昨今、女性の社会進出が活発なことから晩婚・晩産化が進んでおり、35歳以上の出産割合は10年で2倍以上増加している現状です。

また、自立した女性が増えていることから、「結婚しない人生も選択肢の一つ」として選ばれています。

そういう女性も、

  • 結婚はどちらでもいいけど、やっぱり子供は欲しい
  • シングルが楽!だけど、老後が少し寂しいし子供だけほしい

そんな声もちらほら聞きます。

そこで、今回は、30代女性の妊活リアルについて考えていきたいと思います。

不妊治療について

最初のテーマは、不妊治療について。

そもそも不妊症の定義は、「妊娠を望む健康な男女が避妊をせず性行為をしているが、1年以上妊娠しない場合」とあり、第14回出生動向基本調査によると、日本の不妊治療で悩むカップルの割合は、6組1組だそうです。

また、時代や国によってバラツキはあるものの、不妊症の世界比率は約9%で、これに比べ日本は16%と世界的に見ても不妊率は高い結果となっております。

理由はさまざまあるものの、食生活の欧米化、過労によるストレスなど、“生活習慣の悪化”

実は、これが不妊の主な原因だと言われています。「10か月間、赤ちゃんが育つ“家”である母体が心身共にボロボロとなると、自分が赤ちゃんの立場で生活したい環境に身体を整えなさい」そんな風なことをおっしゃるお医者様もいるくらい。

また、母体だけでなく父体環境も不妊症には大きな影響を及ぼしています。

せっかく高いお金をかけて不妊治療をしたとしても、ベース(身体)が整っていない状態ですとそれが無駄になってしまうということもあります。

まず子作りの第一段階として、ご夫婦でしっかり生活習慣を整えることから始め、切り札として不妊治療に臨んでいくことをおすすめします。

さて、ここからはいざ不妊治療をするとなったらどういったことをするのか、さらに実際にいくらお金がかかるのかなど、リアルな声を元にお話ししていきたいと思います。

不妊治療の費用

不妊治療については、保険適用内でできることと保険適用外でできることで分かれます。

Ⅰ 保険適用の不妊治療

  1. 排卵誘発剤などの薬物療法
  2. 卵管疎通障害に対する卵管通気法、 卵管形成術
  3. 精管機能障害に対する精管形成術

Ⅱ保険適用外の不妊治療

ⅰ人工授精

精液を注入器を用いて直接子宮腔に注入し、妊娠を図る方法。夫側の精液の異常、性交障害等の場合に用いられる。精子提供者の種類によって、

1.配偶者間人工授精(AIH)(2)非配偶者間人工授精(AID) に分類される。

ⅱ体外受精

体外受精には

1.IVF-ET(体外受精、胚移植)(2)ICSI(顕微授精。卵細胞質内精子注入法)

という方法がある。日本では配偶者間においてのみ行われている。

【出典】不妊治療を巡る現状 :厚生労働省

不妊治療の進め方について

まず、タイミング法という比較的自然妊娠に近い方法を取っていき、そこから人工授精、体外受精といった形でステップアップしていく進め方が一般的です。

病院と医師選びも重要で、不妊治療に力を入れている病院で、お二人の気持ちにしっかり寄り添ってくれる医師がいる、これを大前提に始めて行きましょう。

不妊治療の費用について

■初期の一般不妊治療(保険適用範囲)

  • 検査(ホルモン検査・精液検査・子宮卵管造影検査など):1,000〜3,000円
  • タイミング法:3,000〜8,000円
  • 排卵誘発剤(注射):1,000〜3,500円
  • 腹腔鏡下手術:140,000〜380,000円

■高度生殖医療(自由診療)

