近頃は、金融機関にお金を預けておいてもわずかな利息しかもらえない時代で、不動産投資を行う方が増えてきました。不動産投資で収入を得たら所得税を納めなければなりませんが、確定申告書を提出する際にさまざまな経費を計上することにより、税額を低くすることができます。

 

この記事では、どのような費用が経費として計上できるのか、といったことを中心に解説します。

不動産投資における不動産所得とは?

不動産所得とは、不動産を貸した時に得られる所得を指します。それでは、不動産所得は具体的にはどのようなものがあるのでしょうか。

不動産所得ってなに?

不動産所得の範囲は国税庁HPによると、次の通りです。

 

(1) 土地や建物などの不動産の貸付け

(2) 地上権など不動産の上に存する権利の設定及び貸付け

(3) 船舶や航空機の貸付け

 

なお、不動産所得なのか、事業所得なのかは事業規模の大小で決まり、次の条件に合致する賃貸物件は事業所得となります。

 

・アパートやマンションの場合には部屋数が10室以上

・戸建て住宅の場合には5棟以上

・駐車場の場合には50台分以上 

 

事業的規模と認められるとさまざまなメリットがありますが、これについては後述いたします。

【出典】国税庁(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm

不動産所得の計算方法

不動産所得の計算は、総収入金額から必要経費を引いたものになります。不動産収入には、次のようなものがあります。

・貸付けによる賃貸料収

・名義書換料・承諾料・更新料または頭金など

・保証金など返還する必要がないもの  

・共益費などの名目で受け取る電気代や水道代・掃除代など

必要経費には、固定資産税や損害保険料・減価償却費・修繕費・借入金の利子・登録免許税・不動産取得税などがあります。すなわち必要経費が大きければ、不動産所得が少なくなります。なお、借入金の元本部分や所得税、住民税などは必要経費にはなりません。

交際費や親族への人件費などは、場合によって経費として認められることがあります。

不動産投資で出た所得の税金金額の計算方法

不動産所得は次の計算式で表せます。

 

不動産所得=不動産収入-必要経費-青色申告特別控除額(

 

)青色申告特別控除:不動産の貸付けを事業として行っている場合には、複式簿記にのっとって記載するなど一定の要件を満たすことにより、最高65万円を控除できます。複式簿記の利用をしていない場合には、10万円を控除できます。

 

不動産の所得がある場合の税金の計算については、下記に一例を挙げてご説明いたします。

 

総収入
年間家賃収入:360万円(月額家賃30万円×12カ月)
年間給与所得500万円(給与収入から給与所得控除額を引いてあります)

 

不動産経費 
固定資産税:7万円
管理費:24万円
修繕費:10万円
火災保険料:3万円
減価償却費:80万円
借入金利子:24万円
青色申告控除額:10万円

 

1.所得税は、不動産収入-必要経費-青色申告特別控除額で表せますので、の家賃収入360万円-の経費合計額148万円-の青色申告控除額10万円=202万円となります

 

2.不動産所得は、給与所得と合算することができますので、不動産所得202万円+②の年間給与所得500万円=702万円

 

3.最後に下記の所得税の速算表にあてはめ所得税額を算出します。702万円×税率23%-控除額427,5001187,100

 

給与所得と不動産所得の赤字を合計し相殺することを損益通算と呼びます。不動産投資が赤字となっている場合には、確定申告を行うことによって税金が還付される可能性があります。なお、住民税については所得税の10%程度が翌年課税されることとなります。

 

所得税速算表【国税庁】

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

課税される所得金額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円を超え 330万円以下10%97,500円
330万円を超え 695万円以下20%427,500円
695万円を超え 900万円以下23%636,000円
900万円を超え 1,800万円以下33%1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下40%2,796,000円
4,000万円超45%4,796,000円

不動産投資で落とせる経費

それでは不動産投資では、どのような費用項目が経費として落とせるのでしょうか。

1:管理費

区分マンションを保有し賃貸している場合には、管理組合に管理費を支払わなければなりません。領収書を必ずもらい、大切に保管しましょう。

2:修繕積立金

修繕積立金は、将来行われる大規模修繕のために積み立てるものです。区分所有者への返還義務を有しないことなどを条件として、その年に払った金額を、経費として計上しても差し支えないとしています。

【出典:国税庁】https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/04/12.htm

3:賃貸管理代行手数料

管理会社は、入居者の募集に始まって、契約・集金・清掃・修繕・入居者のトラブル・退去など、さまざまな管理を行います。家賃の510%程度を、管理会社に支払うのが一般的です。

4:損害保険料

不動産投資をする際には、もしもの場合に備えて火災保険および火災保険とセットで地震保険に入る必要があります。その場合の保険料は経費に計上できますが、自宅保険料は計上することはできません。火災保険料は、通常複数年契約行いますが、一括で支払った場合でも経費として計上できるのは単年度分だけです。

5:減価償却費

アパートやマンションなどの建物は、年月を経るにしたがって価値は下がってきます。価値の低下をあらかじめ考慮し、建物の購入にかかった金額を耐用年数で割り費用配分することを減価償却と呼びます。

