年金はいくらもらえる?公務員やその妻など条件別で解説
「老後2,000万円問題」が話題になるなど、現在の日本では将来に向けた資産形成の重要性が高まってきています。
老後資金を準備するうえでは、受け取れる年金額を把握しておくことが大切です。
この記事では、現在の年金制度や条件ごとに受け取れるおおよその年金額をご紹介していきます。
年金の計算方法や受給開始時期についても解説しているので、今後の資産形成にお役立てください。
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この記事の目次
現在の年金制度について
現在の日本の年金制度は、3階建ての構造となっています。
- 20歳以上60歳未満のすべての方が加入する「国民年金」が1階部分
- 会社員・公務員が加入する「厚生年金」が2階部分
- 企業が運営する「企業年金」や個人で加入する「個人年金」などが3階部分
それぞれの内容を確認していきましょう。
国民年金(1階部分)
国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の方が加入する年金で、日本の年金制度の土台となる部分です。
20歳になったら40年間にわたって保険料を払い続け、受給開始年齢になると一定額の保険料を受け取ることができます。
令和3年度の1ヶ月あたりの国民年金保険料は16,610円となっています。
保険料は、自営業者や農業・漁業に従事している方はご自身で納付、会社員・公務員の方は厚生年金保険や共済組合が加入者に代わって保険料を拠出しているため、直接納付する必要はありません。
国民年金の支給額
令和3年4月分からの国民年金の支給額は月額65,075円で、そこから所得税や住民税、健康保険料などが差し引かれます。
引かれる住民税や健康保険料の額は自治体によって異なりますが、最終的にはおよそ5万円程度を受け取ることができます。
厚生年金(2階部分)
厚生年金の支給額は、収入や加入している被保険者期間によって異なります。
以下の表は、平成15年4月以降に40年間(480ヶ月間)加入していた場合の、年収ごとの厚生年金の支給額です。
年収(標準報酬月額) | 支給額(月額) |
年収300万円(標準報酬月額24万円) | 約66万円(月約5.5万円) |
年収400万円(標準報酬月額34万円) | 約94万円(月約7.8万円) |
年収500万円(標準報酬月額42万円) | 約114万円(月約9.5万円) |
年収600万円(標準報酬月額50万円) | 約138万円(月約11.5万円) |
年収700万円(標準報酬月額59万円) | 約163万円(月約13.6万円) |
年収800万円(標準報酬月額65万円) | 約180万円(月約15.0万円) |
※日本年金機構「老齢厚生年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)をもとに計算
厚生年金保険に加入している方は、上記の年金に加えて国民年金も受け取ることになります。
また、厚生年金の支給額や保険料の計算に用いる「標準報酬月額」には上限があり、65万円以上は支給額・保険料が同額です。
企業年金や個人年金(3階部分)
年金制度の3階部分に当たるのが、企業年金や個人年金です。
企業年金は、退職後の従業員の生活を保証するために用意されている制度であり、将来受け取る金額が設定されている「確定給付企業年金」や、運用の成果によって受け取る年金額が異なる「企業型確定拠出年金」があります。
また、個人年金保険によって老後の資金を自分で備えることもできます。
特に、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」は税制面で優遇を受けられるため、広く人気を集めています。
国民年金や厚生年金を支払った上で余裕がある場合は、3階部分の年金積立を行っていくのがおすすめです。
【2024】NISAとiDeCoはどっちから始める?併用できるかや違いを解説
年金はいくらもらえる?
