多くの会社員や公務員は、毎月の給料とは別にボーナスが支給されます。

ボーナスを趣味や旅行に使ったり、貯金やローンの繰上げ返済に充てるなど、支給される前から計画を立てる方も多いでしょう。

支給されるのが楽しみなボーナスですが、ボーナスからも税金や社会保険料が引かれるため、支給額と実際に振り込まれる金額が異なる点には注意が必要です。

この記事では、ボーナスから引かれる税金・社会保険料について解説します。

具体的な金額を例に出しながら税金のシミュレーションも紹介していますので、税金計算の参考にしてください。

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ボーナス(賞与)にかかる税金について

ボーナス(賞与)にかかる税金について

ボーナスは「給与所得」として扱われる

ボーナスは所得税法上の「給与所得」に区分されます。

会社員や公務員の方が毎月受け取る給料と同じ扱いです。

月給35万円で、夏・冬のボーナスでそれぞれ40万円ずつ支給される方を例に考えます。

額面の年収は「35万円 × 12 + 40万円 × 2 = 500万円」になります。

しかし、手取り年収として実際に受け取れる金額は500万円ではありません。

給料と同じように、ボーナスからも税金や社会保険料が天引きされるため、額面金額と実際に受け取れる金額は異なります。

ボーナスからは5つの税金・保険料が引かれる

ボーナスからは5つの税金と社会保険料が天引きされます。

  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料
  • 雇用保険料
  • 介護保険料(40歳以上の方)
  • 所得税

ボーナスから差し引かれる税金は「健康保険料」「厚生年金保険料」「雇用保険料」「所得税」の4つです。

この4つの税金は、毎月の給料からも天引きされています。

40歳以上であれば、「介護保険料」も健康保険料に加算される形で支払うことになります。

住民税はボーナスから引かれない

毎月の給料からは5つの税金・社会保険に加えて「住民税」も天引きされていますが、ボーナスから住民税は天引きされません。

会社員や公務員の場合、住民税は前年の所得をもとに計算され、6月から翌年の5月までの12回に分けて毎月のお給料から徴収される仕組みになっているためです。

今年ボーナスとして受け取った金額は、来年度の住民税の課税対象になります。

ボーナスにかかる税金・保険料の計算方法

ボーナスにかかる税金・保険料の計算方法

ボーナスにかかる税金や社会保険料を計算することで、おおよその手取り金額が分かります。

最終的な計算式は以下の通りです。

  • ボーナスの金額 – (健康保険料 + 厚生年金保険料 + 雇用保険料 + 所得税)

ボーナスの手取り金額が分かると、旅行やローンの返済計画が立てやすくなるでしょう。

ざっくりボーナスの約2割が税金として引かれる

人によって、ボーナスから引かれる税金・社会保険料の金額は異なります。

税率や社会保険料率は年収や扶養親族の有無・人数などによって異なる点に加えて、ふるさと納税の寄附金控除や住宅ローン控除、医療費控除など、個人の状況によって控除される課税所得が異なるからです。

