銀行にお金を預けずに、現金のまま自宅に保管することを「タンス預金」といいます。

手元に現金があることで必要な時にすぐお金が使えるため、現金の一部をタンス預金している方もいらっしゃると思います。

この記事では、タンス預金のメリットやデメリットがあるのか解説します。

タンス預金について詳しく知りたい方は参考にしてください。

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タンス預金とは

タンス預金とは

タンスに限らず、自宅にまとまった現金を保管することを「タンス預金」といいます。

かつて、日本の家庭ではタンスにお金をしまう習慣があり、このように呼ばれるようになりました。

日本銀行が発表した資金循環統計によると、2020年3月末時点における家計の金融資産は1946兆円です。

このうち、現金で家に保管している「タンス預金」の金額は100兆円を超えるとみられています

このことから、日本の多くの家庭にはタンス預金があると考えられます。

タンス預金は相続税や贈与税の対策になるのか、新札発行時にタンス預金は新札交換するべきか解説します。

出典:日本銀行「統計 資金循環」

タンス預金は相続税対策にならない

相続税対策のためにタンス預金をされている方もいるかもしれません。

銀行に預けず自宅に現金を置いておけば、その分の相続税は発生しないだろうという考え方です。

しかし、タンス預金は相続税対策にはなりません

近親者が亡くなった際は死亡届を提出しますが、その死亡届の内容は税務署にも通知されることになっています。

税務署は、過去の申告内容や預貯金口座などから故人の資産状況を大まかに把握しています。

もし、相続人が相続税の申告をしなかったり、申告額が少なかったりすると家にお金を隠していると疑われるでしょう。

仮に税務調査の対象となり相続税の未納が明らかになると、相続人は重加算税の追徴課税を受ける可能性があります。

そのため、相続税対策としてのタンス預金はおすすめできません

新札発行時にタンス預金を新札交換するべきか

現在流通している旧札は、2024年度の上半期(4〜9月)に新札に刷新される予定となっています。

新札が発行されてからよほどの年月が経過しない限り、旧札が使えなくなることはありませんので、タンス預金の旧札をそのままにしてもお金の価値は変わりません。

しかし、あまりに月日が経過してから大量の旧札を使用するとお店に迷惑をかけてしまったり、使用枚数を制限されたりすることも考えられます。

新札が発行されたら、できるだけ早めに旧札のタンス預金を新札に変更しておくといいでしょう。

タンス預金のメリット

タンス預金のメリット

タンス預金の主なメリットは、下記の4つです。

  • いつでも自由にお金を使える
  • 相続時に故人の口座が凍結されても困らない
  • 銀行の倒産から資産を守れる
  • 国や家族に知られずに貯蓄できる

それぞれの理由について解説します。

いつでも自由にお金を使える

自宅に現金を保管しておくことで、必要に応じていつでも自由にお金が使えます。

現金が必要になった際に銀行やATMに出向く必要がないため、急な出費が発生してもすぐに対応できます。

ATMで手数料を取られることもないため、無駄な出費を抑えやすいです。

相続時に故人の口座が凍結されても困らない

被相続人が亡くなると、遺産分割協議が終わるまで故人の預金口座は凍結されてしまいます。

家族が亡くなった直後は、葬儀費用をはじめ何かとお金が必要になる場面が多くあります。

手元にまとまった額の現金があると、慌てずに支払うことができるでしょう。

銀行の倒産から資産を守れる

銀行にはペイオフという制度があり、万が一銀行が破綻しても普通預金や定期預金であれば1,000万円とその利息まで保証されます。

保証されている額は1金融機関につき1,000万円までとなっているため、1,000万を超える部分はペイオフの保証対象になりません。

1,000万円以上の預金がある場合、預けていた銀行が倒産すると保証額以外は戻らない可能性があります。しかしタンス預金であれば銀行が破綻しても、資産を守ることができます。

