「円高」「円安」は、他国通貨に対する円の価値を計る言葉です。

2022年はニュースや新聞で「円安」について報じられることが多くなっており、人々の関心が高まっています。

円高になったとき、円安になったとき、それぞれが私たちの生活にどのような影響を与えるのかよくわからない方もいるのではないでしょうか。

この記事では、円高・円安についてのメリット・デメリットとわかりやすい覚え方を解説します。

円高・円安を理解すると経済ニュースへの理解が深まり、資産運用にも活用できますので参考にしてください。

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円高とは

円高とは

「円高」とは、外貨と比較して円の価値が高い状態を指します。

円とドルの為替相場を例に「1ドル = 100円」を基準に考えると「1ドル = 50円」になると円高です。

100円をドルに交換するときに、「1ドル = 100円」の相場では1ドルにしか交換できませんが、「1ドル = 50円」の相場では2ドルに交換できます。

100円で交換できるドルが増えたため、円の価値が上がったと判断できます。

通貨の価値が変動する主な要因は、その通貨を購入したい人がどれくらいいるか、その通貨をどのくらい手放す人がいるか、といった需要と供給のバランスです。

例えば、日本の企業に投資したいと考える外国人が多い場合は、自国の通貨を売って円を購入する外国人が増えるため円高になります。

円安とは

円安とは

「円安」とは、外貨と比較して円の価値が低い状態を指します。

先ほどの例と同様に「1ドル = 100円」を基準に考えると「1ドル = 150円」になると円安です。

300円をドルに交換するとき、「1ドル = 100円」の相場では3ドルと交換できますが、「1ドル = 150円」の相場では2ドルにしか交換できません。

300円で交換できるドルが減ったため、円の価値が下がったと判断できます。

まとめると、1ドルあたりの円の数字が小さくなった際は円高に、1ドルあたりの円の数字が大きくなった際は円高に変動します。

円高と円安はどっちがいい?

円高と円安はどっちがいい?

円高と円安、どちらにもメリット・デメリットがあるため、一概にどちらがいいとは言えません。

その人の立場によって考え方が変動すると言えるでしょう。

ここでの内容を参考に円高になった際、円安になった際に自身の生活にどのような影響が出るかを確認してください。

円高のメリット・デメリット

円高のメリット・デメリット

円高になると、外貨を少ない円で購入できるため、円を外貨に交換する機会が多い人にとっては有利に働きます。

その反面、外貨を円に交換する機会が多い人にとっては、円の価値が高いために収入が少なくなるので不利に働きます。

例えば米国株に投資をしている場合、株価が500ドルの場合1ドル100円(円安)の場合は日本円で50,000円になりますが、1ドル50円(円高)の時は25,000円にしかなりません。

外貨での収益が変わらない場合、円に交換した際の収益が円安のときと比較すると少なくなるのはデメリットです。

ここでは、円高のメリット・デメリットを解説します。

輸入品が安く買える

円高のときは、海外の輸入品を安く購入できます。

100ドルの商品を購入する場合を例に比較します。

「1ドル = 100円」のタイミングと「1ドル = 50円」のタイミングで比較しましたが、円高になると円を基準にした際の価格が安くなっていることがわかります。

例えば身近なものとして「iPhone」で例をあげます。

799ドルのiPhoneを1ドル100円の時と1ドル50ドルの時に購入した時では、倍金額が違います。

為替相場 日本でのiPhone価格
1ドル = 100円 79,900円
1ドル = 50円 39,950円

個人だけではなく、企業が輸入品を購入する際も同様です。

石油・天然ガスなどのエネルギー資源や小麦・野菜・肉などの食料などを円基準で安く購入できます。

商品を安く仕入れることができた企業が市場価格を下げると、私たちは安く購入できるようになるため、暮らしが楽になるかもしれません。

海外旅行がお得にできる

海外旅行をする際は現地の通貨を使用するため、円高のときは海外旅行をお得にできます。
お得になる理由は、少ない円で多くの外貨に交換できるからです。

例えばアメリカ旅行を計画する際に、750ドルを準備する場合で比較します。

為替相場 750ドルに交換するために必要な円
1ドル = 100円 75,000円
1ドル = 50円 37,500円

このように円高のタイミングでの海外旅行は円ベースで考えると必要な資金が少なく済むためお得です。

また、旅行資金として準備していたお金を全て外貨に交換する場合は、海外旅行の計画を立てていた当初よりも多くの外貨を入手できるため、円高になっていると海外旅行をより楽しむことができるでしょう。

