ふるさと納税は税金対策にならない?メリット、注意点を詳しく解説
ふるさと納税では、寄付した金額から2,000円を除いた分が税金から控除されます。
そのため「ふるさと納税は税金対策になる」と考える方も多いですが、実は厳密には税金対策にはなりません。
この記事では、ふるさと納税は税金対策にならないのか、ふるさと納税はした方が良いのか、といった疑問を解決していきます。
ふるさと納税の基本的な仕組みや注意点、具体的に控除を受けるまでの流れについても解説しているため、興味のある方はぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
ふるさと納税とは?
ふるさと納税とは、任意の自治体に寄付を行うことで、返礼品の送付や所得税の還付・住民税の控除といった優遇を受けることができる制度のことです。
所得税や住民税から控除されるのは、寄付金額から2,000円を差し引いた金額で、年収などによって控除上限額が異なります。
ふるさと納税に取り組む人は年々増加しており、令和5年度にふるさと納税による控除が適用された人は約891万人にも達しています。
出典:総務省自治税務局市町村税課 ふるさと納税に関する現況調査結果(令和5年度実施)
出典:総務省「ふるさと納税のしくみ」
ふるさと納税は税金対策にはならないがお得な制度
「ふるさと納税は税金対策になる」と思われがちですが、ふるさと納税は税金対策のための制度ではありません。
ふるさと納税は、自分が支払う税金の一部を、特定の自治体に寄付する形で納める制度です。
結果として、寄付額の一部が住民税や所得税から控除される仕組みになっていますが、あくまで自分が納める税金の使い道を指定できるというものです。
ここでは、ふるさと納税が税金対策にならない理由と、それでも利用した方が良いのかについて解説します。
なぜ税金対策ではない?
ふるさと納税を行うと、寄付した金額から2,000円を差し引いた額が所得税・住民税から控除されます。
ふるさと納税は、実質自己負担額2,000円で各地の特産品などを返礼品として受け取れる制度です。
たとえば、ふるさと納税を50,000円行った場合、2,000円の自己負担額を差し引いた48,000円が所得税や住民税から控除されます。
ただし、この48,000円は本来税金として支払う分を前払いしているに過ぎません。
つまり、ふるさと納税に税金の負担を小さくする効果はなく、直接的な税金対策にはならないのです。
税金対策でなくても利用すべき理由は?
ふるさと納税は直接的な税金対策にはなりませんが、活用する価値のある制度だといえます。
その理由はは、返礼品を受け取れることで、ただ税金を支払うよりもお得になるためです。
ふるさと納税を利用しなかった場合、単に税金としてお金を納めるだけですが、ふるさと納税を利用すると寄付金額に応じた返礼品を受け取れます。
2,000円の自己負担で、寄付額の3割相当の価値がある各地の返礼品を受け取れるのは、大きな魅力といえるでしょう。
ふるさと納税のメリット
ふるさと納税は税金対策になりませんが、さまざまな魅力を有する制度です。
ふるさと納税のメリットを改めて確認していきましょう。
返礼品や税金の控除を受けられる
ふるさと納税を行うと、所得税や住民税の控除を受けられたり、2,000円の自己負担で返礼品を受け取れたりします。
先ほど解説した通り、支払う税金の総額は変わりませんがわずかな自己負担で日本各地のさまざまな返礼品を楽しめるのはメリットだといえるでしょう。
返礼品は寄付金額の最大3割相当の価値を持つため、普段なかなか購入できない贅沢な食材などを楽しむためにふるさと納税を活用している人もいるようです。
クレジット決済でポイントがたまる
ふるさと納税の支払いにクレジットカードを使うと、支払い金額に対してもポイントを貯められます。
還元率の良いクレジットカードで支払えば、返礼品を受け取るだけでなく、効率よくポイントを獲得できるというメリットがあります。
ふるさと納税の金額が大きくなる場合、その分だけまとまったポイントを得ることができるため、さらにお得に感じられるでしょう。
クレジットカードの限度額は年収やカードのランクで違う?限度額の平均や上げ方を解説!
