老後資金はいくらあれば安心?夫婦、独身の目安や必要な貯金額
人生100年時代と呼ばれる現代では将来に様々な不安を抱えており、老後資金はなるべく早いうちから準備しておくことが大切です。
しかし、老後にいくら必要なのかがわからなければ、貯金の目標額も定まりません。
目標がなければ行動に移すのも難しいでしょう。
この記事では老後資金の目安となる金額や、老後資金の貯め方・増やし方について解説します。
老後に必要な資金は人によってさまざまですが、平均値となる目安はあります。
目安金額を手がかりに、自分にとって必要な老後資金を確保しましょう。
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この記事の目次
老後資金は平均いくら必要?
老後資金の目安を求めるには、次の式を用います。
【老後資金 = 1ヶ月に必要な金額 × 12 ×(平均寿命 – 65)】
1ヶ月に必要な金額を12倍して、1年間に必要な金額を求めます。
その後、公的年金の受給が始まる65歳以降から寿命までの年数をかけます。
この式を用いれば、老後資金のおおよその目安がわかるでしょう。
ここでは、独身世帯と夫婦2人世帯における老後資金の目安を紹介します。
独身世帯:平均支出額約15万円
2020年に総務省統計局が実施した「家計調査」によると、65歳以上の独身世帯における1ヶ月の平均支出額は144,687円となっています。
老後資金を計算するには、多少余裕をもって見積もった方が安心です。
独身世帯では1ヶ月におよそ15万円が必要だと考えましょう。
また、厚生労働省が発表する「簡易生命表」によると、2021年時点での男女の平均寿命は以下の通りです。
性別 | 平均寿命 |
男性 | 81.47歳 |
女性 | 87.57歳 |
ここでは、男性の平均寿命が82歳、女性が88歳と考えましょう。
これらの数値から、式を用いて老後資金の目安を求めます。
- 男性独身世帯:15万円 × 12 × (82 – 65) = 3,060万円
- 女性独身世帯:15万円 × 12 × (88 – 65) = 4,140万円
男性の独身世帯は3,060万円、女性の独身世帯は4,140万円あれば、老後の生活費をまかなえるだろうとわかりました。
出典:総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年)家計の概要」
出典:厚生労働省「令和3年簡易生命表の概況」
夫婦2人:平均支出額26万円
次は夫婦2人世帯の支出額です。
2020年の家計調査によると、夫婦2人世帯における1ヶ月の平均支出額は255,550円です。この数字も多めに見積もり、約26万円と考えましょう。
また、男女の平均寿命には差があるので、ここでは82歳以降は女性の独身世帯と考えます。
そのうえで、女性の平均寿命までに必要な資金額を求めます。
それでは、式を用いて老後資金の必要額を求めましょう。
- 82歳まで:26万円 × 12 × (82 – 65) = 5,304万円
- 82歳以降:15万円 × 12 × (88 – 82) = 1,080万円
合計すると、6,384万円です。
夫婦2人世帯の場合、老後の支出をまかなうには合計で6,384万円必要だとわかりました。
6,384万円は大金ですが、ある程度は年金でまかなえます。
必ずしも老後までに6,000万円以上の貯金が必要なわけではないので、安心してください。
老後のために貯金する際は、将来もらえる年金額を計算したうえで、不足する金額を目標額とするのがよいでしょう。
老後2000万円問題の背景
老後2,000万円問題とは、2019年に金融庁が公表した資料から巻き起こった、老後資金をめぐる議論です。
資料では、夫婦2人世帯において老後資金が2,000万円足りなくなる、という試算がなされました。
この資料では、2017年の家計調査から試算を行っています。
【(1ヶ月の平均収入額 – 1ヶ月の平均支出額) × 12 × 30年 = 老後資金の不足額2000万円】
年金など1ヶ月の平均収入から平均支出を引いて、1ヶ月の赤字額を求めます。その数字を12倍して1年分の赤字額を求め、さらに30年をかけて老後全体の赤字額を算出しています。
この計算には、1つ大きな問題があります。
それは、調査年によって平均収入額と平均支出額にばらつきがあることです。
2017年の家計調査では、毎月55,000円の赤字が出ると試算されました。
しかし、2020年の家計調査では、1ヶ月の収支は1,111円の黒字となっています。2,000万円不足するどころか、40万円近く貯金できる計算です。
