株の空売りとは?やり方や仕組み、リスクをわかりやすく解説
株式投資を行っている方なら、「空売り」という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。
株の空売りとは、対象の銘柄を「売り」取引から始める手法のことです。
株を安く購入して高く売却することで利益を出す通常の方法とは反対に、高く売却した株式を安く買い戻すことで利益を狙います。
相場の下落局面でも利益を狙えるメリットはありますが、値動きの流れを予測する必要であったり、損失が大きくなりやすいリスクも併せ持っています。
この記事では、株の空売りの仕組みや方法、メリット・デメリットについて解説します。
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この記事の目次
株の空売りとは
「売り」から投資を始める手法
一般的な株式投資でイメージするのは、「株を買って、売る」取引でしょう。
これに対して、先に株を売ってあとから買い戻す「空売り」という手法もあります。
現物の株を実際に買ってから売る取引は「現物取引」と呼ばれますが、実際に持っていない株を売る取引を「信用取引」と呼びます。
信用取引では、株を購入する代金や売却する株を証券会社から借りて取引するため、実際に株を保有していなくても先に「売り」から取引を始めることが可能です。
信用取引には「制度信用取引」と「一般信用取引」の2種類がありますが、すべての銘柄が両方の信用取引に対応しているわけではありません。
それぞれ特徴が異なるため、取引の目的や投資期間を考慮し、自分に適した方を選びましょう。
信用取引とは?仕組みやメリット・デメリットについてわかりやすく解説
制度信用取引
「制度信用取引」では、取引できる銘柄や返済期限などのルールが証券取引所によって定められています。
すべての銘柄を取引できるわけではなく、上場銘柄のうち取引所の基準を満たす銘柄のみ取引可能です。
信用取引では株や買付代金を証券会社から借りて取引をするため、返済期限や借りた株に対する貸株料、金利が存在します。
制度信用取引での返済期限は最長6ヶ月で、貸株料は証券会社によって定められた金額となります。
一般信用取引
証券取引所が一律でルールを定める「制度信用取引」に対し、証券会社が独自にルールを決める信用取引を「一般信用取引」と呼びます。
一般信用取引では、返済期限や貸株料、取引銘柄などを証券会社が決定します。
6ヶ月以上の取引も可能で、残高不足とならない限り返済期限が無期限に設定されている場合も多いです。
制度信用取引と比べて長期的な取引が可能ですが、金利や貸株料などの取引コストが高くなりやすいという特徴もあります。
株価の下落時でも利益を狙える
空売りを活用すると、相場の下落時にも利益を狙って取引できます。
一般的な株式投資では「安く買って高く売る」のが基本となるため、株価が下落すると含み損を抱えてしまいます。
この場合、株価が再び上昇するのを待つ「損切り」をするか、下がったところで「買い増し」するといった選択肢を取るしかありません。
これに対して空売りは、証券会社から株を借りて売り、株価が下落したところで株を買い戻すことで、その差額分が利益となります。
「高く売って安く買い戻す」ことで利益が生まれるため、株価の下落局面でも利益を狙えるということです。
株の空売りで利益を出すやり方・仕組み
株の空売りで利益を出す方法について、具体的に確認していきましょう。
株式を証券会社から借りて売る
空売りをする際は、まず証券会社から売却したい株を借りる必要があります。
現金や株などを「委託保証金」として証券会社に預け、それらを担保に株を借りて売却します。
例えば、1株1,000円の株を100株借りて売却したとすると、この時点で1,000円 × 100株 = 100,000円を手に入れたことになります。
ただし、売却した株は借りたものなので、期限までに返済する(買い戻す)必要がある点に注意しましょう。
株価が下落する
証券会社から借りた株を返すためには、市場に売った株を買い戻さなくてはいけません。
なるべく安く買い戻したいので、株価が下落したタイミングを狙って買い戻します。
買い戻すタイミングで株価が下がっているほど、最初に空売りをして得た金額よりも安く株式を手に入れられるため、得られる利益が大きくなります。
先ほど1株1,000円で購入した株が800円に下落したところで100株買い戻すと、購入代金は800円 × 100株 = 80,000円です。
この例では、空売りによって100,000円 – 80,000円 = 20,000円の利益を得られます。
返済期限までに株式を買い戻す
証券会社から借りた株式には返済期限が設けられています。
返済期限を迎えるまでは投資家の好きなタイミングで買い戻しができますが、返済期限に到達すると強制的に決済されます。
強制決済のタイミングで株価が下落していれば利益となりますが、空売り時よりも株価が上昇していれば損失となります。
例えば先程と同様に1株1,000円で購入した株が返済期限間近に1,200円に上昇してしまった場合、100株を買い戻すと100,000円 – 120,000 = – 20,000円となり、損失になります。
空売りのコスト・利息等を支払う
株の空売りには、貸株料(金利)や手数料などの取引コストが発生します。
通常の取引で発生する売買手数料の他、信用取引で発生する利息を証券会社に支払う必要があります。
空売りによって得た差額がそのまま全て利益、または損失となるわけではない点に注意しましょう。
「空売り規制」に注意
信用取引では、一定の条件を満たした場合に空売りの注文内容が規制される「空売り規制」が設けられています。
空売りによって株価を意図的に下落させようとする行為を防ぎ、マーケットを混乱させないために導入された制度です。
空売り規制は、前営業日の終値などから算出される価格から10%以上価格が下落した銘柄に適用されます。
空売り規制が発動すると、それよりも低い価格での51単元以上の新規の空売りはできません。
