米国株の税金とは?配当金の二重課税の避け方や確定申告が必要な条件を解説
現在は多くの証券会社で、日本にいながらも米国株に投資できます。
アメリカは利益を株主還元する意識が高く、業績・株価の成長を見込める企業が多いです。そのため、米国株投資は人気投資先のひとつとなっています。
米国株で利益が出た場合、日本での税金とは別にアメリカにも税金を支払うケースがあります。
この記事では、米国株で利益が出た際の税金について、課税方法や口座別の税金の扱い、控除などについて解説します。
米国株投資を検討されている方・既に投資されている方は参考にしてください。
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この記事の目次
米国株にかかる税金について
この記事の内容は、日本国内の証券会社を利用して米国株の取引を行った際の解説です。米国の証券会社を利用して米国株の取引を行う場合は、記載内容と実態が異なる可能性があるためご注意ください。
株式投資で利益を得ると、利益に対して「譲渡益課税」と「配当課税」がそれぞれ課せられます。
以下は、米国株の利益に対してかかる税金についてまとめた表です。
課税対象国 | 譲渡益課税 | 配当課税 |
国内課税 | 20.315% | 20.315% |
米国課税 | なし | 10% |
※2023年11月01日現在の情報です。
米国株にかかる税金は、日本とアメリカの「租税条約」によって定められています。
譲渡益の考え方は日本株と同じ
譲渡益とは、株式や投資信託などを売却した際に発生する利益のことです。
売却価格から取得価格を差し引いた利益に対して、20.315%の税金が発生します。
20.315%の内訳は、所得税および復興特別所得税の15.315%、住民税の5%を合わせた数字です。
米国株で譲渡益が発生した場合は、米国へ追加課税されることはありません。
日本株と同様、譲渡益に対して20.315%の税金が課されるのみです。
日本円に換算して計算する
米国株式やETFなどを購入しているため、譲渡益や配当金は「米ドル」で受け取りますが、税金の計算は「日本円」に換算してから行います。
米国株へ投資する場合、銘柄の株価変動に加えて、為替レートの変動も利益に影響してきます。
税金を計算する際は、為替レートの変動による利益や損失も考慮しておきましょう。
例えば株価が一定の場合でも、購入時と売却時の為替レートを比較して、1ドル=100円から1ドル=110円となった円安時には「譲渡益」となり、1ドル=100円から1ドル=90円になった円高時には「譲渡損」になります。
- 購入時:1ドル=100円のときに100株(10万円)購入する
- 売却時:1ドル=110円のときに100株(11万円)売却する
- 取引結果:株価は変わっていないが、為替変動だけでプラス1万円の「譲渡益」となる
※ここでは株価が1株10ドルで一定とする。税金・手数料も考慮しない。
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米国株で確定申告が必要なケース
損益通算をする場合は確定申告必要
損益通算とは、利益と損失を相殺させることをいいます。
取引を行っている証券会社が1社であれば確定申告は不要ですが、2社以上の証券会社で取引を行っていて、利益が出ている証券会社と損失がある証券会社がある場合、確定申告を行うことで損益通算できます。
例えばA社の口座ではプラス100万円の利益があり、B社の口座にはマイナス50万円の損失がある場合、損益通算することでその年の利益は50万円となります。
これにより、最終的な利益である50万円にのみ課税されることになります(特定口座で100万円に対して既に課税されていた場合は、損益通算後に余剰分が還付されます)。
損益通算は最長3年間繰り越せる
損益通算すると損失を最長3年間繰り越せるため、その年の利益を過去の損失と相殺できる場合があります。
今年の損失はないが、去年の損失を継続して繰り越したい場合にも確定申告は必要です。
為替差損益でも確定申告が必要な場合がある
米国株の取引では、為替相場の変動により「為替差益」または「為替差損」が生じる場合があります。
円から米国株を購入する場合、購入時の為替と比べて円安に動くと、為替変動分の利益が生じ、反対に円高になった場合は、円高に動いた分損失が生まれます。
米国株を売却したタイミングで同時に日本円に換えて受け取る場合は、為替差損益を譲渡損益に含めて計算するため、別途確定申告を行う必要はありません。
