税金対策で会社を2つ持つメリットとは?分業化のリスクや注意点も解説!
会社を経営する上では、利益を上げることと同時に、税金対策によって手元の事業資金を確保することも大切です。
税金対策にはいくつかの方法がありますが、その中でも会社を2つ経営することは有効な方法のひとつだといわれています。
2つの会社を持つメリット・デメリットや留意すべき点を理解した上で税金対策として実施するか検討しましょう。
この記事では、税金対策として会社を2つ持つメリット・デメリットや効果などについて詳しく解説します。
税金対策として別会社の設立を検討している方は参考にしてください。
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この記事の目次
分社化とは?
「分社化」とは、事業内容ごとに会社を分けて別々の会社にすることを指します。
独立した子会社を作り、その子会社を親会社の支配下に置くという仕組みです。
会社を分ける方法は、大きく「事業譲渡」と「会社分割」のつに分けられます。
事業の拡大や税金対策のために複数の会社を持つことは多いですが、税金対策が有効になりやすいのは中小企業の場合が多いです。
「なぜ会社を2つ持つことが税金対策になるのか」を理解した上で、複数の会社を持つべきか検討しましょう。
税金対策で会社を2つ持つメリット
法人税と事務税の軽減税率が使える
2つの会社に利益が分散されることで、法人税・事業税の負担が軽減する可能性があります。
これは資本金が一定以下の法人に限り、年間所得が一定以下の部分に対して法人税・事業税の軽減税率を設けているためです。
法人税の場合、資本金が1億円以下などの中小企業であれば、年間の所得に対して以下の税率が適用されます。
- 800万円以下の部分:15%
- 800万円超の部分:23.2%
利益が大きい場合は、2つの会社に利益分散させることで、それぞれの会社で軽減税率が適用されます。
事業税も同様に、資本金1,000万円未満などの法人に対して軽減税率が適用されます。
例えば東京23区における所得割の標準税率は以下の通りです。
- 400万円以下の部分:3.5%
- 400万円超800万円以下の部分:5.3%
- 800万円超の部分:7.0%
このように会社を2つ経営して利益を分散させると、法人税・事業税の負担を軽減させることができます。
出典:国税庁「No.5759 法人税の税率」
出典:東京都主税局「法人事業税・法人都民税」
利益の移動ができる
関係する会社同士が仕事を発注し合うことで、利益を移動させることができます。
利益が多い会社から損失が発生している会社に仕事を回すことで、税金の負担を軽減させるという仕組みです。
例えば、利益が1,000万円のA社と損失が500万円のB社を経営している場合に、A社からB社に300万円分の仕事を発注したと仮定します。
するとA社の利益は700万円となり、B社の損失は200万円となります。
A社は利益が減った分だけ税金の負担も軽減され、B社は損失を抱えたままなので税金は変わりません。
結果としてA社とB社でトータルの税金を減らすことができます。
ただし、税務署から租税回避とみなされるリスクもあるため、適切な運営を行うことが重要です。租税回避については後述しています。
少額減価償却資産の特例が使える
中小企業者に該当する場合は「少額減価償却資産の特例」が使えます。
少額減価償却資産の特例とは、取得金額が30万円未満の減価償却資産について年間300万円まではその事業年度に全額損金に算入できるという制度です。
通常、固定資産を取得した場合、取得した年度にすべて経費に計上されることはありません。
一般的には、定められた耐用年数に応じて毎年経費に計上していく「減価償却」という考え方が適用されます。
しかし少額減価償却資産の特例であれば、取得金額の小さい固定資産を年間300万円まで一括で損金に計上できます。
もし会社を2つ経営している場合、合計で年間600万円まで損金に計上可能です。
それぞれの会社で特例を活用することで税金の負担を軽減できるという点も、会社を2つ経営するメリットでしょう。
出典:国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」
退職金が計上できる
会社を2つ経営していると、従業員や役員がもう一方の会社に転籍する際に退職金を支給することができます。
この退職金は損金に計上できる経費となり、利益から差し引くことで効果的な税金対策となります。
従業員・役員が会社を退職する際も、支給される退職金は損金計上が可能です。
受け取る側も退職金の税制優遇があるため、会社にとっても従業員・役員にとってもメリットがあります。
交際費の拡大ができる
中小企業の場合、取引先との接待などで用いられる交際費は年間800万円まで経費に計上できます。
ただし年間800万円以上になると税務上の損金として認められないため、法人税の負担を軽減させることができません。
会社を2つ持つと「年間800万円×2=1,600万円」までの交際費を損金に計上可能です。
接待交際費が多い場合、税金対策として会社を2つ持つことを検討してもよいでしょう。
参考:国税庁「No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算」
消費税の優遇が受けられる
一定の条件を満たす企業の場合、設立してから最初の2年間は基本的に消費税が免除されます。
会社を設立してから1期目は、資本金が1,000万円未満の場合に消費税が免除となります。
