で所得税額を計算し、税務署に申告・納付するのが原則です。

戦前は所得を査定する税務官署が税額を告知する制度がとられていましたが、その後、申告納税制度が導入されたことで、全ての国税の納税は申告納税制度が原則となりました。申告納税制度が正しく機能し続けるためには、納税者が所得税の制度を理解して正しく申告することが大切です。

出典:http://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/report/2005/04.htm

所得税の申告は必須?対象となる人は誰?

申告納税制度の原則に照らし合わせると、所得税の申告は必須のように思えてきます。ただ「毎年、所得税の申告をしている」という人の方が少数派なのではないでしょうか。所得税の申告が必要になるケース、不要なケースを見ていきましょう。

所得税の申告が必要なケース

サラリーマンの方は給与明細をチェックすると、所得税が給与から天引きされていることがわかると思います。所得税は、申告納付制度であり、確定申告が原則的には必要になりますが、企業で1年間働き、給与所得があり、その企業が「年末調整」をしてくれる場合は、企業が納税者の代わりに所得税を納付してくれるので確定申告は免除されます。

ただし、この年末調整による確定申告の免除制度には例外があり、例外に該当する人はサラリーマンであっても確定申告が必要になります。
具体的に、以下に該当する方は確定申告が必要になります。

◆給与収入が2,000万円を超えている

◆給与を2カ所以上から受け、年末調整されなかった給与の収入金額と他の所得金額の合計が20万円を超える

◆給与所得及び退職所得以外の「所得金額の合計額が20万円以上」となる

◆年の途中で退職し、年末調整を受けていない

◆住宅ローン控除を初めて受ける

ほかにも、「医療費がかかり過ぎた」「ふるさと納税でワンストップ納税を選択せずに寄付した」などの状況で「払い過ぎた税金を取り戻したい」とき、確定申告は義務ではありませんが確定申告を行う事によって払いすぎた税金が戻ってきます。折角なので確定申告を行いましょう。

参考:https://www.freee.co.jp/kb/kb-kakuteishinkoku/beginner/

出典:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki2017/a/01/1_06.htm

所得税の申告が不要なケース

所得税の申告が不要の人もいます。国税庁のホームページによると、以下の人は原則として確定申告を必要としません。

◆給与収入金額が2,000万円以下

◆給与等の支払を受けているのは1カ所のみ

◆給与は源泉徴収・年末調整が行われている

◆給与所得及び退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下

給与収入金額が2,000万円以上もある人は稀ですし、給与を2カ所から受けている人も数少ないでしょうから、サラリーマンなどの給与所得者の大半は確定申告が不要になります。「確定申告なんてしたことない」と言う人が多いのは、源泉所得税の仕組みがあるからです。

ただし前述したように「払い過ぎた税金を取り戻したい」時は、そのままにしても戻って来ませんので面倒くさがらず確定申告をした方が良いでしょう。

覚えておきたい配当所得の考え方と節税

株式投資をしている人は「給与所得及び退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下と聞くけど、配当金を20万円以上貰っている場合はどうなるのか…」と不安に思うかもしれません。

配当金を振り込まれる時に証券会社が源泉徴収して所得税等を天引きされた状態(所得税15.315%、住民税5%)で振り込まれている場合は、配当金が20万円以上になっても、確定申告の必要はありません。

ただし、配当金は源泉徴収されていても、総合課税をとして確定申告をすることにより、総所得の金額によっては税金が戻ってくる可能性があります。「年末調整を行うサラリーマンで、ほかに所得が無い」「年金で暮らしている」などの人は払いすぎている税金を取り戻せることがあります。

確定申告により、結構大きな金額(配当の2%~15%)が戻って来ることもありますので、株式配当を貰っている方は制度を調べて確定申告してみるといいでしょう。

参考:配当金の税金 早見表 http://www.daiwa.jp/seminar/study_tax/tax_rate.html

サラリーマンも対象?年末調整をしても申告が必要なケース

上述した通り、年末調整を行うサラリーマンでも、「給与所得、退職所得以外の所得合計が20万円以上」あった場合は、確定申告が必要になります。確定申告の手続き、申告時の注意点についてみていきましょう。

