引越しして住所が変わった場合、住民票や免許証の変更だけでなく年金の住所変更手続きも必要です。

住所変更の手続きを忘れてしまうと「年金を正しく受給できない」「年金に関する書類が別の人に届いてしまう」ということになりかねません。

この記事では、年金の住所変更手続きの方法や忘れてしまった場合の対処法、住所変更に必要なものについて解説します。

会社員や学生など人によって手続きの方法が異なるため、自身の状況に合わせて住所変更を行いましょう。

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年金の住所変更手続き方法は種類によって異なる

年金の住所変更手続き方法は種類によって異なる

国民年金の仕組み

「国民年金」は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満の全ての人が加入する制度です。

年金の種類には、以下の3つが存在します。

年金の種類 内容
老齢年金 受給要件を満たした65歳以上の人が受け取れる、一般的に「老後の年金」として理解されている年金。
障害年金 病気やケガが原因で生活や仕事が制限される場合に、現役世代も含めて受け取れる年金
遺族年金 自分が亡くなったときに、受給要件を満たした遺族が受け取れる年金

私たちは国民年金保険料を毎月支払いますが、年金は自分が支払った保険料を将来受け取る「積立方式」ではなく、その時必要な年金支給にあてる「賦課方式」が採用されています。

現役世代から年金受給世代への仕送りに近いイメージです。

私たちが年金受給世代になったときは、そのときの現役世代が支払う保険料を年金として受給します。

国民年金の加入パターンは3つある

国民年金の被保険者は、以下の3種類に区別されています。

主に職業によって変わってくるもので、それぞれ保険料の納付方法や年金の住所変更手続きが異なります。

自身がどの区分の対象か確認してから住所変更の手続きを行いましょう。

国民年金の区分 対象者
第1号被保険者 自営業者・学生・無職・農業等の従事者
第2号被保険者 会社員・公務員
第3号被保険者 第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の年収130万円未満の配偶者

マイナンバーと基礎年金番号が結びついていれば届出不要

国民年金の区分を問わず、年金の住居変更が不要なケースがあります。

それは、マイナンバーと基礎年金番号が結びついている場合です。

結びつきの状況は「ねんきんネット」や「近くの年金事務所」で確認できます。

マイナンバーと基礎年金番号が結びついている方であれば、住所だけではなく氏名の変更届の提出も原則省略できます。

また、年金を受け取っている方にとっては、毎年提出が必要な「現況届」の提出が不要になるといった点もメリットです。

何かと手続きを省略できるため、マイナンバーカードを持っている方は基礎年金番号との紐付けをおすすめします。

参考:日本年金機構「年金に加入している方が引越したときの手続き」
参考:日本年金機構「【事業主の皆さまへ】基礎年金番号とマイナンバーが紐づいていない厚生年金保険被保険者について、氏名・住所等の確認にご協力ください」(「マイナンバー未収録者一覧」Q&A)

