個人投資家にも株主総会が大切な理由 『株主総会に参加するメリットと【7483】ドウシシャ株主総会参加レポート』【投資コラム】

株式投資をしていると、株主総会への出席を求める通知が送られてきます。多くの投資家は同封されている所定の用紙に記入し、返送しますが、個人投資家の中には、ほとんど読むことも無く処分している方がいるかもしれません。
しかし長期間の株式投資を目指す方は、実際の株主総会に足を運ばれてみることをおすすめします。
なぜなら株主総会は、投資先の会社を知ることができる貴重な機会だからです。
今回の記事では企業における株主総会の重要性や仕組について解説した上で、個人投資家が株主総会に参加するメリットを解説します。
そして先日筆者が参加した「第44回【7483】ドウシシャ定時株主総会」のレポートにて、株主総会の実際について解説します。
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目次
- 1 株主総会とは企業が継続するために必要な事項を決定する機関
- 1.1 株主は企業の所有者としての権利を持っている
- 1.2 株主から議案を提示することができる
- 1.3 株主総会は企業の統治において最上位にある
- 1.4 株主総会で決めること「株主総会で経営陣を評価する」
- 1.5 経営に関する大きな変更
- 1.6 役員の人事
- 1.7 株主の利害に関わる項目
- 1.8 株主総会には2つの形式がある
- 1.9 定時株主総会は通常運営時の継続を株主が承認する機会
- 1.10 臨時株主総会は急遽変更が必要な議題に株主から承認を得る機会
- 1.11 株主総会での決議は個人投資家も重視される場合がある
- 1.12 資本多数決は資本主義における平等なルール
- 1.13 株主総会の決議内容は重要度によって分かれている
- 1.14 普通決議と特別決議は資本多数決で可決できる
- 1.15 特殊決議は資本多数決だけでは可決できない
- 2 個人投資家が株主総会に参加するメリット(投資先をより深く知る機会になる)
- 3 株主総会の参加方法と実際の流れ【7483】ドウシシャ株主総会参加レポート
- 4 株主総会への出席は株主が企業に対して担う役割
株主総会とは企業が継続するために必要な事項を決定する機関
株主総会は株主の権利に基づき企業が主要な意思決定をする会議として、定期的に開催することが義務づけられています。
では、株主の権利には何があるのでしょうか。
株主は企業の所有者としての権利を持っている
株主の権利を解説するには、まず株主とは何かについておさらいする必要があります。
株主とは、企業がビジネスを始めるために必要なお金を出資する立場の人や組織を指します。
そして株主は企業の所有者として、以下の2つの権利を持っています。
※株式市場から株式を買い取った投資家は企業に直接出資はしていません。株主の権利を買い取っているという形になります。
株主の権利①「自益権」
株主は借金のように、出資したお金の返済を求めることはできません。しかし企業が利益を残したときは、利益の一部を分配するように請求できる権利があるのです。
この権利は、通常「配当金」という形で投資家に配分されています。
また会社が解散することになった場合、株主は会社に残った資産を保有割合に応じて分配してもらう権利も持っています。
株主の権利②「共益権」
株主は企業の所有者として、経営に対して議論や賛否に関わることができます。このような権利を株主の共益権と呼ぶのです。
個人投資家に身近な共益権の1つに「議決権」があります。議決権の身近な例は、株主総会開催前に送られる「議決権行使書」というものがあります。
議決権行使書は議決権を持つ、すべての投資家に送付されます。議決権行使書では、株主総会での承認が必要な議案について提示がなされるのです。
そして議決権を持つ投資家はそれらの議案に対して、賛否の意思を表明することができます。
株主から議案を提示することができる
株主の共益権では役員(経営陣)からの議案に答えるだけでなく、株主から経営に関する提案をすることができます。
さらに一定の株主と総意をとることができれば、臨時株主総会の開催や役員の差し替えを請求することができるのです。
株主総会は企業の統治において最上位にある
このように株主は企業の保有者として、経営状態を見守る役割があります。そして株主総会は、株主が経営状態を確認し承認する機会として設けられているのです。