老後までに自分で準備しておくべき資金がどれくらいかを知るためにも、ご自身が受け取れる年金額を把握しておくことが大事です。
さまざまなケースで受け取れる年金額を解説していきます。
年金支給額の早見表
- 年収300万円:国民年金65,075円 + 厚生年金57,002円 = 月額122,077円
- 年収400万円:国民年金65,075円 + 厚生年金74,541円 = 月額139,616円
- 年収500万円:国民年金65,075円 + 厚生年金89,888円 = 月額154,963円
- 年収600万円:国民年金65,075円 + 厚生年金109,620円 = 月額174,695円
- 年収700万円:国民年金65,075円 + 厚生年金129,351円 = 月額194,426円
- 年収800万円:国民年金65,075円 + 厚生年金142,506円 = 月額207,581円
- 年収900万円:国民年金65,075円 + 厚生年金142,506円 = 月額207,581円
- 年収1,000万円:国民年金65,075円 + 厚生年金142,506円 = 月額207,581円
※国民年金の加入期間や企業年金の有無などによって金額が異なってくるため、上記はあくまで例として参考にしてください。
公務員+専業主婦(主夫)の場合
以下のような収入状況で説明します。
- 夫:定年まで公務員(平均年収約629万円)
- 妻:23〜26歳まで会社員(平均の年収300万円)、その後専業主婦
上記の収入で老後を迎えた場合、もらえる年金は以下でシミュレーションできます。
- 夫(公務員)の年金:約187,000円
- 妻(専業主婦)の年金:約70,000円
- 合計:約257,000円
公務員の夫と、一時期仕事をしていた妻の夫婦の場合、公務員の平均年収をもとに計算すると月におよそ25万円の年金を受給することができます。
生命保険文化センターが行った「生活保障に関する調査」によると、ゆとりある老後の生活費は月額36.1万円であるというデータが出ています。
そのため、余裕を持った老後生活を送りたい場合は、年金以外の資産を月10万円ほど用意する必要があります。
出典:公益財団法人生命保険文化センター「生活保障に関する調査」
会社員+専業主婦(主夫)の場合
以下のような収入状況で説明します。
- 夫(会社員):定年まで会社員(平均年収550万円)
- 妻(専業主婦):23歳〜30歳まで会社員(平均年収350万円)、その後専業主婦
上記の収入で老後を迎えた場合、もらえる年金は以下でシミュレーションできます。
- 夫(会社員)の年金:約173,000円
- 妻(専業主婦)の年金:約80,000円
- 合計:約253,000円
先ほどの公務員+専業主婦のケースと比べても分かるように、専業主婦になるまでに働いていた期間が長いことで受給額が多くなっています。
働いていた期間を踏まえて、老後の資産準備を着実に進めていきましょう。
会社員(共働き)の場合
以下のような収入状況で説明します。
- 本人:60歳まで個人事業主(平均年収800万円)
上記の収入で老後を迎えた場合、もらえる年金は以下でシミュレーションできます。
- 個人事業主の年金:月額65,075円
共働き世帯の場合は、年金を比較的多く受け取れます。
共働きは世帯年収が高いケースも多いため、余裕があればiDeCoを活用しておくとさらに余裕のある老後を過ごすことができます。
個人事業主(単身)の場合
以下のような収入状況で説明します。
- 夫:定年まで会社員(平均の年収600万円)
- 妻:定年まで会社員(平均の年収400万円)
上記の収入で老後を迎えた場合、もらえる年金は以下でシミュレーションできます。
- 夫(会社員)の年金:約180,000円
- 妻(会社員)の年金:約143,000円
- 合計:約323,000円
個人事業主の方は、2階部分の厚生年金を受け取れません(支払いもありません)。
そのため、国民年金65,075円だけの受給となります。
この金額だけで暮らしていくことは難しいため、現役世代のうちから会社員以上に資産形成を考えておきたいところです。
例えば、付加保険料を支払うことで国民年金の受給額を増やすことができます。
また、個人事業主の場合はiDeCoの掛金上限が会社員に比べて高くなっているため、運用できればその分多くの受給額に期待できます。
さまざまな方法を有効に活用して、老後に向けた資産形成を進めていきましょう。
付加年金とは?サラリーマン(会社員)が加入できるかやメリットデメリット
年金受給の平均額目安
次に、年収ごとにもらえる年金額の合計をご紹介していきます。
以下の表は、平成15年以降に就職した会社員や公務員がもらえる国民年金と厚生年金を合計した、月額の年金を年収ごとにまとめたものです。
年収 | 受け取れる年金月額 |
年収300万円 | 国民年金:65,075円 厚生年金:59,937円 合計:125,012円 |
年収400万円 | 国民年金:65,075円 厚生年金:78,458円 合計:143,533円 |
年収500万円 | 国民年金:65,075円 厚生年金:94,516円 合計:159,591円 |
年収600万円 | 国民年金:65,075円 厚生年金:115,264円 合計:180,339円 |
年収700万円 | 国民年金:65,075円 厚生年金:136,012円 合計:201,087円 |
年収800万円 | 国民年金:65,075円 厚生年金:149,844円 合計:214,919円 |
年収900万円 | 国民年金:65,075円 厚生年金:149,844円 合計:214,919円 |
年収1,000万円 | 国民年金:65,075円 厚生年金:149,844円 合計:214,919円 |
厚生年金の受給額を計算する際に用いる「標準報酬額」には上限があり、一定水準を超えると受給できる年金額は同じになります。
年金がいくらもらえるか計算する方法
次に、年金がいくらもらえるかを計算する方法を解説していきます。