 

耐用年数は、木造は22年、鉄骨造は34年、RC造は47年と法律で定められています。減価償却費は、実際の支出はありませんが、帳簿の上では経費とすることが認められています。

6:修繕費

建物を修理した費用や備品が故障し修繕した費用については、経費として計上できます。壁紙の張り替えや室内のクリーニング、給湯器の修理、エアコンの修理などは経費にできます。

7:各種税金

税金については、経費にできるものとできないものがあります。不動産取得時に発生する不動産取得税、登記する時に国に払う不動産取得税および登録免許税、課税文書を作成する際に必要な印紙税は経費に計上できます。しかし、所得税や住民税延滞税、自宅の固定資産税は経費にできません。

8:交通費

管理会社との打ち合わせや物件の取得のための現地確認、不動産投資セミナーに出席するのは仕事の一環です。電車代やバス代、宿泊費、ガソリン代、高速道路料、駐車料などは経費として計上できます。

9:通信費

管理会社や仲介会社などに文書を送付する郵便料金や電話代などの通信費は、経費とすることが認められています。電話代などは、不動産投資で利用した部分と個人で使った部分は分けにくいと思います。きちんとした証拠があれば、通信費のうち2割程度  を不動産経営用とすることも可能です。

10:新聞図書費

不動産投資や税金に関連した書籍購入や新聞購読料は、経費として計上できます。

11:消耗品費

不動産経営に必要な消耗品や事務用品などについても、経費に計上できます。

12:ローン返済額のうち利息部分

物件を取得するために受けたローンの金利は経費にできます。ただし、借入金の元本部分は経費にできません。借入れをした金融機関から送られる返済表には、元本部分と金利部分が分けて記載されていますので、この金利部分を経費に計上します。また、ローン手数料も同様に経費計上が可能です。

13:ローン保証料

ローン保証料は、ローンを支払えなくなった場合に、信用保証会社に支払いを肩代わりしてもらうものですが、必要経費にできます。

14:税理士に支払う手数料

確定申告を税理士に依頼したり、不動産登記を司法書士に頼んだりした場合には支払った報酬を経費にできます。

15:接待交際費

不動産投資をする場合には、管理会社や仲介会社との打ち合わせや不動産オーナー同士の会合などがありますが、この際に使われる飲食代も経費にできます。また飲食代だけでなく、仕事に関係する方へのお中元やお歳暮、謝礼、お祝い、香典なども経費に計上できます。

 

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不動産投資物件に経費として計上できないものは?

不動産投資の費用でも、経費として認められない項目もありますので、間違いのないようにしましょう。

住民税や所得税

固定資産税や不動産所得税などの税金は経費にできますが、個人の所得税や住民税については経費にできません。

福利厚生費

従業員がいる場合には、福利厚生費を経費にできますが、個人事業主がスポーツクラブに入った場合には、経費計上できません。また、家族だけの慰安旅行は経費とすることはできませんが、家族以外に従業員がいるときには、福利厚生費として経費計上できる場合があります。

駐車違反などの罰金、科料及び過料など

業務を遂行中に起こした交通違反などの罰金や延滞金については、必要経費とすることはできません。ただし、仕事中に駐車違反をした際のレッカー代および駐車料金は、経費にできます。

土地のローン利息

不動産所得が赤字の場合には、支払ったローン利息のうち土地部分については、費用への計上はできません。たとえば、4,000万円の物件を、3,200万円を借り入れたとします。土地の部分を2,000万円、建物部分が1,200万円とし、利息が100万円とします。

 

この場合、土地部分の比率は62.5%なので、625,000円になります。この金額が、不動産所得の赤字より小さい場合には経費として認められません。しかし、土地の部分の赤字が、不動産所得の赤字より大きな部分については、超過部分を経費とすることができます。

大掛かりな修繕費

不動産の価値を維持するための修繕費は、経費計上できます。しかし、物件の価値を高めるための大掛かりの修繕やリフォームについては経費として認められず、資本的支出になります。 

不動産投資で法人化すると経費計上の幅が広がるって本当?

不動産投資を事業規模で行うことで、経費計上の範囲が広がります。事業規模とは、物件がアパートやマンションの場合は10室以上、貸家の場合は5軒以上のことを指します。事業規模であれば、青色申告が可能でさまざまな経費が認められます。

法人化のほうが経費は認められやすい

事業に使われた費用は、個人でも法人でも違いはなく、経費として計上できます。ただし、個人の活動には事業と私生活と明確に区分できない場合が多くあります。例えば、自動車を仕事と私生活で半分ずつ利用している場合には、50%を経費にできます。

 

しかし、法人の場合には、すべてが事業活動になりますので、全額を経費として計上できます。ほかにも、生命保険料や社宅家賃・従業員への給付なども経費にできる可能性があり、法人の方が、経費が認められやすいと言えます。