しかし、米国株を売却した後、日数が経過してから日本円に交換した場合や、数日後に新たに米国株を購入した場合は、為替の変動によっては為替差益による雑所得が生まれたとみなされます。
雑所得は年間20万円を超えると確定申告の対象となるため、申告漏れに注意しましょう。
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特定口座の利用で確定申告不要
証券会社で作成できる口座は3種類あります。
- 特定口座(源泉徴収あり)
- 特定口座(源泉徴収なし)
- 一般口座
特定口座で投資を行っている場合、米国株や国内株、投資信託など、全ての取引の損益計算を証券会社が行ってくれます。
源泉徴収ありの特定口座で取引を行っている場合は、証券会社が税金の徴収まで行ってくれるため確定申告が不要です。
源泉徴収なしの場合は確定申告が必要ですが、証券会社が「特定口座年間取引報告書」を用意してくれるため、比較的簡単に行うことができます。
特定口座(源泉徴収あり)
特定口座(源泉徴収あり)の場合、利益に対する税金を証券会社が代わりに徴収・支払ってくれます。
損益通算をする場合などを除くと、基本的には確定申告する必要はありません。
特定口座(源泉徴収なし)
特定口座(源泉徴収なし)の場合、証券会社が発行する「特定口座年間取引報告書」をもとに、自身で確定申告を行い利益に対する税金を納める必要があります。
ただし、給与・退職所得以外の年間所得(損益通算の結果)が20万円以下の場合は確定申告不要です。
一般口座
一般口座の場合は損益計算を自身で行い、且つ確定申告をして税金を納める必要があります。
現在、一般口座でしか取り扱えない「未上場株式」を取り扱う場合を除けば、一般口座を作るメリットはほとんどありません。
特別な理由がない場合は、特定口座で株取引することをおすすめします。
米国株の配当金にかかる税金について
企業から株主に分配される利益のことを「配当金」といいます。
配当金が支払われる際にも税金はかかり、課税対象は株式の配当金の他に投資信託やETFの分配金も含まれます。
※分配金とは、投資信託やETFの収益を投資額に応じて投資家に配分したものです。
米国と国内両方で二重に課税される
米国株の配当金は、米国と日本の両方から課税されます。2つの国で課税されることから、「二重課税」とも呼ばれています。
米国株の配当金や分配金を受け取った際は、まず米国で10%の税金が差し引かれます。
米国で10%の課税を経て90%の利益となった配当金や分配金に対して、日本で20.315%が課税されます。
米国株の課税例
米国株の配当金が10万円あったとします。
- 1. 米国で税率10%の税金が差し引かれる
100,000円 × 10% = 10,000円
100,000円 – 10,000円 = 90,000円
米国分の税引き後の配当金額は9万円です。
- 2. 9万円から日本で税率20.315%がさらに引かれる
90,000円 × 20.315% = 18,283円(小数点以下切り捨て)
90,000円 – 18.283円 = 71,717円
米国と日本で税金を差し引いた後の配当金額(最終的な受取金額)は、71,717円となります。
このように米国株の配当金は2回課税され、約28.3%が税金として差し引かれます。
米国株の配当金の米国課税分は確定申告で取り戻せる
確定申告をすると、米国課税分を取り戻すことができます。
確定申告の手間はかかりますが、払い過ぎた税金分を日本の所得税や住民税から控除できるため、米国株の投資を行っている方は確定申告をすることをおすすめします。
外国税額控除
「外国税額控除」は、外国で課せられた税額を日本の所得税や住民税から差し引く制度です。
この制度により、同じ所得に対して二重に課税されることを防ぐことができます。
確定申告をすることで外国税額控除を適用し、外国で源泉徴収された税額を日本で控除することが可能になります。
この際、総合課税・申告分離課税のうち、どちらを選択しても外国税額控除を利用できます。
特定口座を利用している方であれば「特定口座年間取引報告書」の「外国所得税の額」の欄を見ると、その年中に源泉徴収された外国所得税の合計額がわかります。
所得税から控除できる金額には上限があり、以下の式に当てはめて計算できます。
所得税の控除限度額 = その年の所得税額 ×(その年の調整国外所得金額 / その年の所得総額)
また、外国税額控除は3年間の繰り越しが可能で、超過した場合はその翌年の確定申告の際も外国税額控除の対象となります。限度額に満たない場合は、その翌年の外国税額控除に加算されます。
米国株の配当金を「総合課税」で確定申告する場合
