はじめまして、公認会計士・税理士・1級FP技能士の安田亮です。税理士としてお客様の税金の相談に乗ることはもちろん、自らの資産運用の経験も活かし、貯蓄や投資についてのアドバイスも行なっています。今回は会社員の方の節税策についてご紹介します。

会社員の方であれば、勤務先に所得税や住民税を源泉徴収され、年末調整で所得税が少し戻ってきて、確定申告はしないという方が大半ではないでしょうか。日本の会社員の方の多くは、ご自身で税金を計算して申告・納付をしないため、あまり税金を払っているという意識がありません。それ故に、節税を意識する機会も少ないのではないでしょうか。

そこで今回は、会社員の方でも出来る節税策について、いくつかご紹介してみたいと思います。

税金の仕組み

まずは税金の仕組みについて簡単にご説明していきます。

 税金は、「所得」、つまり「儲け」を計算し、それに対して税率を掛けて、納める税金の金額を計算します。更に細かく見てみると、会社員の方の税金を計算する上での所得は、大きく分けて以下の3つから算出されます。

(1)収入金額

こちらは「給料の額面金額」、つまり税金や社会保険料を控除される前の金額です。基本給や残業代、ボーナスの合計額が年間の収入金額の合計額となります。

(2)経費

会社勤めするのにも色々と経費が掛かっていると思いますが、こちらについては「給与所得控除」と呼ばれる概算値で計算されます。

(1)の収入金額から自動的に計算される金額で、仮に給与収入が600万円の方であれば、この「給与所得控除」は、600万×20%+54万=174万円になります。600万円の方であれば全員同じ金額になります。

【参考】国税庁 給与所得控除:https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/1410.htm

(3)所得控除項目

(2)の「給与所得控除」とは別の概念です。自分が養なっている家族がいたり、医療費が多額にかかってしまった、という方に、各人の事情に応じて税金の支払額を調整してあげようという意味合いの項目です。また、政策的な意味合いを持った控除項目もあります。

税金を計算する上での儲けを「課税所得」と言いますが、課税所得は以下のように計算されます。

課税所得=(1)収入金額-(2)経費-(3)所得控除項目

課税所得に税率を掛けて税金の額が計算されます。

そして、所得を算出して税額を計算した後に控除される項目がこちらです。

(4)税額控除項目

こちらは税金の額をそのまま減らしてくれるという項目です。有名なものに住宅ローン控除があります。

 

以上から、最終的に支払う税額は

課税所得{(1)-(2)-(3)}×税率-(4)

となります。

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会社員の方の節税の基本的な仕組み

会社員の方が節税する場合、どのような方法で行なうのでしょうか。

ここで注目していただきたいのは、会社員の方の場合(1)収入金額と(2)経費の金額は自分ではどうしようもないという点です。ですので、(3)所得控除項目と(4)税額控除項目を最大限使えるようにすることが節税の基本的な考え方になりますが、今回は(3)所得控除項目に絞ってお話をさせていただきます。

所得控除項目には、基礎控除や社会保険料控除など、ほぼ全員が利用できる項目から、小規模企業共済等掛金控除や生命保険料控除など、実際にその制度を利用している人しか使えない項目まで、様々なものがあります。会社員の方の節税に使える控除の制度をいくつかご紹介します。

(1)小規模企業共済等掛金控除

こちらの控除には、個人事業主の方や中小企業経営者が加入する「小規模企業共済」というものの掛金の金額と、今流行りのiDeCoと呼ばれる個人型確定拠出年金の掛金額が含まれます。

iDeCoとは、簡単に言うと自分で作る年金制度のことです。加入者が毎月一定の金額を積み立て、証券会社などが用意した定期預金・保険・投資信託といった金融商品で自ら運用し、60歳以降に年金または一時金で受け取ります。用意されている商品の中には必ず元本確保型商品が含まれていますので、「投資なんて怖い」という方でも安心して加入できます。

ただし、原則として60歳までは拠出したお金を引き出せないため、予めその覚悟をしておく必要があります。

いくらまで控除できるかですが、これは勤め先の退職金制度によって変わってきます。

たとえば、勤め先に企業年金制度が無い場合は2.3万円/月、つまり年間27.6万円まで控除できますし、確定給付型企業年金制度を有している会社に勤めている場合は1.2万円/月、年間14.4万円まで控除できます。