地域自治活性化に貢献できる
ふるさと納税では、現在自分が居住している自治体以外の自治体であれば、自由に寄付先を選ぶことができます。
これにより、応援したいと思う自治体の地域振興や活性化に貢献できる点もメリットの一つです。
たとえば、「地震や台風の被災地を支援したい」「自分が生まれ育った故郷に恩返しがしたい」といった思いがある場合、ふるさと納税を通じてその気持ちを「寄付」という形で届けられます。
日用品の節約になる
ふるさと納税と聞くと、高級な肉や果物といった各地の名産品を受け取るようなイメージを持つ方も多いですが、トイレットペーパーやタオル、キッチン用品など身の回りの日用品も返礼品となっています。
普段から使用する日用品を返礼品として選ぶことで、日々の支出の節約に繋げられるメリットがあります。
日々の支出をなるべく抑えたいという方は、ふるさと納税を活用して日用品をストックしておくのもおすすめです。
ふるさと納税を受けるまでの流れ
ふるさと納税を受けるためには、通常、確定申告で所定の手続きを行う必要があります。
しかし、「ワンストップ特例制度」を利用すれば、確定申告をせずに控除を受けることが可能です。
この制度を利用することで手続きが簡便になり、ふるさと納税をさらに活用しやすくなります。
次に、ワンストップ特例制度の仕組みや、それぞれの手続き方法について詳しく確認していきましょう。
ワンストップ特例制度
ワンストップ特例制度は、ふるさと納税を行う際に確定申告をせずに寄付金控除を受けられる仕組みのことです。
1年間の納税先が5自治体以内であれば、この制度を利用して簡単に手続きを進められます。ワンストップ特例制度を利用する際の流れは以下のとおりです。
- 寄付する自治体や返礼品を選んで寄付する
- ワンストップ特例申請書と返礼品を受け取る
- ワンストップ特例申請書を記入し、必要書類と一緒に提出する
ワンストップ特例申請書は、返礼品と一緒に封入されていたり、寄付した自治体から郵便で届いたりします。
届かない場合は、各自治体やふるさと納税を行ったサイトからダウンロードできることも多いです。
2022年(令和4年)からは、一部の自治体でマイナンバーを利用したオンライン申請も可能となっています。
オンライン申請ができるかどうかは自治体によって異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
ふるさと納税はワンストップ特例制度と確定申告どっちがお得?違いを解説
確定申告
ワンストップ特例制度が利用できない場合、ふるさと納税の寄付をした翌年に確定申告を行う必要があります。
確定申告を行う流れは下記のとおりです。
- 寄付する自治体や返礼品を選んで寄付する
- 寄付金受領証明書や返礼品などを受け取る
- 確定申告を行う
寄付する自治体や返礼品を選び、書類や返礼品を受け取るところまでは、ワンストップ特例制度を利用する場合と同じです。
確定申告の際は「寄付金受領証明書」が必要となるため、大切に保管しておきましょう。
その後、寄付をした翌年の3月15日までの間に確定申告を行います。
確定申告を行うと、ふるさと納税を行った年の所得税から税金が控除され、すでに源泉徴収などで所得税を納めている場合は還付を受けられることもあります。
【2024】ふるさと納税確定申告のやり方!還付がいつなのかも紹介!
