円高・円安はどっちがいい?わかりやすい覚え方や基準についても解説

「円高」「円安」は、他国通貨に対する円の価値を計る言葉です。
日本円はかつて、1ドル = 360円の固定相場制でしたが、1973年から変動相場制に移行しました。
それ以来、円に対する各国通貨の価値は、経済情勢に応じて日々変化しています。
この記事では、円高・円安のどっちがいいのか、それぞれの覚え方や基準についてわかりやすく解説します。
円高・円安とは
円高とは
「円高」とは、外国通貨に対する円の価値が高くなり、少ない円で多くの外貨に交換できる状態をさします。
円高になりやすいのは、外国人投資家が日本の株や債券、土地など日本円資産へ積極的な投資を行う場合です。
外国人投資家が日本に投資を行う際、ドルやユーロなどの外貨を円に両替します。
大量の日本円が買われることで、日本円の価値が高まるのが円高の仕組みです。
例えば、リーマンショック時は大幅に為替が変動し円高となりました。
これは世界が大不況に陥り、経済の混乱が起きた結果、株価や土地の値段が割安である日本市場へ世界中のお金が流れ込んだからです。
円安とは
「円安」とは、外国通貨に対する円の価値が下がり、多くの円を出しても少ない外貨としか交換できない状態をさします。
円安は日本のお金が外国にたくさん集まっている状況で引き起こされます。
例えば、日本企業が海外に工場をつくる場合、日本円を外貨へ両替する必要があります。
また、輸入する原油価格が上昇すると、その分外貨資金の調達が必要になります。大量の日本円が売られることで、日本円の価値が下がるのが円安の仕組みです。
機関投資家が多大な金額を動かすことで為替へ与える影響も大きく、アメリカ経済が好調で米国株式が人気の状況下では、円安が続くことが多いです。
FXをする際は大事な指標
FXは通貨の値動きを利用しながら、購入と売却の差額から利益を狙う投資です。
常に最新の通貨価値を把握し、為替相場を予想する必要があります。
円高・円安の仕組みを理解して為替相場を分析することがFXをする上で大事になってきます。
円高と円安はどっちがいい?
グローバル化が進む昨今、モノやサービスは外国からの輸入・輸出なしでは成立しないことが多いです。
外国との取引を行う際、日本円だけでなく相手国の通貨を利用する場合があります。
為替の変動はモノの価格を左右させるため、私たちの暮らしや経済に与える影響は大きいといえます。
一概にどっちがいいとはいえない
「円高」は、円の価値が高くなることを意味するため、円高の方が良い状態だと思いがちです。
しかし、通貨を扱う立場によってどちらがいいかは変わります。
円高と円安のそれぞれにメリット・デメリットがあるため、それらを理解して状況を活用していく必要があります。
海外旅行は円高がお得
日本人が海外旅行する場合、円高がお得です。
100円 = 1ドルに交換する場合と、110円 = 1ドルに交換する場合、100円 = 1ドルのときの方が多くのドルと両替できます。
海外旅行は円の価値が高まっている円高時のほうが円安時よりもお得といえます。
反対に外国人観光客が日本を訪れる場合は、円安の方がお得です。
為替レートが1ドル = 100円の場合と1ドル = 200円の場合を比較してみると、1ドル = 200円であれば100円のものを1ドルで2つ買うことができます。
ドルの価値が高く、円の価値が安い「円安時」の方が、外国人観光客にとってはお得です。
物の輸入は円高が有利
日本企業が、1ドル = 100円のときにアメリカから10ドルの商品を輸入するとします。
支払いは日本円で1,000円になりますが、円高で1ドル = 90円になれば900円の支払いで商品を輸入できます。
円高時は海外製品を安く仕入れることができ、輸入を柱とする企業は利益を上げやすくなります。
そのため、輸入関連銘柄の株価は上昇基調です。
石油・ガスなどのエネルギー資源や、小麦・果物といった食品、紙や木材などの原料産業など、私たちの生活は多くを輸入に頼っています。
円高時に企業が安く輸入した商品は、消費者への販売価格を安くすることが可能なため、私たちも円高のメリットを享受できます。
物の輸出は円安が有利
円高は輸入に有利ですが、反対に輸出を柱としている企業にとっては円安の方が有利になります。
例えば海外へ向け10ドルの商品を10個輸出するとします。
1ドル = 100円のときには1,000円の売上ですが、円安で1ドル = 110円になると1,100円の売上です。
上場企業は輸出割合が高い傾向にあるため、円安時の輸出企業の収益改善が日経平均やTOPIX指数の上昇にも繋がります。
円高・円安のわかりやすい覚え方
円高・円安は日常的にニュースで見聞きし、為替相場の見通しに欠かせない言葉です。
覚えづらく混乱しがちですが、わかりやすく簡単に覚えられる方法を2つ紹介します。
ご自身の理解しやすい方で覚えましょう。
例1. ドルの価値と比較する
