VIX指数とは?2020年のコロナショックを過去の金融危機と比較〜投資コラム〜

投資家の不安心理を表す「VIX指数」という指標があります。オプション取引から算出される指標なので難しそうだと感じる方もいるでしょうが、指数の見方は簡単です。
今回はVIX指数の仕組みについて解説します。
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VIX指数とは
VIX指数とはVolatility Index(ボラティリティ・インデックス)の略で、シカゴオプション取引所がS&P500種指数のオプション取引をもとに算出・公表している指数です。
通常は10~20程度で推移しますが、株式市場が暴落する時には40~50に吹き上がるので、別名「恐怖指数」とも呼ばれ、数値が高いほど投資家が先行きに不安を感じているとされます。
S&P500種指数は、NYダウとともに米国株式市場を代表する株価指数です。採用銘柄は40業種におよび、ニューヨーク市場の時価総額の約75%をカバーしています。市場全体の動きを表す指標として、主に機関投資家に利用されています。
ボラティリティとは
VIX指数のVolatility(ボラティリティ)とは、どういう意味なのでしょうか。ボラティリティとは、一般的に価格変動の度合い(変動率)を示します。
「ボラティリティが小さい」という場合は、その商品の価格変動が小さいことを意味し、「ボラティリティが大きい」という場合は、その商品の価格変動が大きいことを表します。
ただ、ボラティリティには2種類あります。
1つは株価や株価指数など過去の値動きから計算される「ヒストリカル・ボラティリティ(Historical Volatility)」で、もう1つは取引されているオプション価格から計算される「インプライド・ボラティリティ(Implied Volatility)」です。
VIX指数は、後者のインプライド・ボラティリティを使って計算されています。
2020年2月からの下落は「リーマン級」なのか
2020年2月の米国株式市場は、記録的な下落となりました。NYダウは28日まで7日続落。
2月24~28日の下げ幅は3,586ドルと、リーマンショック時の2008年10月6~10日の1,874ドルを上回り過去最大になりました。
週間下落率は12%を超え、リーマンショック直後の2008年10月以来の大きさになり、VIX指数は28日に50近くまで上昇しました。
1990年以降、終値ベースでVIX指数が40ポイントを上回ったのは過去6度しかありません。
1998年9~10月のロシア危機、2001年9月の米同時多発テロ、2002年7~8月のワールドコム破綻、2008~9年のリーマンショック、2010年5月のギリシャ危機、2011年8月の米国債格下げです。
1990年代以降のVIX指数の値動きは、以下の通りです。
出典:CBOE
VIX指数が40~50まで上昇したことは何度かありますが、2008年のリーマンショックでは80近くまで上昇しました。
2月の新型コロナウイルスによる下落は、過去の米同時多発テロやギリシャ危機と同程度の危機と判断できるものの、「100年に1度の金融危機」と呼ばれたリーマンショック級の下落ではないことがわかります。
しかし、3月になってからもマーケットの不安定さは続いています。新型コロナウイルスの感染拡大が米国内でも急拡大しているからです。
3月第1週のNYダウは1,000ドル前後の上げ下げを繰り返し、米国10年債利回りは0.66%と過去最低を更新しました。VIX指数は6日に54.39まで上昇し、先行きへの不安が高まりました。
VIX指数がどこまで上昇するのかが注目されます。
日経VI(ボラティリティインデックス)とは
日本にも、日経平均株価のボラティリティを計る指数である「日経VI(ボラティリティインデックス)」があります。
日経VIは2010年11月から算出され、投資家が将来の日経平均株価の変動をどのように想定しているかを表す指標です。
日経VIの数値が高いほど、今後の日経平均株価は大きく変動すると投資家が見込んでいることを意味します。
日経VIは大阪取引所に上場している日経平均先物および日経平均オプションの価格をもとに算出され、日経平均株価の1か月先の変動率を示します。
現在は、大阪証券取引所の日経平均オプション取引の立会時間中に、15秒間隔で算出されています。
日経VIの過去10年間の推移は、以下の通りです。
出典:日経プロフィル
先行きの値動きが荒くなると見る投資家が増えると、日経VIは上昇します。過去の値動きから見ると30が1つの目安で、この水準を上回ると投資家は日経平均株価の価格変動リスクを意識していると判断します。
日経VIの数値が30とは、1年後の日経平均株価が上下30%変動する確率が約7割あることを意味しています。ただ、下落する時の方が値動きは大きくなるので、通常は下落リスクに注意します。
VIX指数の注意点
S&P500オプションから算出されるVIX指数も日経平均オプションから算出される日経VIも、あくまで市場参加者の予想にもとづくものなので、暴落時には大きく上昇するものの、動きが止まると急落することがあります。
VIX指数の大半は、10~20前後での動きです。数年に1度30を超えて大きく上昇しますが、高値がどこになるかはわかりません。
ただ、1990年以降ではリーマンショック時の80が最高になっています。
VIXを対象にした先物やETF(上場投資信託)もありますが、長期保有していても価格が下げる傾向にあるのです。
VIX指数は、株価が下がれば上昇する傾向にありますが、ゆるやかな下落だと上がらないという点には注意が必要です。
オプション取引とは
VIX指数を算出するためのオプション取引について解説します。
オプション取引とは、あらかじめ決められた期日(満期日)に、あらかじめ定められた価格(権利行使価格)で対象の指数(S&P500や日経平均株価)を買いつける、または売りつける権利を売買する取引です。
買う権利のことを「コールオプション」、売る権利のことを「プットオプション」といいます。
日経平均オプションの例を見てみましょう。
- 日経225オプション
- 2020年6月限
- 権利行使価格20,000円
- プット
- プレミアム500円
これは、2020年6月の満期日までに、20,000円で日経平均株価を「売る権利(プット)」を500円という価格で売買する仕組みです。この500円(プレミアム)が株価のように変動します。
プットオプションの買いは、日経平均株価が今後下落すると予想した時に使います。
たとえば、権利行使価格20,000円のプットを買っておけば、日経平均株価が20,000円を下回ると利益になります。そして、日経平均株価が下落すればするほど利益は増えるのです。
プットオプションの買いは、日経平均株価などの値下がりリスクのヘッジ手段として使えます。現物株を保有している場合でも、指数の値下がりリスクを回避できるのです。
ですから、株価が下落する時にプット買いの需要が高まり、ボラティリティも上昇する傾向にあるのです。
まとめ
今回は、「恐怖指数」と呼ばれるVIX指数について解説しました。S&P500種指数のオプションをもとに算出されるVIX指数は、米国株式市場の先行き不安を表します。
通常は10~20の間での推移ですが、市場の不安心理が高まると40を超えてくることがあります。
1990年以降ではリーマンショック時の80が最高ですが、2020年のコロナショックでも50を上回る水準となりました。
また、日経平均株価を対象にした日経VIも2010年から算出されています。リーマンショック後からの算出になりますが、今回のコロナショックでは40を超え、これまでの最高値を更新しています。
VIX指数が高止まりしている間は乱高下が激しいので、ムリな取引はしないように気をつけましょう。
記事 山下 耕太郎
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