老後資金として最低2,000万円が必要となるという国の試算「老後2,000万円問題」が、メディアなどでも取り上げられ話題となりました。

昨今は収入を増やすために副業を始める方がいたり、新たに投資を始める方が増えたりと、お金に関する不安が高まっています。

とりわけ年金については、受給開始年齢の後ろ倒しや実際にもらえる金額に関する様々な議論がなされており、世代間格差についても注目を集めています。 

この記事では今の日本が抱える年金制度の現状や問題点、今から年金問題に備えるための解決策・準備について解説します。

年金問題についての現状を把握し、老後資金について考えるきっかけになれば幸いです。

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年金問題の現状

年金問題の現状

現在の日本における年金制度は、様々な課題に直面しているといわれています。

高い経済成長率を前提として設計されていた日本の年金制度は、当初の見通しのまま維持することが困難になりつつあります。

「年金支給開始の後ろ倒し」や「年金支給金額の減少」などは、高齢者の方のみならず現役世代にとっても大きな問題となっています。

これらの原因については様々な要因が指摘されていますが、主な要因の1つは世界でも類を見ないほど急速に進んでいる「日本の少子高齢化」です。

ここからは老後2,000万円問題や年金に関する様々な問題点、年金問題の現状について整理していきます。

老後2,000万円問題について

「老後2,000万円問題」とは、2019年に金融庁が公表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」に記載されていた試算結果をきっかけとする、年金に対しての不安・関心の高まりを総評した言葉です。

その試算によれば「夫65歳以上、妻60歳以上で夫婦のみ、且つ夫婦ともに無職の世帯において、老後資金が2,000万円不足する可能性がある」とされていました。

「年金が支給されればお金の心配をすることなく老後を過ごせる」と信じていた国民の期待を裏切る内容であり、ニュースやメディアでも大きく取り上げられ話題となりました。

関連記事:お金(投資)の勉強は何からする?初心者はまずこれから!勉強法3選

少子高齢化における現役世代の負担増

年金制度の維持が難しくなっている主な理由として「少子高齢化」があげられます。

高齢者の定義については様々な見解があるものの、一般的には65歳以上が高齢者といわれます。

内閣府が発行する「令和3年版高齢社会白書」の数字を用いて2015年における、いわゆる生産年齢人口とされる15歳~64歳の方の人数を、高齢者とされる方の人数で割ると約2.28という数字が出てきました。

つまり、15歳~64歳までの方およそ2.3人で、高齢者1人を支えているということです。

この数字は1980年では約7.4だったため、当時は7人以上で高齢者1人を支えていたことになります。

支える人数が減るということは、その分支えている側(現役世代)の負担が増えるといえます。少子高齢化の影響で、現役世代の負担が増えていることがわかります。

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世代間格差の広がり

年金負担に関する世代間の格差も大きな課題です。

現在年金を受け取っている世代と現役世代を比較した場合、特に現役世代の負担が増加しています。

さきほどご紹介した少子高齢化に加え、男性・女性ともに平均寿命が延びていることや、経済成長があまり見込めないことも理由の一つです。

例え現役世代の負担を増やしたとしても、現役世代の人数そのものが減っているため限界が来てしまいます。

年金政策を担う厚生労働省は年金制度を維持するため、年金保険料の引き上げや年金支給開始を遅くすることなどを検討しています。

また、年金の支給額そのものも減少していくことも予想されています。

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外国人の年金問題

年金に関しては、外国人に関する問題もあります。

外国人の方も、原則として年金保険料の支払い義務があります。

しかし、年金保険料は10年以上支払わなければ支給の対象とならないため、実際には年金を受け取ることができない外国人も多くなっています。

「脱退一時金」という、保険料支払期間が10年に満たない人の方でも一時金を受け取ることができる制度はありますが、制度の認知度が低く支給を受けないままの外国人も多いです。

一方で、年金保険料の支払い義務があるにも関わらず、保険料が未納になっているケースもあるなど、外国人の年金問題について様々な指摘がされています。

年金問題は今後どうなる?

年金問題は今後どうなる?

