住民税はいつから引かれる?いつまでの収入か、金額が変わるタイミングを解説
社会人2年目の6月に給与明細を見ると、手取り額が数万円ほど減っていて驚く方もいるかもしれません。
これは住民税による天引きが原因です。
住民税は前年の所得によって税額が決まる仕組みになっています。
社会人1年目は前年の所得が少ないため、住民税を支払う必要がなかったものの、2年目からは前年分の年収に対して税金が引かれるようになります。
この記事では、住民税はいつから引かれるのかという点について、税額の決まり方や計算方法をもとに解説します。
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この記事の目次
住民税とは
まずは、住民税に関する基礎知識を解説します。
住民税とはどのような税金で、いつ・いくら支払う必要があるのかといった点を理解しましょう。
自治体に納める地方税の一つ
住民税は、地方自治体に税金を納める「地方税」です。
住民税を納めることで、各地域の教育や福祉、ゴミ処理などの行政サービスが維持されています。
住民税は「都道府県民税」と「市区町村税」の2種類に分かれますが、税金を徴収される際は「住民税」として両者を合算した金額を支払うことになり、その後、都道府県や市区町村に分配される仕組みです。
また、その地域に住んでいる個人がおさめる「個人住民税」と、その地域に会社所在地がある法人がおさめる「法人住民税」という種類の違いもあります。
一定以上の所得がある方が納める税金
住民税は、その年の1月1日時点に住んでいる自治体に支払います。
仮に1月2日に引っ越したとしても、1月1日時点の住民票がある住所が基準です。
住民税の金額は「所得割」と「均等割」によって計算され、両者を合算して徴収されます。
- 所得割:前年の所得金額に応じて課税
- 均等割:所得にかかわらず定額で課税
そのほか、銀行預金の利子がある場合は「利子割」、株式や投資信託などで利益を得た場合は「配当割」や「株式等譲渡所得割」といった方法でも住民税が徴収されます。
住民税をおさめなければならないのは「一定以上の所得」がある方で、1年間の所得がその水準を下回るか、生活保護を受けている場合は課税対象になりません。
「一定以上の所得」の基準は自治体によって異なります。
参考: 東京都主税局「個人住民税」
東京都港区の場合
東京都港区の場合、所得が次の金額以下におさまっていれば住民税を支払う必要はありません。
【所得割が非課税になる基準】
- 35万円 ×(本人 + 被扶養者の人数) + 32万円(被扶養者がいる場合のみ) + 10万円
【均等割が非課税になる基準】
- 35万円 × (本人 + 被扶養者の人数) + 21万円(被扶養者がいる場合のみ) + 10万円
仮に夫婦と15歳の子供の3人暮らしだとすると、1年間の所得が147万円以下で「所得割」が、136万円以下で「均等割」が非課税となります。
参考:港区ホームページ「住民税(特別区民税・都民税)はどういう場合に非課税になりますか。」
前年1年間の所得に応じて6月から引かれる
住民税の金額は、前年の1月1日から12月31日までの所得によって決まります。
前年1年間の所得を基本として、翌年6月から翌々年5月まで1年間引かれる仕組みです。
たとえば、2021年1月1日から12月31日までの所得が200万円で、その所得から計算された住民税が20万円だとしましょう。
この20万円の住民税が12ヶ月に分割されて、2022年6月から2023年5月までの給与から引かれることになります。
高校や大学を卒業後に就職する場合は、社会人になってから初めて住民税を納税するケースも珍しくありません。
社会人1年目は前年の所得が基準に達していないことが多いため、実際に住民税を支払うのは社会人2年目になってからが一般的です。
住民税の徴収方法
住民税の徴収方法は次の2通りに分かれます。
- 普通徴収
- 特別徴収
それぞれの違いについて詳しく解説します。
普通徴収
「普通徴収」とは、自治体から送付される納税通知書によって住民税を支払う方法です。
給与所得者以外の個人事業主やフリーランスの方が主な対象となります。
給与所得者でも、副業の所得に関しては普通徴収を選ぶこともできます。
年に12回分割して徴収される特別徴収とは異なり、普通徴収は一括払いか4回に分けて払うかのいずれかを選んで納付します。
