株式投資をして株主になると、年に一度「株主総会」の案内状が送られてきます。

この株主総会がどのように開催されるのか、何を決めるのか、どのような流れで進行されるのかについてはあまり知られていません。

株主総会は、会社における様々な重要事項を決める場で、企業内容を知ることができる大事な会議です。

この記事では、日本における株主総会の目的や流れについて、なぜ日本では6月に株主総会が開かれることが多いのかについてわかりやすく解説します。

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株主総会とは?開催の目的や株主の権利

株主総会とは?開催の目的や株主の権利

株式会社は、株式を発行して投資家から資金を調達し、その資金で経営を行います。

資本と経営の分離が行われ、会社経営は取締役に委ね、利益が出た場合に投資家は余剰金の分配を得られます。

株式総会開催の目的や株主の権利について解説していきます。

株主総会の目的

株主総会は、株式会社の最高意思決定機関です。経営を左右するような重要事項について決議します。

重要事項とは、「会社の根幹にかかわる事項」「取締役の選解任などの役員人事」「株主の利害にかかわる事項」などのことです。

3つの重要事項の主な中身は、以下のとおりです。

会社の根幹にかかわる事項の決議

  • 会社の定款変更
  • 解散
  • 事業の譲渡
  • 合併
  • 減資
  • 決算書類(貸借対照表・損益計算書等)の承認

会社の役員人事の決議

  • 取締役の選任・解任
  • 監査役の選任・解任
  • 会計監査人の選任・解任

株主の利害にかかわる事項の決議

  • 剰余金の配当
  • 役員報酬
  • 自己株式の取得

株主の権利とは

会社に出資(投資)した人を「株主」といいます。株主は出資した株数に応じて権利を持つことができます。
これを「株主権」といい、大きく「自益権」と「共益権」の二つに分けられます。

自益権

自益権は、会社から経済的な利益を受けることができる権利です。

株主としての権利の行使が自分の利益だけに影響を与えるもので、具体的には「利益配当請求権」と「残余財産分配請求権」があります。

利益配当請求権  会社の利益を配当として受け取る権利
残余財産分配請求権  会社が解散する際に、会社の資産を分配して受け取る権利

共益権

共益権は、株主として会社の意思決定に関わることのできる権利のことです。権利の行使が、個人だけでなく株主全体の利益になる権利で、具体的には「単独株主権」と「少数株主権」があります。

単独株主権  一単元株でも行使できる権利で、株主総会で議決できる権利や株主代表訴訟提起権などがある
少数株主権  一定の株式数以上の保有者に与えられた権利で株主総会招集権・解散請求権・取締役解任請求権などがある

取締役会との違い

株式会社には、会社を所有する株主が出席する「株主総会」と、会社を経営する取締役からなる「取締役会」があります。

株主総会は、会社の最高意思決定機関ですが、すべての課題について大人数の株主総会で決議を行うのは不可能です。そのため、日常的な業務執行については取締役会で決定します。取締役会には取締役と監査役、及び認められた人だけが出席でき、基本的に役員以外の人は出席できません。

取締役会で決議される必要のある事項は、下記のように会社法362条4項により定められています。

  • 重要な財産の処分及び譲り受け
  • 多額の借財(借金・融資)
  • 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
  • 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
  • 募集社債の金額、社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項
  • 法務省令で定める体制の整備
  • 定款の定めに基づく役員等の会社に対する責任の免除