様々な問題を抱えている日本の年金制度ですが、今後どのようになっていくのでしょうか。

考えられることを考察してみます。

支給額の減額が予想される

現役世代が年金を受け取るときは、現在よりも1人あたりの支給額が減額されていると予想されています。

日本の年金制度は積立方式ではなく、賦課(ふか)方式を採用しているためです。

財政方式内容
積立方式国民が現役時代に自分で積み立てた資金を原資とし、老後に年金を受け取る方式
賦課方式年金として支払う原資を、今の現役世代が負担する方式

積立方式では負担者と受益者の数の差が小さくなり、長期運用の複利効果も期待できます。

一方で賦課方式は、年金の原資を現役世代が負担することになります。

少子高齢化が進む日本で賦課方式が採用されているため、結果として年金の支給額は減少傾向が続いています。

2人以上で1人の高齢者を支えることになる

今後、現役世代の年金に関する負担は、ますます大きくなっていくことが予想されます。

内閣府が発行する「令和3年版高齢社会白書」の統計によれば、2025年には高齢者が3,677万人にも増える見込みです。

2025年時点の生産年齢人口とされる15歳~64歳までの人数を、高齢者の人数で割ると約1.94となります。

15歳~64歳の方およそ1.9人で高齢者1人を支える構図が、現実味を帯びてきています。

年金制度維持のための増税が行われる可能性がある

年金制度が立ち行かなくなってしまうことはあってはならないことであり、これを防ぐためにあらゆる施策が行われる可能性があります。

その1つとして考えられるのが、年金保険料の支払額が増額される可能性です。

現在も定期的に年金保険料が見直されており、増加傾向にあります。

他にも消費税やその他の税金の増税も検討される可能性が高くなっています。

今の年金制度を維持するためには、国民の負担増を回避することは難しい状況です。

今後さらなる保険料・税金の見直し(増税)に関する議論が出てくることが懸念されています。

個人年金の仕組みが広く普及していく

今は実際には大きな問題になっていないものの、徐々に老後2,000万円問題が現実的なものになってきます。

そうなった場合、年金だけでは老後生活ができないことを実感する方が徐々に増えてくるでしょう。

今後は自ら老後資金を準備する必要性が積極的に議論される可能性があります。

具体的には投資信託や預貯金など、中長期的視点をもった投資や資産運用への意識が高まっていく状況が考えられます。

中でも個人で年金を積み立てるのに適した「iDeCo」をはじめとする様々な投資方法が、これまで以上に広く普及していくことが予想されます。

年金問題の現実的な解決策

年金問題の現実的な解決策

昨今の状況を鑑みると、老後資金を年金頼りとするのは危険かつ不安な情勢となっています。

それでは年金問題に対し、具体的にどのように対処するべきでしょうか。

老後の暮らしを充実させるためには、自助努力が必須になってきます。

積立NISAで資産運用を始める

個人で老後資金を用意するために、まず検討したいのは積立NISAです。

積立NISAとは、長期投資に適した投資信託などの積立に利用できる制度で、運用によって得られる利益が非課税になる特徴があります。

少額から投資を始められるだけでなく、急な支出があった際に途中で積立の停止や解約(引き出し)をすることもでき、柔軟な投資判断が可能です。

早く始めるほど、最終的に資産が大きくなる可能性が高くなります。

例えば年間40万円を年利4%で運用できた場合、20年後の資産評価額としては1,100万円~1,200万円程度になることが期待できます。

資金に余裕があればiDeCoを始める

iDeCoとは「個人型確定拠出年金」の愛称であり、様々な税制優遇を受けられる制度です。

投資のための掛金を所得から控除できるため、支払う税金が少なくなる(会社員の方は年末調整の際に数万円戻ってきます)他、運用益に対する所得税なども非課税になるなど、税制優遇が大きいという特徴があります。

掛金控除や運用益非課税を考慮に入れると、トータルで考えた場合は積立NISA以上に恩恵が大きい制度となっています。

その半面、60歳になるまで資金を引き出すことができないという大きなデメリットもあります。

iDeCoは月々最低5,000円の掛金が必要である点や、一度運用を始めると原則的に途中で辞めることができないといった注意点はあるものの、総じてメリットの大きい制度です。

生活の余剰資金に余裕がある場合は、iDeCoについても検討してみるといいでしょう。

関連記事:独身女性はメリットだらけ?充実した生活を送るために準備すべきこと

企業型確定拠出年金を利用する

努めている企業によって異なりますが、福利厚生として「企業型確定拠出年金」という制度を取り入れている会社もあります。

企業型確定拠出年金とは、従業員を雇用する企業が主体となって実施される制度で、企業が掛金を拠出し、従業員が運用を行う年金制度です。

運用益が非課税になる点はiDeCoと共通しており、いずれも通常の年金に上乗せするようなイメージで活用することができます。

iDeCoと企業型確定拠出年金の違いは、iDeCoが掛金を個人で拠出するのに対し、企業型確定拠出年金は基本的に企業が掛金を負担する点です。

制度が導入されている企業でなければ利用することはできませんが、従業員にとってメリットが大きいため、確定拠出年金の制度がある会社なら利用を検討してみましょう。

付加年金制度で受給額を増やす

付加年金とは、通常の年金保険料に月々400円を加算して保険料を支払うことで将来受け取る年金額が上乗せされる制度です。

対象となるのは国民年金第1号保険者の方や、65歳以上の方を除く任意加入被保険者の方となっており、主に「自営業」や「フリーランス」の方を対象とした仕組みです。

会社員や公務員の方は、付加年金制度を利用できないのでご注意ください。

付加年金制度を利用できる方は、保険料を追加支払いして少しでも年金の受給額を増やしましょう。

付加年金として加算される1年あたりの年金額は、200円×付加保険料納付月数で計算されます。

仮に10年付加保険料を支払った場合、200円×120ヵ月で計算され、年金支給額として1年あたり24,000円が上乗せされることになります。

貯金・預金を増やす

ここまで紹介してきた老後資金対策に取り組むためには、まずはお金(余剰資金)が必要となります。

そのため、まずは支出を見直し預貯金を増やすことから始めましょう。

貯蓄が得意ではないという方は、収入から貯蓄するお金を先取りする「先取り貯金」預がおすすめです。

貯蓄のために口座を使い分ける、貯蓄用に新たに口座を開設してみるなど、身近なところから資産形成に挑戦してみましょう。

まとめ:年金問題を理解して将来に備えよう

年金問題を理解して将来に備えよう

老後2,000万円問題や日本の年金制度に関わる様々な問題点は、すぐに解決される性質のものではありません。

特に老後のお金に関する悩みは、世代を問わず大きな課題となりつつあります。

しかし、個人で始められる様々な対策方法があるのも事実です。

老後までの長い時間を上手く活用することができれば、公的年金とは別に必要な資産を準備できる可能性が高まります。

老後資金を準備するための期間は、長ければ長いほど有利です。

実際に投資や資産運用に取り組む際は、リスクを十分理解した上で検討しましょう。

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