また株主総会は企業の保有者による決議であるため、企業統治の観点ではリーダーに値する位置づけになっています。
※こちらはトヨタ自動車のコーポレートガバナンス組織図です。株主総会は企業の運営では最上位に位置しています。
したがって株主は企業に対して大きな権限と責任を持っているのです。
【引用元】トヨタ自動車公式ホームページ
株主総会で決めること「株主総会で経営陣を評価する」
株主総会では株主が持つ権利に基づいて、以下のような重要事項を決定します。
これら議案はいずれも「経営陣が自己の利益に偏ったものになっていないか」「企業への利益が期待できるものか」を株主が確認する意義があるのです。
経営に関する大きな変更
経営の方向性が大きく変わる項目については、株主による承認が必要になります。定款は会社の憲法であり、定款の変更は憲法改正に値します。
また事業の譲渡や合併を行う場合、企業のビジネスモデルが大きく変わる可能性があります。
参照URL:東京会社設立・企業サポート「定款とは何ですか」
役員の人事
通常従業員の人事は、上司や役員が行うものです。では、役員の人事は誰が決めるのでしょうか。
株式会社において役員を決めるのは、株主の役割です。株式会社では株主総会を開催し、役員を選任します。
参照URL:企業法務ナビ「株主総会における役員の選任」
株主の利害に関わる項目
その他、先ほど解説した配当金など、株主の権利に関する項目は株主総会で決める必要があります。
また役員の報酬も株主がチェックをすることで、勝手に高額な報酬を得られないようにしているのです。
株主総会には2つの形式がある
株主総会は開催する時期や頻度によって、2つに分けることができます。
定時株主総会は通常運営時の継続を株主が承認する機会
定時株主総会は、企業が定めた事業年度(通常は1年間)が終了したあとに開催するよう義務づけられています。
定時株主総会では、該当する事業期間の経営報告と配当金の金額について議論がなされます。
また役員の任期満了がある場合、続投や新任の役員について議論を行います。
※定時株主総会が6月に多くなる理由は3月を事業年度末としている企業が多く、3ヶ月以内の開催ルールに合わせるためです。
臨時株主総会は急遽変更が必要な議題に株主から承認を得る機会
一方で臨時株主総会は、株主による承認が必要な議題が出た時点で随時開催されます。
臨時株主総会が開かれる例として、以下のものが挙げられます。
役員の補充
上場企業の役員は、最低3名必要だと決められています。そのため役員の死亡などで欠員が出てしまった場合、すぐに人員を補充しなければならないのです。
そして役員の人事は株主の承認を得る必要があるため、臨時株主総会を開催します。
新株発行による資金調達
企業の資金調達の手段として株式を新たに発行し、出資者に買い取ってもらう方法があります。
この場合、既存の株主にとって企業の利益や資産に対する取り分が減ってしまうなどの不利益が生じます。
このような株主の利益に関わる事項は、株主総会での承認が必要になります。
株主総会での決議は個人投資家も重視される場合がある
株主総会での議題が決議されるとき、株主による賛否の投票が行われます。また議題の内容によって可決される条件が異なります。
資本多数決は資本主義における平等なルール
株主総会では「資本多数決」と呼ばれるルールで得票数を計算します。資本多数決とは、株式の保有数に応じて投票数が変わるというものです。
つまり、より多くの株式を保有している株主が、決議に対して強い立場をとることができます。
これは「株主平等」と呼ばれる考え方で、企業に多くの資金を提供した株主に決定権を与えるのです。
株主総会の決議内容は重要度によって分かれている
株主総会では決議する内容によって大きく分けると普通決議、特別決議、そして特殊決議の3種類になります。
そして決議内容に対する株主への影響が大きいほど、決議の条件が厳しくなっているのです。
普通決議と特別決議は資本多数決で可決できる
剰余金の配当や役員の選任など、定時株主総会で行われる議案の多くは普通決議になります。
また特別決議は新株発行や定款の変更、そして比較的大規模な自社株式の売買・譲渡にて行われます。
いずれの決議も、資本多数決によって可決することができます。しかし特別決議では、議決権の3分の2以上の株主から賛成を得る必要があります。
特殊決議は資本多数決だけでは可決できない