各医療機関により費用は異なり、差が出ています。

  • 人工授精:10,000〜30,000円前後
  • 体外受精:200,000〜600,000円前後
  • 顕微授精:250,000〜500,000円前後

この差は医療機関の立地・設備・スタッフ数などにより変わるようです。東京や大阪などでは価格設定が高く、地方であると若干安くなる傾向があります。

金額は病院によって違いますが、高級車一台買えるほど不妊治療費につぎこんだというご夫婦もいるくらい不妊治療費は決して安いものとは言えません。

高額な自己負担金に関しては、国から助成金を受けることが可能となっています。

ここからは、助成金について詳しくお伝えしていきます。

不妊治療の助成金

高度生殖医療である、「体外受精」「顕微授精」を受けている方を対象に、助成金を受け取ることが可能で、「特定不妊治療助成制度」と呼ばれています。

この助成金は、各都道府県の地方自治体によって制度の内容が異なるため、窓口やサイトなどで詳細を確認してみてください。

【出典】東京都福祉保健局:東京都特定不妊治療費助成の概要

助成金需給対象の条件

各自治体で条件が異なるため、こちらも詳細はお住まいの自治体に確認が必要ですが、共通している内容をご紹介したいと思います。

  • 特定不妊治療以外の治療法によっては妊娠の見込みがないか又は極めて少ないと医師に診断された法律上の夫婦
  • (申請を出す)都道府県に住所を有する
  • 知事が指定する医療機関で治療を受けて終了している
  • 夫及び妻の所得の合計額が730万円未満(所得の計算は児童手当法施行令を準用)
  • 申請日の属する年度において、規定回数以上、他府県等で実施する本事業の助成を受けていない

初めて助成制度を利用する夫婦(平成28年4月1日以降)

【出典】東京都福祉保健局:所得額について

※治療ステージによって助成金額、申請方法が違いますのでご注意ください。

助成金の受け取り方法について

  1. はじめに国へ申請をする(各都道府県が窓口)
  2. 次に、国からもらう受診証明書を病院に書いてもらう
  3. 約2か月後に国から結果通知がきて助成金を受け取る
  4. 国から結果通知がきた後に、国から受け取った助成金額を引き市区町村へ助成金の申請をする
  5. 1~2か月後に市区町村からの助成金を受け取る

助成金の必要書類について

※国→お住まいの自治体と2段階の申請になります。

国(窓口は各都道府県)・病院・市区町村の役所の3か所から申請に必要な書類をもらう必要があります。

国からもらう書類(各都道府県窓口を通して申請)

  • 特定不妊治療費助成申請書
  • 特定不妊治療費助成事業受診等証明書

(※病院に記入してもらう書類です)

※都道府県のホームページから上記申請書をダウンロードできます。

※郵送または窓口にて手続き(各都道府県により手続き方法が違います)

病院でもらう書類

  • 指定医療機関が発行した治療費の領収書
  • 指定医療機関が発行した治療費の明細がわかるもの
  • 各都道府県からもらう特定不妊治療費助成事業受診証明書

市区町村でもらう書類(※各市区町村によって書類が違います)

  • 住民票(証明日より3か月以内のもの)
  • 戸籍謄本又は戸籍全部事項証明書(証明日より3か月以内のもの)
  • 世帯の所得証明書

不妊治療の痛み

経験者の方は、不妊治療は3つの痛みが伴うともおっしゃいます。

  • 治療費による経済的痛み
  • 治療が停滞してしまう精神的痛み
  • 治療本来の痛み

一つでも痛みが緩和すれば、長い道のりも乗り越えられると思います。

女性はどうしても一人で頑張りがち。パートナーとの話し合い、分かち合いが最も大切で、焦りとストレスが赤ちゃんを遠ざけてしまうのだそうです。

不妊治療に臨むという方は、まずはご自身を労り、そして優しくしてあげることが先決ですね。

養子縁組について

さて、ここからは今回の裏テーマでもある、『独身女性が養子縁組を組むとなったら』ということについてお話していきます。

まず、養子縁組の定義について説明していきたいと思います。

養子縁組には二種類あります。

(1)普通養子縁組とは

普通養子縁組とは、特別養子縁組という制度ができたために、それと区別するために設けられた呼び名です。独身の方が養子縁組を行うとなった場合はこちらになります。

特別養子縁組との一番の違いは、血縁上の親と法的な親子関係がなくならないという点です。つまり、養子となった方から見れば、養親と実親という2つの親がいることになります。当然、扶養や相続関係も二重になります。