国民年金分の「老齢基礎年金」と、厚生年金分の「老齢基礎年金」のそれぞれをご紹介します。
計算は複雑で難しいですが、ぜひご自身でも計算してみてください。
老齢基礎年金(国民年金分)
令和3年分の老齢基礎年金の額を算出する方法は、以下の通りです。
- 老齢基礎年金の支給額 = 780,900円 × 保険料納付期間(月)/ 480ヶ月
出典:日本年金機構「老齢基礎年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)」
例えば、40年間保険料を納付して満額受け取れるケースでは、「780,900円 × 480 / 480」となり、年間780,900円、月額65,075円が支給されます。
もし年金の納付期間が30年間で、10年間未納の場合は「780,900円 × 360 / 480」となり、年間585,675円、月額48,806円を受け取ることになります。
保険料の納付期間が短ければ短いほど、受給できる年金額が少なくなることに注意しておきましょう。
免責期間がある場合
国民年金の保険料は、申請によって一定期間支払いが免除されるケースがあります。
払込免除期間の納付月数は、以下のようにカウントされます。
- 全額免除月:4/8ヶ月
- 4分の3免除月:5/8ヶ月
- 半額免除月:6/8ヶ月
- 4分の1免除月:7/8ヶ月
例えば、全額免除の月数が6ヶ月ある場合、国民年金を計算する保険料納付期間は3ヶ月分としてカウントされます。
国民年金の計算をする際は、免除期間の有り無しも確認しておきましょう。
老齢厚生年金(厚生年金分)
厚生年金は、以下の(1)と(2)を計算して、金額の高い方が受給額となります。(昭和21年4月2日以降に生まれた方の場合)
- 平均報酬月額 × 0.007125 × 平成15年3月までの加入月数 + 平均報酬額 × 0.005481 × 平成15年4月以降の加入月数
- (平均報酬月額 × 0.0075 × 平成15年3月までの加入月数 + 平均報酬額 × 0.005769 × 平成15年4月以降の加入月数)× 0.999
とは言え、上記の計算方法は複雑で分かりにくいでしょう。
これまでの加入実績に応じた年金額は、定期的に送付される「ねんきん定期便」などでチェックすることができますので、そちらを活用するのが確実です。
出典:日本年金機構「老齢厚生年金(平成16年4月2日以後に生まれた方)」
年金はいつから受け取れる?
次に、年金を受け取れる時期を解説していきます。
いつまでにどの程度の資産を用意しておくべきか考えるためにも、こちらを参考にしてみてください。
年金の受給開始年齢は原則65歳
国民年金・厚生年金の受給は、原則として65歳からスタートします。
そのため、60歳で定年退職した場合は、5年間分の収入が途絶えてしまいます。
退職金や貯蓄、運用してきた資金などを活用するといったことを早い段階から考えておきましょう。
2025年からはすべての企業の定年が65歳になる
現在は60歳で定年になることがほとんどですが、2025年からは定年制を採用しているすべての企業で、定年が65歳まで引き上げられることが決定しています。
そのため、これまで不安材料であった60歳から65歳までの収入については安心です。
また、60歳以上で老齢基礎年金を受けるのに必要な資格期間を満たし、厚生年金の被保険者期間が1年以上ある場合には、65歳になるまで特別支給の老齢厚生年金を受給できることも把握しておきましょう。
繰り上げ・繰り下げ受給も可能、1ヶ月単位で申請できる
老齢年金は、希望することで60歳から65歳になるまでの間に、繰り上げて受給することができます。
同じく、66歳以降70歳まで繰り下げて受給することも可能です。
そして2022年から繰上げ受給、繰下げ受給に関する法律が変わり、繰上げは最大5年間(現在と同じ)、繰下げは最大10年間可能になります。
仮に65歳から受給する年金を100とすると、年金を受け取る際の割合は以下のようになります。
- 60歳から受給(5年繰り上げ):76
- 70歳から受給(5年繰り下げ):142
- 75歳から受給(10年繰り下げ):184
繰り上げ受給について
老齢年金を繰り上げる場合は1ヶ月につき0.5%減額され、60歳0ヶ月まで繰り上げると30%の減額となります。
例えば、40年間保険料を納付して、満額で国民年金を受け取る場合は年間780,900円、月額65,075円です。
しかし、60歳0ヶ月まで繰り上げて受給すると、年間546,630円、月額45,552円となります。
早めに受給できるメリットがある一方で、月々の受給額が減ってしまうデメリットがあることも把握しておきましょう。
繰り下げ受給について
老齢年金を繰り下げて受給する場合は1ヶ月につき0.7%増額され、70歳0ヶ月まで繰り下げると42%まで増額されます。
例えば、40年間保険料を納付して満額を受け取れるケースで70歳0ヶ月まで繰り下げて受給すると、年間1,108,878円、月額92,406円となります。
また、2022年4月以降に70歳を迎える方からは、繰り下げ受給による受給の開始時期の選択肢が75歳まで拡大される予定です。
もし75歳0ヶ月まで繰り下げて受給すると84%増額となり、年間1,436,856円、月額119,738円となります。
まとめ:年金がいくらもらえるかは自分の受給条件で確認しよう
老後の資産形成をするためには、年金制度への理解を深めておくことが大切です。
特に2階部分までの国民年金と厚生年金については人によって受給額が異なるため、どれくらいもらえるかを把握しておくことをおすすめします。
また、貯蓄だけでなくiDeCo等の個人年金を活用するなどして、ご自身の老後資産を賢く運用していきましょう。
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記事監修者
マネカツ編集部
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