ドルを基準として、「ドルが安いか高いか」と比較して考える方法です。円ではなくドルの価値と比較します。
例えば、現在1ドル = 105円だとします。為替が、1ドル = 100円に変動した場合、それまでよりも5円少なく1ドルに交換できます。
つまり、ドルの価値は下がり、円の価値が高まったということです。これが「ドル安円高」です。
反対に1ドル = 110円に変動した場合、それまでよりも5円多く支払わないと1ドルに交換できない状況となります。
ドルの価値が高まり、日本円の価値が下がったことになります。
これが「ドル高円安」です。ドルと円の価値は、常に相反します。
例2. 円の価値を基準に考える
次は円を基準とする考え方です。
例えば、10ドルのランチを食べるとき、1ドル = 100円であれば1,000円の支払いで済みます。しかし、1ドル = 110円となると1,100円支払わなくてはいけません。
日本円で考えると、1,000円の方が安く感じ、1,100円の方が高く感じますが、円安・円高を考える際は逆の考え方となります。
1ドル = 100円のときは円の価値が高いため円高、1ドル = 110円のときは円の価値が安いため円安となります。
円高・円安の基準はいくら
明確な基準値は存在しない
「円高」・「円安」について、国際的に決められた明確な基準はありません。
どのタイミングを基準とするかによって円高になるのか、円安になるのかは違うからです。
例えば、1ドル = 90円で外貨を購入した場合、1ドル = 110円になった場合は「円安」になったと感じます。
一方、1ドル = 130円で外貨を購入した場合、1ドル = 110円は「円高」だと感じるはずです。
「1ドルをいくらで購入したのか」、「見ている期間はどのくらいか」によって円高か円安かの判断基準が異なります。
そのため、金額基準で円高と円安を考えることはできません。
1ドル=100円が基準にされがち
多くの場合、1ドル = 100円が基準にされがちです。
たしかに1ドル = 100円はきりの良い数字で計算しやすく分かりやすいですが、企業が一律100円を基準に円高・円安の判断をすることはできません。
輸出入を行う企業が、いつ商品を仕入れたか・いつ商品を輸出したかのタイミングによって為替レートが異なるため、1ドル = 100円を基準に損益計算することは難しいです。
そのため、企業は製品や商品の「基準価額」を定め、その基準値によって円高か円安かを判断しています。
事前に基準となる為替レートを決めておくことで、企業が業績の見通しや事業計画を決めやすくなるメリットもあります。
実際は過去3ヶ月の平均レートで考えることが多い
景気判断の材料となるGDPなどの重要な経済指標は3ヶ月単位で発表され、企業も四半期ごとに決算発表を行うのが一般的です。
そのため、経済的な観点では過去3ヶ月の平均レートを基準として、「円高」「円安」の判断を行うことが多いです。
企業は決算において、過去3ヶ月の為替相場を判断材料にして予想利益を引き上げる「上方修正」や、その反対の「下方修正」を行うことがあります。
想定していなかった為替相場の変動によって従来予想以上の利益達成が見込まれると期待感が出た場合、その企業の株価上昇に繋がります。
今は円安?円高?
現在のドル円の為替相場は、急速に円安ドル高が進行しています(2021年12月時点)。
数ヶ月前までは1ドル = 110円以下を推移していましたが、2021年11月には1ドル = 115円台前半と大幅に円安が進んだ場面が見られました。
これは、原油価格の高騰により日本の貿易赤字が拡大すると悲観され、円が売られる材料になっていたためです。
今後もエネルギー高が続く可能性は高いとされていますが、12月に入るとオミクロン変異株の感染拡大を警戒し米長期金利は低下、ドル買いは抑制され為替水準は落ち着いています。
当面の為替水準予測は現状並みの114円前後と見込まれており、引き続き円安水準が持続する可能性が高いといえます。
まとめ:円高・円安は相対的に決まる
為替相場は日々刻々と変動しています。為替の動きは、景気や経済を映し出す鏡のようなものです。
円高・円安どちらにもメリット・デメリットが存在します。どちらがよいかは一概に判断はできません。
しかし、円高・円安を正しく理解することで、為替のニュースがわかり、世界の経済情勢も理解することができるでしょう。
外貨預金やFXをする際は、円高・円安の仕組みについてしっかり理解してから行いましょう。
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記事筆者
マネカツ編集部 Manekatsu Henshubu
"将来への漠然としたお⾦への不安はあるけど、何から始めていいのかわからない…"
そんな方に向けて「資産運用」や「節税」など、お金に関する情報を発信しています。

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