個人投資家の50単元以下の小口注文は対象外となりますが、連続的に注文を出した場合は意図的な分割と見られて法令違反になる可能性もあるため注意しましょう。
空売り規制に該当した銘柄は、日本取引所グループの公式サイトでチェックできます。
株の空売りをするメリット
相場の下落局面でも利益が狙える
株式市場全体が下落しているときは、現物取引ではなかなか利益を上げられません。
しかし、空売りを活用すれば、相場の下落局面でも利益が期待できます。
現物取引ではただ相場が上がるのを待つしかないタイミングであっても、空売りを利用することでチャンスに変えられるのはメリットです。
保有株式のリスクヘッジになる
現物株式を保有している場合、同じ銘柄を空売りすることがリスクヘッジにつながる場合があります。
割高水準まで買われている株式を空売りしておくと、適正な株価水準に戻った際に、現物株で生じる損失と空売りで得られる利益を相殺できます。
株価には上がり下がりがつきものですが、空売りをうまく利用することで長期的に現物株を保有しながらも株価が下落する際のリスクヘッジが可能です。
株主優待目的で長期保有する際や、どうしても手放したくない株式の保有を続ける場合に有効な手段だといえるでしょう。
株の空売りをするリスク・デメリット
大きな損失に繋がる可能性がある
現物取引では対象銘柄の下落が損失につながりますが、空売りでは株価の上昇が損失につながります。
例えば100円の株を現物取引で購入した場合、株価がどれだけ下がっても0円以下になることはないため、最大損失は100円です。
しかし、株価が下がると予想して100円で空売りをした後、予想と反して株価が上昇した場合、買い戻すための必要額は120円、150円、200円というようにどんどん膨らんでいきます。
理論上は株価に上限がないため、損失額も青天井となってしまう点には注意が必要です。
コストが発生する
株の空売りにはコストが発生します。
通常の売買手数料に加えて、株式を借りるための「貸株料」がかかります。
一般的に金融機関からお金を借りる際にも金利が発生しますが、貸株料もこれと同様です。
加えて、制度信用取引においては「逆日歩(品貸料)」という費用がかかる場合もあります。
信用取引の売りが急増したときに必要となる費用で、証券会社の株不足が解消されるまで毎日発生します。
貸株料と逆日歩のどちらも、保有株数や保有期間に応じて費用が大きくなるという点に注意しましょう。
株の空売りの始め方【楽天証券】
株の空売りの始め方を確認していきましょう。
今回は、楽天証券を例にして説明していきます。
「信用口座」を開設する
まずは、楽天証券の公式サイトから信用取引を行うための口座を申し込みましょう。
信用取引口座を開設するためには、楽天証券の口座を保有している必要があります。
信用取引は現物取引に比べてリスクが高いため、口座開設にあたっては口座開設基準が設けられています。
株式投資の経験があることや、おおむね100万円以上の金融資産があることなどの条件があるため、信用取引口座を申し込む際はよく確認しましょう。
口座開設基準を満たしていても、審査結果によっては口座を開設できない場合もあります。
申し込みは5分程度で完了しますが、審査には2〜3営業日かかるのが一般的です。
信用取引口座が開設できた旨のメールが届いたら、信用取引を始められます。
預り金を保証金/証拠金に振替える
信用取引を始めるには現金を楽天証券に入金し、信用取引口座の保証金に振り替える必要があります。
もしくは株式や投資信託を代用有価証券として利用することもできます。
自分で振替操作を行う「手動振替」か、自動で口座に振り替える「自動振替」のいずれかの方法で委託保証金を準備しましょう。
国内株式の場合、最低委託保証金は30万円で、委託保証金率は30%です。
30万円の委託保証金を預けたとすると、最大で30万円 ÷ 30% = 100万円分の取引が可能となります。
最低委託保証金と委託保証金率の両方の条件を満たさないと、信用取引を行えません。
銘柄を選んで空売りを実施する
楽天証券では、国内株式・米国株式いずれの信用取引も可能です。
米国株式の信用取引では、委託保証金として米ドルだけでなく日本円も差し入れられるため、事前に米ドルを準備する手間が省けます。
国内株式の場合、制度信用取引か一般信用取引を選んで取引できますが、米国株式の場合は一般信用取引のみとなります。
国内株式と米国株式の信用取引ルールには異なる点もあるため、あらかじめ確認しておくといいでしょう。
なお、楽天証券での空売りの際に必要となる主なコストは以下のとおりです(2022年9月時点)。
国内株式 | 米国株式 | |
信用取引手数料 | 手数料コースに応じた手数料率 (超割コース/いちにち定額コース) | 約定代金の0.33% (上限税込16.5米ドル) |
貸株料 | ・制度信用取引:年1.10% ・一般信用取引「無期限」:年1.10% ・一般信用取引「短期」:年3.90% ・一般信用取引「いちにち信用」年0.00% | ・一般信用取引「無期限」:年2.0% |
事務管理費 | 1株あたり11銭 | 無料 |
その他のコスト | 逆日歩、強制執行手数料、配当金相当額など | Sec fee(米国現地証券取引所手数料)、信用取引における強制執行手数料など |
参考:楽天証券株式会社「信用取引 手数料/金利/貸株料」
参考:楽天証券株式会社「米国株式信用取引 手数料/金利/貸株料」
まとめ:株の空売りとは相場下落時にも利益を狙える手法
株の空売りは、うまく活用できれば投資スタイルや戦略の幅を大きく広げられます。
相場の下落局面でも利益を狙えるのは、空売りの大きなメリットです。
しかし、想定とは異なり株価が上昇した場合は、大きな損失になるリスクもあります。
空売りに挑戦する際は余剰資金の範囲内で投資を行い、適切なリスク管理を心がけましょう。
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