年金をすでに受給しているいる場合も届出が必要

年金をすでに受給している方も、住所変更の際は届出が必要です。

提出先はお近くの年金事務所や、街の年金相談センターになります。

複数の年金を受給している場合でも、1つの届出で全ての年金の住所変更手続きが可能です。

提出期限は「住所を変更してから10日以内」と短いためご注意ください。

年金を受け取る金融機関を変更したい場合は、次の年金支給日の1ヶ月以上前までに手続きが必要です。

なお、年金受給者もマイナンバーと基礎年金番号が紐付いている場合は、住所変更の手続きが原則省略されます。

出典:日本年金機構「年金を受けている方が住所や年金の受取先金融機関を変えるとき」

自営業者・学生が年金の住所変更する方法

自営業者・学生が年金の住所変更する方法

自営業者や学生など、国民年金の「第1号被保険者」の住所変更手続きについて解説します。

一般的に会社員、公務員以外の働き方をしている方、学生や無職の場合は、第1号被保険者となります。

市区役所または町村役場に変更届を提出する

別の市や市内の別の区に引っ越す場合の手続きです。

自営業者・学生など、第1号被保険者の方が年金の住所変更をする方法は、引越し先の市区役所または町村役場へ変更届を提出する必要があります。

引越しの際には市区町村へ「転入届」の提出が必要なため、年金の住所変更と転入届の提出を同時に行うのがおすすめです。

住所変更の手続きは、新しい住所に住み始めた日から原則14日以内に届出を行う必要があります。

引っ越し前後で市区町村が変わらない場合

引越し前後で住所の市区町村が変わらない場合も、年金の住所変更手続きが必要です。

窓口は市区役所、または町村役場になります。

提出期限は、新しい住所に住み始めた日から原則14日以内です。

市区町村が変わらない場合でも役所や役場に「転居届」の提出が必要であるため、同時に手続きを済ませましょう。

代理人対応も可能

第1号被保険者の住所変更手続きは、代理人による対応も可能です。

期限内に自身で手続きを行えない場合は活用してください。

代理人による手続きの必要書類は「代理人の本人確認書類」と「委任状」です。

委任状は記載すべき項目が完備されているものであれば、様式を問わず効力を認められます。

ただし、委任状は代理人ではなく本人(依頼者)が作成する必要があります。

パソコンでの作成も可能ですが、本人の住所・氏名は自筆で署名してください。

委任状は自治体のホームページで入手可能な場合もあります。

また、代理人による手続きの必要書類は自治体によって異なるケースもあるため、役所・役場に行く前にホームページの確認や担当窓口へ電話で確認することをおすすめします。

参考:相模原市「戸籍・住民票・印鑑登録 よくある質問」
参考:相模原市「委任状」

会社員・公務員が年金の住所変更する方法

会社員・公務員が年金の住所変更する方法

会社員や公務員が該当する「第2号被保険者」が、年金の住所変更をする方法について解説します。

同時に、第2号被保険者の配偶者である「第3号被保険者」の年金の住所変更方法も紹介します。

会社の総務課に引っ越した旨を報告する

第2号被保険者の方は、引越しをした際に住所が変わったことを勤務先に報告します。

自身で直接手続きをするのではなく、勤務先が従業員の年金の住所変更の手続きを行います。

「被保険者住所変更届」を勤務先に提出すると、従業員が行う手続きは完了です。

年金の手続きだけではなく健康保険の手続きも同時に行うため、引越しに伴う住所変更の報告は忘れずに行いましょう。

会社員・公務員に扶養されている方

第3号被保険者の方は、配偶者の勤務先で年金の住所変更手続きを行います。

配偶者が自身の住所変更手続きを行う際に、同時に第3号被保険者の住所変更手続きを行うとスムーズです。

参考:日本年金機構「た行 第3号被保険者」

年金の住所変更を忘れた場合

年金の住所変更を忘れた場合

年金受給まで時間がかかる可能性がある

年金受給を開始する際は、登録されている住所に年金請求書や請求手続きの案内が届きます。

そのため、年金の住所変更を忘れた場合は、引越し前の住所に書類が郵送されてしまうことになります。

年金は、受給要件を満たすと自動的に支給されるものではありません。

年金請求書を提出して、手続きを進める必要があります。

登録されている住所が異なり、本来届くべきタイミングで年金受給に関する必要書類が自宅に届かない場合は、受給開始まで時間がかかる可能性があります。

その際はお近くの年金事務所等に問い合わせてください。

参考:日本年金機構「老齢年金の請求手続き」

「ねんきん定期便」が届かなくなる

ねんきん定期便は保険料の納付状況や将来受け取れる年金額など、自身の年金記録を記載した書類です。

本来であれば、毎年誕生月に送付されます。

会社員や公務員など厚生年金に加入している方は、所得に応じた保険料を納付しているため、将来の年金給付額を正確に把握することは困難です。

