住民税の特別徴収とは?普通徴収との違いもわかりやすく解説
「住民税」は、一定額以上の所得がある全ての人に納める義務がある税金です。
基本的に会社員や公務員などの給与所得者は一部の方を除いて「特別徴収」で、自営業者やフリーランスなどは「普通徴収」で住民税を納付します。
この記事では、住民税の特別徴収について普通徴収との違いも含めてわかりやすく解説します。
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この記事の目次
住民税の「特別徴収」とは
住民税とは、市町村に納める「市町村民税」と都道府県に納める「都道府県民税」を合わせた地方税です。
東京23区にお住まいの方は市町村民税ではなく「特別区民税」となります。
給与天引きで住民税を支払う制度
住民税の「特別徴収」は、会社員や公務員など給与の支払いを受けている人を対象に、給与から天引きで住民税を納める制度です。
給与からは住民税の他にも、所得税や社会保険料が天引きされています。
会社が従業員の給与から天引きした税金や社会保険料を、従業員の代わりに納付しています。
給与から天引きすることで、従業員は税金を支払う手間が省ける点や納付を忘れてしまうといった滞納を防げる点がメリットです。
住民税の特別徴収の実施は、一部の例外を除き給与支払者(会社)の義務となっています。
「普通徴収」は自分で住民税を支払う方法
「普通徴収」は、住民税の納付を自分で行う方法です。
住民税を特別徴収で納めていない場合は、普通徴収で納めることになります。
普通徴収での納付に該当するのは、下記のような方です。
- 給与所得者以外の個人事業主
- フリーランス
- 退職・失業中の方(無職の方)
- 公的年金受給者
一部の例外を除き、特別徴収される会社員が自らの希望で普通徴収を選択することはできません。
ただし、副業をしている会社員の方が住民税を本業とは別で納めたい場合は、確定申告をすることで副業分のみ普通徴収で納めることが可能です。
給与明細書で徴収方法が確認できる
会社員や公務員などの給与所得者は、給与明細書で住民税を「特別徴収」と「普通徴収」のどちらで納めているかが確認できます。
給与明細書の控除欄に「住民税」の項目がある場合は「特別徴収」によって会社経由で住民税を納めていることがわかります。
「住民税」の項目がない場合は、普通徴収です。
「特別徴収」と「普通徴収」の違い
支払い方法の違い
「特別徴収」と「普通徴収」では、住民税の納付方法が異なります。
特別徴収の場合、給与から住民税が天引きされます。
会社が従業員に代わって住民税を納めてくれるため、自分で納める必要はありません。
普通徴収の場合、住民税を自分で納める必要があります。
毎年5月〜6月頃にお住まいの市区町村から「納税通知書」が届きますので、役所や銀行、コンビニなどから納付しましょう。
自治体によっては口座振替やスマートフォン決済などを利用しての納付も可能です。
支払回数の違い
特別徴収は毎月の給与から天引きされるため、住民税を年12回払いで支払うイメージになります。
ちなみにボーナスから住民税は天引きされません。
普通徴収の場合は年4回が基本で、6月・8月・10月・1月の月末が納期限となります。
希望する方は1年分の住民税を6月の納期限までに一括で納めることも可能です。
万が一住民税の支払いが困難な場合は、納期限を迎える前に役所に相談しましょう。
分割納付や猶予、減免等の対応をしてくれることがあります。
参考:多摩市役所「口座振替で、全期分を一括納付(全期前納)できます」
参考:中野区公式ホームページ「納税困難な方の分割納付・猶予等のご相談をお受けしています」
住民税は分割払いできる?断られるケースや払えない場合の対応を解説
経理担当者の業務負担
「特別徴収」では会社が従業員に代わって住民税を納めるため、経理担当者に業務負荷がかかることになります。
会社は、従業員の給与から天引きした資金を翌月の10日までに市区町村に納める必要があります。
いかなる理由があっても、特別徴収を行わないことは法令上認められていません。
住民税の税額計算は区市町村が行っているため、所得税のように会社が税額を計算したり、年末調整をするまでの手間はかかりませんが、毎月会社が業務の一環として全ての従業員分の対応をしてくれているということを把握しておきましょう。
納税金額に違いはない
特別徴収でも普通徴収でも、納税者が納めるべき「住民税の総額」に違いはなく、普通徴収で一括納付を選択した場合も、収めるべき税額が割り引かれることはありません。
特別徴収では住民税を12回に分けて納付するため、普通徴収より1回あたりの金額は少ないですが、合計額は変わりません。
特別徴収と普通徴収の2つの納付方法がありますが、どちらがお得ということはないため、指定された納付方法で住民税を納めましょう。
特別徴収の流れ
「特別徴収」は、会社が従業員に代わって給与から天引きして納付を行う制度です。
ここでは、特別徴収の流れを解説します。
【1月】会社が給与支払報告書を提出する
住民税は、1月1日時点で居住している自治体に納付することになります。
会社は、1月31日までに各従業員が住民税を納付すべき自治体に「給与支払報告書」を提出します。
なお、下記の要件に該当する場合は、例外的に普通徴収による納付が可能です。
- 他の事業所で特別徴収
- 年間の給与支給額が100万円以下
- 給与の支払いが毎月ではない
- 事業専従者(個人事業主のみ該当)
- 退職者または退職予定者
- 休職者または休職予定者
- 上記に該当する者を除いて総従業員数が2名以下
普通徴収を希望する場合は「給与支払報告書」と同時に「普通徴収切替理由書」も合わせて提出する必要があります。
【5月】自治体から会社に通知書が届く
