近年SDGsが広く知られ、日本や地球の環境問題は政府だけでなく、企業や自治体にも積極的な協力が求められています。そのような流れに合わせて、環境問題に取組む資金調達源として、環境債が注目されているのです。では資産運用において、環境債に投資する価値があるのでしょうか。今回の記事では環境債についての解説と、そのメリットとデメリットを解説し、さらに環境債の今後の展望と、日本での事例について解説します。

目次

全て表示

環境債(グリーンボンド)とは

環境債は企業や地方自治体などが、環境問題を解決するための事業(グリーンプロジェクト)をするための資金を得るために、作られた債券です。これはグリーンプロジェクトを直接実施する企業や自治体だけでなく、金融機関がグリーンプロジェクトに投資や融資をするときにも、発行することができます。

グリーンボンド原則

環境債はその目的通りに資金が使われていることを、明確にしなければなりません。そのためICMA(国際資本市場協会)では、環境債を設定するにおいて、「グリーンボンド原則(GBP)」を明記しているのです。そして2018年版のグリーンボンド原則では以下の水準を満たすことを求めています。

資金調達の使途は環境問題解決に関連する事業のみ

環境債が使われるプロジェクトは、環境問題を解決する目的である必要があります。そのためグリーンボンド原則では、環境債での資金調達が認められる事業を、以下のように提示しています。

【環境債が認められる事業例】

  • 再生可能エネルギー
  • エネルギーの効率化
  • 汚染の防止と抑制
  • 環境保全と再生
  • 水資源と排水処理の管理
  • クリーン輸送
  • 気候変動への適応

プロジェクトの明確な説明と客観的な評価が必要である

環境債で資金を得る側は、投資家に対して資金の使い道について、明確に伝えなければなりません。環境債の目的に見合ったプロジェクトであることの説明以外にも、プロジェクトを行うに至った経緯や理由、プロジェクトを行わなかった場合に想定されるリスクを、説明する必要があるのです。また、これらプロセスにおける判断基準も、明確にすることが求められています。

資金調達の追跡と管理が必要である

環境債では、投資家から集めたお金の状況が追跡できる仕組が必要です。また資金状況を追認する第三者機関や、監査人の設定が望ましいとされています。これは上場企業に会計監査が必要な点と似た仕組です。

プロジェクトの現状と環境への効果を報告する必要である

さらに環境債では、定期的な現状報告が必要だとされています。そして報告内容にはプロジェクトの現状だけでなく、環境に対する効果を報告することが、望ましいとされているのです。さらにグリーンボンド原則では、これらの項目に対して、第三者機関による評価が入ることを推奨しています。

2006年に誕生した新しい債券

環境債は2006年、国連が表明したPRI(責任投資原則 後のSDGs/ESGに影響を及ぼす)の流れに合わせ、2007年欧州投資銀行が始めて発行しました。さらに2008年には、世界銀行が「グリーンボンド」という名称を正式に採用し、発行したのです。日本では、2014年に政府系金融機関が始めて環境債を発行したあと、2017年には環境省がグリーンボンドガイドラインを策定しました。そして同年、東京都が日本の地方自治体として初めて、環境債を発行したのです。

投資やお金の殖やし方が学べるマネカツセミナー
↓ 詳しくは画像をクリック ↓

マネカツセミナーのバナー画像

環境債(グリーンボンド)はESG投資の一種

環境債は、近年注目されているESG投資のカテゴリーに入る債券です。ESGとは環境(Environment)、社会性(Social)、そして企業統治(Governance)の3点を指しており、企業は今後、ESGを重視した投資が求められています。そして環境債はEnvironmentの分野に投資することが明確なので、環境債に投資することはESG投資を実行していることが誰にでも分かるのです。

環境債(グリーンボンド)の種類

環境債にはその運用や資金の償還方法によって、4つの種類に分けられています。4つに分けることで環境債の発行は、発行元やプロジェクトの内容に合わせた選択ができるようになっているのです。

標準型(スタンダード債:Standard Green Use of Proceeds Bond)

債券の償還をする際、発行元が生み出すキャッシュであれば、いずれを使ってもよいタイプです。つまり、環境債で行われたプロジェクトが利益の出ないものであっても、他の利益からリターンを得ることができるため、一般的な債券に近い形で投資できます。

収益型(リベニュー債:Green Revenue Bond)

債券の償還が、環境債を使って設立された事業の収益、政府や自治体であれば公共施設などの利用料や税収から行われるタイプです。地方自治体が環境債を行うときに実施しやすいメリットがあります。

事業型(プロジェクト債:Green Project Bond)

環境債を元手にして始めた事業からの収益だけで、債券の償還が行われるタイプです。事業は複数でも認められますが、事業以外の収益が使えないため投資家側のリスクが高くなります。

証券型(証券化債:Green Securitized Bond)

様々な環境債に関わる事業を担保にして証券化し、それらを償還の源泉にするタイプです。幅広い事業に分散投資できるため、リスクを低減できるメリットがあります。

環境債(グリーンボンド)を発行・投資するメリット

このように環境債は、集めた資金を環境保全に役立つ事業にしか使えません。しかし近年環境債を発行する企業や自治体が増えているのは、以下のようなメリットがあるからです。また、環境債に投資する側にもメリットがあります。

発行する側のメリット1:本業の株価に良い影響

近年話題になっている「ESG投資」では、企業が環境保全に積極的に取り組むことが示唆されています。また世界の機関投資家の間ではESGに積極的に取り組む企業に投資する比率を高めているのです。

