企業の資金調達の手段として、公募増資・売出しがあります今回は、公募増資と売出しの違いと株価への影響、実際に申し込むにはどのようにすれば良いのかについて解説します。

【増資とは】

事業資金となる資本を増やすことを「増資」といいます投資家に新しい株式を発行して交付するので、発行済み株式数が増加します。増資は、主に設備投資など事業資金を集めるために行われますが、不況の時期にはリストラ資金のために行われることもあります

増資には次の3つがあります。

1.株主割当発行増資

  • 出資者:既存株主

時価(その日の市場価格)よりも安い株価で既存株主に発行します。株主は割安に株を買い増しできるメリットがあります

2.第三者割当発行増資

  • 出資者:特定の第三者

特定の企業などに株を買ってもらうことです。

 

3.公募増資

  • 出資者:広く一般から公募

発行価格は時価。広く一般から資金を募ります。

投資やお金の殖やし方を学べる『マネカツセミナー』
↓ 詳しくは画像をクリック ↓

公募増資について詳しく見ていきましょう。

【公募増資とは】

公募増資とは、新しい株式を発行するのに当たり、50名以上の一般投資家に向け勧誘することです。設備投資などの資金を集める目的のほか、株主層の拡大や株式の流通量の増加というメリットがあります

公募価格は、通常の株式市場の時価より2%~5%程度低く設定されるのが一般的です。新たに株式を手に入れる投資家にとっては、市場価格よりも株式を安く取得できるチャンスです。

既存株主の利益を大きく損なわないよう、公募価格はなるべく時価に近い水準に決められるよう配慮されていますが、株式の希薄化懸念により株価が下落しやすくなるデメリットがあります

株式の希薄化とは、発行済み株式数が増えることによって、一株あたりの価値が下がる現象です。一株あたりの価値が下がれば、株価の下落要因になります

一株あたりの利益をEPS(Earnings Per Share)といいます。当期純利益を発行済株式数で割った値です。計算式は以下の通りです。

  • EPS(円) = 当期純利益 ÷ 発行済株式数

株価をEPSで割った指標が「PER」です

PER(Price Earnings Ratio)とは株価収益率のことで、会社の利益と株価の関係を表しています。PERは株価の割安性を測る指標で、数値が低ければ低いほど株価が割安と判断します。計算式は以下の通りです。

  • PER(株価収益率)= 株価 ÷ EPS(1株当たり利益)

具体例を見てみましょう。

«増資前»

株価2,000円の企業があったとします。増資前の発行済株式数は500万株、純利益が10億円だった場合、EPSとPERは次のようになります。

EPS=10億円÷500万株=200円

PER=2,000円÷200円=10倍

«増資後»

500万株増資した後(合計発行済株式数1,000万株)のEPSとPERは以下の通りです。

EPS=10億円÷1000万株=100円

PER=2,000円÷100円=20倍

増資前のPERは10倍でしたが、増資後に20倍まで上昇しています。もとのPER10倍に戻るためには、株価が半分(1,000円)になる必要があります。これが、希薄化による株価下落の原因となります。

«株価への影響»

ただし、増資を発表したときの希薄化によって株価が下がるかどうかは、その時の市場環境によって異なります。株式市場が好調の時に行われる公募増資の場合、希薄化による需給悪化懸念はあまり起こりません。

しかし相場環境が悪い場合は、希薄化による需給悪化懸念がクローズアップされて、株価が大きく下がることがあります

また、公募増資による資金の使い道も意識されます。増資で集めた資金が、利益を生むような新事業に使われるなど、前向きな使い道だと投資家に判断された時はプラス材料です。

しかし増資の資金が借金返済などに使われる時は、マイナス材料と判断されることがあります

【売出しとは】

公募増資と一緒に行われることが多いのが「売出し」です。売出しとは、それまで大株主などが持っていた株式を、市場で取引する一般投資家に対して売却することです。

公募増資と売出しの違いは、株式を発行するかどうかです。公募増資は投資家から新しい資金を集めるために募集をかけ、新規に株式を発行します。

方売り出しは、新しい株式を発行しません。すでに発行され、大株主が保有している株式を、一般投資家に対して売出すのです。公募増資の場合、増資によって得られた利益は企業のものとなりますが、売出しの資金は大株主の手元に入ります