特別徴収と支払回数は異なりますが、支払う金額が方法によって異なることはありません。
一括払いを選んだから少し安くなるということもないです。
特別徴収
「特別徴収」とは、事業者(給与支払者)が従業員に支払う給与から住民税を天引きし、納税義務者の代わりにまとめて納税する方法です。
主に会社員やパートのような給与所得者が対象となります。
また、公的年金を受給している65歳以上の方も、年金支給額から住民税が差し引かれます。
特別徴収のメリットは、納税者自身で税金をおさめる必要がなく、12ヶ月に分割して払うため1回あたりの負担が少なくて済む点です。
住民税の特別徴収とは?普通徴収との違いもわかりやすく解説
住民税はいつから引かれるのか
住民税は、前年1月1日から12月31日までの所得に応じて、6月から翌年5月の間に給与から差し引かれます。
前年の所得が少ない社会人1年目は、住民税が引かれないケースがほとんどでしょう。
ここでは、社会人1年目から3年目までの住民税や転職したケースを例に、住民税がいつから引かれるのか解説します。
社会人1年目の給料からは引かれない
社会人1年目は、給与から引かれるのは基本的に「所得税」のみとなります。
上述した通り、社会人1年目は住民税が非課税になることが多いためです。
自治体が住民税を決めるのは、1年間の所得が確定する12月で、その後1月1日時点で住民登録がある市区町村に情報が送られます。
そのため、前年に所得がなければ、社会人1年目は住民税が引かれないということです。
ただし社会人になる1年前にアルバイトやインターンシップなどで扶養を外れるほどの収入を得ていた場合、その所得額によっては社会人1年目から住民税が発生する可能性があります。
社会人2年目の6月給料から引かれる
公務員や会社員の場合、社会人2年目の6月分給与から住民税が引かれます。
差し引かれるのは住民税を12等分した金額で、6月から翌年5月まで均等に徴収する仕組みです。
個人事業主やフリーランスの場合は、起業2年目の6月頃に自治体から住民税納付書が送られてきて、一括払いまたは6月・8月・10月・翌1月の4回払いで税金をおさめます。
住民税の徴収開始時期が6月なのは、法律によって定められているほか、事務的な理由があるからです。
住民税のベースとなる個人の課税額が決定するのは、確定申告の時期である2~3月です。
その後、5月末までに税額決定通知書が雇用主を通じて給与所得者に配られるため、おのずと6月から徴収が開始されることになります。
社会人2年目の6月に給与明細を見ると、「急に手取り額が少なくなった」と驚くことも多いため、あらかじめ住民税が引かれることを念頭に置いておきましょう。
社会人3年目から丸1年分引かれる
社会人1年目の間は1年間、2年目だと4~5月の間は住民税を支払わずに済みます。
しかし、社会人3年目以降は、3月から翌年4月まで前年1年分の住民税をおさめなければなりません。
社会人2年目の6月以降は、途中で仕事を辞めない限りずっと住民税を支払う必要があるということです。
転職した場合は時期によって異なる
住民税は前年の所得をもとに納税額を計算するため、転職しても翌年の6月を迎えるまでは住民税の金額は変わりません。
転職をする際に気を付けておきたいのが、納税額よりも転職のタイミングです。
住民税は原則として給与から天引きされるため、転職しても次の勤務先で引き続き特別徴収を継続してもらえます。
しかし、次の転職先が決まっていない場合は、「1~5月に退職した場合」と「6~12月に退職した場合」で住民税の支払方法が変わります。
1~5月に退職した場合は、その年度分の住民税が最後に支払われる給与から一括徴収され、6~12月だと退職月の住民税のみ給与天引きで徴収され、未払い分が普通徴収に切り替わる仕組みです。
転職後に住民税が引かれていない?特別徴収や納付タイミングについて
住民税の決まり方と計算方法
住民税の決まり方や計算方法を具体的に解説します。
住民税額は翌年の6月に変わる
住民税額が変わるタイミングは翌年の6月です。
前年の課税所得額が変わることで、6月から翌5月の住民税額も変化します。
ここからは、課税所得額の計算から住民税額の算出までの一連の流れを紹介します。
課税所得額を計算する
まずは、前年の課税所得額を計算します。
「課税所得額」の計算方法は次の通りです。
- 課税所得額 = 収入 – 経費(給与所得以外の場合のみ) – 所得控除