養子縁組を行うためには、次の条件を満たしていることが必要となります。

  1. 養親が成年者であること
  2. 養子が養親者より年長ではなく、又、尊属(父や母、祖父母など、いわゆる直系の先祖のこと)でないこと
  3. 後見人が被後見人を養子にする場合、未成年者を養子にする場合、夫婦が養子縁組の当事者となる場合には、さらに制限があります。
  4. 養子縁組をした旨の縁組届けを提出すること

これらの条件を満たしていれば、養子縁組は成立します。

(2)特別養子縁組とは

特別養子縁組とは、昭和62年に導入された比較的新しい養子の制度です。この制度を利用すると、普通養子縁組と異なり、血縁上の親との法的な親子関係が切れてしまいます。つまり、相続や扶養の関係が二重に発生することがありません。

この制度は、養子としてではなく、子を自分の実の子供と変わらない状態で育てたいという要請と、子供の福祉という2つの観点から作られました。ですから、成立させるための条件が厳しくなっています。条件は以下のとおりです。

  1. 養親は夫婦共同でならなければならない
  2. 養親は少なくとも一方が25歳以上、他方が20歳以上でなければならない
  3. 養子は6歳未満でなければならない
  4. 実の両親の同意がなければならない
  5. 父母による育児が不適切等の場合において、子の利益のために特別の必要があると認められるとき

かなり厳しい条件ですね。この条件の判断は、家庭裁判所が審判により行います。

ですから、特別養子縁組を成立させるには、家庭裁判所に審判を請求する必要があります。

養子縁組のメリットとデメリット

次に、養子縁組のメリットとデメリットについてお話します。

養子縁組のメリット

メリットは、親子関係が実子と同じように成立するという点です。

そして、その関係は原則として生涯続くことを予定しています。ですから、家業の後継ぎやお墓の管理、苗字の維持等、さまざまな目的を達することができます。

養子縁組のデメリット

一方、養子縁組にはデメリットもあります。

まず、実の親子関係ではないので、一定の条件を満たせば離縁することができます。つまり、何十年にわたって形成されてきた関係が、トラブルを原因として突然なくなってしまうというリスクがあります。

また、養子に対する偏見は未だ残っており、養子となった方がコンプレックスを抱いたり、実子や親族から財産目当てなどと思われてしまうケースもあるようです。

養子縁組に関する費用

次に、養子縁組を行った際のお金に関することについて。

まず、普通養子縁組には費用がかかりません。書類を提出して受理してもらうだけで完了となります。ちなみに、特別養子縁組には、裁判所への申し立て費用として、800円の収入印紙代と切手代がかかります。

のちのちの話になってきますが、縁組後の相続は、二重に発生します。つまり、実の親が亡くなった時にも、養親が亡くなったときにも、相続権があります。ですから、2回相続を受けることができるのです。

ちなみに、養子になった子がさらに養子縁組することも可能です。これを転縁組といいますが、そうすると、相続は実の親と前の養親と新しい養親との間で行われるので、3重になります。

養子になると、実の親の相続が受けられないと誤解している方が多いので注意してください。なお、特別養子縁組はこれとは異なり、実の親との関係が切れるので、相続権は養親の分しかありません。

養子縁組の手続き

いざ、養子縁組をするとなった際の手続き方法について。

養子縁組をする際に必要なのは、養子縁組届です。養親と養子がそろって市町村役場に行き、必要書類を提出し、印鑑を押さなければなりません。

必要書類としては、届け出先に本籍のない方の戸籍謄本が必要になります。また、未成年の子を養子縁組する際には、家庭裁判所の許可審判書が必要となります。

養子縁組をする理由

養子縁組を行う理由のほとんどが、

  • 子供が欲しいから
  • 跡継ぎが欲しいから

といった理由のようです。

子供側の気持ちを慮ると、実親と育ての親が違うことの違和感や寂しさなど本人しか分からない感情があり、いかにそれと向き合っていけるかは親子関係を築く上で非常に大切なところになってきます。

さまざまな人生設計が望める昨今、『実の子ではない、シングルでの子育て』が今後、増えていくのかもしれません。

そのときがきたら、愛情を注いで育てる自信と覚悟を持って、ご自身とご家族の愛すべき人生を謳歌していただきたいと思います。

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