株式投資の運用方法には、インデックス運用やアクティブ運用のほかに「スマートベータ」と呼ばれるものがあります。

スマートベータはアクティブ運用と同様に、市場平均を上回るリターンを期待できる点から注目されている運用方法です。

この記事では、スマートベータがどういった運用方法であるかの解説を中心に、代表的な銘柄やメリット・デメリットについて解説します。

スマートベータとは

スマートベータとは

スマートベータとは、市場全体に投資するよりももっと「賢い指数」を生み出せれば、もっといい投資成績が出るのではないか?という考えに基づき作られた運用方法です。

株式市場のインデックスと、個別企業の株価の相関関係を示す指標のひとつに「ベータ」というものがあります。市場全体の動きを1とした時、個別銘柄の株価がどの程度変動するかを数値化したもので、「1」を中心とした数値で表されます。

この市場平均値(ベータ)よりも賢く(スマートに)投資しようという戦略が「スマートベータ」です。

TOPIX以外のインデックス指数で運用する手法

日本の株価指数として有名なものに「TOPIX」や「日経平均株価」があります。TOPIXは「時価総額加重型」と呼ばれ、東証一部に上場している銘柄全てを対象として算出している株価指数です。

日経平均株価は「株価平均型」と呼ばれ、日本経済新聞社が東証一部に上場している会社から225社を選び算出した株価指数です。

スマートベータで扱う指数は、上記のような市場平均に基づく指数でなく、財務指標や株価の変動率、配当など、特定の要素に基づいて構成された指数になります。

インデックス運用とアクティブ運用の中間

スマートベータはインデックス運用のように指数に連動する成績を目指す一方で、独自の手法や分析で市場平均を上回るリターンを狙うアクティブ運用のような側面もあります。

そのため、インデックス運用とアクティブ運用の中間の運用とされています。

インデックス(パッシブ)運用とは

インデックス運用とは、日本のTOPIXやアメリカのS&P500のような代表的な「指数」に連動した値動きを目指して運用する方法です。

良くも悪くも市場の値動きに連動するように運用するため、長期投資ならプラスに転じる可能性が高いです。しかし、短期投資で一気に資産を増やすという目的には向いていません。

ファンドマネージャーと呼ばれるプロの投資家が運用成績を見ながら銘柄を管理することがないことから、アクティブファンドと比べて信託報酬手数料が安い傾向にあるという特徴もあります。

アクティブ運用とは

アクティブ運用は市場平均を上回る成績を目指す運用方法です。ファンドマネージャーやアナリストと呼ばれる投資の専門家の分析や判断に基づき運用されます。

運用成績はファンドマネージャーやアナリストの能力の影響を強く受け、市場平均よりも大きく上回ることもあれば、逆に下回ることもあります。

専門家による調査・分析や構成銘柄の選定・入れ替えのための売買などのコストがかかるため、インデックス運用よりも手数料が高くなることが多いです。

スマートベータ運用とは

スマートベータ運用は、TOPIXやS&P500のような指数に構成されている銘柄の中から、「財務指標」や「配当」などの特定要素に基づいて構成された指数に連動するように運用します。

市場平均を上回る成績を目指す運用方法なので、インデックス運用とは考え方が異なります。

また、指数によって構成銘柄の選定に基準が設けられているため、アクティブ運用より運用ルールがわかりやすいのも特徴です。

基準が明確なことから再現性があると考えられるため、安定した運用成績に期待できます。

公的年金で採用されている手法

厚生年金や国民年金の積立金管理・運用を行う、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、運用手法にスマートベータを採用しています。

日本だけでなく、アメリカの年金を扱う機関投資家もスマートベータを採用しています。

スマートベータは個人投資家だけでなく、公的年金を扱う機関投資家にも採用されている手法として注目を集めています。

中長期的に市場平均を上回るパフォーマンスを目指している

スマートベータのパフォーマンスは市場環境の影響を受けるため、短期的には安定して市場平均を上回るわけではありません。

5年、10年と中長期で見た時に、市場平均を上回るパフォーマンスが期待できます。

10年後、20年後に必要な資金を準備する際に、スマートベータでの運用を検討するのがおすすめです。

代表的なスマートベータの種類とETF・投資信託

代表的なスマートベータの種類とETF・投資信託

スマートベータで扱う指数は、TOPIXやS&P500などの代表的な指数や注目する要素(配当や財務状況など)の組み合わせによって数多くの種類があります。

代表的な種類は以下の4種類です。

  • 高配当型

  • 最小分散型(低ボラティリティ)

