賃貸物件にく入居していると意外と家計の負担になる「更新料」。中には、更新料を支払うのが嫌で引越しをするという人もいるくらいです。しかし、そもそもこの「更新料」とは一体何なのか、なぜ支払う義務を負うのか知っている人は少ないです。どうせ支払うのであれば、きちんと内容を理解したうえで納得して支払いたいものですよね。

賃貸物件における更新料とは?支払う時期はいつ?

賃貸物件更新のタイミングで何ら疑問に感じることなく支払っている更新料。そもそも、これって本当に支払わなければいけない費用なのでしょうか?

賃貸物件の更新料を「払わない」という選択肢はない

基本的には、賃貸物件に入居している以上、更新料を支払わないという選択肢はありません。なぜなら、更新料を徴収することを定めている賃貸物件であれば、賃貸借契約書にその旨が明記されていることがほとんどだからです。

賃貸借契約書の内容を確認したうえで、契約をしているのですから「更新料の支払いに関しても同意している」とみなされます。入居後に「やっぱり払いたくない」というのは通用せず、更新料を支払う特約がある場合は、支払い義務が発生します。

住む地域によって更新料の有無や金額は異なる

とはいえ、賃貸物件入居者であれば誰しもが更新料を支払いながら住み続けているかというと、決してそうではありません。実は更新料というものは、法的に定められたものではなく、古くからの慣習に基づいたしくみです。

そのため、地域や文化が異なれば、更新料の徴収についても意見が分かれます。主に関東圏では65%以上の割合で更新料を徴収しているのに対し、関西圏では大阪、兵庫では0%に近く、更新料が発生しない賃貸物件のほうが大半です。

しかし関西圏なら更新料が発生しにくいのかというとそうではなく、例えば京都府では半数以上の割合で更新料が発生します。また更新料も関東圏では賃料1カ月分が一般的ですが、京都府では2~3カ月分のケースも珍しくありません。このように、更新料は非常に地域性の強い慣習のひとつなのです。

出典:国土交通省 民間賃貸住宅に係る実態調査
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha07/07/070629_3/02.pdf

更新料の支払いは一般的に2年に1回

更新料を支払うタイミングは、賃貸借契約の更新時が一般的です。賃貸物件は2年ごとの契約であるケースがほとんどですので、更新料の支払いも2年に一度となりますが、まれに賃貸借契約が1年ごとの物件もあります。その場合は、更新料も一年ごとに支払う必要が出てきますので、注意しましょう。

賃貸物件の更新料ってどれくらい?意外と高い理由について解説

自分が支払っている更新料が、妥当な金額かどうかなんて判断がつかないですよね。そこで、全国的にみた賃貸物件の更新料の相場から、見ていくことにしましょう。

更新料の相場の平均は「家賃の1カ月分」

更新料の金額には地域差があることは触れましたが、おもに関東圏での更新料の相場は家賃の1カ月分と想定しておけば、間違いありません。東京都や千葉県では2年に1度、家賃の1カ月分の更新料が主流であり、神奈川県では家賃の半月分~1カ月分程度、埼玉県では半月分が相場です。おおむね1カ月分を見積もっておけば、金額がはみ出す心配はないでしょう。

更新料以外に支払うもの

賃貸借契約の更新時には、更新料以外にも支払う義務の発生する費用があることを知っているでしょうか。どうしても更新料にばかり目がいきがちではありますが、その他に発生するこまごまとした費用も、意外に金額がかさみます。いざその時になって慌てないためにも、始めから予算へ組み込んでおくことをおすすめします。

更新事務手数料

最近、更新料の他に更新事務手数料を請求する不動産会社が増えています。おもに地域に根差した老舗不動産会社などに多くみられ、家賃の0.25カ月分から、多ければ半月分も取るところもあります。

更新事務手数料は、単体で記載がないことも多いため、注意が必要です。更新料の記述が「1.25カ月分」と端数がある場合、多くは更新事務手数料が上乗せされているケースがほとんどです。

保険更新料

賃貸物件に入居する際に契約している火災保険も、賃貸物件の契約年数に合わせた契約となっているため、同時に更新する必要があります。火災保険料の相場は2年でだいたい1~2万円ですが、地震保険特約などオプションを付けている場合は、更に高くなることもあります。