個人事業主やフリーランスの場合は、収入から経費を引いて所得額を減らせます。
給与所得者(会社員)の場合は所得控除の手段が少なく、配偶者控除や扶養控除、ふるさと納税を利用した寄付金控除などを活用することになります。
所得控除の例
住民税に適用できる所得控除には、主に以下のような種類があります。
- 基礎控除:すべての納税者に適用される43万円の控除
- 医療費控除:1年間に支払った医療費の一部を控除
- 社会保険料控除:毎月支払っている年金保険料や健康保険料を控除
- 生命保険料控除:1年間に支払った生命保険料の一部を控除
- 配偶者控除:一定以下の所得金額の配偶者がいる納税義務者が受けられる控除
- 扶養控除:控除対象となる扶養家族がいる場合に受けられる控除
所得控除は併用できるため、適用できるものが多いほど納税額を減らすことが可能です。
給与所得者であれば年末調整で申告できる所得控除もありますが、確定申告をしないと適用されない所得控除もあるので注意が必要です。
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10%の住民税率をかけて税額控除を引く
次に、課税所得額をもとに住民税の「所得割額」を計算します。
- 住民税の所得割額 = 課税所得額 × 住民税率10% – 税額控除
住民税率は一律10%と定められています。
課税所得額に10%をかけ、後ほど紹介する税額控除を差し引くと所得割額が求められます。
たとえば課税所得額が350万円で、税額控除が5万円の場合、住民税の所得割額は「350万円 × 10% – 5万円」の30万円となります。
参考:総務省「個人住民税」
税額控除の例
住民税に適用できる税額控除には、主に以下のような種類があります。
- 寄付金税額控除(ふるさと納税):地方自治体などに2,000円超の寄付を行うと控除が可能
- 住宅ローン控除:所得税の住宅借入金等特別税額控除の対象者が一定の条件を満たすことで、所得税で控除しきれなかった金額を控除
- 配当控除:一定の配当所得があれば控除が可能
税額控除は実際の税額から直接差し引けるため、所得控除よりも節税効果が高いといえます。
所得割額と均等割額(5,000円)を足す
最後に、先ほど算出した「所得割額」に「均等割額」を足すと、住民税の実際の税額が計算できます。
- 住民税額 = 所得割額 + 均等割額5,000円
均等割額は一律5,000円なので、たとえば所得割額が30万円の場合は、トータルの住民税額が30万5,000円となります。
給与所得者だと、30万5,000円を12分割した約2万5,000円が毎月の給与から天引きされるようなイメージです。
住民税の均等割について
住民税の均等割は、所得額にかかわらず一律の金額が発生します。
均等割額は、道府県民税の1,500円、市区町村民税の3,500円を合わせて計5,000円です。
東日本大震災の復興や自治体の防災対策のため、2014年度から2023年度までの間、個人住民税の均等割額は道府県民税・市区町村民税それぞれ500円ずつ加算されます。
均等割額は自治体によって金額が異なる場合があるため、気になる方は事前に役所で確認しておきましょう。
住民税の所得割について
住民税の所得割は、1年間の所得に住民税率をかけて計算します。
住民税率は一律10%で、道府県民税が4%、市区町村民税が6%となります。
所得が多いほど納税額が増える点には注意が必要です。
まとめ:住民前はいつから引かれるか正しく把握しよう
住民税は前年1年間の所得によって金額が決まり、6月から翌5月に渡って徴収されます。
前年の所得が少ない社会人1年目の場合は、住民税が非課税になるケースが多いものの、社会人2年目の6月以降は納税の義務が発生するため注意が必要です。
また、所得控除や税額控除を活用して住民税を減らすことも可能です。
あらかじめ住民税がいつから引かれるか把握しておくことで、「入社2年目にいきなり給与が少なくなった」と戸惑わずに済みます。
住民税の仕組みやいつから引かれるかをきちんと理解しておきましょう。
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記事監修者
マネカツ編集部
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