特殊決議とは公開会社から非公開会社にするなど、株式の譲渡に制限が発生するときや、すでに譲渡制限のある会社が株主ごとの権利に違い設定する場合に必要となります。
特殊決議でも資本多数決の原則が用いられますが、その前に株主数で一定数以上の出席が求められます。
※公開会社とは、自社の株式を自由に受け渡しすることができる会社のことです。そのため株式を上場している企業は、全て公開会社になります。
これは特殊決議が株主の権利の利害に大きく関わるため、株式の保有数が少ない株主でも意思表示がしやすいようにしているのです。
個人投資家が株主総会に参加するメリット(投資先をより深く知る機会になる)
このように株主総会は長期保有を目指す個人投資家にとって、自己の権利を主張する大切な機会であることが分かりました。
その他にも個人投資家が株主総会に参加するメリットとして、以下のような点が挙げられます。
経営者の生の声を聞くことができる
ほとんどの個人投資家は、投資先企業の経営者から話を聞くことができません。しかし株主総会では、経営者が議長となって質疑応答にも答えていきます。
また株主総会後に懇親会を開く企業もあるので、より近い距離で経営者を見ることができます。
書面では分かりにくい経営の状況を質問することができる
株主総会では、質疑応答の時間が設けられています。定時株主総会であれば、議案内容以外でも経営に関する質問ができる可能性があります。
したがって個人投資家であっても知りたいこと、理解できないことを質問することで投資先企業との信頼関係を深めることができます。
本社や工場での開催なら会社見学にもなる
投資先によっては株主総会の会場を、本社や工場の会議室にすることがあります。このような場合、投資先企業を見学する良い機会になるのです。
企業によっては、株主総会後に見学会を開催することがあります。
お土産も外せないメリット
株主総会後のお土産は、個人投資家の間でも人気があります。一方でお土産はお金の無駄遣いだとか、出席した株主だけもらえるのは不平等だという反論も聞かれます。
しかし個人的には株主とはいえ、時間を割いて会場まで足を運んでいるのですから、お礼の気持ちとしてお土産を渡すことは良いことだと考えています。
株主総会の参加方法と実際の流れ【7483】ドウシシャ株主総会参加レポート
※ドウシシャの本社ビルの写真です。建物の内部も清潔感のある雰囲気を感じました。
では、実際の株主総会はどのように行われているのでしょうか。筆者は、先日開催された【7483】ドウシシャの定時株主総会に参加してきました。
新型コロナの影響でいつもとは違った雰囲気の株主総会でしたが、議事進行は通常時と変わりなく進みました。
ドウシシャはニッチ市場を開拓するメーカー兼商社
はじめに、ドウシシャの企業概要を説明します。ドウシシャは大阪市中央区に本社を置くメーカー機能を有する商社であり、大手企業が参入しにくい市場で、様々な商品を開発/仕入販売することで業績を伸ばしてきました。
今後も同じようなニッチ市場を攻める戦略で、100億円規模の事業を30部門作ることを目標にしています。
大阪のビジネス街にある本社ビルで株主総会が開催された
株主総会当日は議決権行使書に記入を確かめた上で、会場へ向かいました。服装もスーツなど着る必要は無く、普段着です。
会場案内図にしたがって道を進むと、ドウシシャの社章が掲げられた大きなビルが見えてきました。
※議決権行使書を紛失しても本人確認ができる書類があれば、入場が認められることもあるようです。
議決権行使書を受付で提出する
ビルの入り口には、株主総会開催の看板が立てかけられていました。そのまま中に入るとたくさんの社員が立っており、出迎えてくれました。
今年の株主総会の多くは、各社新型コロナの感染予防に取り組んでいます。ドウシシャの株主総会でも入口を入るとすぐに、体温のチェックとアルコールによる手指の消毒が行われました。
その後、社員の案内で株主総会の会場がある11階まで進みました。
入場票を持って会場に入る
受付で議決権行使書を提出すると、「入場票」が渡されます。これは株主総会の入場券のようなもので、会場で発言するときは入場票番号と名前を先に声明しなければなりません。
入場票を受け取った後は会場内に進み、空いている席に座ります。株主総会の会場内は、前に役員一同とサポートスタッフが座る席が設けられ、そしてそれに対面するように株主席が並べられています。
今年のドウシシャ株主総会は、会場内でも感染予防対策がとられていました。まず座席の間隔が大きく開けられていました。