保証料

賃貸借契約時に保証人を立てずに保証会社を利用して入居している場合は、賃貸物件の更新時にあわせて保証会社の契約も更新する必要があります。保証会社の更新料は会社ごとに開きがありますが、おおむね家賃の0.3カ月程度におさまるケースが多いようです。

家賃

忘れてはならないのが家賃です。賃貸物件の家賃は前払い制が基本です。更新料として1カ月分を支払うと、つい翌月分の家賃を支払った気になってしまいがちですが、更新料と家賃はあくまで別物。翌月分の家賃も同時に支払う必要がある点だけは、忘れないようにしましょう。

消費税

意外と抜けてしまいがちなのが、消費税です。家賃や更新料等、住居として使用する場合の費用に関しては非課税とされていますが、駐車場代等の居住ではない費用に関しては、課税されるきまりです。駐車場を契約しているのであれば、賃貸物件の更新と同時に、駐車場も更新するケースが大半と思われますため、注意しましょう。

更新料を支払うよりも引越しする方がお得!

さて、このように賃貸物件の更新には多くの出費が発生するということが、よくわかりましたね。仮に7万円の家賃の物件に入居していた場合、更新するなら更新料1カ月分に加えて火災保険料や保証料、手数料もあわせて、およそ20万円弱の出費を覚悟しなければなりません。

一方、更新せずに引越すとしたなら、どの程度の出費になるでしょうか。引越し先も同じ家賃と仮定した場合、敷金1カ月分に加えて不動産会社への仲介手数料、火災保険料や保証料をあわせると同じく20万円はかかる見込みとなります。

但し、この敷金1カ月分というのは基本的に戻ってくるお金です。それを差し引くと15万円程度で引越しできるともいえますので、同じ家賃の物件に住むのであれば、引越したほうが金額的にはお得といえます。

更新料の金額交渉は可能?成功率は5%という噂

更新料を支払わなければならないのなら、できるだけ金額を抑えたいと考える人もいるでしょう。賃貸借契約時に家賃交渉は一般的ですが、更新料について交渉するというのはあまり聞いたことがありません。そもそも、更新料って金額交渉できる余地はあるのでしょうか。

金額交渉は基本的に可能である

結論からいうと、更新料の金額交渉をすることに問題はありません。但し、賃貸借契約書に金額の記載があり、それに同意して入居しているのであれば、更新間際になって交渉するのは無理があります。もし更新料を少しでも値引きしたいのであれば、契約締結の前段階で相談してみましょう。

交渉の成功率は極めて低い

交渉すること自体は可能なものの、果たして成功率はというと、極めて低いといわざるを得ません。なぜなら、大家さんは更新料も家賃と同様に収益として見込んでいることに加え、よっぽど条件の悪い物件でない限り、金額交渉を受けなくても他に貸し手があるからです。

更新料の金額交渉が難しい物件

中でも、更新料の金額交渉が特に難しいと判断できる条件も存在します。その物件がこれらの条件に合致するのであれば、更新料の金額交渉は難儀するとみて、間違いないでしょう。

①立地条件が良い物件

駅から徒歩5分以内など、立地条件に恵まれている物件は、入居希望者が後を絶ちません。空室になってもすぐに埋まる確率が非常に高いため、更新料はおろか、その他の費用の金額交渉においても応じてくれないケースがほとんどです。

②不動産会社が管理している物件

マンションやアパートには、個人が大家さんの物件もあれば、不動産会社自体がオーナーとして管理している物件も存在します。後者の場合、更新料の値下げはほぼ不可能とみて良いでしょう。

なぜなら、会社が管理しているとなるとある意味ビジネスライクな対応に偏りがちだからです。また、住民間で更新料の違いが発覚することでトラブルになる可能性も想定したうえで、危うい選択をしないという理由もあります。

③戸数が多い物件

アパートやマンション1棟丸ごと1人の大家さんが管理しているケースも、更新料の交渉は難しくなります。なぜなら多くの収入源があるため、賃借人1人に固執する必要がないからです。金額交渉をしてくるくらいなら、その人との賃貸借契約を見送り、しばらく空室になったところで痛くもかゆくもないというのが実情です。