出典:e-Gov法令検索「会社法」

株主総会の種類

株主総会の種類

株主総会には、年一回必ず開催しなければならない「定時株主総会」と、必要な時に開催する「臨時株主総会」の二種類があります。

定時株主総会

定時株主総会は、毎事業年度の終了後、一定の時期に年に1回必ず開催する必要があります。

一般的には決算終了後の3ヶ月以内に開催されることが多いです。

3月に決算を行う会社が多いため、6月に株式総会を開催する会社が多くなっています。

定時総会での決議事項には、事業年度の決算報告と承認・事業報告・役員の選任などがあります。

臨時株主総会

臨時株主総会は、必要な時にいつでも開催することができます。

臨時株主総会開催の目的は次のようなものがあります。

  • 事業目的の追加や変更による定款変更
  • 取締役の欠員による補充
  • 非公開会社で第三者割当増資や新株予約権の発行

臨時株主総会と定時株主総会の相違点は、招集の時期と付議事項(決算承認、代表取締役の選任、報告事項、重要な組織の設置・変更等の議案)に関する点のみですが、決算書類の承認や剰余金の配当などについても議題にできます。

株主総会の決議方法

株主総会の決議方法

採決方法について

決議とは、会議事柄や内容を決定することをいいます。そして、決議のためには採決(議長が発言者の意見を取り上げ、会議構成員の賛否を集計し議事の可否を決定すること)が必要です。

株主総会では、採決の方法に決まりはありません。議長が拍手・挙手・投票などの方法を適宜決められます。

その際、議案の成立に必要とされる議決権数が確保されていれば、必ずしも賛否の数を確定する必要はありません。

株主総会は資本多数決で決議する

株主総会の決議は、資本多数決で決めます。通常は1株に対して1つの議決権が与えられるので、株式を多く保有している株主は多くの議決権を持つことになります。

単元株をとっている会社では、1単元をいくつかの株式で設定している場合があります。

たとえば1単元を100株で設定している場合、100株所有していなければ議決権がありません。

議決権は代理行使できる

株主総会は、本人が出席して議決権を行使するのが原則です。しかし遠方のため会場に行けない方・入院中の方・業務多忙の方など、さまざまな理由で出席できないことがあります。

そのような場合に、代理人が出席して議決権を行使することは、会社法により認められています。しかし、代理人は株主のみと指定している会社もあるので、代理人を立てる際は会社の定款を確認しましょう。

他にも書面投票や電子投票で議決権を行使できる制度を導入している会社もあるので、株主総会を欠席する場合はそれらを活用できないかも確認しましょう。

決議方法は3種類ある

株主総会の決議方法には、「普通決議」「特別決議」「特殊決議」の3種類があります。

株主総会が成立するには、議決するのに必要な最低限度の出席者数(定足数)と議決に必要な最低限度の株式数(評決数)の両方を満たさなければなりません。決議事項により3つの決議方法のどれにするかは決まっていて、重要事項については定足数と評決数が厳しくなっています。

3つの決議方法をまとめると下表のようになります。

  定足数 表決数 決議事項
普通決議 議決権を持つ
株主の過半数が
出席
出席株主の過半数が賛成 ・役員の選解任
・決算書の承認
・余剰金の配当
・役員報酬
特別決議 出席株主の2/3以上が賛成 ・定款の変更
・事業譲渡
・解散、会社分割、合併
・監査役の解任
・減資
・組織再編
特殊決議 なし 議決権を持つ株主の半数以上 
かつ
当該株主の議決権2/3以上が賛成
全株式を譲渡制限株式
にする際の定款変更
総株主の半数以上
かつ
総株主の議決権3/4以上が賛成
株式譲渡制限会社が
株主ごとに取扱いを決める
際の定款変更

書面決議とは

「書面決議」とは、株主総会を一堂に集まって開催することを省略し、書面で株主総会決議事項について株主の賛否を問う方法です。同意を得ることで、株主総会の決議とみなすことができます。

コロナウイルスの感染対策や、株主が離れたところにいて集合することが難しい場合に有効です。

通常の株主総会と効力は同じで、決議できる内容や範囲にも制限はなく、全ての決議(普通決議、特別決議、特殊決議)が可能です。決議が可能となる用件は以下の二つです。

  • 取締役または株主が、議題の具体的な提案をすること
  • その提案について、株主全員(但し、議決権を行使できない者は含まない)が書面または電磁的記録による決議を同意すること