ワンストップ特例制度の注意点
ワンストップ特例制度を利用すると、確定申告を行わずに寄付金控除の手続きを簡単に行えますが、いくつかの注意点があります。
具体的に確認していきましょう。
確定申告を行わない会社員のみが利用可能
ワンストップ特例制度は、確定申告を行わない方のみが利用できる制度です。
確定申告によって所得や税金を申告する必要のある自営業者やフリーランスの場合は、ワンストップ特例制度を利用できません。
また、会社員であっても確定申告を行う対象となる方はワンストップ特例制度を利用できないため注意しましょう。
【確定申告が必要な方の例】
- 個人で事業を行っている方
- 2,000万円以上の給与収入がある方
- 2ヶ所以上の会社から給与を受け取っている方
- 医療費控除や住宅ローン控除などを受ける方
- 不動産収入がある方
- 不動産や有価証券などの売却益・譲渡益がある方
5団体まで
ワンストップ特例制度を利用できるのは、確定申告の不要な給与所得者等で、ふるさと納税の寄付先が「5自治体まで」の場合です。
6つ以上の自治体に寄付をする際は、ワンストップ特例制度は利用できず、確定申告での申請が必要となります。
ただし、「寄付をする自治体の数」が5ヵ所以内であれば、寄付をする回数はそれ以上になっても問題ありません。
所得税の還付は受けられない
ワンストップ特例制度を利用した場合、控除されるのは「住民税」のみとなり「所得税」の還付は受けられません。
寄付翌年の6月から翌々年5月までの1年間、12回に分けて住民税から毎月減額される仕組みとなり、還付金などをすぐに受け取れるわけではない点に注意しましょう。
手続き後に所得税の還付を受け取れる確定申告よりも控除のタイミングが遅くなる点に留意する必要があります。
基本的には控除される額は確定申告をした場合と変わりませんが、自身の状況について正確に確認したい場合は、税務署や税理士等へお問い合わせください。
ふるさと納税の控除シミュレーション
実際に、ふるさと納税でどれくらいの税金が控除されるのか確認していきましょう。
ここでは、ふるさと納税による控除額を「所得税」「住民税の基本分」「住民税の特例分」の3つに分けてシミュレーションしてみます。
【例】
- 課税所得金額:500万円
- 所得税率:20%
- 1年間のふるさと納税合計金額:50,000円
所得税からの控除
所得税から控除される金額は、下記の計算式で求められます。
- 所得税からの控除 = (ふるさと納税額 – 2,000円)×「所得税率」
上記の例を計算式に当てはめると、(50,000円 – 2,000円)× 20% = 9,600円となり、所得税からは9,600円の還付を受けられます。
なお、控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の40%が上限です。
所得金額や家族構成、扶養家族の人数などによって控除できる上限が変わってくるため注意しましょう。
住民税からの控除(基本分)
住民税から控除される基本分は、下記の計算式で求められます。
- 住民税からの控除 =(ふるさと納税額 – 2,000円)× 10%
同じように当てはめて計算すると、(50,000円 – 2,000円)× 10% = 4,800円となり、住民税から控除される基本分は4,800円です。
住民税からの控除(特例分)
住民税から控除される特例分は、下記の計算式で求められます。
- 住民税からの控除(特例分)=(ふるさと納税額 – 2,000円)×(100% – 10%(基本分)- 所得税の税率)
例を当てはめると、(50,000円 – 2,000円)×(100% – 10% – 20%) = 33,600円となり、特例分として控除される金額は33,600円と計算できます。
ここまで計算した「所得税」「住民税(基本分)」、「住民税(特例分)」の控除額をすべて合計すると、9,600円 + 4,800円 + 33,600円 = 48,000円です。
寄付した50,000円に対して自己負担額2,000円を除く全額が控除されることがわかります。
まとめ:ふるさと納税は税金対策にならないがお得な制度
ふるさと納税は、自身で選んだ自治体に寄付をすることで、所得税や住民税の還付・控除を受けられる制度です。
ふるさと納税は直接的な税金対策になるわけではなく、あくまで本来支払うべき税金の前払いに過ぎません。
しかし、ふるさと納税を行うことで、自己負担金2,000円で地域の特産物などを返礼品として受け取れたり、応援したい自治体のサポートを行えたりするというメリットを得られます。
どうせ税金を支払うのであれば、ふるさと納税を通じてさまざまな自治体の返礼品を楽しんでみてはいかがでしょうか。
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記事監修者
山口 祐平
宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー、証券外務員の資格を持つ専門家。
証券や投資用不動産の販売において、卓越した商品分析力を発揮し、幅広い商品知識を駆使して顧客に最適な投資プランを提案している。
商品特性の深い理解に基づき、複雑な金融商品や不動産投資に関するニーズに対応し、信頼性の高いコンサルティングを提供。
これまで培ってきた知識と経験をもとに、顧客の資産形成に寄与している。
記事監修者
山口 祐平
宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー、証券外務員の資格を持つ専門家。
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