また一般的に株主総会での発言は発言者の座席まで社員がマイクを持って行くのですが、今回の株主総会では発言する株主が所定のマイク位置まで歩いて行くようになっていました。
※通常の株主総会では、待機時間中にフリードリンクのサービスを行っている企業もあります。
株主総会に出席で得たサプライズ「ドウシシャの社歌」
株主総会開催が近づいてくると会場内のBGMが止まり、聞いたことの無いメロディが流れてきました。
そのまま私は音楽に耳を傾けてみると、ドウシシャの「社歌」が流れており、同社の経営ビジョンや取り組みが歌詞に反映されていました。
後から調べてみたのですが、ドウシシャでは毎朝社歌を歌うことになっているようです。
定刻になると役員が入場し株主総会がスタート
※本社入り口にあった株主総会の看板です。
株主総会の開催予定時刻になると役員一同が入場し、座席に着席します。その後、議長である社長が壇上に立ち、株主総会開会の宣言がなされます。
また開会宣言に合わせて議長の指示に合わせて、行動/発言するなど進行でのルールが説明されました。
モニター画面を使った分かりやすい解説
開会後、株主総会では前期の業績についての報告がなされます。おおむね招集通知書と同じ内容ですが、ドウシシャの株主総会ではモニター画面を用いて、自社のメーカー部門と卸売部門に分けた業績と今後の事業展開について解説が行われました。
また、新型コロナによる影響についても解説がありました。それによるとドウシシャは様々な事業や商品を展開しているため、需要が伸びた部門が業績を支えているとの解説をしていました。
今後の事業展開については新型コロナの影響が不透明であることを踏まえつつも、事業の拡大を継続して進めるとの話がありました。
出席株主との質疑応答で海外展開の状況について質問
株主総会では報告と解説が終わると、議案の決議に向けて決議事項の確認と出席している株主からの質問や意見を聞く時間が設けられます。
ドウシシャの株主総会でも経営戦略に対する評価や、事業運営について詳細を確認する発言がありました。
筆者も招集通知書に書かれていた「海外展開」について質問しました。なぜなら公開されている資料から、海外展開の現状や数値目標を知ることができなかったからです。
私の質問に対して社長からは事業としてすでに始めていることと、中期的な数値目標について回答を得ることができました。
自社の特徴を改めて聞くことができた
そして剰余金の配当や役員の選任など、議案に対する決議が行われました。決議では大きな反対も無く、社長による決議の確認に合わせて拍手をするという順調な展開で終わりました。時間は40分程度でした。
なお株主総会の中で、ドウシシャの企業として継続するための方針について解説がありました。解説では以下のようなポイントを挙げていました。
・借金を作らない財務方針
・突然経済が止まってもすぐには破綻しないだけのキャッシュを確保しておく
この方針に基づいて売上げが止まっても、2年間は事業を継続できるだけのキャッシュを確保しているとの説明がありました。
株式総会に出席することで継続して投資することを確認
※今回の株主総会で配布された入場票です。株主総会終了後は返却します。
今回筆者がドウシシャの株主総会に出席し質問した理由は、株主として投資を継続すべきかを判断する材料になると考えたからです。
そして改めてドウシシャの経営方針や現状を聞くことで、投資を継続することを決めました。
自粛ムードで、お土産も無い株主総会でしたが、筆者にとっては有意義な機会を得られたと考えています。
株主総会への出席は株主が企業に対して担う役割
このように株主総会は企業の継続にとって、重要な位置づけになっていることが分かりました。
もちろん、個人投資家が持つ議決権はわずかなものです。しかし企業と株主の利益のために、様々な提案や見解を述べることは大切です。
そして株主総会は個人投資家であっても、意思表示ができる貴重な機会として開催を義務づけられています。
したがって個人投資家であっても株主総会に議決権を行使するのはもちろん、時間があれば会場に出向いて株主としての任務を果たしてみられてはいかがでしょうか?
※投資はあくまでも自己責任となります。利益を保証するものではありませんので、ご注意ください。
※株主総会における解説は概要を示したものです。企業やケースによってルールが異なっている場合があります。
記事 湯川 国俊
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