ボーナスの手取り金額を細かく計算するのは手間がかかりますが、ざっくりとしたボーナスの手取り金額は「ボーナスの金額 × 80%」で計算できます。

ボーナスの手取り金額は、額面金額のおおよそ75%~85%だと覚えておきましょう。

健康保険料の計算方法

健康保険料は以下の式で計算できます。

  • ボーナスの金額(※1,000円未満は切り捨て) × 健康保険料率 × 1/2

40歳以上の方は介護保険料も負担するため、健康保険料率が高くなります。

健康保険料率は加入している組合によって異なります。

大きく分けると、以下の3種類です。

  • 協会けんぽ:主に中小企業の労働者が加入
  • 組合健保:主に大企業やその傘下の企業・グループ企業の労働者が加入
  • 共済組合:主に公務員が加入

「協会けんぽ」の場合は会社の所在地の都道府県によって健康保険料率が異なり、「組合健保」と「共済組合」の場合は勤め先によって健康保険料率が異なります。

所属する組合のホームページで健康保険料率を確認できます。

健康保険料の半分は勤め先が負担するため、計算式の最後に「1/2」を掛けています。

健康保険料の概要

健康保険料を納めることで、病気やケガにより医療機関で治療を受けたり薬剤を処方されたりした時に、医療費の一部を負担してくれます。

医療機関での医療費負担が1割〜3割程に抑えられているのは、健康保険に加入しているためです。

40歳以上が負担する介護保険料は、介護保険サービスの運営に使われます。

介護保険があるおかげで、介護サービスの利用が本来の費用の1〜3割で利用できるわけです。

厚生年金保険料の計算方法

厚生年金保険料は以下の式で計算できます。

  • ボーナスの金額 × 18.30%(厚生年金保険料率) × 1/2

厚生年金の保険料率は住んでいる場所や勤め先に関係なく、一律で18.30%です。

厚生年金保険料も労使折半なため、計算式の最後に「1/2」を掛けています。

出典:日本年金機構「厚生年金保険料額表」

厚生年金保険料の概要

日本の公的年金は「2階建て」といわれており、厚生年金は2階部分に該当します。

主に会社員や公務員が加入する公的年金です。

厚生年金の保険料を納めている方は、公的年金を受け取る際に「国民年金」と「厚生年金」の2つを受け取れます。

厚生年金の保険料は給料やボーナスの支給額に一定の保険料率を掛けて算出するため、人によって納める金額に差があります。

基本的には給与やボーナスの金額が高いほど、厚生年金保険料は高くなります。

そのため、保険料を多く納めていた人ほど多くの年金を受け取れる仕組みです。

雇用保険料の計算方法

雇用保険料は以下の式で計算できます。

  • ボーナスの金額 × 従業員の保険料率

雇用保険料は、事業の種類によって異なります。

雇用保険料の変更を含む雇用保険法の改正法案が閣議決定されたため、今後雇用保険料率が上がります。

私たちに影響が出るのは2022年(令和4年)10月1日以降です。

事業の種類〜2022年9月まで2022年10月〜
一般の事業0.3%0.5%
農林水産・清酒製造
および建設の事業
0.4%0.6%

出典:厚生労働省「雇用保険被保険者数お知らせはがき(令和4年3月送付分)に関するFAQ」

雇用保険料の概要

雇用保険は失業した場合や育児休暇を取得した際など、収入が減った労働者の生活を守るための保険です。

「失業を防ぐ」「雇用を安定させる」などの目的でさまざまな給付がされています。

代表例は定年退職や契約期間の満了、自己都合などで離職した人の再就職を支援する「失業手当」です。

そのほかにも育児や介護のために会社を休み、その間お給料が支払われない場合に利用できる「育児休業給付金」や「介護休業給付金」、「教育訓練給付制度」などがあります。

所得税の計算方法

所得税は以下の式で計算できます。

  • {ボーナスの金額 – (社会保険料)} × 賞与に対する源泉徴収税率

ボーナスにかかる所得税を計算するためには、「社会保険料」と「賞与に対する源泉徴収税率」を調べる必要があります。

社会保険料とは、上述した健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料の合計です。

「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の使い方

ボーナスにかかる所得税の税率を調べるためには「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使います。

基準となるのは前月の社会保険料控除後の給与と扶養家族等の人数です。

前月の社会保険料控除後の給与は、給与明細をご確認ください。

例として、前月の社会保険料控除後の給与が20万円、扶養家族が0人の方の所得税率を調べます。

国税庁のホームページから「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を参照し、該当部分を確認すると、この方のボーナスにかかる所得税の税率は4.084%とわかります。

前月の社会保険料控除後の給与が40万円、扶養親族が2人の方の場合は10.210%です。

出典:国税庁「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和 4 年分)」

所得税の概要

所得税とは、1年間の個人の収入(所得)に対して支払う税金です。

1年間の全ての収入から所得控除を差し引いた課税所得に、税率を適用して計算されます。

そのため、同じ年収の方でも所得控除の合計額によって納める所得税が異なります。

毎月の給料やボーナスから天引きされている所得税は概算金額となっており、正確な所得税は12月の給与やボーナス額が確定したあと、年末調整で算出されます。

もし所得税を払い過ぎていた場合は還付され、不足していた場合は追加納付することで精算されます。

ボーナスの税金シミュレーション

ボーナスの税金シミュレーション

ボーナス30万円・30代前半(独身)の場合

ボーナスの支給額が30万円だった方の手取り金額をシミュレーションします。

詳しい条件は以下の通りです。

  • 30代前半
  • 独身(扶養家族0人)
  • 勤務地は東京都で、「協会けんぽ」に加入
  • 職業は営業事務
  • 前月の社会保険料控除後の給与は20万円
税金控除額
健康保険料14,715円
厚生年金保険料27,450円
雇用保険料900円
所得税10,493円
合計53,558円
手取り246,442円

