年金保険料の追納とは?本当に追納した方が良いの?

将来年金を受け取るために年金保険料を支払っているわけですが、毎回きっちり支払える場合もあれば、経済的理由や所得のない学生であるために、納入していない期間ができてしまうこともありえます。こういった、20歳から60歳までの納付期間に支払えなかった年金保険料を納付する方法が、「追納」という制度です。
今回は追納という制度と追納することのメリットをご紹介します。ご自身だけでなく、両親や家族の年金に未払いがあるとき参考にもなりますので、しっかり確認していきましょう。
そもそも追納とは
そもそも追納とは何でしょうか。まずはここからスタートです。
年金保険料を支払うことができないとき、「免除」や「猶予」という制度を使うことで、支払い額を減らすことや支払いを待ってもらうことができます。このとき支払わなかった年金保険料を経済的に余裕ができて、後払いすることを「追納」と呼びます。未払い期間や金額を支払うことができる制度ですが、なんでもかんでも追納できるのではなく、いくつか注意するポイントがあります。
追納は過去10年間の免除期間分に限られている
追納は、追納が承認された月から過去10年間以内の免除・猶予期間についてまでとなっています。50歳になって承認され、学生時代の猶予分を支払いたいと思っても、追納することはできません。
古い期間から納付していく
追納する期間も原則として古い期間の保険料から納付していくことになります。例えば、2016年4月から2018年3月までの未払いがある場合、最も古い2016年4月分から支払います。
3年目以降の追納には経過期間に応じて追納加算額が加算される
免除や猶予を受けてから、追納する期間が伸びると、保険料を追納するときに、保険料に加算される場合があります。免除や猶予を受けた期間の翌年から2年以内に追納すれば、加算額はないのですが、3年目以降に追納する場合には、経過期間に応じて加算額を支払わなくてはいけません。
出典:免除された国民年金保険料を追加で支払いたいとき|日本年金機構
後納とは別物
年金保険料を後払いする制度には追納のほかに、後納という制度があります。こちらは年金の支払いをしなかったことによって、時効となり、納付できなかった「未納」の保険料を支払うための制度になります。後払いすることは同じなのですが、条件が違います。覚えておきましょう。
年金事務所への申込手続きが必要
追納するには、年金事務所で申し込む必要があります。追納申込書は、以下の書類になります。
注意するポイントは、承認を受けた後で受け取ることができる専用の納付書でないと納付できないということです。納付するときは、受け取った納付書を使いましょう。
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保険料の免除・猶予を受けた場合のメリット
追納の説明の中で、免除・猶予という言葉出てきていますので、ここで簡単にまとめておきます。
・免除:経済的に厳しく、前年度の所得が一定以下の場合や、失業などによって、保険料の支払いが困難と認められた場合に、保険料の納付が免除される。
免除される額には、全額・4分の3・半額・4分の1の4種類がある。
・猶予:20歳から50歳未満の方で、前年度の所得が一定以下の場合に、納付が猶予される。
免除・猶予のメリットは以下の項目になります。
保険料の負担が軽減される
免除であれば、金額減額され、猶予であれば、支払い期間を待ってもらえます。これにより、経済的負担を減らすことができます。
免除期間も受給資格期間に算入することができる
年金を受け取るには、受給資格期間があります。この期間を満たさなければ、年金を受け取ることができません。免除・猶予手続きをすると、全額払っていなくてもこの期間を資格期間に算入することができます。
障害年金や遺族年金が受け取れる
免除や猶予期間に、怪我・病気による障害になったり、死亡した場合に、障害年金や遺族年金を受け取ることができます。
これらのメリットは、保険料を支払わない未納では、受けることができません。保険料の支払いが難しいからといって、支払わなくてもいいやと思うのではなく、免除や猶予の申請を行いましょう。
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追納のメリット
それでは、追納の話に戻りましょう。ここでは追納のメリットをご紹介します。
将来の年金受給額が増える
国民年金は、基本的に保険料を支払った月数によって決まります。支払った期間が長いほど、受け取ることのできる年金が増えるわけですので、免除・猶予期間があったとしても、追納することで、受給額を増やすことができます。
保険料控除によって税負担が軽減される
国民年金は、社会保険料控除の対象となります。社会保険料控除とは、ご自身または生計を一にする配偶者や、その他の親族の社会保険料を支払った場合、その金額について、所得控除を受けることができます。社会保険料控除を使って、還付金を受け取るには、確定申告が必要になりますので、覚えておきましょう。
ねんきんネットを使った追納可能月数等の確認方法
ご自身に未払いがあったことがわかったとして、追納したいと思っても、追納可能な期間がわからないと不安ですよね。ねんきんネットを使うと、追納可能期間等を確認することができます。
ねんきんネットの「追納・後納等可能月数と金額の確認」をクリックする
ねんきんネットにログインしたら、「年金見込額試算」をクリックします。そして、「追納・後納等可能月数と金額の確認」をクリックします。
月別納付状況等を確認する・納付可能月数を確認する
これまでの期間の国民年金保険料の納付状況や可能月数が表示されるので、今のご自身の状況が確認できます。
追納・後納する場合は納付方法毎に納付月数を入力する
追納や後納する場合は、納付方法ごとに納付する月数を入力します。入力が完了したら「納付期間を反映」をクリックしましょう。これで納付月数に応じた保険料額が算出されます。この手順で、ご自身の今後納付する月数や金額の確認をしましょう。
結局追納した方が良いの?