所得税の申告方法を解説


所得税の申告方法は意外に簡単です。確定申告書の入手、記入、提出の3ステップで行うことが出来ます。

ステップ1:確定申告書を入手する

確定申告書の入手は税務署や関係機関に取りに行く方法がありますが、一番簡単なのは国税庁のウェブサイトからファイルをダウンロードし印刷する方法です。国税庁のウェブサイトに専用の「確定申告書等作成コーナー」が用意されていますので、アクセスして利用すると良いでしょう。

参考:確定申告書等作成コーナーhttps://www.keisan.nta.go.jp/h29/ta_top.htm#bsctrl

ステップ2:確定申告書に添って記入する

確定申告書を手に入れたら、今度は確定申告書の説明事項を把握しながら、確定申告書に添って記入していきます。「確定申告書作成コーナー」からなら、案内に従いながら数字を入力し、最後に印刷を行うことも出来て便利です。

手書きよりも間違えた時の訂正も簡単ですし、確定申告書作成コーナーは上手に利用しましょう。

ステップ3:税務署の窓口に提出or郵送

確定申告書が作成出来たら、いよいよ税務署に定められた書類と一緒に提出を行う番です。「なんとなく税務署に行くと待たされて面倒くさそう」と感じるかもしれませんが、税務署は郵送でも確定申告書類を受け取ってくれます。

仕事や混雑する日曜日に行く必要もなく、労力がかからない簡単な方法が郵送です。確定申告でちょっとお金が取り戻せそうなら、1度作成してみると簡単さが分かります。

申告書は修正申告で訂正が可能!

「申告は間違えないようにしないと」と不安に感じる必要はありません。確定申告は間違えたことが判明した場合、後で修正申告を行う事により訂正することが出来ます。税額が多くなるか、少なくなるかによって申告の手続きが変わりますので、申告後に間違いに気が付いたときは、それぞれの手続き方法を調べて手続きしてみましょう。

申告時の注意点

 


はじめて申告する時は勝手がわからず緊張するものです。申告時の注意点についてまとめてみました。

申告期限に気をつけること!

確定申告には申告期限があります。時期は、おおむね2月半ば~3月半ばにかけて、昨年1年間の所得に対して申告を行います。
申告期限は守るように注意しましょう。

無申告は絶対に避けるべき

「申告しないといけなそうだけど、なんとなく面倒くさいのでやめておこう」といって無申告になる事は絶対に避けるべきです。納税は国民の義務ですし、現在の制度は申告をする事によって成り立っています。後で税務署に納税額を疑われて、通知が来ると、追徴課税などの罰則が発生する事にもなりかねません。

申告にはマイナンバーが必要

確定申告の際にはマイナンバーが必ず必要になります。「使わないので無くしてしまった」という方は、役所に対して再発行の手続きを行ってください。

できれば青色申告で提出すること

個人事業主、アパート経営、在宅ワークをしている方は青色申告と白色申告を選択する事が可能です。どちらを選択すればいいのかと言うと、可能であれば青色申告を選択して提出すると税金面でのメリットなどがあります。なお、青色申告を行うには、青色申告を行う年の3月15日までに青色申告承認申請書を税務署に届け出る必要があります。

青色申告と白色申告の違い

青色申告と白色申告の違いを簡単にまとめると、以下になります。

◆青色申告の方が手続きは面倒

◆税金面でメリットが多数

青色申告は経費の計算で認められる部分が増えたり、事業での赤字を来期に繰り越せたり便利ですが、事前に届け出が必要だったり、詳細な経理作業が必要になったりします。税金面でお得になりますので、対象の方は青色申告の勉強をしてチャレンジしてみてください。

最後に

 

所得税の申告義務について解説してきました。まとめると以下となります。

◆所得税は10個の所得区分からなる

◆納付方法によって申告所得税と源泉所得税に制度がわかれていて、申告制度が原則

◆年末調整を行うサラリーマンでも、給与所得と退職所得以外の所得合計が20万円を超えれば確定申告は必要

◆医療費控除やふるさと納税など、確定申告をすると税金が戻ってくるケースもあるので確定申告はした方がいい

◆確定申告は「確定申告書等作成コーナー」で行うと便利

納税は国民の義務で、ひとりひとりが税制を理解して、正しく行うようにしましょう。確定申告を行うと、払い過ぎていた税金が戻ってくる事もありますので、確定申告を面倒くさがらないことです。制度を勉強して戻ってくるお金があるなら確定申告すると良いでしょう。

監修者:杉浦 詔子(ファイナンシャルプランナー)