※2022年3月時点の保険料率・税率で計算しています。

健康保険料

協会けんぽの健康保険料率は、勤務地の都道府県によって異なります。

協会けんぽのホームページで令和4年度(2022年)の東京都の保険料率を確認すると、9.81%でした。

  • 300,000円 × 9.81% × 1/2 = 14,715円

出典:全国健康保険協会 協会けんぽ「令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」

厚生年金保険料

厚生年金保険料は、支給される金額にかかわらず18.3%と決まっています。

  • 300,000円 × 18.30% × 1/2 = 27,450円

雇用保険料(一般の事業として算出)

今回の例では職業「営業事務(一般の事業に分類)」であるため、雇用保険料率は0.3%です。

  • 300,000円 × 0.3% = 900円

所得税

最初に、ボーナスにかかる社会保険料の合計を求めます。

上記で計算した金額を足すことで算出できます。

  • 14,715円 + 27,450円 + 900円 = 43,065円

ボーナスにかかる所得税率は、扶養家族0人・前月の社会保険料控除後の給与が20万円だったため4.084%です。

  • {300,000円 – (43,065円)} × 4.084% = 10,493円

社会保険料と所得税の合計額は53,558円となり、ボーナスの手取り金額は246,442円となりました。

ボーナス50万円・40代後半(扶養家族2人)の場合

次に、ボーナスの支給額が50万円だった方の手取り金額をシミュレーションします。

詳しい条件は以下の通りです。

  • 40代後半
  • 扶養家族2人(妻、子ども1人)
  • 勤務地は東京都で、「協会けんぽ」に加入
  • 職業はIT企画職
  • 前月の社会保険料控除後の給与は40万円
税金控除額
健康保険料28,625円
厚生年金保険料45,750円
雇用保険料1,500円
所得税43,303円
合計119,178円
手取り380,822円

※2022年3月時点の保険料率・税率で計算しています。

健康保険料

40代後半であるため、健康保険料に加えて介護保険料も支払う必要があります。

協会けんぽのホームページで確認すると、令和4年度(2022年)の40歳以上の健康保険料率は11.45%でした。

  • 500,000円 × 11.45% × 1/2 = 28,625円

出典:協会けんぽ「令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」

厚生年金保険料

厚生年金保険料は、支給される金額にかかわらず18.3%と決まっています。

  • 500,000円 × 18.30% × 1/2 = 45,750円

雇用保険料(一般の事業として算出)

今回の例では職業「IT企画職(一般の事業に分類)」であるため、雇用保険料率は0.3%です。

  • 500,000円 × 0.3% = 1,500円

所得税

ボーナスにかかる社会保険料の合計額を求めます。

上記で計算した金額を足すことで算出できます

  • 28,625円 + 45,750円 + 1,500円 = 75,875円

ボーナスにかかる所得税率は、扶養家族が2人・前月の社会保険料控除後の給与が40万円だったため、10.210%です。

  • {500,000円 – (75,875円)} × 10.210% = 43,303円

社会保険料と所得税の合計額は119,178円となり、ボーナスの手取り金額は380,822円となりました。

まとめ:ボーナスから引かれる税金も想定して計画を立てましょう

ボーナスから引かれる税金も想定して計画を立てましょう

ボーナスからは「税金」と「社会保険料」が引かれるため、支給額と実際に使える金額には差があります。

ボーナスの手取り目安は約80%ですが、天引きされる金額は人によって異なるということを把握しておきましょう。

所得税は収入が多い人ほど多く納める仕組みになっているため、月収が高い人は手取りの目安を約75%ほどでボーナスの見積もりをしてもいいかもしれません。

ボーナスの使い道は、額面の支給額ではなく想定される手取り額をベースに計画することをおすすめします。

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