  • クオリティ型

  • 企業価値型(ファンダメンタル型)

それぞれの特徴や、代表する銘柄を紹介します。

※使用するデータは2021年9月21日時点のものです。

1. 高配当型

高配当型のスマートベータでは、TOPIXやS&P500などの構成銘柄のうち、配当利回りの高い銘柄のみで構成されます。

高配当銘柄のみを集めた指数のため、配当利回りは市場平均よりも高くなります。

高配当株投資をしたい方にとっては、ご自身でポートフォリオを作成する手間が省ける点でおすすめです。

S&P/JPX 配当貴族指数

S&P/JPX 配当貴族指数チャート

「S&P/JPX 配当貴族指数」は、TOPIXの構成銘柄の中から、時価総額・流動性基準と配当基準を満たす配当利回りの高い40〜50銘柄で構成された指数です。

10年以上増配を続けているか、配当を維持している銘柄が対象となります。

S&P/JPX 配当貴族指数に連動するETFのひとつに「One ETF 高配当日本株」があります。

日本取引所グループ(JPX)によると、2021年8月のTOPIXの平均配当利回りは1.96%でした。One ETF高配当日本株の分配金利回りは3.2%で、市場全体の配当利回りを上回る結果を出しています。

2. 最小分散型(低ボラティリティ)

最小分散型指数は、ポートフォリオ全体の価格変動リスクを抑えようとする手法です。下落相場でのマイナスを抑える代わりに、上昇相場でのプラスも抑えられています。

リスクを抑えるとリターンも小さくなると考えられがちですが、長期的にはリスクを抑えることによって大きなリターンを期待できます。複利で資産を増やすには、大きく負けないことが重要だからです。

大きなマイナスを取り戻し、プラスに変えるためにはマイナス分よりもさらに大きなプラスが必要です。長期でこつこつと資産を増やす際には、最小分散型のようなリスクを抑えた運用が適していると考えられます。

MSCI最小分散指数

MSCI最小分散指数チャート

MSCI日本株最小分散インデックスに連動するETFである「iシェアーズ MSCI日本株最小分散ETF」を紹介します。

青のグラフがiシェアーズ MSCI日本株最小分散ETFです。比較対象として、同期間のTOPIXの値動きを示すオレンジ色のグラフも掲載しています。

構成銘柄は2つとも日本株ですが、iシェアーズ MSCI日本株最小分散ETFの方が下落時のマイナス幅が小さいことがわかります。その分、プラスへの動き方も緩やかなので、この特性を理解して運用する必要があります。

3. クオリティ型

クオリティ型は、収益性・資本構成・利益の安定性・成長性・会計の質などを示す財務指標をもとに構成された指数です。

指数によって組み合わせる財務指標は異なりますが、収益性・資本構成をベースに残りの財務指標を1つ、2つ組み合わせたものが多いです。

株式の上昇相場では市場平均に劣ることがありますが、下落相場では市場平均を上回る傾向があります。

最小分散型と比較すると、下落時のパフォーマンスでは劣りますが、上昇時のパフォーマンスでは上回ります。クオリティ型は下落時のリスクを抑えつつ、上昇時のリターンを狙う戦略です。

NEXT FUNDS JPX日経インデックス 400連動型上場投信

NEXT FUNDS JPX日経インデックス 400連動型上場投信

NEXT FUNDS JPX日経インデックス 400連動型上場投信は、JPXグループと日本経済新聞社が公表した株価指数「JPX日経インデックス400」に連動するETFです。

JPX日経インデックス 400とは、資本の効率的活用や株主を意識した経営などの所定の要件を満たす「投資家にとって投資魅力の高い会社」400社から構成されています。

東証一部や二部、マザーズ、JASDAQに上場する全銘柄から、過去3期以内に債務超過や赤字経営がないこと、3年平均のROEなどが銘柄の選定基準です。

4. 企業価値型(ファンダメンタル型)

