大学や専門学校の学費のために借り入れる「奨学金」は、一括で繰上げ返済することができます。

繰上げ返済をすると利息が減らせるだけでなく、精神的な負担軽減にもつながります。

奨学金を返済中の方は繰上げ返済の方法を理解し、返済の負担軽減を視野に入れてみましょう。

この記事では奨学金の種類や繰上げ返済の方法、そのメリットや注意点を解説します。

奨学金の繰上げ返済シミュレーションも紹介しますので、繰上げ返済のイメージとして参考にしてください。

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奨学金の種類と特徴

奨学金の種類と特徴

「奨学金」とは、学生の学費を支援する目的で運用されている制度のことです。

経済的な理由で進学を諦めなくてもいいように、学費を貸し出す仕組みとなっています。

奨学金制度には、返済が必要な「貸与奨学金」と、返済不要の「給付奨学金」の2種類があります。

ここでは、日本学生支援機構が提供するそれぞれの奨学金の特徴を解説します。

貸与奨学金(返済必要)

「貸与奨学金」は、国内の大学・短期大学・高等専門学校・専修学校(専門課程)および大学院で学ぶ人を対象とした奨学金です。

貸与終了の翌月から数えて7ヶ月後から返済が開始し、期日までに決められた金額を返済しなければいけません。

貸与奨学金には、以下の3つの種類があります。

奨学金の種類利子の有無
第一種奨学金なし
第二種奨学金あり
入学時特別増額貸与奨学金あり

「第一種奨学金」と「第二種奨学金」は、併用することも可能です。

また、入学時に有利子の一時金を増額できる「入学時特別増額」という制度も設けられています。

参考:独立行政法人日本学生支援機構「貸与奨学金(返済必要)」

リレー口座で返済する

奨学金の貸与が終了したら、「リレー口座(口座振替)」で返還します。

リレー口座とは、「返還金が後輩奨学生にリレーされる」という意味で、返還した奨学金は次の奨学生の奨学金の原資となる仕組みです。

口座振替の申し込みをする際には、「口座振替(リレー口座)加入申込書」に必要事項を記入して、手続きをする必要があります。

申込方法は、「郵送」または「金融機関窓口」での申し込みの2通りです。

いずれかの方法でリレー口座を指定し、口座振替の手続きを進めましょう。

参考:独立行政法人日本学生支援機構「加入方法」

振替日について

奨学金の振替日は、原則として毎月27日です。

ただし、27日が金融機関の休業日である場合は、翌営業日に振替が行われます。

返済方法は「月賦」と「月賦・半年賦併用」のいずれかを選択します。

返済方法振替日
月賦毎月27日
月賦と半年賦の併用月賦:毎月27日
半年賦:1月および7月の27日

口座の残高が不足しないように、振替日の前日までに返還金を入金しておきましょう。

参考:独立行政法人日本学生支援機構「加入方法」

給付奨学金(返済不要)

「給付奨学金」は、貸与奨学金とは異なり返済の義務がありません。

経済的理由で進学が難しい学生を支援するために、2020年4月から制度が設けられています。

給付奨学金を受けるためには、一定の学力基準と収入基準に該当する必要があります。

申し込みをする前に、設けられた基準値を確認しておきましょう。

また、給付奨学金の対象になると、大学・専門学校等の授業料・入学金が免除または減額されます。

授業料・入学金の免除や減額は学校で手続きを行うため、各学校で確認しましょう。

参考:独立行政法人日本学生支援機構「給付奨学金(返済不要)」

奨学金の繰上げ返済とは

奨学金の繰上げ返済とは

「奨学金の繰上げ返済」とは、返済が必要な「貸与奨学金」をで返済することを指します。

貸与奨学金を受給した場合、原則として大学や専門学校などを卒業した後に毎月返済していくことになります。

しかし貸与奨学金は借金であるため、「まとまった金額が用意できたので早く完済してしまいたい」と考えるケースは少なくありません。

繰上げ返済を利用すればお金に余裕ができたタイミングで追加返済できるため、毎月の返済日を待たずに支払うことができます。

奨学金を返済するためのまとまった金額が用意できた場合は、繰上げ返済も視野に入れましょう。

奨学金を繰上げ返済する方法

奨学金を繰上げ返済する方法

貸与奨学金の繰上げ返済は、日本学生支援機構の「スカラネット・パーソナル」を利用して申し込みます。

スカラネットパーソナルはパソコンやスマホからいつでも手続きができ、各種証明書の発行依頼や転居・改姓に伴う変更届出の際にも利用可能です。

スカラネット・パーソナルが利用できない場合には、郵送またはFAXでの申し込みもできます。

繰上げ返済は「全額繰上返還」と「一部繰上返還」のいずれかを選ぶことが可能です。

自身の家計状況に合わせて返済方法を選びましょう。

参考;独立行政法人日本学生支援機構「繰上返還申込み」

第一種奨学金(無利子)

「第一種奨学金」は利息が発生しないため、毎月元本のみを返済していきます。

繰上げ返済をしても返済期間が短縮されるだけで返済総額は変わらないため、無理に繰上げ返済をする必要はありません。

しかし、早めに奨学金を完済することで以後の資金計画を立てやすくなるというメリットがあります。

「返済総額が変わらなくても早めに返済してしまいたい」という場合は、「スカラネット・パーソナル」で繰上げ返済を申し込みましょう。

第二種奨学金(利子あり)

