資産運用をする上で「複利効果」についての知識は重要です。

20年、30年と運用期間を長く確保できる方であれば、複利効果を意識することで効率的に資産形成できます。

この記事では、投資における「複利効果」について解説します。

「積立NISA」や「iDeCo」を含む投資信託で運用している方に向けて、複利効果を効率的に得る方法も解説していますので、ぜひ参考にしてください。

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複利とは

複利とは

相対性理論を発表したドイツの物理学者であるアインシュタインは、「複利効果は人類最大の発明」と呼んだそうです。

ここでは複利の仕組みや、単利との違いを解説します。

投資で得た利益を再投資すること

「複利」とは、投資で得た利益を元本に加えて再投資することです。

利益を再投資するため、翌年以降は元本に加えて再投資した利益からも更に利益が生まれます。

複利を活用するメリットは、「資産形成のスピードを上げられる」点です。

運用期間が長くなるほど元本が大きくなり、得られる利益も徐々に大きくなります。

利益を再投資しない場合と比較すると、目標額に到達するまでの時間が短く済みます。

「FIRE」や「サイドFIRE」を目指している方を含む、将来のための資金を効率的に準備したい方に、複利での運用はおすすめです。

複利の運用例

例として、100万円を年利3%で運用するケースを見ていきましょう。

1年目の利息は、「100万円 × 3%」で30,000円です。2年目の利息は、1年目の利息を加えて運用するため、「103万円 × 3%」で30,900円となります。

上記の条件で運用を続けていくと、元本の100万円は以下のように増えていきます。

運用年数利息評価金額
1年目30,000円103万円
2年目30,900円106万900円
3年目31,827円109万2,727円
5年目33,765円115万9,274円
10年目39,143円134万3,916円
20年目52,605円180万6,111円

1年目は30,000円だった利息が、20年目には約1.75倍の52,605円まで増えています

2年目以降は元本だけでなく、前年までに発生した利息に対しても利息が発生するためです。

複利で運用することで、2年目以降に受け取ることができる利息が前年よりも増えていきます。

このように、複利の効果で利息の額が年々増えていく様子を、雪だるまを転がしながら大きくしていく様子に見立てて「複利運用は資産を雪だるま式に増やしていく」といいます。

実際に上記の例では、元本100万円が20年で約180万円まで増えていきました。

積立NISAやiDeCOも複利を活用したもの

資産運用をする際の税制優遇制度として「積立NISA」や「iDeCo」があります。

本来であれば、資産運用で得た利益には20.315%の税金が発生しますが、積立NISAやiDeCoで運用した場合は、利益に対する税金が発生しません。

そのため、制度を利用しない場合と比較すると、再投資に回せる資金が多くなるため、複利の効果を活かしながら資産運用できる制度となっています。

元々長期投資が前提となる制度のため、老後資金や子どもの教育費など、将来のための資金を資産運用で準備したい方に「積立NISA」や「iDeCo」がおすすめされています。

単利との違い

「単利」とは、利益を再投資せずに毎回受け取り、投資元本のみで運用を続ける手法です。

複利とは違って投資元本が大きくならないため、利益はずっと同じ額になります。

単利での運用は利益の最大化を狙えない反面、株式の配当や投資信託・ETFの分配金などを自由に使える点がメリットです。

複利での運用と比較すると、資産形成のスピードは遅くなりますが、資産運用で得た配当や分配金といった利益を、生活費の一部の支払いに使ったり、旅行や娯楽などの贅沢に使ったりできます。

資産運用の目的が「日常で使えるお金を増やす」という方は、単利での運用が適しています。

単利の運用例

複利の運用と同じく、100万円を年利3%で運用するケースで見ていきます。

1年目の利息は「100万円 × 3%」で30,000円となります。
単利での運用は利息を再投資しないため、2年目の利息も「100万円 × 3% 」で30,000円です。

同じ条件で複利運用したケースでは、2年目の利息は30,900円でしたが、単利での運用では30,000円でした。

2年目時点では900円の差となりますが、この利息の差は徐々に大きくなります。

運用年数利息評価金額
1年目30,000円1,030,000円
2年目30,000円1,060,000円
3年目30,000円1,090,000円
5年目30,000円1,150,000円
10年目30,000円1,300,000円
20年目30,000円1,600,000円