さてここまでで、追納についてのメリットとねんきんネットを使った追納可能月数・金額の確認の仕方をご紹介しました。今回は最後に、メリットはわかったけど、もらえる年金を考えたとき結局のところ追納した方がいいのかどうかを、状況別に考えおこうと思います。
追納できるのは、過去10年間までの期間となっているため、今回は平成21年4月分以降についての免除を想定して、ご説明します。
平成21年4月分以降の全額免除がある場合、何歳からお得?
まずは、平成21年4月分以降に全額免除がある場合です。キホン情報は以下の通りです。
・追納時期は平成30年
・全額免除なので、2分の1が国庫負担
・平成28年と平成29年分を追納
・平成28年分は、追納額16,260円(月)
・平成29年分は、追納額16,490円(月)
・老齢基礎年金の満額は、779,300円(平成30年度の金額)
平成30年度老齢基礎年金は、全期間(40年間)納付した場合、779,300円受け取ることができます。では、2年間免除期間がある場合には、いくら受け取ることができるでしょうか。
・779,300円×(456ヶ月+24ヶ月×1/2)/480ヶ月=759,818円(小数点は繰上げ)
満額と比較すると、779,300円-759,818円=19,482円少なくなることになります。
次に、平成28年と29年の追納保険料を計算してみましょう。
平成28年分
16,260円×12ヶ月=195,120円
平成29年分
16,490円×12ヶ月=197,880円
合計すると、195,120円+197,880円=393,000円です。
これが、追納した場合の保険料となります。この金額を、満額との差額である、19,482円で割ることで、年金をもらいだして、何歳から得になるかが分かります。
393,000円/19,482円=20.1724…
ですので、年金を65歳から受け取ったのであれば、20年後である85歳になってやっと得になるといえます。ご自身が亡くなる年齢は想定できないものですが、両親や親族の病歴や寿命、国が発表している平均寿命から考えて、85歳以上生きれると判断できるのなら、追納することをおすすめします。
21年4月分以降の半額免除がある場合、何歳からお得?
次は、平成21年4月分以降に半額免除がある場合です。基本情報はほぼ先ほどと同じですが、国庫負担と追納額が違います。
・追納時期は平成30年
・半額免除なので、4分の3が国庫負担
・平成28年と平成29年分を追納
・平成28年分は、追納額8,130円(月)
・平成29年分は、追納額8,240円(月)
・老齢基礎年金の満額は、779,300円(平成30年度の金額)
では、2年間免除期間がある場合には、いくら受け取ることができるでしょうか。
・779,300円×(456ヶ月+24ヶ月×3/4)/480ヶ月=769,559円(小数点は繰上げ)
満額と比較すると、779,300円-769,559円=9,741円少なくなることになります。
次に、平成28年と29年の追納保険料を計算してみましょう。
平成28年分
8,130円×12ヶ月=97,560円
平成29年分
8,240円×12ヶ月=98,880円
合計すると、97,560円+98,880円=196,440円です。
これが、追納した場合の保険料です。そして、年金をもらいだして何歳から得になるかを計算します。
196,440円/9,741円=20.1663…
こちらも年金を65歳から受け取ったのであれば、20年後である85歳になってやっと得になるといえます。その他の免除である4分の3免除でも4分の1免除でも概ね同じ年数が計算されます。ですので、どのパターンでも85歳以上生きなければ、特にはならないともいえますね。
まとめ
「年金保険料の追納とは?本当に追納した方が良いの?」いかがだったでしょうか。年金を免除や猶予してもらったときには追納することがメリットになることがあります。ですが、追納する期間によっては、得になるまで随分時間がかかる場合もあります。
ご自身が個人年金保険やiDeCoなどの確定拠出年金に加入しており、そちらで年金の準備ができているなら、無理に追納しなくてもいいかもしれません。年金の追納期間や金額と今行っている老後への備えを加味して、追納するかどうかを決めてみていただければと思います。
イラスト:三井みちこ
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