更新料はオーナーの一時的な収益になる

更新料は、大家さん目線で考えると月々の家賃を低く抑えるためのものであったり、継続して住居を提供することの見返りといった側面があります。だからこそ、更新料は大家さんが得るべき収益だとする考え方です。

入居者の立場からすると、月々の家賃を低く抑えたいという要望は多いですよね。もし入居した部屋が気に入らずに一定期間で退去したのであれば、更新料は発生しません。毎月家賃として支払うよりは、入居者側にとってもメリットがあるのです。

このように、月々の家賃を低く抑えてもらい、一定期間を経てなお入居し続けるのであれば、本来の家賃との差額をまとめて支払うと考えれば、ある程度納得できますよね。

更新料を払いたくないなら「更新料なし」の賃貸を選ぼう!

のように、更新料の金額交渉ができる物件は少なく、成功率も極めて低いでしょう。それでも、どうしても更新料に納得ができない、絶対に支払いたくないという人は、そもそも更新料の設定がない、「更新料なし」の賃貸物件を選びましょう。

「更新料なし」の賃貸物件は意外と多い

更新料がない賃貸物件は、意外と存在します。中でも、UR賃貸などをはじめとする公的賃貸住宅には、更新料という概念がありません。他にも、工夫して探すことで、更新料なしの物件が見つかる可能性があります。

ポータルサイトの条件検索で探してみよう!

賃貸物件ポータルサイトでは、希望条件を細かに指定して物件を検索することができます。家賃の金額帯や間取り、敷金・礼金の有無に加え、中には「更新料なし」を条件に設定して検索することも可能です。

サイトによっては、更新料なしに限った物件を特設ページで特集しているようなところもありますので、複数のサイトを総合的にチェックしてみると良いでしょう。

「更新料なし」の賃貸物件に住むメリット

更新料の設定がない賃貸物件というと、更新時に特別な費用を負担しなくても済むというメリットが真っ先に浮かびますね。でも、それだけではありません。更新料なしの物件なら、他にこんなにも多くの利点が存在するのです。

家賃が総合的に安くなる

更新料の支払い義務がなければ、家賃は月々の賃料+管理費・共益費のみで算出ができますね。家賃7万円の物件と仮定したとき、更新料1カ月分なら2年住み続ければ7万円×24カ月+7万円=175万円の出費です。これを24カ月で割ると、月々の家賃は実質7万3千円弱といえます。

もし更新料のない物件であれば、毎月純粋に7万円を支払い続けるだけでいいのです。月々3千円の差は大きいですね。

引っ越しをするか迷わなくてすむ

更新料の発生する物件では、更新時に必ず「引越しするか否か」検討する必要が出てきます。更新してわずかな期間で退去しては更新料がもったいないので、このまま次の更新のタイミングまで住み続けるかどうか、先々まで視野に入れて考えなくてはなりません。

場合によっては、他の物件を検討するため不動産会社に足を運んだり、インターネットで検索したりする必要が出てくるでしょう。かなり煩わしい手間といえます。ところが、更新料のない物件なら、そんな迷いが生じる心配はありません。

物件自体に問題がなければ、そのまま住み続けることができますし、更新して数カ月で退去したとしても、何ら損はありません。この違いは、経済的にも精神的にも余裕をもたらします。

長期で居住することが決まっているならお得!

2年ごとに更新料を支払う通常の賃貸物件では、例えば更新を2回経て5年間住み続けた場合は家賃の他に2カ月分の更新料が発生している計算になりますね。ところが更新料なしの物件なら、5年間住み続けても支払う金額は家賃のみ。

家賃が同じ7万円の物件なら、計14万円も割安の計算になります。更新料なしの物件は、長く住めば住むほど、他の物件に比べてお得といえますね。

最後に

賃貸借契約を結ぶ際には、どうしても家賃や敷金・礼金にばかり目が行ってしまうものです。ですが、その物件を気に入って長く住むつもりであればなおさら、更新料についてもきちんと確認しておく必要があります。

更新料の金額や支払い条件が不当でないか、不明点はないかしっかりと吟味して、もし少しでも疑問があれば説明を求め、納得したうえで気持ちよく入居したいですね。