20歳になると国民年金保険料を納付する義務があります。毎月の年金保険料を納めることによって、将来の年金を受給することができます。

しかし、経済的な理由によりどうしても保険料が納められない場合、申請をすることにより免除や納付猶予を受けられるといった制度があります。

経済的に苦しい状態のときにはとてもありがたいのですが、将来受け取れる年金額は少なくなってしまうのです。

この記事では、将来を見据えて年金を少しでも多く受給するための方法である「追納」についてご紹介します。

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年金は追納する事ができる

年金は追納する事ができる

国民年金は20歳以上60歳未満のすべての人が加入し毎月の保険料を納め、保険料を納めた期間に応じて将来の老齢年金受給額が決定する仕組みです。

2021年度の保険料は月額1万6,610円となっており毎年増加する傾向にあります。

しかし、経済の悪化や失業などにより収入が減少した場合などの経済的な理由により国民年金保険料を納めるのが困難な場合「国民年金保険料免除・納付猶予制度」の手続きを取ることで、保険料を免除または納付の猶予が認められます。

また、20歳になった学生も保険料を納付する義務がありますが、在学中は「学生納付特例制度」により保険料の納付が猶予されます。

これらの制度により保険料の一部または全部を支払わなくてもよいのですが、支払わなかった期間分、将来年金を受け取る際に減額されてしまいます。そこで、満額に近い年金を受け取るための方法として「追納」があります。

免除されていた国民年金が追納できる

学生納付特例や、やむを得ない理由などで保険料の納付を免除されていた場合、保険料を全額納付した場合と比べて受け取れる年金額が少なくなります。

しかし、あとから追納すれば、受け取り年金額を満額まで増やすことが可能です。

追納は、過去10年以内の免除期間に限られています。

何らかの理由によって年金保険料の納付を免除されていた方は、ぜひ追納を活用しましょう。

年金追納で受給金額が増える

年金は免除を受けた分をあとで追納することで、受給できる年金の額が増えます。

追納しない場合と比べてどれくらいの差が生まれるのでしょうか。

例えば、5年間の保険料支払い免除を受けていたケースで見てみましょう。

追納をすることで保険料を満額支払った場合、年金受給額は月に約65,000円です。

一方で、5年間の免除を受けたまま追納しなければ、受け取れる年金額は月に約57,000円となり、月額で8,000円、年間で10万円近く受給金額が減少することになります。

年金は、原則として65歳から支給が始まりますが、仮に90歳まで生きたとすると受給期間は25年間です。

年間10万円の金額差が25年続けば、トータルで250万円もの違いが生じることになります。

このように、追納によって受給額に大きな差が開く可能性があるため、あとから追納できる場合は手続きを進めましょう。

自営業者は「付加年金」制度を利用する

自営業者の場合は「付加年金」という制度を活用することによって、受け取れる年金額を増やすことができます。

国民年金第1号被保険者や任意加入被保険者(65歳以上の方を除く)の方は、月額400円の付加保険料を支払うことで受給年金額を増額可能です。

ただし、付加年金は会社員には利用できない制度となっています。

会社員は国民年金に加えて厚生年金に加入することになりますが、更に老後資産の準備を充実させたい場合は、個人年金保険やイデコ(iDeCo)などを活用しましょう。

年金追納方法・やり方

年金追納方法・やり方

免除や猶予を受けた方が年金を追納したい場合どのような手続きや必要書類を準備すればよいのでしょうか。

確認をしてみましょう。

住んでいる市区町村の年金事務所で申請する

年金の追納をしたい場合は、お住まいの市区町村にある年金事務所に行って申請します。

窓口で申請する際には、マイナンバーカード(個人番号カード)の提示が必要となるので準備しておきましょう。

もしマイナンバーカードを作っていない場合は、通知カードや個人番号が記載された住民票など、「マイナンバーが確認できる書類」と運転免許証などの「身元確認書類」を提示することで対応してもらえます。