自営業やフリーランスの方でも、未納期間や免除を受けている期間があると将来の年金給付額の計算は複雑になります。

毎年ねんきん定期便で予想される年金支給額を把握できると、老後資金の計画に役立ちます。

出典:日本年金機構「大切なお知らせ、「ねんきん定期便」をお届けしています」

住所変更は後からでも可能

マイナンバー制度が施行されたことにより、年金の住所変更が必要な方と省略できる方がいる状況です。

まだマイナンバーと基礎年金番号の紐付けができてなく、住所変更手続きを省略できない方の中には、年金の住所変更が未了の方もいるでしょう。

住所変更は後からでも可能ですので、手続きがまだということに気がついたら速やかに年金事務所や年金相談センター、年金ダイヤルに問合せして対応しましょう。

年金の住所変更に必要なもの

年金の住所変更に必要なもの

本人申請

年金の住所変更に必要なものは、以下のとおりです。

  • 基礎年金番号がわかるもの(年金手帳・基礎年金番号通知書)
  • 印鑑
  • 変更届

2022年4月以降、年金手帳の新規発行・再交付が廃止されました。

それに伴い、2022年4月以降に国民年金に加入する方、年金手帳の再発行を希望する方には 「基礎年金番号通知書」が交付されます。

現在、年金手帳を使用している方については、今後も年金手帳を用いて手続きが行えるため、引き続き大切に保管してください。

代理人申請

代理人に手続きをお願いする場合は、上記に加えて以下の書類を準備してください。

  • 委任状(申請者が自署押印したもの)
  • 代理人の本人確認書類

参考:日本年金機構「年金相談を委任するとき」

年金の住所変更をする際のよくある質問

年金の住所変更をする際のよくある質問

住所変更はネットからできる?

年金の住所変更は、ネットからはできません。

日本年金機構には「ねんきんネット」と呼ばれるインターネットサービスがありますが、住所変更手続きは行えません。

ねんきんネットでできることは、ご自身の年金の情報の確認がメインとなります。

例えば、以下のような情報を確認できます。

  • 将来の年金見込額の確認
  • 電子版「ねんきん定期便」の確認
  • 年金の支払いに関する通知書の確認
  • 各種届書の作成・印刷

参考:日本年金機構「ユーザID取得後に住所を変更しました。「ねんきんネット」で住所変更の手続きができますか。」
参考:日本年金機構「「ねんきんネット」とは?」

海外へ引っ越す場合の手続きは?

現在、日本に住む20歳以上60歳未満の方の国民年金への加入は義務です。

そのため、海外に移住することになった場合、国民年金の強制加入被保険者ではなくなります。

日本国籍を持つ方が海外に移住する場合、国民年金への任意加入が可能です。

海外に住みながら国民年金の保険料を払い続けることで、受給資格を満たすと「老齢年金」・「障害年金」・「遺族年金」を受給できます。

海外に住んでいた期間も、年金の加入期間の対象です。

加入期間の長さによって将来受け取れる年金が変動するため、年金を多く受け取りたいは任意加入をおすすめします。

手続きはお住まいの市区町村の窓口で行います。

すでに海外に移住している方は、日本で最後に住んでいた市区町村の窓口か管轄の年金事務所に相談してください。

任意加入を希望しない方は、海外移住の際に年金の手続きは必要ありません。

参考:日本年金機構「国民年金の任意加入の手続き(日本の年金制度への継続加入)」
参考:江戸川区ホームページ「海外で生活することになりました。国民年金はどうなりますか。」

年金について相談したい場合はどこに行けばいい?

年金について相談したい場合は、お近くの年金事務所、または街の年金相談センター窓口に足を運んでください。

その際には、本人確認書類と基礎年金番号がわかる書類が必要になります。

本人ではなく代理人が相談に行く場合は、委任状も必要です。

代理人による相談も含めて、年金事務所や年金相談センターに足を運ぶことが難しい場合は、電話での相談も可能です。

参考:日本年金機構「年金相談をするときは、どこに行けばいいですか。そのときに必要なものはありますか。」
参考:日本年金機構「窓口での年金相談のご案内」

まとめ:引越しの際は年金の住所変更手続きを忘れずに

引越しの際は年金の住所変更手続きを忘れずに

年金の住所変更手続きを忘れると年金の受給開始までに時間がかかったり、日本年金機構からの書類が引越し前の住所に送付されるという不都合が起こり得ます。

住所変更の手続きを忘れないようにするためには、マイナンバーと基礎年金番号の紐付けがおすすめです。

手続きの手間が省けると同時に、住所変更の手続きを忘れる懸念がなくなります。

まだマイナンバーと基礎年金番号の紐付けを行っていない方は、住所変更の手続きを忘れずに行いましょう。

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