給与支払報告書等の提出があった自治体は、個人住民税額を計算します。
毎年5月31日までに各従業員が居住する自治体から会社に「市民税・県民税特別徴収税額の決定・変更通知書」が送付されます。
【5月〜6月】住民税決定通知書が会社から従業員に配布される
自治体から会社に届く「市民税・県民税特別徴収税額の決定・変更通知書」には、特別徴収義務者用(会社用)と納税義務者用(従業員用)があります。
会社は、従業員用の住民税決定通知書を従業員に配布します。
住民税決定通知書が手元に届いたら、内容に不備がないか確認しましょう。
納める住民税額と、住民税額の計算に使われる昨年の所得や控除を確認します。
前年度にふるさと納税をした方であれば、寄附金税額控除が摘要欄に記載されているはずです。
不備や疑問点があれば、勤め先の担当部署か自治体の税務課などへ連絡しましょう。
ふるさと納税が住民税から控除されたか確認する方法!住民税決定通知書の見方を紹介
【6月〜翌年5月】給与から天引きされる
住民税の金額は市区町村が計算して通知するため、会社では計算しません。
従業員の手元に届いた住民税決定通知書に不備がなければ、6月から翌年5月までの毎月の給与から住民税が天引きされます。
従業員の住民税納付は、特別徴収を行った会社が代行するため自分で納付する必要はありません。
納期の特例について
特別徴収を行う会社は、原則として給与を支払った月の翌月10日までに住民税を納める必要があります。
「納期の特例」とは、給与の支給人員が常時9人以下の会社に対して、特別徴収した住民税を半年分まとめて納付することを認める制度です。
この場合でも給与からの天引きは毎月行われ、会社が半年分預かります。
6月から11月までに特別徴収した住民税は12月10日、12月から翌年5月までの住民税は6月10日が納付期限です。
納期の特例を受けるためには「特別徴収税額の納期の特例に関する申請書」の提出が必要になります。
ただし、特例の適用後、給与の支給人員が常時10人以上となった場合は、遅滞なくその旨を届け出る必要があります。
特別徴収(住民税)を減らす方法
住民税は前年の所得に応じて課せられます。
特別徴収される住民税額を減らすためには、所得控除や税額控除についての理解が必要です。
ここでは、住民税を減らす方法を紹介します。
ふるさと納税を活用する
ふるさと納税は、希望する自治体に寄付をした際に、合計寄付額から2,000円を引いた金額が所得税と住民税から差し引かれる制度です。
ふるさと納税には年収や各種控除、扶養家族の有無などに応じた寄付金上限額があります。
上限額を超えた金額については全額自己負担になるため、ふるさと納税をする際は事前に上限額をシミュレーションしておきましょう。
会社員であれば、「ワンストップ特例制度」という確定申告が不要になる制度を活用できます。
利用するにはいくつかの条件がありますが、基本的にはほとんどの会社員が活用できますので、手続きの煩雑さもありません。
ふるさと納税はワンストップ特例制度と確定申告どっちがお得?違いを解説
ワンストップ特例制度を利用した際の住民税控除額
年収500万円・独身の会社員であれば、特別な控除を利用していない場合、上限額の目安は61,000円です。
ふるさと納税で61,000円を寄付し、ワンストップ特例制度を利用した場合、自己負担2,000円を除く59,000円が、本来払うべき住民税から控除されます。
iDeCo(イデコ)を活用する
iDeCoとは個人型確定拠出年金と呼ばれる制度で、個人で運用する年金のことです。
iDeCoの掛金は全額所得控除となっているため、老後資金の準備をしつつ住民税の負担を軽減できるのが魅力の一つになっています。
毎月の掛金には上限額が設定されており、会社員の場合は勤め先によって「12,000円」「20,000円」「23,000円」のいずれかです。
例えば、年収500万円で独身の方が、毎月2万円をiDeCoで運用する場合、住民税の軽減額は年間約24,000円になります。
計算元:iDeCo公式サイト「かんたん税制優遇シミュレーション」
iDeCo(イデコ)とは?仕組みや始め方、注意点をわかりやすく解説
所得控除制度を活用する
所得控除とは、納税者の個人的な事情を考慮して、実情に応じた税負担を求めるために所得税額から差し引くものです。
例えば、ふるさと納税は「寄附金控除」に、iDeCoの掛金は「小規模企業共済等掛金控除」に該当します。
その他にも、1月1日〜12月31日までの医療費が一定額を超えた際に利用できる「医療費控除」や生命保険・介護医療保険・個人年金保険の保険料を支払った際に利用できる「生命保険料控除」などがあります。
人によって利用できる控除が異なるため、控除できるものがないか確認してみましょう。
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まとめ:特別徴収とは会社が住民税を天引きして納める制度
特別徴収は、会社が毎月の給与から住民税を天引きして従業員の代わりに住民税を納める制度です。
給与所得者は一部の例外を除き「特別徴収」によって住民税を納めることになります。
自営業やフリーランスの方は、普通徴収によって自分で納める必要があります。
特別徴収と普通徴収は支払い方法や支払回数が異なりますが、どちらも納める税額は変わりません。
特別徴収される住民税を減らす方法としては、ふるさと納税やiDeCoの活用がおすすめです。
その他にも様々な控除が利用できると納める住民税を減らすことができるため、控除できるものがないか確認してみましょう。
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マネカツ編集部
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