「所得」とは、収入から必要経費を引いたものを指し、所得税や住民税などの税金計算に用いられるものです。

似たような意味を持つ言葉に「収入」や「手取り」がありますが、細かな意味は異なります。

自分の収入から引かれる税金について理解するためにも、「所得」「収入」「手取り」の違いや所得の計算方法を把握することが大切です。

この記事では、所得の基本的な内容や「収入」「手取り」との違い、所得税の簡単な計算方法について解説します。

自分が納めている税金についての理解を深めていきましょう。

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所得とは

所得とは

「所得」とは、収入からその収入を得るためにかかった必要経費を差し引いて残った金額のことです。

収入の性質に応じて10種類に分けられており、それぞれ課税方法が異なります。

10種類の所得と概要は以下の表の通りです。

種類概要
事業所得農業や漁業、商・工業などの自営業から生じる所得
不動産所得土地や建物などの不動産を貸し付けることで生じる所得
利子所得公社債や預貯金の利子などの所得
配当所得株式の配当や投資信託の収益の分配などで得た所得
給与所得勤務先から支給される給与や賞与(ボーナス)などの所得
譲渡所得土地や建物、株式などを譲渡したことによる所得
一時所得生命保険の一時金や賞金などの臨時的な所得
山林所得山林を伐採して譲渡したことなどで生じる所得
退職所得勤務先からの退職金や確定給付企業年金・確定拠出年金で支給される一時金などの所得
雑所得他の所得に該当しない所得

所得にはさまざまな種類がありますが、この記事では「給与所得」を中心に解説します。

参考:国税庁「所得の種類と課税方法」

給与所得と給与、手取りとの違い

給与所得と給与、手取りとの違い

「給与」は支払われるすべての金額(収入)

「給与」とは、会社から従業員に対して支払われる労働の対価すべてを指し、「収入」とも言われます。

例えば基本給や時間外手当、各種手当、賞与(ボーナス)などです。

また「収入 = 年収」ではありますが、税法上には「年収」という言葉は存在しません。

税金の計算をする場合は、年収を「収入」と呼ぶことも覚えておきましょう。

関連記事:コスパのいい年収とは?税金を考慮したお得な年収を解説

「所得」は収入から必要経費を引いたもの

「所得(給与所得)」とは、源泉徴収前の給与・賞与などの「収入」から「給与所得控除」を差し引いた金額のことです。

通常は収入から必要経費を差し引きますが、会社員には原則として必要経費がありません。

しかし、仕事用の靴やスーツ、事務用品などを自己負担しているケースが多いため、必要経費の代わりに「給与所得控除」を認めています。

所得税や住民税を計算する際は、「収入」ではなく「所得」を用います。

そのため、給与から引かれる税金額を正しく計算するためには、「所得」の金額を把握することが大切です。

関連記事:所得税納付書の入手方法と書き方!どこでもらえるかや提出場所も解説

「手取り」は実際に受け取る金額

「手取り」とは、給与から給与所得控除を差し引き、さらに社会保険料や税金を差し引いて残った金額のことです。

実際に受け取る金額であり、一般的には給与の8割程度が手取りになると言われています。

つまり、「給与(収入)」から必要経費(給与所得控除)が引かれて「所得」になり、「所得」から税金や社会保険料が引かれたものが「手取り」です。

「給与」「所得」「手取り」の違いを正しく把握しておきましょう。

関連記事:所得税はいくらから引かれる?103万の壁や所得税の計算方法を解説

会社員の「所得」と「控除」

会社員の「所得」と「控除」

ここではアルバイトやパート、会社員など、雇われて給与をもらっている人の「所得」と「控除」について解説します。

会社員には後述する「特定支出控除」を除き、原則として必要経費が認められていません。

代わりに「給与所得控除」を必要経費とみなし、所得を算出しています。

「給与所得控除」は会社員の必要経費

会社に雇われている場合であってもスーツや靴、事務用品などは仕事上必要で購入しなければならないケースがあります。

原則として会社員には必要経費が認められていない分、代わりに「給与所得控除」を収入から差し引くことができる仕組みです。

給与所得控除額は、給与等の収入金額に応じて以下の表のように定められています。

給与等の収入金額給与所得控除額
1,625,000円まで550,000円
1,625,001円から
1,800,000円まで
収入金額 × 40 %
– 100,000円
1,800,001円から
3,600,000円まで
収入金額 × 30%
+ 80,000円
3,600,001円から
6,600,000円まで
収入金額 × 20%
+ 440,000円
6,600,001円から
8,500,000円まで
収入金額 × 10%
+ 1,100,000円
8,500,001円以上 1,950,000円(上限)

ご自身の収入をもとに、給与所得控除額を計算しましょう。

出典:国税庁「No.1410 給与所得控除」

「特定支出控除」は会社員が活用できる経費

給与所得者(会社員やアルバイト)は、原則として必要経費が認められませんが、特定の支出が給与所得控除額の2分の1を上回る場合は「特定支出控除」の適用を受けられます。

特定支出控除が受けられる支出は、以下の表の通りです。

特定支出概要
通勤費一般に必要と認められる範囲での通勤費の支出
職務上の旅費勤務先から離れた場所で勤務を遂行するために必要な支出
転居費転勤に伴う転居に必要と認められる支出
研修費職務に必要な技能・知識を得ることを目的に研修を受けるための支出
資格取得費職務に必要な資格を取得するための支出
帰宅旅費単身赴任などの場合で赴任先と自宅を往復するために必要な支出
勤務必要経費職務に必要と認められた図書費、衣服費、交際費など(65万円まで)