このように数字にばらつきがあるため、老後に2,000万円不足するという試算は絶対的なものではありません。
老後資金にいくら必要かは、生活スタイルや生活水準によって大きく変わるものです。
「2,000万円」という数字は、あくまでも参考程度にとどめておくのがよいでしょう。
【2024】年金問題の現状や解決策は?老後2,000万円問題に備えよう
老後に必要最低な生活費は平均22.1万円
老後資金について、一般的にいくら必要だと考えられているのでしょうか。
意識調査から探ってみましょう。
生命保険文化センターが令和元年度に実施した「生活保障に関する調査」によると、夫婦2人で老後生活を送るのに最低限必要な生活費は、平均22.1万円という結果でした。
この数値は、家計調査の平均値である26万円よりも低くなっています。
22.1万円という数値は、何とか暮らしていけるギリギリの額と考えるのがよいでしょう。
1ヶ月22.1万円あれば安心というわけではないので注意してください。
出典:生命保険文化センター「生活保障に関する調査(速報版)」
ゆとりある老後に必要な生活費は平均36.1万円
老後生活にゆとりを持たせるには、どれくらいの生活費が必要でしょうか。
同じく令和元年度に実施した「生活保障に関する調査」によると、夫婦2人でゆとりのある老後生活を送るのに必要な生活費は、平均36.1万円という結果でした。
14万円の上乗せ金額の使い道は、旅行やレジャーがもっとも多く、次いで趣味や教養、日常生活費の充実、身内との付き合いと続いています。
老後生活には楽しみや人とのつながりも必要です。
生き生きとした老後を送るためにも、老後資金は余裕をもって貯める意識を持ちましょう。
老後に年金はいくらもらえる?
老後資金の目安がついたら、どのように確保するかを考えましょう。
老後の生活費の大部分は、公的年金でまかなうことができます。
公的年金には、「国民年金」と「厚生年金」の2種類があります。
ここでは、老後にもらえる公的年金の額について解説します。
国民年金は約5.6万円
国民年金は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満の人全員が加入する年金です。
一般的には65歳から支給されます。
厚生労働省が発表した「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金受給者の平均月額は56,358円となっています。
自営業者やフリーランスなどの第1号被保険者の場合、何の対策もしなければ国民年金の5.6万円しかもらえません。
何らかの手段で老後資金を確保することが必須です。
なお、国民年金には繰り上げ・繰り下げ受給という制度があります。
- 繰り上げ受給:年金の受け取り時期を早めること。年金額は1ヶ月繰り上げるごとに0.4%減額される
- 繰り下げ受給:年金の受け取り時期を遅くすること。年金額は1ヶ月繰り下げるごとに0.7%増額される
国民年金の額を増やしたい方は、繰り下げ受給を検討するとよいでしょう。
出典:厚生労働省年金事務局「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
厚生年金は約14万
厚生年金は、主に会社員が加入する年金です。
国民年金に上乗せされる年金で、加入時期や標準報酬月額によって受給額が変わるという特徴があります。
同じく厚生労働省が発表した「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給者の平均月額は146,145円でした。
注意点として、この金額は国民年金と厚生年金を合わせた受給額です。
厚生年金単体で14万円ではありませんので、気をつけましょう。
この「約14万円」という金額は、独身世帯の生活費ギリギリの額です。
不安な方は繰り下げ受給で受取金額を増やすか、現役時代から貯蓄を心がけるとよいでしょう。
持ち家がある場合は活用方法を考えよう
持ち家がある方は、積極的に活用する方法を考えるとよいでしょう。
持ち家の活用方法としては、次の3つのパターンがあります。
- 自分たちの住まいとして活用する
- 賃貸に出して家賃収入を得る
- 売却して大きな資金を得る
持ち家を自分たちの住まいとして活用すれば、家賃を払わずに済むので経済的です。
ただし、継続して固定資産税がかかる点には注意が必要です。
持ち家を賃貸に出せば家賃収入を得られます。
管理や運営のノウハウは必要ですが、老後の安定した収入源となるでしょう。
まとまったお金が必要であれば、売却も検討しましょう。
特に住宅ローンが残っている場合は、売却することで生活に余裕が生まれる可能性があります。
持ち家がある方には、さまざまな選択肢があります。