企業価値型は、企業の本質的な価値に対して割安で、今後の株価上昇を見込める名柄で構成された指数です。

企業の財務状況や業務成績などと株価を比較し、その企業価値に対して株価が割安か、今後の成長性があるかなどが重要視されます。

売上高やキャッシュフロー、利益、配当などのファンダメンタル指標と呼ばれる指標を組み合わせて銘柄の選定と構成比率の決定をします。

野村RAFI®日本株投信

野村RAFI日本株投信チャート

東証一部に上場している企業を中心に、東証に上場している全銘柄から株主資本、配当額、キャッシュフローなどのファンダメンタル指標をもとに銘柄の選定・構成比率を決定しています。

銘柄選定に関して、株価情報を一切参考にしていない点が特徴です。

出典:Yahoo!ファイナンス「野村 RAFI日本株投信【01311075】:チャート」

スマートベータ投資のメリット

スマートベータ投資のメリット

アクティブ運用と比べて安い

スマートベータは売り上げや配当、株価変動率など、特定の要素に基づいて構成された指数です。

指数を構成する銘柄を選定した後は、インデックス運用のように指数と連動した運用をします。

銘柄選定や運用にかかるコストが抑えられるため、アクティブ運用よりも手数料が抑えられる点はメリットといえます。

インデックス運用に比べてリスクが低い

インデックス運用では市場全体に投資するため、価格の変動幅(ボラティリティ)が大きいリスクが高い銘柄にも投資します。

スマートベータでは最小分散型(低ボラティリティ)をはじめ、採用する指数によってはインデックス運用よりリスクを下げられます。

リスクが小さいことで、より大きなリターンを狙える点や暴落時のダメージを軽減できる点などがメリットです。

長期的な運用でインデックス以上のリターンを狙える

スマートベータでは、市場平均よりも高い配当利回りの企業を中心に投資したり、ポートフォリオ全体の価格変動リスクを抑えて下落相場に強くするなど、市場平均を上回るリターンを狙っています。

市場環境によって指数の得意不得意があるため、単年の成績では市場平均よりも劣る場合があります。例えば、上昇相場ではポートフォリオの価格変動が抑えられている最小分散型は市場平均よりもリターンは低くなりやすいです。

景気は好況と不況を繰り返すため、長期的な運用でインデックス運用以上のリターンを狙えます。

スマートベータ投資のデメリット

インデックス運用と比べてコストがかかる

インデックス運用は指数に連動するように運用するため、構成銘柄の選定が不要です。

スマートベータは「企業価値」や「高配当」などの戦略に基づいて銘柄を選定する必要があり、その分インデックス運用に比べてコストがかかります。

万能型の指数はない

スマートベータは指数によって得意不得意があるため、必ずしも万能な運用手法ではありません。

例えば高配当型のスマートベータでは、多くのインカムゲイン(分配金)を見込める分、売却時の利益であるキャピタルゲインは市場平均よりも劣る傾向があります。さまざまなスマートベータを組み合わせることで、指数の弱点が補うことはできます。

しかし、組み合わせることで市場平均と変わらないパフォーマンスしか生み出さない結果になる可能性もあります。

市場平均と変わらない運用成績になってしまうとなればインデックス運用の方がコストを抑えられるため、スマートベータで運用するメリットがなくなってしまいます。

過去の成績をもとに作られている

スマートベータの指数は、あくまでも過去のインデックス運用を上回る成績でしかありません。

一時的に成績が良かっただけ、という可能性はあります。過去の成績が良ければ将来の成績も良い、という保証はないです。

スマートベータが必ずしもインデックス運用を上回る成績を出すわけではない点は認識しておきましょう。

まとめ:スマートべータをポートフォリオに組み込もう

スマートべータをポートフォリオに組み込もう

スマートベータは財務指標や配当など特定の要素に着目し、市場平均を上回る指数になるように銘柄を構成し、高いリターンを狙う投資方法です。

単年での成績は市場全体より劣ることもありますが、中長期的には市場全体を上回るリターンが期待できる点から、公的年金の運用にも採用されています。

どのような意図で指数の構成銘柄・構成比率などが決められているかを理解して、自分の投資目的に合ったスマートベータを見つけてみましょう。

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