法人化で認められる経費

法人にした場合には、下記に挙げた費用については経費として認められる可能性があります。

生命保険料

個人事業主は。生命保険料を経費計上できませんが、法人の場合には経営者や家族従業員の生命保険料を経費にできます。また、個人の所得控除は最大10万円となっていますが、法人の場合には全額を経費として認められています。しかし、貯蓄性のある保険については、原則として経費計上することはできません  。※一部、損金で経費計上できる契約もあります。

社宅家賃

自宅と事務所を兼用している場合においては、個人事業主は使用率の案分よって家賃を経費計上が可能です。しかし、自宅と事務所をはっきりと分けている場合には、自宅部分の家賃は経費計上することはできません。

 

一方、法人の場合には、住居部分を社宅扱いにし、会社役員に貸すという形をとることで、一定部分を経費計上できます。

従業員への給付

事業規模に満たない場合には、事業で得た利益はすべて課税の対象となります。しかし、事業規模であれば、青色事業専従者給与が認められますので、妻子などの家族従業員への給与は、役員報酬として経費計上できます。

未回収の家賃

入居者が家賃を支払わず回収ができなくなった場合、経費に計上することができます。

地震や火災などによる損失金額

火災や地震が発生し建物に被害が及んだ場合には、損失金額を経費とすることが可能です。また、その年の不動産所得から引ききれない部分については、3年間にわたって損失を計上できます。

【番外編】不動産投資での確定申告の方法

給与所得の方は会社が年末調整してくれますが、不動産投資を行うと自分で確定申告を行い、税金を納めなければなりません。それでは、最後に不動産投資における確定申告の方法について解説します。

不動産投資で収益がある場合、確定申告は必須!

給与所得者が副業として不動産投資を行う場合には、副業の所得が20万円を超える場合には確定申告をする義務が生じます。また、赤字となった場合には、給与所得などと合算しますので、納める税金を減額できます。

確定申告の手続きの流れ

それでは確定申告手続きは、どのような手続きを踏んだら良いのでしょうか。

①確定申告に必要な書類を用意する

まず確定申告に必要な下記の書類を用意します。

 

1.不動産売買契約書類
2
.管理を委託した場合の賃料の入金明細
3
.賃貸借契約書
4
.投資ローンの返済予定表
5
.不動産取得税の納付書
6
.固定資産税の通知書
7
.火災保険や地震保険の証券
8
.修繕費の見積書や請求書・領収書
9
.交通費や接待交際費・光熱費などの経費の領収書
10
.不動産所得のほかに給与所得や年金所得などがある方は源泉徴収票

 

ほかに、医療費の領収書や社会保険料控除証明書、生命保険料の控除証明書、寄附金の受領証なども必要なので、しっかり保管をしておきましょう。

②決算書を作成する

所得税青色申告決算書を利用して、不動産投資の収支を計算します。なお、個人事業を新たに開業した場合には、2カ月以内に青色申告承認申請書を提出しておかなければなりません。また、白色申告で確定申告をする場合には、収支内訳書を作成する必要があります。

 

【ご参考】青色申告決算書(国税庁):

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/01/shinkokusho/pdf/h28/12.pdf

【ご参考】収支内訳書(国税庁):

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/01/shinkokusho/pdf/h28/09.pdf

③確定申告書を作る

確定申告用の書類には確定申告書Aと確定申告書Bがありますが、不動産所得の場合には確定申告書Bを使用します。確定申告書は、税務署でもらう方法、国税庁ホームページからダウンロードする方法、確定申告相談会場で手に入れる方法などがあります。

 

e-Taxを利用すれば、税務署に出向かなくても申告書の作成や提出の手続きができるので便利です。ただし、e-Taxを利用するためには、インターネット回線を備えたパソコンが必要で、電子申告の届出や電子証明書、ICカードリーダーなど事前の準備をしなければなりません。

 

【ご参考】申告書B(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/01/shinkokusho/pdf/h29/shinkokusyo_b.pdf

④申請手続きを行う

確定申告書は、税務署に提出しますが、郵送でも可能なほか確定申告相談会場でも提出できます。なお、e-Taxならば、自宅にいながらにして申告できます。

初心者でも簡単!確定申告の方法

初めて確定申告をする方は少し大変かもしれませんが、次の方法を利用すれば簡単に確定申告ができます。

会計ソフトを使って

確定申告をするのが初めての方、短時間で早く済ませたい方は、会計ソフトを利用するのが便利です。会計ソフトには、パソコンにインストールするタイプ、どこからでもアクセス可能なクラウドタイプ、無料で使えるタイプなどがあります。

税理士に依頼する

会計ソフトを使っても、初めての方は分からないことが多く不安なことでしょう。さらに、確定申告を楽に済ませたいとお考えの方は、税理士に依頼するのが得策です。税理士に依頼すれば、あれこれ考えることなく、間違いのない確定申告書を作成できます。

 

確定申告の費用は、青色申告で売り上げが500万円未満であれば5万円~10万円、500万円以上1000万円未満は10万円~15万円、1000万円以上では15万円以上というのが大体の相場です。

最後に

解説してきたように、不動産投資ではさまざまな費用を経費として計上できます。認められている費用は必ず経費計上して税額を低減しましょう。

 

監修者:小川 和哉(ファイナンシャルプランナー)