上場企業の大株主である創業者やベンチャーキャピタルなどが、市場で株式を大量に売ると株価を下げてしまう原因になるので、売出しという方法が取られることがあります。

公募増資は新株を発行するので、希薄化による株価下落懸念がありました。しかし売出しは、大株主が保有している株式を市場に売出すので、発行済株式数は増えず、希薄化懸念はありません。ただし、それまで市場に出回ってなかった大株主の株式が売出しによって流通するので、需給が悪化する原因になります 。

需給が悪化するとは株を買いたい方が減り、売りたい方が増えることです

【公募増資・売出し(PO)の流れ】

公募増資と売出しは同時に行われることが多く、合わせて「PO(Public Offering)」と呼ばれています。似たような言葉にIPO(Initial Public Offering)があります。IPOとは、未上場企業の株式を証券取引所に上場させることです。株式上場に際し、株式が新たに公募されたり、大株主が保有していた株式が売出されたりします。 PO と IPOの違いは、株式市場に上場しているかどうかですPOは上場企業が対象になります。PO株を手にいれるには、ブックビルディングを申し込む必要があります

«ブックビルディングとは»

ブックビルディングとは POを行う際に、一株当たりの 価格を決める方法の一つ。市場価格より3%~5%ほどの割引率(仮条件)が提示されます。仮条件の範囲内で、いくらなら株を買ってもいいかというのを投資家が意思表示するのです。

POの流れは以下の通りです。

出典:SBI証券

«POの魅力»

POの魅力は以下の2つです。

<割引価格で買える>

POは市場の時価に比べ割引価格で買えます。ブックビルディングを元に発行価格が決定され、抽選によって購入者が決まります。

購入できるのは、発行価格以上の価格となるディスカウント率を申告した投資家です。たとえば、仮条件が1000円でディスカウント率が3%、4%、5%だった場合、発行価格が4%ディスカウントの960円に決定したら、3%と4%で申告した投資家に購入する権利があるのです。

<購入手数料が無料>

株式を購入する時は手数料がかかりますが、POは手数料がかかりません。抽選に当選すれば株式を割引価格で買えると同時に、手数料が無料になるのです。

«安定操作とは»

PO株は割引価格で購入できますが、申込み期間中に大きく株価が下落すると購入の申し込みがなされず、公募増資・売出しが失敗してしまう可能性があります

そこで、株価が公募・売出し価格を下回らないように価格操作を行うことがあります。これを「安定操作」といいます。ただし、銘柄によっては安定操作が行われない場合もあります。また安定操作が行われるのは受渡日の数日前までです。安定操作が終わってから受渡日の間に、公募売出し価格を割り込む可能性もあるので注意しましょう。

【まとめ】

公募増資・売出しは、株式を割引価格で購入できるチャンスです。ただし、市場環境や資金の使い道によって市場の評価は大きく分かれます

株式市場が好調かどうか、増資によって得た資金が新規事業など前向きに使われるのかどうか、といったことを必ずチェックしてから申し込むようにしましょう。

記事 山下 耕太郎

【過去記事はこちらから】

【株式投資入門】投資のためにチェックしておきたい3つの経済指標

【株式投資入門】投資のためにチェックしておきたい5つの情報サイト

【株式投資入門】投資のために知っておきたいテクニカル分析!2つのチャートの見方

【株式投資入門】NT倍率とは|日経平均株価とTOPIXの仕組みと違いを知ろう!

【株式投資入門】インデックスファンドとアクティブファンド|5つの違いとは?

【株式投資入門】インカムゲインとは?キャピタルゲインとの違いとメリット・デメリット

【投資コラム】積立投資は「つみたてNISA」で始めよう

【投資コラム】分散投資とは?メリット・デメリットと4つの方法を詳しく解説

【投資コラム】信用取引とは?押さえておきたい4つの仕組みとメリット・デメリット

プロが教える株式市場下落時の5つの対処法!フラッシュクラッシュとは?

ETFとは?株式・投資信託との5つの違い

投資やお金の殖やし方を学べる『マネカツセミナー』
↓ 詳しくは画像をクリック ↓