複利で運用した際の評価金額と比較すると、運用期間が長くなるほど評価金額の差が大きくなることがわかります。

このことから、効率的に資産を大きくしたい方は、複利での運用が適しているといえます。

複利と単利の運用比較

同じ金額の元本を、同じ利率で、複利と単利で運用した際にどの程度の差が生まれるか、見ていきましょう。

元本100万円を年利3%で単利と複利で運用すると仮定します。

運用年数元利合計(複利)元利合計(単利)運用益の差
1年1,030,000円1,030,000円0円
2年1,060,900円1,060,000円900円
3年1,092,727円1,090,000円2,727円
5年1,159,274円1,150,000円9,274円
10年1,343,916円1,300,000円43,916円
15年1,557,967円1,450,000円107,967円
20年1,806,111円1,600,000円206,111円

運用期間が長くなるほど、複利と単利の運用益に差が生じます。

複利で運用する場合は、利息を元本に加えて再投資するため、利息の額が毎年増えていきます。

毎年増えた利息の額が積み重なり、このケースでは20年目の運用益に約20万円の差が生まれました。

利息や分配金は受け取らずに再投資し、複利で運用する方が効率的に資産を増やせることがわかります。

複利の効果を投資信託で効率的に得る方法

複利の効果を投資信託で効率的に得る方法

運用期間を長くする

複利は利益を再投資する手法であるため、運用期間が長くなれば長くなるほど元本が大きくなり、得られる利益も大きくなります。

運用期間の長さが資産形成にどのくらい影響を与えるか、見ていきましょう。

老後2,000万円問題を意識して、老後資金を2,000万円準備したいと考えたとします。

毎年3%のリターンが期待できる商品で運用すると仮定し、運用期間別に毎月いくら積み立てる必要があるかをシミュレーションします。

運用期間毎月の積立額
10年143,121円
15年88,116円
20年60,920円
25年44,842円
30年34,321円

60歳で資産運用を終えると仮定すると、30歳の方であれば毎月34,321円の積立で2,000万円になりますが、50歳の方だと毎月143,121円と約4倍の積立額が必要になります。

運用期間は1/3に減っていますが、必要な毎月の積立額が約4倍になっていることから、運用期間を長く確保できる人ほど、複利効果を活かして少ない金額から効率的に資産形成できることがわかります。

分配金を再投資に回す

投資信託は、運用によって得られた利益を「分配金」として投資家に還元します。

毎月分配金が出る投資信託や年に1度分配金を出す投資信託など、分配金の頻度は商品によってさまざまです。

分配金を再投資することで複利効果が得られるため、効率的に資産を増やしたい方は分配金を再投資しましょう。

また、投資信託によっては分配金が出ない商品もあります。
分配金が出ない投資信託では自動的に再投資されているため、複利効果を活かした運用が可能です。

なお、投資家が分配金を受け取る際は20.315%の税金が発生するため、分配金を出さずに内部で再投資する投資信託の方が、複利効果を活かして運用したい場合に適しています。

元本を徐々に増やしていく

複利効果を得るためには、元本を増やしていくことも大切です。

積立NISAやiDeCoを利用する場合は、毎月一定額を積み立てるため、再投資する利益とは別で、元本が徐々に大きくなります。

購入タイミングを間違えない自信がある方は、一括投資をした方が効率的ではありますが、一括投資は高値で購入すると損をする可能性が高いです。

一方で、毎月一定額を積立投資する場合は、高値のときは少なく、安値のときは多く投資信託を購入するため、購入価格が平準化されます。

複利効果を利用して効率的に資産形成するためにも、毎月一定額を投資したり、ボーナスが出たときの余剰資金で追加投資したりと、元本を徐々に増やしましょう。

手数料の低い商品を選ぶ

投資信託を保有していると、信託報酬と呼ばれる手数料がかかります。

「信託報酬」は、投資信託を管理・運用するために発生する手数料です。

投資信託によって信託報酬の負担は異なり、低いもので0.1%ほど、高いものでは2.0%以上のものも存在します。

信託報酬に0.1%の差があるだけでも、運用期間が長くなったり元本が大きくなると最終的なリターンに大きな影響を与えます。

複利効果を効率的に得るためには、信託報酬が低い投資信託がおすすめです。

初心者の方が投資信託を選ぶ際は、積立NISAに対応している投資信託を選ぶと、信託報酬が低いものを選べます。

複利の効果を感じられない場合の原因

複利の効果を感じられない場合の原因

運用期間が短い

複利効果は運用期間が長くなれば長くなるほど大きくなるため、運用を始めてから数年ほどではあまり効果を感じられないでしょう。

実際に、先ほどの運用例でも、1年目の利息30,000円に対して、2年目は30,900円(+900円)、3年目は31,827円(+1,827円)とあまり大きく増えていません。