「第二種奨学金」は、貸付金額とその残高に応じた利息の合計から月ごとの返済額を設定して返済する仕組みです。

月々の返済額には、その時点の残高に応じた利息が含まれており、利息と元本を少しずつ返済していることになります。

第二種奨学金を繰上げ返済する場合は返済額が元本に充てられ、繰り上げた期間の利息の支払いは不要になるため、繰上げ返済をした方が支払う利息が少なくなります。

返済総額を減らすことができるため、金銭的に余裕がある場合は繰上げ返済をした方が良いでしょう。

参考:独立行政法人日本学生支援機構「第二種奨学金の貸与利率」

繰上げ返済の手数料は無料

住宅ローンや教育ローンなどで繰上げ返済をする場合は、一定の手数料がかかる場合があります。

しかし日本学生支援機構の奨学金は、手数料無料で繰上げ返済が可能です。

手数料負担を気にせずに繰上げ返済ができるため、仮にまとまった金額が用意できなくても少額から繰上げ返済をして少しでも利息の負担を軽減しましょう。

参考:独立行政法人日本学生支援機構「繰上返還」

奨学金の繰り上げ返済シミュレーション

奨学金の繰り上げ返済シミュレーション

ここでは、奨学金の繰上げ返済を利用した場合のシミュレーションを紹介します。

以下の例を用いて、通常返済する場合と繰上げ返済する場合の返済額を比較していきます。

  • 第二種奨学金の金額:300万円
  • 年利率:0.47%
  • 月賦額15,304円で計204回(17年)返済予定

本記事で紹介するのはあくまで繰上げ返済の概算であり、実際の返済金額とは異なる場合があります。

実際に繰上げ返済を利用する場合の詳細な金額については、日本学生支援機構に確認してください。

通常返済する場合

通常の返済をする場合、203回目の返済まで15,304円、204回目の返済が15,210円となります。

そのため、返済額の合計は「15,304円 × 203回 + 15,210円 = 3,121,922円」と計算されます。

繰り上げ返済する場合

ここでは6回目〜10回目までの5ヶ月分を繰上げ返済した場合で計算しましょう。

繰上げ返済した期間中の利息は5,679円であることから、通常の返済に比べておよそ5,600円の利息軽減効果が得られることが分かります。

この利息軽減効果は、繰上げ返済の期間が長いほど大きくなります。

6回目〜20回目までの15ヶ月分を繰上げ返済した場合は、16,620円抑えることが可能です。

繰上げ返済による利息軽減効果を高めたい場合は、繰上げ返済期間をなるべく長くしましょう。

奨学金を繰り上げ返済するメリット

奨学金を繰り上げ返済するメリット

利息が減る

利子のある「第二種奨学金」を繰上げ返済することで、繰上げした期間の利息軽減効果を得られます。

返済総額が減少し、返済の負担を抑えられる点が繰上げ返済のメリットです。

例えば、上述したシミュレーションでは6〜10回目の繰上げ返済で約5,600円、6〜20回目の繰上げ返済で約16,000円の返済額が減少しました。

高い利率であれば、より高い利息軽減効果が期待できます。

まとまった金額を繰上げ返済することで、返済の負担を軽減できるのが繰上げ返済の魅力といえるでしょう。

精神的な負担が減る

繰上げ返済をするもう一つのメリットとして、精神的な負担を減らせるという点が挙げられます。

返済額が減ったり無くなることで、毎月の「返済しなくてはいけない」という気持ちから解放され、精神的に楽になることが考えられます。

また、支払い期間が短縮されると、今後のライフプランに合わせた資金計画も立てやすくなります。

繰上げ返済で月々の返済を軽くして、精神的な負担を軽減していきましょう。

繰上げ返済前に確認したいポイント(デメリット)

繰上げ返済前に確認したいポイント(デメリット)

大きなライフイベントを控えていないか

まとまった金額ができたために奨学金を繰上げ返済しようとする場合、自身に近々大きなライフイベントが控えていないか考えましょう。

結婚や出産、住宅購入などの大きなライフイベントには、まとまった出費を伴うことがほとんどで、繰上げ返済することでかえって家計が苦しくなる可能性があります。

奨学金の利率は、マイカーローンや住宅ローンに比べると低めに設定されていることが多いです。

奨学金を繰上げ返済したことで手元にまとまったお金が無くなり、奨学金よりも利率の高いローンを組むことにならないように注意しましょう。

また、転職や時短勤務などで収入減少が予想される場合も、手元資金の確保を優先することをおすすめします。

生活防衛資金はあるか

奨学金の繰上げ返済をすると、まとまった金額が手元から離れます。

繰り上げ返済したことにより、手元の預貯金が少なくなるケースには注意しておきましょう。

例えば、奨学金を繰上げ返済した後にケガや病気などで働けなくなった場合、収入が途絶えてしまうリスクがあります。

最低でも半年は収入が途絶えても生活していけるだけの資金がないと、万が一のときに生活に支障が出るかもしれません。

奨学金の繰上げ返済を考える前に、不測の事態に備えた「生活防衛資金」を確保しておきましょう。

まとめ:奨学金を繰上げ返済すると総返済額を抑えることができる

奨学金を繰上げ返済すると総返済額を抑えることができる

返済が必要な貸与奨学金には、無利子の「第一種奨学金」と有利子の「第二種奨学金」があります。

第二種奨学金は、繰上げ返済をすることによって利息を減らすことができ、返済総額を安く抑えられます。

今後のライフプランと照らし合わせながら無理のない範囲で繰上げ返済を検討してみましょう。

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