ただし、複数の銀行で口座を作り預金を分散しておけば資産を失うことはありません。

国や家族に知られずに貯蓄できる

銀行に預金したり、有価証券に投資をしたりすると国税局はすぐに資産総額を割り出すことができます。

しかし、タンス預金であれば国が資産総額を把握するのは難しいでしょう。

また、「へそくり」も広義ではタンス預金の一種です。

家族にも知られないような場所に隠すことで、自分の好きなように使える自己資金を確保できます。

国や家族に自分の資産状況を把握されずに貯蓄ができるのがタンス預金です。

タンス預金のデメリット

タンス預金のデメリット

タンス預金のデメリットは、主に下記の5つです。

  • 利息がつかない
  • 災害や盗難で消失するリスクがある
  • 置き場所を忘れて紛失するリスクがある
  • 遺産相続トラブルの引き金になる
  • インフレによって価値が下がる

それぞれの理由を解説します。

利息がつかない

タンス預金には利息がつきません。銀行に預けている預金には、少額ながらも利息が発生します。

一部のネット銀行では、条件によってはメガバンクと比べて高い利息がつくところもあります。

楽天銀行の普通預金口座(マネーブリッジ利用)だと、金利は最大0.1%です。楽天銀行に100万円預けた場合、20年後の金額は以下の通りです。

運用年数タンス預金(利息なし)銀行預金(利息あり)タンス預金との差額
1年目1,000,000円1,001,000円1,000円
2年目1,000,000円1,002,001円2,001円
3年目1,000,000円1,003,003円3,003円
4年目1,000,000円1,004,006円4,006円
5年目1,000,000円1,005,010円5,010円
10年目1,000,000円1,010,045円10,045円
15年目1,000,000円1,015,105円15,105円
20年目1,000,000円1,020,191円20,191円