理想の老後生活をイメージしながら、自分たちにとって最適な活用方法を選びましょう。
老後資金に今から備えよう
老後資金は、年金だけでは不足する可能性があります。
できるだけ早いうちから老後に備えてお金を貯めることが重要です。
貯金だけではなく、投資を取り入れることで効率よくお金を増やせる可能性が高くなります。
ここでは、老後に備えて資金を確保する方法について解説します。
iDeCoを活用する
老後資金を無理なく貯められるよう、国が用意しているお得な制度が「iDeCo(イデコ)」です。
iDeCoは私的年金制度のことで、公的年金と違って加入は任意、毎月の掛金を自分で支払い、自分で運用して老後資金を作っていく制度となっています。
iDeCoの特徴は、掛金や運用で得た利益が非課税になるという点です。
運用によって発生した利益が非課税になるのはNISAと同じですが、iDeCoでは掛金も控除されるため、節税に繋がる点は大きなメリットでしょう。
ただし、iDeCoで運用したお金は60歳になるまでは引き出せません。
また、運用次第では元本割れするリスクもあります。
メリットもデメリットもしっかりと理解した上で、リスクを押さえた運用を行いましょう。
iDeCo(イデコ)にはデメリットしかない?お得に投資する方法
積立NISAを活用する
資産運用の入門としておすすめなのが、お得な税制優遇がある「積立NISA」です。
積立NISAは積立投資に特化した少額投資用の非課税制度で、iDeCoと同じく投資で得た利益に税金がかからないのが特徴となっています。
投資できる商品は金融庁が厳選した投資信託やETFに限られており、長期積立投資向けの金融商品をリスク少なく購入できます。
非課税期間が最大20年と長く、1年の投資金額の上限は40万円(1ヶ月あたり約33,333円)ですので、まとまった資金を用意できない方でも始めやすいです。
毎月33,333円を20年間投資し続けると最終的にいくらになるのか、以下の表にまとめました。
投資元本は800万円です。
想定利回り | 最終的な金額 |
3% | 10,943,291円(+約294万円) |
5% | 13,700,985円(+約570万円) |
7% | 17,364,048円(+約936万円) |
想定利回り5%の場合はもちろん、3%程度であっても20年間コツコツ投資し続ければ、最終的に1,000万円を超える資金が作れます。
1,000万円超の資金があれば、老後生活にかなりの余裕が生まれるでしょう。
積立NISAは年金制度ではありませんが、老後に向けた余裕資金を確保するには活用したい制度といえます。
iDeCoと違って運用途中でも資金を引き出せますので、もしもの時にも安心です。
積立NISAとは?投資初心者におすすめの理由をわかりやすく解説
不動産投資を活用する
不動産投資も老後資金を確保する方法の1つです。
不動産投資は、アパートやマンション、戸建て住宅を購入して家賃収入を得る投資方法です。
不動産投資の特徴は、ローンを組んで投資できる点にあります。
自分の持っている資金以上の金額を投資できるため、うまく行けば大きな収入を安定して得ることができます。
ただし、ローンを組むにはある程度の頭金が必要です。
また、空室リスクや天災などのリスクがあり、想定よりも収入が得られない可能性もあります。
しかし、上手に運用すれば大きな収入を安定的に得られるため、投資経験がある人が老後資金を確保するには適した方法といえるでしょう。
不動産投資のメリットとデメリットは?成功するポイントも解説!
まとめ:老後資金がいくら必要か算出して準備を始めよう
老後資金を確保するには、老後に必要な生活資金の平均額を把握おくことが大切です。
必要額の目安がわかれば、目的意識を持って貯金ができるでしょう。
平均寿命をベースにした場合の老後費用は、独身世帯であれば男性で合計3,060万円、女性で4,140万円です。
夫婦2人世帯であれば、6,384万円という調査結果が出ています。
この金額の大部分は、国民年金や厚生年金といった公的年金でまかなえます。
もっとゆとりのある老後を送るためには、iDeCoや積立NISA、不動産投資などで余裕資金を確保することも重要です。
老後資金にいくら必要かは、どのような老後生活を送りたいかによって変わります。
老後の暮らしをイメージしながら必要な金額を算出し、なるべく早いうちから老後に備えましょう。
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記事監修者
マネカツ編集部
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