外国人観光客が少なくなる可能性

円高は日本人が海外旅行する際には有利に働くものの、外国人が日本に旅行する際は不利に働きます。

先ほどの逆で、外国人が日本での観光に使う円を確保するために必要な資金が多くなるからです。

経済産業省によると、2019年の訪日外国人の旅行消費は4兆8千億円にも及び、日本経済に大きな影響を与えています。

外国人観光客が直接利用する施設以外にも、外国人が宿泊するホテルが提供する料理に使用する食材の仕入れ先の業者なども、外国人観光客の恩恵を受けているといえます。

また、外国人観光客が減少しなかったとしても、外国人の日本での消費が減少する可能性が考えられるでしょう。

外国人観光客を主なターゲットにしている方にとって、円高はデメリットになるといえます。

外国株を安く購入できる

資産運用をしている方の中には、外国の資産を保有している方もいるでしょう。

外国の資産を購入する際は、円をその国の通貨に交換してから購入することになるため、円高になると安く購入できるといえます。

特に高配当株投資を米国の個別株やETFで行う方にとって、円高は安く購入できる良いタイミングです。

将来的に円高から円安になった際には、円に換算したときの配当収入が多くなります。

円安のメリット・デメリット

円安のメリット・デメリット

次に、円安のメリット・デメリットをまとめます。

日本の製品・輸出品が売れやすくなる

円安のときは、海外での日本のモノやサービスの価格が下がるため、輸出企業に有利に働きます。

獲得した外貨を円に交換する際も、円安が進むと多くの収益が見込める点もメリットです。

日本の輸出の上位5品目は以下の通りです。

  • 自動車
  • 半導体等電子部品
  • 鉄鋼
  • 自動車の部分品
  • 半導体等製造装置

円安のときは、これらの品目を扱う企業の業績に好影響が出るでしょう。

海外旅行の支出が増える

円高のときとは反対で、円安のときの海外旅行は支出が増えます。

旅行先で使うお金を外貨ベースで準備する際は、必要な資金が多くなります。

海外旅行の支出がどのくらい増えるか、具体的な数字を使って見ていきましょう。

先ほどと同様に、為替相場別に750ドルを現金を準備する際に必要な資金を比較します。

為替相場 750ドルに交換するために必要な円
1ドル = 150円 112,500円
1ドル = 140円 105,000円
1ドル = 130円 97,500円
1ドル = 120円 90,000円
1ドル = 110円 82,500円
1ドル = 100円 75,000円

旅行先で観光や食事をする際は、円安のときは多くの資金が必要になることがわかります。

インバウンド需要が見込める

インバウンド需要とは、日本に訪れる外国人観光客の消費を指します。

円安の際は日本人が海外旅行をする時の費用が増えますが、その反面、外国人が日本に訪れる際の費用は抑えられます。

外貨を円に交換する際に、少ない外貨で多くの円に交換できるからです。

外国人観光客が増えることで、宿泊・観光・飲食・航空・鉄道・小売などの業界は直接収益に関係します。

さらに、インバウンド需要の増加が見込まれると、他の業界にも影響が現れます。

例えば、外国人観光客の増加に備えて、宿泊施設の改修や増築が増えると、建設業界の収益にも良い影響が出るでしょう。

外貨で受け取る収入が増える

外貨での収入がある方は、円安のときは収入が増えるといえます。

例としては、YouTubeやブログでGoogleアドセンスからの広告収入を得ている方や外国の金融資産からのインカムゲインがある方などです。

外貨での収入額そのものが変動していない場合でも、円安の影響で円ベースでの収入が増えます。

為替相場の変動によるさまざまな影響に対応するために、資産の一部を外貨で保有したいと考える方は、外貨を得られる副業に挑戦してみたり、外国の金融資産の保有を検討してみてもいいかもしれません。

今は円高?円安?(2022年12月時点)

今は円高?円安?