楽天銀行の普通預金口座に100万円預けていた場合、5年後には5,010円、20年後には20,191円の利息がつきます。

タンス預金には利息は全くつかないため、少しずつでもお金を増やしたい方にとってはデメリットになるでしょう。

災害や盗難で消失するリスクがある

タンス預金の場合、現金が火災や地震、洪水などの災害で消失するリスクがあります。

火災保険や地震保険において現金は保証の対象外となっているため、失った現金は戻りません。

また、災害以外にも空き巣や強盗などによる盗難リスクもあります。

タンス預金をする場合は、防犯対策も必要です。

置き場所を忘れて紛失するリスクがある

タンス預金をしてから時間がたつと、どこに現金を保管したか忘れてしまう可能性が考えられます。

保管場所を忘れてしまうと、自分でも気づかないうちに現金を捨ててしまう恐れががあるでしょう。

また、タンス預金の存在を家族に隠したまま本人が死亡した場合、遺族がタンス預金があるとは知らずに隠し場所ごと処分してしまう可能性も考えられます。

本人が置き場所を忘れてしまう以外にも、タンス預金には紛失のリスクがあることを覚えておきましょう。

遺産相続トラブルの引き金になる

タンス預金は、その存在を証明する証拠がないことがほとんどです。

もし故人の近親者が保管されていた現金を無断で持ち去ったとしても、「元からそんなものはなかった」と主張されてしまうと証明ができません。

タンス預金だけでなく、貴金属も同じです。

被相続人がひそかに購入していたアクセサリーを、誰かが黙って持ち出すケースもあります。

故人の身の回りの現金や貴金属が、勝手に持ち去られないように十分に注意しましょう。

インフレによって価値が下がる

インフレとは「モノの値段が上がり続ける状態」のことを指します。

例えば、30年前は500円で買えていたモノが1,000円払わないと買えない場合、同じモノを買うためには2倍のお金が必要です。

つまり、お金の価値が2分の1に下がったということです。

インフレが発生し物価が上昇すると紙幣の価値は相対的に目減りします。

タンス預金は、現金をそのまま自宅に置いているため紙幣の価値が下がるとその分の損をします。

タンス預金のよくある隠し場所

タンス預金とはタンス預金のよくある隠し場所

タンス預金をするときは、見つかりにくい場所に保管することが大切です。

現金を家のどこに隠しておく人が多いのか、タンス預金のよくある隠し場所をまとめました。

タンス・押入れ

タンス預金との隠し場所と聞いて一番に思いつくのは、タンスや押し入れです。

洋服や小物などの隙間に入れて、すぐに現金を隠しやすい場所でもあります。

隠すと目につきにくく、長い間収納していると本人でさえ隠したことを忘れてしまうこともあるでしょう。

定期的に隠し場所を移動させる、自分だけが分かるメモを残しておくなど工夫が必要かもしれません。

机や棚の引き出し

机や棚の引き出しもタンス預金の隠し場所としてよく使用されます。

二重底にするといった工夫をすれば見つかりにくいでしょう。

また、いざという時すぐに持ち出しやすいという理由から机や棚を選ぶ人も多いようです。

しかし、タンスや押し入れと比べると見つかりやすい場所なので、家族に見つかって問題になる恐れもあります。

本棚や本の中

本棚も机や棚の引き出しと同じく、見つかりにくい場所のひとつです。

自宅に本を多く保管している人なら、隠しやすい場所でしょう。

ただし、本の隙間に現金を入れたことを忘れて、そのまま売ったり処分してしまったりして紛失する可能性は十分にあり得ます。

お金を隠すときは、どの本の間に隠したか忘れないようにしましょう。

キッチンの収納

キッチンやキッチン周りの収納を隠し場所にしている方もいます。

タンスや机は、家族にうっかり見つかってしまうことがあります。しかし、自分以外の家族があまり台所を使わない場合は、見つかる可能性は低いでしょう。

しかし、キッチン周りやシンクの下の棚といった収納場所は水漏れの危険があります。水漏れ以外にも、保存している食品の水分が漏れ出すこともあります。

キッチン周りに隠す場合は、現金が濡れてしまわないよう注意しましょう。

物置、倉庫の中

家の物置や倉庫に隠している方も多いでしょう。

物置や倉庫に鍵をかけていれば、保管場所として安全性が高く他の物に紛れて見つかりにくい場所です。

しかし、家の外に物置がある場合は、災害時に持ち出す時間がなくそのまま紛失してしまうケースが考えられます。

持ち出しやすい場所に保管しておくか、火災や水害などに備えておく必要があるでしょう。

タンス預金をする時の注意点

積極的に投資をする(お金を働かせる)

タンス預金をする場合、どのようなことに気をつける必要があるのでしょうか。

タンス預金をする時の注意点について解説します。

金額によっては脱税になる

自宅にまとまった金額のタンス預金をしていると、税務署の税務調査の対象になることがあります。

税務調査が行われタンス預金が明るみになった場合は、脱税と判断され重加算税や延滞税など多額の税金が課税されることもあります。

家族とトラブルになる可能性がある

家族に内緒でタンス預金をしていた場合、トラブルの火種になる可能性があります。

例えば、タンス預金をしているにもかかわらず、「余っているお金がない」と家族に伝えていると、隠していた現金や貴金属が見つかった時にトラブルに発展するかもしれません。

へそくりとしてタンス預金をする際は、家族に見つかりにくい場所に保管しましょう。

紛失時の保証が一切ない

銀行に預けているお金は、ペイオフ制度により1,000万円までの保証が適応されますが、タンス預金には紛失時の保証がありません。

火事や水害、盗難で紛失すると全てを失ってしまいます。

隠していた現金が身内に見つかって無断で使用された場合でも、タンス預金だと訴えることができません。

タンス預金には紛失時の保証がなく、リスクがあることを理解しておきましょう。

まとめ:タンス預金はメリット・デメリットを理解して行おう

生活防衛資金の目安はいくら?

タンス預金は相続税対策にはなりません。

税務調査でタンス預金が明らかになると、相続人は重加算税の追徴課税を受ける可能性があります。

タンス預金にはいつでも自由にお金が使えるメリットがある一方で、紛失した際の保証がない、脱税を指摘される可能性があるといったデメリットもあります。

タンス預金はメリット・デメリットを理解し、ご自身の判断で行うようにしましょう。

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