運用開始から数年間はどうしても複利効果をあまり感じられない期間となっているため、もう少し長い目で見ることが大切です。

10年後、20年後になると、単利で運用していた場合と比較して運用益の差が大きくなるため、長期間運用することを目指しましょう。

下落時に売却してしまう

相場の下落時には評価額がマイナスになる、あるいは、マイナスになることを恐れて保有資産を売却してしまう人もいるでしょう。

保有資産の一部でも売却すると元本が少なくなるため、複利効果は薄れてしまいます。

今後、評価額の回復が期待できない銘柄に関しては損切りすべきですが、指数連動型の投資信託を中心に、今後評価額の回復が期待できる銘柄は下落時でも売却せずに保有を続けましょう。
評価額が回復するのであれば、下落時は安く購入できるチャンスであるため、積立投資を継続できると、下落前までの水準に回復した際に利益を得られます。

配当金を受け取って他のものに使ってしまう

複利効果を得るためには、配当金や分配金を再投資する必要があります。

配当金や分配金を再投資せずに使ってしまうと、元本が大きくならないため、複利効果を感じられなくなります。

資産運用の目的が将来のための資産形成である方は、配当金や分配金を受け取らずに再投資し、利益の最大化を狙いましょう。

投資信託であれば、購入時に分配金を再投資するか受け取るかを選べます。

複利効果を活用したい方は、購入時に「再投資型」を選択しましょう。

資産が倍になる期間がわかる「72の法則」と「100の法則」

資産が倍になる期間がわかる「72の法則」と「100の法則」

ここで紹介する「72の法則」と「100の法則」を利用すると、資産が倍になるまでの期間や、特定の運用期間で資産を倍にするために必要な年利がわかります。

資産運用する際に利用することで、目標金額に到達するために必要な運用期間や年利を計算できます。

計画的な資産運用をするための参考にしてください。

複利効果を表す「72の法則」

複利で運用する場合は「72の法則」を用いると、資産が倍になるまでの期間がわかります。

  • 72 ÷ 金利 = お金が倍になる年数

年利1.0%の商品を複利で運用する際は「72 ÷ 1 = 72」となり、72年で倍になるとわかります。

金利毎に資産が倍になるまでの年数は、以下の通りです。

年利資産が倍になるまでの年数
2.0%36年
2.5%28.8年
3.0%24年
3.5%20.6年
4.0%18年
4.5%16年
5.0%14.4年

72の法則を応用すれば、運用期間が決まっている際に資産を倍にするための年利も求められます。

  • 72 ÷ 運用期間 = 資産を倍にするための年利

例えば、20年の運用期間で資産を倍にしたい場合は「72 ÷ 20 = 3.6」となり、年利3.6%で複利運用する必要があるとわかります。

単利効果を表す「100の法則」

単利で運用する際は「100の法則」を使うと、資産が倍になるまでの期間がわかります。

  • 100 ÷ 年利 = 資産が倍になるまでの年数

年利1%の商品を単利で運用する際は「100 ÷ 1 = 100」となり、100年で資産が倍になるとわかります。

複利同様に、単利で運用する際の年利別の資産が倍になるまでの年数を表にまとめます。

資産を倍にしたい年数必要な年利
50年2.0%
40年2.5%
33.3年3.0%
28.6年3.5%
25年4.0%
22.2年4.5%
20年5.0%
  • 年利1%の場合:100 ÷ 1 = 100年
  • 年利3%の場合:100 ÷ 3 = 33.3年
  • 年利5%の場合:100 ÷ 5 = 20年

「100 ÷ 運用期間」で運用期間が決まっている場合に、単利で資産を倍にするために必要な年利が求められます。

まとめ:複利を活用して長期的に資産形成しよう

複利を活用して長期的に資産形成しよう

「複利」とは、利息や配当、分配金などを元本に加えて再投資する運用方法です。

再投資するたびに元本が大きくなるため、運用期間が長くなるほど利益が大きくなり、効率的に資産形成できます。

複利効果を投資信託で効率的に得るためには、以下の点が大切です。

  • 運用期間を長くすること
  • 元本を徐々に増やしていくこと
  • 手数料が安い商品を選ぶこと

老後資金や子どもの教育費など、将来のための資金を効率的に準備したい方は、利益を再投資して複利効果を狙った運用を目指しましょう。

利益に対する税金が非課税になる「積立NISA」や「iDeCo」を活用すると、より効率的に資産形成ができるのでおすすめです。

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