もし企業が環境債を発行すれば、ESGに積極的な企業であると認められ、機関投資家による株式の購入が期待できます。そしてそれは自社の株価を維持することにつながるのです。

発行する側のメリット2:SDGsに取り組む姿勢の証明になる

企業だけでなく、地方自治体にとっても環境債の発行はメリットがあります。例えば近年注目されているSDGs(持続可能な開発目標)では、地球で生きる全ての人に社会環境の保全を求めています。もし地方自治体が環境債を発行すれば、SDGsに積極的な自治体として、地域のステータスを高めることができるのです。

投資する側のメリット1:透明性が高くリスクの低い資産運用

一方で投資家側にも環境債のメリットがあります。環境債は発行するに当たって「グリーンボンド原則」に従う必要があります。そのため環境保全に関わる事業を行うことと、それに対するリターンが明記されているのです。さらに第三者機関による評価があれば、投資家は比較的低いリスクで資金を投じることができます。

投資する側のメリット2:環境保全に投資している証明になる

さらに環境債への投資は、投資家にとってもESGやSDGsに見合ったお金の使い方をしていることになります。よって発行者だけで無く、投資する側もステータスを高める効果があるのです。したがって環境保全に直接貢献できない企業が環境債に投資するケースも増えてくると予想されます。

環境債(グリーンボンド)を発行・投資するデメリット

一方で環境債にも考慮すべきデメリット(リスク)があります。それは制度として成り立ってからの期間が短いことによる、想定外のケースへの対応が未確立な部分によるものです。

発行する側のデメリット:投資先が限定されるため資本効率が悪化する可能性

環境債はグリーンボンド原則に見合った事業にしか、投資することができません。したがって環境債で資金を得た後に、事業環境の変化で他の事業に投資転換することができないのです。そうすると、企業の投下資本に対する利益率が低下し、株価や利益の低迷をもたらす可能性があります。

投資する側のデメリット:ルール違反時のアフターケアが未確立

環境債は、事業者が環境保全に関する事業を行うという「善意」を前提にした仕組になっています。しかし今後環境債が普及してくると、不正を行う事業者が出ないとは限りません。この場合、償還されるべきリターンが少なくなる可能性があります。また現状では事業者の不正に対するペナルティや、投資家側の保障も不確実です。

環境債(グリーンボンド)の最新動向と今後の見通し

環境債は2007年にヨーロッパで始まってから、徐々にその規模を拡大しています。そして多くの機関投資家が投資先として検討し、国内でも企業や自治体による環境債の発行が始まっています。

国内では2017年以降、発行数が急速に増加

国内の環境債は、2014年に日本政策銀行による第1回グリーンボンドが発行されました。以後発行数は徐々に増加し、2017年に11件発行されたのです。そして発行件数はさらに増加し2020年では77件の環境債が発行されています。また発行総額も2014年の337.5億円から2020年には1兆1702億円になっているのです。

世界では20兆円規模のビジネスに成長し、ヨーロッパを中心に普及

海外では2008年の8億米ドルから始まり、2013年に100億米ドルを超えました。その後急速に増加し、2020年には2699億米ドルまで増加したのです。また地域別に比較すると全地域で増加が見られる中、ヨーロッパで顕著な増加が見られます。

年金機構も環境債への投資を検討

国内、しいては世界最大級の機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は2019年に、環境債への投資を検討していることを発表しています。正確な投資額は不明ですが、GPIFはESG投資を重視することも表明しているので、環境債への投資も行われると推測できます。

エネルギー分野から交通・建物に

環境債で行われる事業も多岐にわたっています。2013年ではエネルギー分野(太陽光発電など)での利用が多くを占めていました。しかし年を追うにつれて建築(エネルギー効率の高い建物など)や交通(電気自動車や公共交通によるクリーン輸送など)への利用が増えているのです。

日本の自治体や企業における環境債(グリーンボンド)の事例

最後に、日本で現在行われている環境債について解説します。環境債は自治体や企業のイメージアップだけでなく、日本が国際的に求められている環境基準を目指すために、有効利用されているのです。

東京都:環境債で得た資金を用いて環境整備

東京都は2017年、日本の地方自治体として初の環境債を発行しました。第1回の環境債では5年を限度とし、個人向けでは表面利率2.55%(オーストラリアドル建て)、機関投資家向けには0.02%で発行されたのです。そして機関投資家向けの環境債では50億円の資金を調達することができました。東京都では環境債で得た資金を用いて、都が目指している「スマートシティ構想」の実現に向けて、様々な環境整備を行っています。

JR九州:環境債で得た資金を用いて設備更新

JR九州は2021年、環境債の発行を発表しました。同社の発表によると、環境債で得た資金を用いて、環境負荷の低い新型車両の開発や、線路や駅などの設備更新を行うとしています。また同社は環境債の発行において、ESG経営に意欲的であることを投資家だけでなく、地域住民や従業員など全ての関係者にアピールしていきたいとしています。

まとめ:環境債(グリーンボンド)は地球に優しい低リスク投資

このように環境債は、今後の日本や世界の発展に必要な債券であることが分かりました。また投資する側にとっても、資金の使用目的が明確なため、株式よりもリスクの低い投資ができるのです。もし資産運用で債券を考えるとき、環境債を選択肢の1つに入れてみてはいかがでしょうか。

※投資はあくまでも自己責任となります。利益を保証するものではありませんので、ご注意ください。

投資やお金の殖やし方が学べるマネカツセミナー
↓ 詳しくは画像をクリック ↓

マネカツセミナーのバナー画像