2022年12月第1週目のドル円相場は135円付近で推移していました。

ドル円相場が130円台の状況は、2002年2月以来です。

長期的な視点で考えた場合、今の相場は円安水準と言えるでしょう。

一方で、2022年10月のドル円相場は一時150円を超えました。

10月のの150円超の相場と比較すると、短期的には円高に振れているという見方もできます。

短期的には円高に振れる場面があるとはいえ、長期的に見ると今は円安状態にあります。

円安の要因の1つとされているアメリカとの金利差が解消されない間は、しばらくは円安が続くのではないかとの見通しです。

参考:ロイター「ドルが135円台に上昇、2002年2月27日以来=東京外為市場」
参考:株式会社七十七銀行「米ドル円相場(仲値)推移グラフ 短期・長期」

円高・円安のわかりやすい覚え方

円高・円安のわかりやすい覚え方

円高・円安は日常的にニュースで見聞きし、為替相場の見通しに欠かせない言葉です。

覚えづらく混乱しがちですが、理解できればニュースや経済をより深く理解することができます。

ここでは円高、円安の覚え方について解説します。

値段が高いと「円安」安いと「円高」

為替はニュースや新聞などで「1ドル110円」のように、1ドルあたりいくらと表現されていることが多いです。

為替を確認する際に注目すべきポイントは、円の部分です。

1ドルあたりの円が高いときは「円安」、円が安いときは「円高」となります。

円高・円安に明確な基準はない

円高・円安を判断する明確な基準はありません。

「1ドル100円」が基準というわけではありませんし、110円だから円安・円高という決まりもないんですね。

経済的な観点では、直近数ヶ月の平均を基準として円高・円安の判断をすることが多いようです。

基準となる為替相場によって、現在が円高であるか、円安であるかの判断は異なります。

先ほどは2022年の年初と比較して現在は円安と判断しましたが、戦後の「1ドル = 360円」だった時代を基準にすると、現在は超円高と判断されます。

当事者間で基準が明確であれば、円高・円安の判断は可能です。

例えば、2013年12月〜2022年6月のドル円相場を「2021年12月のドル円相場」を基準に円高・円安の判断をすると、以下のようになります。

日付 ドル円相場 円高 or 円安
2013年12月 105.08円 円高
2014年12月 119.52円 円安
2015年12月 120.53円 円安
2016年12月 116.89円 やや円安
2017年12月 112.67円 やや円高
2018年12月 110.18円 円高
2019年12月 108.82円 円高
2020年12月 103.24円 円高
2021年12月 115.07円 基準
2022年3月 121.70円 円安
2022年6月 136.76円 円安

覚え方例1. ドルの価値と比較する

ドルを基準として、「ドルが安いか高いか」と比較して考える方法です。円ではなくドルの価値と比較します。

例えば、現在1ドル = 105円だとします。為替が、1ドル = 100円に変動した場合、それまでよりも5円少なく1ドルに交換できます。

つまり、ドルの価値は下がり、円の価値が高まったということです。これが「ドル安円高」です。

反対に1ドル = 110円に変動した場合、それまでよりも5円多く支払わないと1ドルに交換できない状況となります。

ドルの価値が高まり、日本円の価値が下がったことになります。

これが「ドル高円安」です。ドルと円の価値は、常に相反します。

覚え方例2. 円の価値を基準に考える

次は円を基準とする考え方です。

例えば、10ドルのランチを食べるとき、1ドル = 100円であれば1,000円の支払いで済みます。しかし、1ドル = 110円となると1,100円支払わなくてはいけません。

日本円で考えると、1,000円の方が安く感じ、1,100円の方が高く感じますが、円安・円高を考える際は逆の考え方となります。

1ドル = 100円のときは円の価値が高いため円高、1ドル = 110円のときは円の価値が安いため円安となります。

株やFXへの影響

株やFXへの影響

円高・円安が「株」と「FX」の運用に与える影響を解説していきます。

円安時の株式は比較的ポジティブな影響

円安が不利に働く銘柄・業種もあるため、特に個別株の取引を行っている方は銘柄ごとに円安が与える影響を分析する必要がありますが、円安時の日本株は比較的ポジティブな影響を受けやすいです。

円安時は、輸出企業やインバウンド需要が見込まれる業種の株価が上がりやすい傾向にあります。

たとえば自動車メーカーや旅行関連の銘柄などが該当します。

円安時は外国人にとって手元の資金で多くの円を交換できるタイミングであるため、海外からの資金が株式市場に流入しやすい点も特徴です。

海外の投資家が「日本市場が割安傾向」だと判断すると、日本株への投資が増えて株価の上昇が期待できます。

FXはファンダメンタルズの影響で方向感が決まりやすい

FXの方向感は各国の金利差で決まることが多いです。

金利が高い国の通貨を保有する方が利息が多くもらえるため、金利が高い国の通貨に資金が集まりやすい傾向があります。

ドル円相場で考えると、日本は長く低金利政策を継続していますがアメリカは利上げを続けているため、現在はドルに資金が流れて円安ドル高が続いている状況です。

FXでは各国の金利差以外にも、他の金融政策や政府・中央銀行が発表する経済指標、金融政策や財政政策に大きな影響を与える要人の発言、地政学リスクといった「ファンダメンタルズ」の析が重要です。

今後の方向感をつかむためには、まず各国の金利を確認して日本だけではなく世界のニュースに注目し、FXの方向感を分析してください。

まとめ:円高・円安は相対的に決まる

まとめ:円高・円安は相対的に決まる

「円高・円安はどっちがいい?」という疑問に対しては、一概にどちらがいいとはいえません。

円高にも円安にもメリット・デメリットがあるからです。

円高とは、外貨の価値と比較して円の価値が高い状態であり、円安とはその反対で円の価値が低い状態です。

「1ドル = 100円」を基準に考えると「1ドル = 50円」のときは円高、「1ドル = 150円」のときは円安になります。

外貨預金やFXなどを始める際は、円高・円安の仕組みについてしっかり理解してから行いましょう。

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