なお会社法により、株主総会議事録及び株主からの同意書を会社本店で10年間備え置く必要があります。

株主総会の流れ

株主総会の流れ

株主総会の流れについて招集から開催・終了後の3つに分けて解説します。

株主総会当日までの流れ

取締役会がある会社とない会社では、株主総会当日までの流れが異なります。

取締役会がある会社

取締役会で開催日時や場所・議題・議案・提出すべき書類などについて協議し決定します。

その際、総会をスムーズに進行するために、株主からの質問を想定した問答集を作成しておく必要があります。

議題等が決定したら、株主に対し株式総会招集通知を送付します。招集期間については、会社法により次のように定められています。

  公開会社
非公開会社
書面投票・電子投票を
採用する場合
株主総会開催日の
2週間前まで
株主総会開催日の
2週間前まで
書面投票・電子投票を
採用しない場合
 株主総会開催日の
1週間前まで

※公開会社:株式の浄土制限の規定がない会社
※非公開会社:発行する株式の全部に譲渡制限のついている会社

取締役会がない会社

株主総会は、通常社長が招集し、招集できない場合は他の取締役が招集します。

事業年度末日の翌日から3ヶ月以内、株主総会開催日の1週間前までに書面または口頭で招集の通知を行います。

株主総会当日の流れ

通常社長が議長となり、その後の会の進行を司ります。株主総会当日の流れは次のようになります。

1 議長就任 社長が議長に就任
2 開会宣言 株主総会の開会宣言
3 ルール説明 議事進行上のルール説明
4 株主数報告 株主総会の議決権株式数及びその株主数を報告
5 充足宣言 定足数を満たしていることを宣言
6 監査報告 監査役による財政状態や経営成績などの監査結果の表明
7 事業報告 営業報告書の説明、貸借対照表、損益計算書の説明
8 議案上程 議案を提出し会議に付議(注.1)
9 審議方法を決め審議 一括審議方法か個別審議方式か決め審議(注.2)
10 質疑応答 質疑応答
11 終了宣言 全目的事項の終了

(注.1) 一般的には会社側から議案上程を行いますが、一定の要件を満たせば、株主側から議案上程を行うことも可能です。
(注.2) 一括審議は、上程された議案を一括で説明し、すべての議案の質問を行い順次採決をする方法。個別審議は、議案ひとつひとつを上程し審議し採決を行う方法。個別方式は時間がかかるので一括審議が一般的です。

株主総会終了後に行うべきこと

株主総会が終了したらそれで終わりではありません。

議事録を作成し、登記事項の変更があればその変更手続きをする必要があります。

議事録の作成

株主総会の内容は、法律により議事録の作成と保存が義務付けられています。

議事録に記載すべき事項は次の通りです。

  • 開催場所
  • 開催日時
  • 議事の経過の要領と結果
  • 出席した取締役や監査役・会計監査人などの氏名
  • 議事録作成者の氏名
  • 一定の内容に関して述べられた意見や発言

作成した議事録は、原本については本店で10年間、コピーについては支店で5年間保存しておく必要があります。

株主や債権者から要望があれば、閲覧・コピーさせなければなりません。

登記変更手続

取締役や監査役などの役員に変更があった場合には、変更があった日から2週間以内に登記手続きをしなければなりません。

登記は管轄の法務局に、登記申請書と必要な書類を提出し審査を受けます。

まとめ:株主総会に出席して経営に参加しよう

まとめ:株主総会に出席して経営に参加しよう

株主総会の種類・決議事項・開催までの流れなどについて解説しました。

株式を購入するということは、その会社のオーナーになるのと同義です。

運用益や配当のためだけでなく、株主総会に参加して重要事項を決める側に回るのも面白い体験になります。

株式を保有する方は株式総会についても理解し、会社の意思決定に参加してみましょう。

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