2期目の消費税を免税にするためには、以下のいずれかを満たさなければなりません。
- 1期目の上半期における課税売上高が1,000万円以下である
- 1期目の上半期における給与等の支払い総額が1,000万円以下である
資本金が1,000万円未満かつ上記のいずれかの条件を満たす会社を設立すれば、設立後2年間は消費税が免除されるという仕組みです。
税金対策で会社を2つ持つデメリット
複数の会社を持つ場合、メリットだけでなくデメリットも存在します。
2つの会社を持とうと考えている方は、デメリットについても事前に把握しておくことが重要です。
事業運用のコストがかかる
会社を2つ経営する場合、事業を運用していくためのコストが増加します。会社設立のコストや維持・管理にかかる費用、そして税金などがこれまで以上にかかる点の考慮が必要です。
例えば、税理士への顧問料や従業員の人件費、オフィスの賃料や光熱費、社会保険料など、多岐にわたる費用が発生します。
税金対策のために会社を設立したはずが、実際には軽減できる税金の額よりもコストの方が上回ってしまう可能性があることに留意が必要です。
あらかじめどの程度のコストがかかるかシミュレーションした上で、新たに会社を設立することが重要です。
経理処理の手間がかかる
会社を2つ持つことで、これまで1社で済んでいた経理処理を2社分行う必要が生じます。
このような経理処理の手間が増えてしまう点もデメリットとして挙げられます。
例えば、会社ごとに経費を分けたり、それぞれの会社で申告を行ったりしなければなりません。
複数の会社を経営する際には、経理処理・申告の手間が会社の数だけかかることも把握しておきましょう。
租税回避とみなされる可能性がある
新たに設立した2つ目の会社が実際には運営されておらず、、利益や経費の付け替えだけをしているような場合は租税回避行為とみなされる可能性があります。
このようなケースでは、税務調査等で指摘されるリスクが高くなるため注意が必要です。
さらに、事業内容が同じような会社を複数持つことは禁止されている場合があります。税金対策のためだけに新たな会社を設立することは避け、透明性を持った運営を心がけましょう。
2つの会社を持つことでどれくらい税金対策できるのか?
会社を2つ経営する場合、どれくらい税金の負担を軽減できるのかを比較してみましょう。
ここでは以下の条件に該当する法人として計算を行います。
- 東京23区内に事務所がある普通法人
- 従業員数50名以下
- 資本金1,000万円
- 年間所得1,200万円(2社の場合は600万円ずつ)
上記の条件を満たす場合の各税額は以下の表の通りです。
税目 | 1社経営 | 2社経営 |
法人税 | 2,128,000円 | 1,800,000円 |
法人地方税 | 93,600円 | 79,200円 |
法人事業税 | 632,000円 | 492,000円 |
地方法人特別税 | 273,000円 | 212,400円 |
法人住民税 | 218,900円 | 266,000円 |
合計 | 3,345,500円 | 2,849,600円 |
上記の計算では、2社に分けることで約50万円の税負担を軽減できました。
税金の負担軽減と会社設立のコストを比較した上で2社目の設立を検討しましょう。
税金対策で会社を2つ持つときの注意点
税金対策として会社を2つ持つ場合、以下の2点に注意が必要です。
- 業務を分割する
- 分社との取引ばかりしない
会社を2つ持つことを検討している方は、上記2つの注意点を事前に確認しておきましょう。
業務を分割する
会社を2つ設立・経営する場合、1つ目の会社の事業内容を単純に2分割しただけでは、税務署から単なる税金対策であると指摘される可能性が高いです。
それぞれの会社が独立した別会社であることが客観的に分かるようにしておきましょう。
例えば不動産会社の場合、建築設計をする会社と住宅の販売を行う会社、ローンを取り扱う会社などに事業を分けることが考えられます。
全体としては不動産に関連する1つの事業ですが、各会社はそれぞれ独立しているとわかります。
それぞれの会社で利益を出せるような形で業務を分割し、税金対策のために設立した会社ではないことを示せるようにしましょう。
分社との取引ばかりしない
分社との取引ばかりせず、積極的に他社との取引を増やしていきましょう。
お互いの会社で完結する取引ばかりでは、租税回避目的の会社設立であるとみなされる可能性もあります。
当初の目的が税金の負担を軽減させることであったとしても、それぞれが他社との取引を増やしていけば事業は拡大していきます。
これにより利益が拡大するだけでなく、分社との取引も減少し、租税回避目的であるとみなされなくなっていきます。
税金の負担を軽減させることだけでなく、各社で利益を伸ばしていく取り組みを積極的に行いましょう。
まとめ:会社を2つ経営して上手に税金対策を行いましょう
会社を2つ経営することで、法人税・事業税の軽減税率を活用できたり、利益を効果的に移動できたりするなど、効果的な税金対策となることがあります。
一方で事業運用のコスト増や、経理処理の手間が増えるなどのデメリットもあるため、慎重に検討することが重要です。
また、会社を2つ持つと場合によっては「租税回避目的ではないか」と税務署から指摘を受ける可能性があります。
それぞれ独立した会社であることを客観的に分かるようにしたり、他社との取引を増やしたりなど、租税回避目的の会社設立でないことを明確にすることも意識しましょう。
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