また、「ねんきんネット」から追納申込書を作成することも可能です。

必要項目を入力して印刷し、必要事項を記入した上で年金事務所に持っていきましょう。

郵送申請も可能

年金事務所に郵送で申請書を提出することでも、追納の申し込みは可能です。

郵送で申請する際には、マイナンバーカードの両面、または「マイナンバーが確認できる書類」と「身元確認書類」のコピーを添付して提出します。

窓口で申請する場合と同様に、「ねんきんネット」から追納申込書を作成することも可能です。

印刷した申込書に必要事項を記入し、年金事務所に郵送しましょう。

基本的には2年以内に追納する

年金は、過去10年分までさかのぼって追納することができますが、基本的には2年以内に追納しておきましょう。

なぜなら、3年目以降の追納は加算額が上乗せされて、支払う保険料が多くなるためです。

例えば、令和4年度中に追納する場合、令和3年度と令和2年度分の追納保険料には追加料金は加算されません。

しかし、令和元年度以前の追納保険料には、月額数十円〜数百円ほど加算されます。

年数が経過するにつれて加算額も大きくなっていくので、なるべく早めに追納しておくことをおすすめします。

いつ年金は追納するのか

追納の申込みが承認されると納付書が送付されます。

納付書を持参し銀行などの金融機関や郵便局の窓口、コンビニエンスストアから納付することができます。

納付期限は、法令により「納付対象月の翌月末日」と定められています。

支払方法は、一括・1カ月分毎・6カ月分毎というように申請書へ記入することにより自分で選択できます。

追納の納付期限内に支払いができるよう無理のない支払回数を選びましょう。

年金追納できるケース

年金追納できるケース

年金追納ができるケースは、次の3つの制度のいずれかを利用して年金保険料を免除または納付猶予された方に限られています。

  • 保険料免除制度
  • 保険料納付猶予制度
  • 学生納付特例制度

では、年金追納ができる3つのケースを見てみましょう。

保険料免除制度を利用した時

本人や世帯主、配偶者の収入が低かったり減少したりしているなど、経済的な理由で年金保険料の納付ができない場合は、免除が適用されます。

保険料免除制度を利用し、保険料を支払っていない期間がある場合には、あとから追納することが可能です。

保険料免除では所得に応じて免除割合が異なり、

  • 全額免除
  • 4分の3免除
  • 半額免除
  • 4分の1免除

の4種類があります。

そして免除の割合に応じて年金額が計算されて、年金額に算入されます。

保険料納付猶予制度を利用した時

本人や配偶者の前年所得が一定以下になり、年金保険料の支払いが厳しい場合には保険料納付猶予制度が利用できます。

猶予制度を利用した場合も、追納によってあとから保険料を納めることができます。

猶予制度が、免除制度と違う点は、「猶予期間は年金額に算入されないこと」と「猶予制度を利用できるのは20歳から50歳未満までである」という2点です。

将来的には追納できる可能性がある年齢に限られており、猶予期間中の年金額が算入されないことに注意しておきましょう。

学生納付特例制度を利用した時

国民年金は20歳から被保険者となりますが、就職していない学生にとっては保険料が負担となります。

そのため、前年の所得が一定以下の学生を対象に「学生納付特例制度」が設けられています。

学生納付特例制度を利用した場合も、追納によって保険料を納付することが可能です。

国民年金保険料を納付する経済的余裕がない学生も少なからずいますが、制度を活用して学生時代は猶予期間にし、就職してから追納することができます。

年金追納したら年末調整は必要?

年金追納したら年末調整は必要?

年末調整する必要がある

国民年金の保険料を追納すると、「保険料控除」の対象となります。

会社の年末調整で申告することで控除が適用され、所得税の負担を軽減させることができます。

もし年末調整で申告しなかった場合は控除を受けることができず、本来よりも多くの所得税を支払うことになります。

保険料を追納した場合は、必ず年末調整で申告しましょう。

「国民年金保険料控除証明書」を受け取る

年金保険料を追納すると、日本年金機構から支払いを証明する書類として「国民年金保険料控除証明書」が郵送されます。

年末調整で保険料控除の申告をする際に必要になるので、受け取ったら大切に保管しておきましょう。

紛失した場合でも再発行ができるので、年末調整をする前に速やかに再発行の申請をしておくことが大切です。

「保険料控除申告書」を記入して職場に提出する

追納した保険料を申告する際には、「保険料控除申告書」に必要事項を記入して職場に提出します。

受け取った国民年金保険料控除証明書に記載されている金額を記載し、職場の担当者に提出しましょう。

また、申告書を提出する際には、国民年金保険料控除証明書も添付して提出する必要があります。

提出を忘れることがないように注意しておきましょう。

年金追納した際のメリット

年金追納した際のメリット

年金保険料の追納には手続きと納付が必要となり手間がかかりますが、その手間をかけた分だけのメリットもあります。

将来の年金受給額が増える

例えば、2年間の納付猶予期間があり、その2年間分約39万円を追納するとします。

追納しない場合の年金受給額毎月約6万1,700円が約6万5千円となり毎月約3,300円増えるのです。

計算上、2年間の追納分約39万円は10年間年金を受給することで採算がとれることになります。

65歳から年金を受け取ることにした場合、10年間つまり75歳まで生存し年金を受給し続けていれば追納した約39万円分を受け取れたということになり、それ以降はプラスに転じるため得をするということもできます。

※例として挙げている「2年間で約39万円の追納」は、2019年度の保険料月額1万6,410円×12カ月と2018年度の保険料1万6,340円×12カ月の合計金額で算出しています。

実際は追納したい期間の保険料により異なります。

保険料控除によって税負担が軽減される

年金保険料を追納した場合、納めた金額は「社会保険料控除」として所得控除することができます。

例えば、サラリーマンが2年間分の年金保険料39万円を追納したとしましょう。サラリーマンの収入は給与所得です。

給与所得から所得控除を差し引いたもの(課税所得金額)に税率をかけて所得税が計算されます。追納した金額39万円分は社会保険料控除として課税所得金額から差し引くことができます。

所得控除が39万円増えたことで最低でも約2万円の所得税を節税することができます(最低税率5%で算出)。

もともとの給与所得の金額にもよりますが、課税所得金額が500万円の場合約8万円もの税負担が軽減されることになるのです(税率20%で算出)。

また、所得税は超過累進課税が適用されるため課税所得金額が大きいほど税率が高くなります。

追納で社会保険料控除が増えることにより課税所得金額が減り、所得税の税率を下げることができた場合にはさらに大きな節税効果が期待できるでしょう。

まとめ:年金を追納して受給額を増やそう

年金を追納して受給額を増やそう

国民年金は、免除や猶予などの一定の理由があって保険料の支払いができなくても、あとから納付する「追納」が可能です。

追納によって受け取れる金額に差が生まれるため、できる限り追納しておくことをおすすめします。

また、追納をした場合には年末控除も忘れてはいけません。

郵送される「国民年金保険料控除証明書」を大切に保管しておき、職場で申告書と合わせて提出しましょう。

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