特定支出控除を受けるためには、給与の支払い者の証明が必要となります。

また、確定申告を行う必要がある点にも注意が必要です。

参考:国税庁「No.1415 給与所得者の特定支出控除」

関連記事:宝くじの税金はいくら引かれる?翌年の確定申告必要有無についても解説

15種類の「所得控除」も適応される

給与から「給与所得控除」や「特定支出控除」を差し引いて算出された「所得」から、さらに15種類の「所得控除」も適用されます。

所得控除の種類は以下の通りです。

  • 雑損控除
  • 医療費控除
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 寄附金控除
  • 障害者控除
  • 寡婦控除
  • ひとり親控除
  • 勤労学生控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 基礎控除

なかでも「寄附金控除(ふるさと納税)」や「小規模企業共済等掛金控除(iDeCo)」などは、会社員でも活用しやすい控除です。

積極的に活用して、所得税・住民税の負担を軽減しましょう。

参考:国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」

個人事業主の「所得」と「必要経費」

個人事業主の「所得」と「必要経費」

個人事業主の場合、所得は「収入(売上) – 必要経費」です。

会社から給与をもらっているわけではないため給与所得控除は適用されませんが、所得控除の適用は受けられます。

個人事業主にとっての必要経費としては、売上原価や人件費などが該当します。

どのような費用が必要経費になるのかを把握し、税金の負担を軽減しましょう。

個人事業主の必要経費の内訳

個人事業主が必要経費として計上できる項目としては、以下のようなものがあります。

必要経費となる項目概要
給料賃金従業員に対して支払う給与や賃金
地代家賃事業所や事業に使う駐車場にかかる費用
※職場が家なら家賃も対象
通信費事業に用いる電話代やインターネット料金などの費用
水道光熱費事業で用いられる水道や電気、ガスにかかる費用
接待交際費取引先との飲食などにかかる費用
消耗品費文房具やパソコンなどの消耗品にかかる費用
減価償却費建物や自動車などの高額な備品を決められた一定年数にわたって計上する経費
租税公課消費税や個人事業税、固定資産税、不動産取得税などの税金

上記の費用を必要経費として計上するためには、事業で収入を得るため必要であることを証明する必要があります。

領収書やレシートなどをしっかりと保管しておきましょう。

参考:国税庁「No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)」

所得税の計算方法

所得税の計算方法

所得税の計算方法は「課税所得金額 × 税率 – 税額控除額」です。

所得が高いほど所得税が高くなる仕組みであり、収入が多くても必要経費が多くかかった場合には所得税は安くなります。

ここでは、年収600万円の会社員を例に所得税の計算方法を簡単に解説します。

所得金額を求める

まずは「収入(給与) – 必要経費(給与所得控除)」で所得金額を求めます。

例えば年収600万円の会社員の場合、給与所得控除は「収入金額 × 20% + 440,000円 = 1,640,000円」となります。

つまり、年収600万円の会社員の所得金額は「6,000,000円 – 1,640,000円 = 4,360,000円」です。

課税所得金額を求める

次に、「所得金額 – 所得控除」の計算式で課税所得金額を求めます。

前述した15種類の所得控除の中で、自分が該当するものを活用して控除を適用します。

無条件で適用される「基礎控除」や支払った社会保険料が差し引かれる「社会保険料控除」などを活用可能です。

例えば年収600万円の会社員は基礎控除が48万円、社会保険料は約90万円になります。

所得金額が4,360,000円であるため、おおよその課税所得金額は「4,360,000円 – 480,000円 – 900,000円 = 2,980,000円」です。

関連記事:税金の使い道に無駄はない?納税が必要な理由を解説

課税所得に一定の税率を掛ける

課税所得金額を求めたら、所得税率をかけて所得税額を計算します。

所得税の税率は、課税所得金額に応じて以下のように定められています。

課税される所得金額税率控除額
1,000円〜1,949,000円5%0円
1,950,000円〜3,299,000円10%97,500円
3,300,000円〜6,949,000円20%427,500円
6,950,000円〜8,999,00023%636,000円
9,000,000円〜17,999,000円33%1,536,000円
18,000,000円〜39,999,000円40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

先ほど計算した年収600万円の会社員の例では、課税所得金額が2,980,000円でした。

上記の表に当てはめると、「2,980,000円 × 10% – 97,500円 = 200,500円」となります。

出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」

納める税額が出る

計算によって求められた所得税額から「税額控除」を差し引くと、納める税額が算出できます。

税額控除とは、所得税額から一定額を控除できる制度のことです。

代表的な税額控除としては「住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)」や「配当控除」などがあります。

関連記事:独身税は日本で施行される?海外の事例や税金対策8選

パートやアルバイトの「103万円の壁」とは

パートやアルバイトで働いている人は「103万円の壁」に注意が必要です。

年収103万円を超えると所得税が課税されることから「103万円の壁」と呼ばれています。

パートやアルバイトなどの給与所得者は、「給与所得控除」の55万円と「基礎控除」の48万円を合計した103万円の控除が適用されます。

そのため103万円の範囲内であれば全額が控除の対象となり、所得税がかかりません。

ただし、103万円を超えた場合であっても、寄附金控除(ふるさと納税)や小規模企業共済等掛金控除(iDeCo)などの「所得控除」が適用される場合は所得税がかからないケースがあります。

ふるさと納税やiDeCoなどの税負担を軽減できる制度の活用を視野に入れましょう。

まとめ:給与所得とは収入から経費を引いたもの

給与所得とは収入から経費を引いたもの

所得(給与所得)は、収入から必要経費(給与所得控除)を差し引いた金額のことです。

さらに所得から税金や社会保険料を引いて手元に残ったのが「手取り」となります。

所得税を計算する方法や適用される控除について理解できると、毎月の給与から引かれている税金に対しての理解も深まります。

「所得」と「収入」の違いをしっかりと理解した上で、源泉徴収票や給与明細表をチェックしてみましょう。

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