確定給付型企業年金のある会社に勤める年収600万円の方であれば、所得税の超過累進税率が10%として、住民税率は一律10%なので所得税・住民税で計28,800円を節税できることとなります。大きいとは言えませんが、毎年この節税効果を受けていれば、60歳までに数十万円にはなるでしょう。

【参考】iDeCo公式サイト:https://www.ideco-koushiki.jp/start/

iDeCoは、原則60歳以上から「老齢給付金」として受けとることができますが、その際に一時金か年金(5年以上20以下)として受け取るかを選択できます。

その際に、一時金で受け取れば、退職所得として申告することができます。退職所得は、老後の生活を確保してもらうという意味合いから、税金計算上、かなり優遇されていて、退職所得控除という控除を受けた上で、更にそこに1/2を掛けて所得を算出します。

退職所得控除はiDeCoへの加入期間1年あたり40万円(21年目以降は70万円)であり、会社員の方であれば通常、この金額を超えて「老齢給付金」を受け取ることは稀でしょうから、払った時は節税でき、戻ってくる時にはほとんど税金がかからないというわけです。

(2)生命保険料控除

こちらは生命保険に支払っている掛金に応じて最大12万円の控除を受けることが出来る制度です。2012年以降に契約した保険に限定してお話ししますが、12万円の中にも内訳があり、一般生命保険・介護医療保険・個人年金保険の3つのそれぞれの中で最大4万円、計12万円となっています。

生命保険の中には、貯蓄型でいつ解約しても元本を保証してくれるような商品も出ており、感覚的には貯金をしているだけなのに節税も出来るというものもあります。これを利用しない手はありません。

上記3種類の保険で、それぞれ年間8万円以上の保険料を支払っていれば最大の控除額である4万円の控除を受けることが出来ます。

最大額の控除を受けた場合、年収600万円の方を想定すると、所得税の税率を10%として12万円×10%=12,000円の節税、住民税の方では最大7万円の控除となるので、7万円×10%で7,000円の節税、所得税・住民税で計19,000円を節税できるということになります。

(3)寄附金控除

こちらは、純粋な寄附金ももちろん含まれているのですが、今流行りの「ふるさと納税」もこの寄附金控除の中に含まれます。

ふるさと納税は実質負担2,000円で各地の特産品などをもらうことが出来ます。厳密には節税ではなく、税金の前払いをして、特産品をもらうという制度ですが、お得な制度ですので、この記事の中で紹介させていただきます。

ふるさと納税の仕組みは少し複雑です。いったん自分の好きな自治体に寄附をします。すると返礼品と呼ばれる各地の特産品、たとえばお肉や果物などが送られてきます。

そして年末調整または確定申告の際にふるさと納税を行なったことを申告すると、所得税と住民税が減額され、その金額は支払った寄附金額-2,000円となります。(会社員の方はワンストップ特例制度を利用することにより確定申告が不要となります。)つまり2,000円の出費で各地の特産品をもらうことが出来るというわけです。

ただし、注意点があります。得税と住民税の減額にはその人の所得によって制限があり、それを超えた金額を寄附した場合は純粋な持ち出しとなってしまいます。

ふるさと納税を取り扱っているサイトでは、自分の年収額を入力すると大まかな限度額を算出してくれます。ですが、あくまで大まかな目安の金額ですので、保守的にその目安額よりも少し少ない金額を寄附するのが無難です。

ふるさと納税の返礼品は寄附額の30%までという指針が総務省から出されており、分かりやすく言うと、10,000円の寄附で得られる返礼品は、3,000円程度で買えるものというイメージです。

ですので、限度額以上にふるさと納税をしてしまった場合には、純粋な寄附となり、翌年の税金からは戻ってきませんのでご注意ください。

まとめ

ここまで主な節税手法として3つの方法をお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。

最初にも書きましたが、会社員の方は税金を払っているという意識が個人事業主の方よりも低くなりがちで、源泉徴収される税金の額を「所与のもの」と捉えがちです。ですが、税制を活かせば会社員の方でも節税は出来ます。

毎年の節税額は小さいですが、これが20年、30年続くとしたらかなりの金額になります。節税は「小さなことからコツコツと」が大事です。

記事 安田 亮(公認会計士/税理士)