米国株の配当金を「総合課税」で確定申告する場合、他の課税所得(給与など)と合算した所得金額で納税額を計算します。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円〜1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円〜17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円〜39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円〜 | 45% | 4,796,000円 |
所得税は累進課税制度となっているため、所得金額によっては総合課税で申告すると不利になる可能性もあります。
米国株の配当金を「申告分離課税」で確定申告する場合
米国株の配当金を「申告分離課税」で確定申告することもできます。
申告分離課税で税金を納める場合の税率は、20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、地方税5%)です。
申告分離課税で確定申告した場合、米国株の配当金を株式の譲渡損失と損益通算できます。
同じ証券会社の特定口座(源泉徴収あり)の口座で取引している場合は、自動的に譲渡損失と配当金が損益通算されますが、複数の証券会社で取引している場合や一般口座で取引している場合などは確定申告が必要です。
さらに、譲渡損失は最大3年間繰り越すことが可能ですが、この繰越控除を適用したい場合も確定申告を行う必要があります。
総合課税か申告分離課税のどちらが良いかは人によって異なるため、自分の収入や年間の譲渡損益などを考慮して選択しましょう。
参考:国税庁「No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」
米国株の配当金には配当控除はない
「配当控除」は、配当金があった場合に確定申告をすることで適応される所得控除のひとつです。国内株式等の配当金について、総合課税を選択した際に適用されます。
配当金は企業から投資家に分配される前に、法人税が課税されています。その後、投資家が受け取る際に配当課税があるため、法人税と所得税で二重課税されていることになります。
この二重課税の部分を、投資家に還元するのが配当控除です。
ただし、米国でかかる10%の配当課税については、外国税額控除の適用を受けることができないため、配当金の10%は課税対象となります。
出典:国税庁「No.1250 配当所得があるとき(配当控除)」
NISA口座で米国株を保有している場合
NISA口座とは、譲渡益や配当金など、投資に関連する利益が非課税になる口座です。
20歳以上であれば誰でも口座開設できますが、全ての金融機関を通して1人1口座までしか開設できません。
積立NISAとは?投資初心者におすすめの理由をわかりやすく解説
譲渡益は非課税
米国株の譲渡益に関しては、日本株と同様に非課税です。
NISA口座内で無配当企業の株式を運用している場合は、利益に対して税金がかからないということになります。
なお、NISA口座で運用している銘柄で発生した損失は他の口座と損益通算できない点に注意してください。
配当金は10%の米国課税対象
NISA口座で運用している銘柄の配当金は、国内分は非課税です。これは日本株であっても米国株であっても同様になります。
ただし、米国で課税される10%の税金は、非課税にはなりません。米国で課税される10%の税金は、日本と米国の間で結ばれている租税条約に基づいています。
日本独自の制度である「NISA」のルールは適用されないためです。
また、NISA口座は確定申告できないため、損益についても外国税額控除は適用されません(10%の課税を取り戻すことはできない)。
まとめ:外国株投資は確定申告の際に二重課税されないように注意しよう
米国株投資では、日本の課税とは別に米国でも課税されるケースがあります。
譲渡益には追加課税されませんが、配当には10%が追加で課税されます。日本株と比較すると、米国株は約8%多く税金を納めることになる計算です。
確定申告をすると、外国税額控除を利用できるため、日本と米国で二重に課税された配当金への税金の一部、あるいは全額が控除されます。
その結果、日本株を運用した際と同様の税率に近づきます。
投資規模によっては約8%がとても大きな金額になるため、確定申告で二重課税された税金を取り戻しましょう。
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